LASSIC Media らしくメディア
高度試験の合格者の業種別の分布|応募を集める探し方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 高度試験の合格者(学生を除く2023年度の11,588人)は、業種別で51%が情報サービス業にいます。
- 部門別では「その他」が44%あり、情報システムの49%とほぼ同じ大きさです。
- 業種別と部門別は同じ人数を別の軸で分けた割合なので、掛け合わせて人数は出せません。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
高度試験(情報処理技術者試験の上位区分)の合格者を採りたいが、どの業界の人に声をかければよいか分からない。合格を条件にした求人を出しても、応募がほとんど来ない——。エンジニアの中途採用では、こうした悩みが起こりがちです。高度試験の合格者の業種別・部門別の分布とは、試験に合格した人がどの業種の、どの部門で働いているかを割合で示したものです。
経済産業省の検討会報告書には、2023年度の合格者について、この分布が載っています。*1 合格者がどこに多いかを知っておくと、募集の対象をどの業種まで広げるかを決めやすくなります。ただし万能ではなく、示されているのは勤め先の割合だけです。本記事では、エンジニアを採用する実務担当者に向けて、業種別と部門別の分布、2つの区分の中身、採用要件への生かし方、そして数字を使うときに気をつけたい点を整理します。
目次
高度試験の合格者の分布とは
この分布は、経済産業省の「Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会 報告書」に載っています。令和7年5月に公表された報告書です。*2 分布が置かれているのは本文の4.1.3「情報処理技術者試験の合格者の所在」という項で、2023年度の高度試験の合格者を、業種別と部門別の2つの軸で割合にしています。
母集団(集計の対象になった人)は、2023年度の合格者のうち学生を除いた11,588人です。ここでいう高度試験には、情報処理安全確保支援士試験も含まれると注記されています。*1 図の脚注によると、元のデータはIPAデジタル人材センターから提供されたものです。数えているのは人の割合で、求人の数や採用の数ではありません。
合格者数そのものは、IPA(情報処理推進機構)が統計情報として別に公表しています。この分布は、その合格者が勤め先の業種と部門で見るとどう分かれるかを示したもので、数えるものが違います。募集先を決めるときは、人数よりも先に、合格者がどこで働いているかが役に立ちます。
業種別の分布
業種別で最も大きいのは情報サービス業で、51%を占めます。*1 2番目は製造業の8%で、情報サービス業とは6倍以上の開きがあります。続いて、官公庁・公益団体、金融・保険業・不動産業、運輸・通信業がそれぞれ4%、サービス業とコンピュータ及び周辺機器製造又は販売業がそれぞれ2%です。残りの25%は「その他」で、8つの区分を足し合わせると100%になります。
報告書に載っているのは割合だけです。11,588人に割合を掛けて計算すると、情報サービス業は5,900人前後、製造業は900人台、4%の区分はそれぞれ400人台、「その他」は2,800人台になります。人数はあくまで目安ですが、業種ごとの差の大きさはつかめます。
名前の挙がった7つの業種だけを見て合格者を探すと、製造業の8%より大きい「その他」の25%を見落とすことになります。
部門別の分布
部門別で最も大きいのは情報システムで、49%です。*1 次が「その他」の44%で、この2つを合わせると93%になります。残る7つの区分は、研究・開発が3%、営業・販売(IT)と調査・企画がそれぞれ1%、教育・研修が0.7%、総務・人事が0.6%、製造が0.4%、営業(非IT)が0.3%で、合わせても7%にとどまります。すべて足すと100.0%です。
人数に直して計算すると、情報システムは5,600人台、「その他」は5,000人台です。業種別と比べると、部門別は上位の2つに合格者の大半が集まっているのが特徴です。
採用する側が気にかけたいのは、44%の「その他」です。情報システム部門とほぼ同じ人数が、示された8つの部門のどれにも入っていません。業種別の「その他」も部門別の「その他」も、内訳は公表されていません。
情報サービス業と情報システムの中身
