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来客管理・受付システムの開発を外注する進め方
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・運用を受託
この記事のポイント
- 来客管理・受付システムは、受付端末でのセルフ受付と担当者への自動呼出によって、有人受付を無人化する仕組みです。
- 来訪者の氏名や来訪日時を記録する以上、入退館記録は個人情報として扱う設計が前提になります。
- 受付SaaSで足りるか、既存のセキュリティゲートや社内チャットと連携させるためにスクラッチ開発が要るかが、外注検討の分かれ目です。
目次
来客管理・受付システムとは——受付端末で有人受付を無人化する仕組み
来客管理・受付システムとは、エントランスに置いた受付端末(多くはタブレット)で来訪者にセルフ受付をしてもらい、担当者を自動で呼び出すことで、有人受付を無人化するシステムを指します。来訪者が端末で担当者名や訪問先を選ぶと、その担当者のもとへチャットや電話、メールで通知が届く、という流れが基本の形です。受付に人を常駐させず、来客対応の負担を減らしたいオフィスで導入が広がっています。
受付端末の役割は、単なる呼び鈴の置き換えにとどまりません。誰がいつ来訪したかという入退館記録を残す点に、来客管理としての本質があります。紙の受付簿を電子化し、来訪者の氏名や所属、訪問先、入退館の時刻を検索できる形で保持するわけです。事前に来訪予約を受け付け、当日はQRコードで入館させる運用も一般的になってきました。
導入形態は、市販の受付SaaSをそのまま使う方式と、自社の入退館セキュリティや社内システムに合わせて作り込む方式に大きく分かれます。どちらを選ぶべきかは、既存設備との連携要件しだいです。以降の章で、背景・機能・個人情報の扱い・開発方式・外注時の確認点を順に整理していきましょう。
無人化が進む背景と、安否確認・予約管理システムとの違い
受付を無人化する動機——離席前提のオフィスと総務の負担軽減
受付の無人化が進む背景には、働き方の変化があります。総務省の令和6年通信利用動向調査によると、テレワークを導入している企業の割合は47.3%で、導入形態では在宅勤務が最も多い結果でした*4。出社と在宅が混在し、フリーアドレスで座席が固定されないオフィスでは、来訪者が着いても担当者がその場にいるとは限りません。有人受付を置いても、取り次ぎ先を探す手間はむしろ増えがちです。
総務や情報システム部門にとって、来客対応や電話の取り次ぎは負担の大きい定型業務です。受付を無人化して担当者へ直接通知が届く形にすれば、取り次ぎの往復がなくなり、コア業務に時間を回しやすくなります。感染症対策として非接触の受付が求められた時期に導入が進んだ経緯もあり、無人受付はコスト削減と衛生面の両面から選ばれてきました。
安否確認・予約管理・グループウェアとの違い
来客管理・受付システムは、隣接する他のシステムと機能が一部重なります。混同を避けるため、目的の違いを整理しておきます。安否確認システムは、災害時に従業員の安否を一斉に確認する仕組みで、対象は社内の従業員です。一方、受付システムが扱うのは社外からの来訪者であり、平常時の入退館が主な対象になります。守るべき情報も運用の場面も異なる、と考えてください。
予約管理システムや会議室予約は、時間枠やリソースの割り当てを主眼に置きます。来客管理はそこに来訪者の受付と入退館記録を加えたものだ、と捉えると違いが見えやすいでしょう。実務では両者を連携させ、会議室予約から来訪予約とQR入館証を自動発行する運用も組めます。グループウェアは社内の情報共有基盤であり、受付システムは来訪通知の届け先としてグループウェアのチャットを利用する、という関係になります。
| システム | 主な対象 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 来客管理・受付システム | 社外の来訪者 | セルフ受付・担当者呼出・入退館記録 |
| 安否確認システム | 社内の従業員 | 災害時の安否の一斉確認 |
| 予約管理・会議室予約 | 時間枠・リソース | 枠の割り当てと重複防止 |
| グループウェア | 社内メンバー | 情報共有・チャット・スケジュール |
主な機能——自動呼出・事前予約/QR入館・入退館ログ・多言語/複数拠点
来客管理・受付システムに求められる機能は、大きく4つの系統に分けられます。自社に必要な範囲を見極めることが、開発方式の選定にそのまま効いてきます。
第一に、担当者への自動呼出です。来訪者が端末で担当者を選ぶと、社内チャットや電話、メールへ通知が飛びます。連絡先として何を使うかは会社ごとに違うため、既存のチャットや内線にもれなくつながるかが実務上の要になります。呼び出しても応答がない場合に上長やチームへ再通知するエスカレーションの有無も、確認しておきたい点です。
第二に、事前来訪予約とQR入館です。ホストが来訪予約を登録すると、来訪者へQRコード付きの案内が届き、当日はそのコードを端末にかざして受付を済ませます。予約情報と入館を突き合わせられるため、飛び込み来訪との区別がつきやすくなります。会議室予約システムと連携させれば、予約時に入館証を自動発行する運用も可能です。