情報サービス業と情報システムは、どちらも複数の分類をまとめた合計だと注記されています。*1 情報サービス業は「ソフトウェア業」と「情報処理・提供サービス業」の合計です。受託開発やパッケージソフト、情報処理サービスを提供する側の企業が、ここに入ります。
情報システムは、次の10の業務の合計です。*1
- システム化戦略・企画・計画、プロジェクト管理、システム設計、プログラム開発、ネットワーク技術支援
- データベース技術支援、エンベデッドシステム開発、情報セキュリティ技術支援・管理・運用、ITサービスマネジメント(システム管理運用)、システム監査
つまり49%は、この10の業務のいずれかに就いている人を合わせた割合で、ある1つの業務だけの割合ではありません。一方で、10の業務の名前は、求人で任せる仕事を書くときにも使えます。部門の名前ではなく業務の名前で書けば、「情報システム部門にいた人」に限らずに、求める経験を示せます。
ソフトウェア業と情報処理・提供サービス業は、サービス産業の月ごとの売上を調べる統計でも、同じ2つの区分で並んで出てきます。売上の統計と比べるときは、この2つの区分で見ると合わせやすくなります。その統計の見方は「サービス産業動態統計調査、細分類はなぜ同じ形で動くのか」で扱っています。
採用する側にとっての意味
業種別の分布からまず分かるのは、合格者の半分が情報サービス業で働いていることです。自社の業務のためにシステムを持つユーザー企業が合格者を採用する場合、その多くは、開発を請け負う側からシステムを使う側へ、業種をまたいで移ってもらう転職になります。
同じ業種で働く合格者は多くありません。製造業で8%、金融・保険業・不動産業や官公庁・公益団体では4%です。自社と同じ業種での経験を必須の条件にすると、相手にできるのは合格者全体の8%や4%の人だけになります。
一方、情報サービス業の人まで対象に含めると、相手にできる人は大きく増えます。ただし、情報サービス業の人が担当してきた業務は、自社の業務とは違います。どこまでを必須の条件にし、どこからを歓迎の条件にするかを、割合を見ながら決めていくことになります。
部門別の分布からは、部門の名前で絞り込むときの注意点が分かります。スカウトや募集で「情報システム部門の経験者」を条件にすると、情報システムとほぼ同じ大きさの「その他」44%が対象から外れます。
採用要件と募集への生かし方
業種別の割合を、採用での意味と並べると次のようになります。
| 業種 | 割合 | 採用での意味 |
|---|---|---|
| 情報サービス業 | 51% | 母集団の半分。ユーザー企業から見ると業種をまたぐ転職になる |
| 製造業 | 8% | ユーザー企業の側で最も大きい区分 |
| 官公庁、公益団体 | 4% | 公的な機関から民間への転職になる |
| 金融・保険業、不動産業 | 4% | 同業から採用できる層は4%にとどまる |
| 運輸・通信業 | 4% | 同業から採用できる層は4%にとどまる |
| サービス業 | 2% | 同業から採用できる層は2%にとどまる |
| コンピュータ及び周辺機器製造又は販売業 | 2% | 機器を作る側・売る側の経験が中心 |
| その他 | 25% | 内訳は公表されていない |
この表をもとに、採用要件を次の順で決めていくと進めやすくなります。
- 情報サービス業の人を対象に含めるかを決める
- 自社と同じ業種での経験を、必須にするか歓迎にとどめるかを決める
- 部門の名前は必須の条件にせず、歓迎の条件や参考の情報として書く
- 任せる仕事を、情報システムの注記にある10の業務の名前で書き直す
- 社内資料にこの割合を引くときは、学生を除く2023年度の合格者11,588人という条件を添える
最初に決めるのは1つ目です。情報サービス業の人を含めるかどうかで、相手にできる母集団の大きさが半分ほど変わるためです。同業での経験と部門の名前は、相手にできる人を狭める条件なので、必須に置く前に一度見直します。合格者数の数え方は「情報処理技術者試験の合格者数、要件に入れる前に数える」で、試験ごとに示された対象者の姿を使って、求めるレベルごとに要件を書き分ける方法は「情報処理技術者試験の対象者像で書く、レベル2と3の要件の違い」で扱っています。
つまずきやすい点
一つ目は、2つの割合を掛け合わせてしまうことです。業種別と部門別は、同じ11,588人を別の軸で分けた割合です。51%と49%を掛けて「情報サービス業の情報システム部門にいる人数」を出しても、その数字には根拠がありません。報告書が示しているのは業種別と部門別の2つの割合で、業種と部門を組み合わせた表ではないからです。