第三に、入退館ログとセキュリティ連携です。入館と退館の時刻を記録し、必要に応じてセキュリティゲートや電気錠と連動させます。誰が館内にいるかを把握できるため、防災や情報セキュリティの観点でも意味を持ちます。ゲート連携までは、既存設備の仕様に合わせた作り込みが必要になる場面が多いでしょう。
第四に、多言語対応と複数拠点への展開です。海外からの来訪者が想定される拠点では、受付端末の画面を英語や中国語など複数言語で切り替えられると受付がスムーズになります。複数拠点をまたいで管理する場合は、拠点ごとの権限分離や記録の一元管理をどう設計するかが論点です。名刺や顧客情報の登録機能を備え、来訪履歴を営業活動に活かせる製品もあります。
個人情報・入退館記録の取り扱いで押さえる点
受付システムを検討するうえで避けて通れないのが、来訪者の情報の取り扱いです。個人情報保護委員会は「個人情報」を、生存する個人に関する情報であって、氏名や生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるものと定義しています*3。受付システムが記録する来訪者の氏名・所属・来訪日時は、まさに特定の個人を識別できる情報です。入退館記録は個人情報として扱う前提で、保管期間や閲覧権限、廃棄の方法をあらかじめ決めておく必要があります。
物理的な区域の管理も関わってきます。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、物理的安全管理措置として、施設への入退室の管理、個人データを記録した媒体の保管管理、廃棄時の適切な処理などが挙げられています*2。受付システムは、この入退室管理を支える手段の一つと位置づけられます。
ただし、すべての場所で一律に厳格な入退室管理が求められるわけではありません。個人情報保護委員会は、常に入退室管理の実施が求められるわけではないとしたうえで、サーバーやメインコンピューターを管理する区域については、入退室管理の実施や承認されていない記録媒体・カメラなどの持込制限が有効な取組だと説明しています*1。自社のどの区域にどの水準の管理を敷くかは、扱う情報の重要度に応じて切り分けるのが現実的です。受付システムの設計でも、ゲート連携をどこまで作り込むかはこの区分と結びつきます。
パッケージ(受付SaaS)とスクラッチ開発の判断軸
開発方式は、市販の受付SaaSを導入する形と、自社向けにスクラッチ開発する形に分かれます。多くの企業では、まず受付SaaSで足りるかを検討し、要件が収まらない部分だけを作り込むのが妥当な進め方でしょう。
受付SaaSが向くのは、セルフ受付と担当者呼出という基本機能で運用が回るケースです。導入までの期間が短く、初期費用を抑えやすい利点があります。反面、自社固有のセキュリティゲートや基幹システムとの連携、作り込みが必要な受付フローには、標準機能だけでは対応しきれないこともあります。既存設備との接続要件が多い環境ほど、パッケージの制約に突き当たりやすいと考えてください。
スクラッチ開発やパッケージのカスタマイズが検討対象になるのは、次のような要件を抱える場合です。既存の入退館セキュリティゲートや電気錠と密に連携させたい。社内で使っている特定のチャットや電話システムへ取りこぼしなく呼出を飛ばしたい。複数拠点の記録を自社固有の権限体系で一元管理したい。これらが絡むと、外部に開発を委託する判断が現実味を帯びてきます。
| 観点 | 受付SaaS(パッケージ) | スクラッチ開発・カスタマイズ |
|---|---|---|
| 導入期間・初期費用 | 短く・抑えやすい | 要件しだいで増える |
| 既存ゲート・電気錠との連携 | 対応範囲は製品しだい | 仕様に合わせて作り込める |
| 個別の受付フロー・権限体系 | 標準機能の範囲に収める | 自社要件に合わせやすい |
| 保守・機能追加 | 提供元の更新に依存 | 自社の裁量で継続対応 |
外注時に確認すべき4つのポイント
開発を外部へ委託すると決めたら、要件定義の段階で次の4点を委託先と詰めておくと、後戻りを防ぎやすくなります。
1. 入退館セキュリティとの連携範囲
既存のセキュリティゲートや電気錠、入退室管理システムと、どこまで連携させるかを明確にします。連携方式が公開されたAPIなのか、専用の連動が要るのかで開発の難易度は変わります。物理設備が絡む連携は、現地での検証工程を見込んでおくとよいでしょう。委託先が既存設備のメーカーと調整できる体制かも、あわせて確認しておきましょう。
2. 既存チャット・電話への確実な呼出
担当者への通知が、自社で使っているチャットや内線、メールにもれなく届くかを検証します。通知が届かなければ、無人受付は成立しません。応答がないときのエスカレーション経路や、複数の連絡手段を併用する設計についても、要件として盛り込んでおくとよいでしょう。
3. 受付端末のUXと多言語
受付端末は、初めて触れる来訪者が迷わず操作できることが前提です。文字の大きさやボタンの配置、操作ステップの少なさといったUX(ユーザー体験)は、無人受付の使い勝手を左右します。海外からの来訪者が想定されるなら、対応言語の範囲と切替のわかりやすさも要件に含めます。
4. 個人情報の取り扱いと運用設計
入退館記録の保管期間、閲覧できる担当者の範囲、廃棄の手順を、開発の要件として定めておくことが出発点です。個人情報を扱う以上、システムの機能だけでなく運用ルールまで含めて設計する姿勢が求められます。委託先が個人情報の取り扱いや情報セキュリティにどう対応するかも、契約前に確かめておきましょう。機能面だけでなく運用まで見据えた提案ができるかを基準に、自社の要件に合う体制かを見極めてください。
まとめ:来客管理・受付システムの外注で押さえる3つの判断軸
本稿では、来客管理・受付システムの開発を外注する進め方を、公的情報をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、受付システムは受付端末でのセルフ受付と担当者への自動呼出によって有人受付を無人化する仕組みであり、入退館記録を残す点が来客管理の本質です。安否確認や予約管理とは対象も目的も異なるため、役割を切り分けて連携を設計しましょう。
第二に、来訪者の氏名や来訪日時は特定の個人を識別できる個人情報に当たり得るため*3、入退館記録は個人情報として保管期間・閲覧権限・廃棄までを設計する必要があります。物理的安全管理措置としての入退室管理の考え方*2と、区域ごとに管理水準を切り分ける整理*1を土台にすると、過不足のない要件に落とし込みやすくなります。第三に、受付SaaSで足りるか、既存ゲートや社内チャットとの連携のためにスクラッチ開発が要るかが外注の分かれ目です。連携範囲・呼出の確実性・端末のUX・個人情報の運用の4点を要件定義で詰めておくことをおすすめします。
よくある質問
受付システムは市販のパッケージ(受付SaaS)だけで運用できますか。
セルフ受付と担当者呼出という基本機能で運用が回るなら、受付SaaSだけで足りることが多いです。一方で、既存のセキュリティゲートや社内システムとの密な連携、個別の受付フローが必要な場合は、標準機能では収まらず、カスタマイズやスクラッチ開発を検討することになります。まずSaaSで足りるかを確かめ、収まらない部分だけを作り込む進め方が現実的です。
入退館記録は個人情報として扱う必要がありますか。
来訪者の氏名や来訪日時は、特定の個人を識別できる個人情報に当たり得ます*3。そのため入退館記録は個人情報として扱い、保管期間・閲覧権限・廃棄の方法を定めておく必要があります。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)でも、入退室の管理や媒体の保管・廃棄は物理的安全管理措置として位置づけられています*2。
安否確認システムや予約管理システムと何が違うのですか。
安否確認システムは災害時に社内の従業員の安否を確認する仕組みで、対象が従業員です。予約管理は時間枠やリソースの割り当てを主眼にします。受付システムはこれらと異なり、社外の来訪者の受付と入退館記録を扱います。実務では会議室予約と連携させて入館証を発行するなど、役割を分けたうえで組み合わせる設計が有効です。
既存のセキュリティゲートと連携させたい場合、何を確認すればよいですか。
既存ゲートや電気錠の連携方式が公開されたAPIか、専用の連動が要るかをまず確認します。物理設備が絡むため、現地での検証工程を見込むことも大切です。委託先が既存設備のメーカーと調整できる体制かどうかも、選定時のポイントになります。要件定義の段階で連携範囲を明文化しておくと、後戻りを防ぎやすくなります。
多言語対応や複数拠点への展開も外注できますか。
対応できます。受付端末の画面を英語や中国語などへ切り替える多言語対応や、複数拠点をまたいだ記録の一元管理は、要件として整理すれば開発の対象になります。拠点ごとの権限分離や記録の集約方法をどう設計するかが論点になるため、想定する拠点数と運用体制を委託先に共有したうえで進めるとよいでしょう。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:個人情報保護委員会「『個人データを取り扱う区域の管理』に関して、個人データを取り扱う場所は、全て厳格な入退室管理を実施する必要がありますか。」(よくある質問)(https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q10-15/)
- *2 出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/)
- *3 出典:個人情報保護委員会「『個人情報』『個人データ』『保有個人データ』とは、どのようなものですか。」(よくある質問)(https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq3-q2-1/)
- *4 出典:総務省「令和6年通信利用動向調査の結果」(令和7年5月30日公表)(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin02_02000178.html)