二つ目は、別の資料の数字と混ぜることです。同じ報告書の別の章には分野ごとの人材像が載っていますが、そちらは目指す姿を書いたもので、この割合は勤め先を数えた集計です。人材像の使い方は「スキルベースの人材育成、5分野8つの人材像で要件を決める」で扱いました。学生を含む合格者数や応用情報技術者試験だけの集計、事業所を対象にした産業統計の従業者数とも、数えている対象が違います。
三つ目は、今の勤め先を示す数字として使ってしまうことです。この割合は2023年度1年分の集計で、その後の異動や転職は入っていません。学生を除いた集計なので、新卒採用の母集団としても使えません。このほか、地域別の分布、年齢や年収、転職の意向、プロジェクトマネージャ試験やネットワークスペシャリスト試験といった試験区分ごとの内訳も示されていません。
まとめ:高度試験の合格者で確かめておきたい3つの点
高度試験の合格者の分布を採用に生かすうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、母集団は学生を除く2023年度の合格者11,588人で、業種別では半分が情報サービス業で働いていること。第二に、部門別の「その他」が44%あり、部門の名前で絞ると、情報システムとほぼ同じ大きさの層が対象から外れること。第三に、業種別と部門別は同じ人数を別の軸で分けた割合で、掛け合わせて人数を出せないことです。この3点を踏まえておけば、「合格を条件にしたのに、応募がほとんど来ない」という事態を避けやすくなります。募集の対象をどこまで広げるかに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
高度試験の合格は、何を示すものですか
報告書の同じ章によると、試験には1999年に2つの役割が位置づけられました。1つは、ITエンジニアなどの社会人が「自らの雇用可能性を向上させるための道標」となること。もう1つは、合格者の知識や技術が試験の分野で一定の水準以上であることに、社会的な信用を与えることです。*1 求人で合格を条件にするときは、どの分野の水準を求めているのかを書き添えると伝わりやすくなります。
合格者数そのものは、どこで確かめられますか
IPAが統計情報として公表しています。応用情報技術者試験、高度試験、情報処理安全確保支援士試験がまとめて掲載されています。*3 本記事で扱った割合は勤め先の分かれ方を示すもので、合格者数の集計とは別のものです。
別の年度の分布と比べることはできますか
この分布は2023年度1年分の集計で、年ごとの推移は示されていません。別の年度と比べたいときは、同じ形の集計が公表されているかを先に確かめます。母集団の条件が違う集計と並べると、差が出ても理由を判断できなくなります。
採用要件と募集の対象を相談したいとき
どの業種・部門の人まで対象に含めるか、その整理からご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:経済産業省「「Society5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会」報告書-「スキルベースの人材育成」を目指して-」(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/dxjinzaireport_202505.pdf)。出典:同報告書4.1.3。業種別・部門別の割合、母集団n=11,588人(2023年度の高度試験合格者、学生を除く)、区分の注記と出所、試験の位置づけを参照(2026年9月確認)
- *2 参考:経済産業省「Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会 報告書」(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/society_digital/20250523_report.html)。出典:報告書の公表ページ。公表日と副題を参照(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「統計情報(応用情報技術者試験、高度試験、情報処理安全確保支援士試験)」(https://www.ipa.go.jp/shiken/reports/toukei.html)。出典:合格者数そのものの公表統計の所在として参照(2026年9月確認)