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DXの成果の示し方|業務時間など縮めたい数字で説明する方法
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- IPAの調査では、DXの成果が出ているとした企業は60.8%で、「わからない」も26.8%ありました。
- 成果の中身はコスト削減の70.9%が最も多く、社内側の成果が中心とされています。
- 遅れた開発を立て直すときは、縮めたい数字を1つ決めて毎週数えておくと、成果を説明しやすくなります。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
遅れていた開発を立て直して、なんとか予定に戻せた。それなのに、何が良くなったのかと聞かれると一言で答えられない——。DXを進める現場では、こうしたことが起こりがちです。IPA(情報処理推進機構)の調査でも、DXに取り組む企業のうち、成果が「わからない」と答えた企業が26.8%ありました。*2 DXの成果とは、DX(デジタル技術を使った事業や業務の変革)に取り組んだ結果として、費用や日数、売上などに表れた変化のことです。
成果を示す数字を先に決めておけば、立て直しで何がどれだけ減ったのかを、後から説明できます。ただし、このやり方も万能ではなく、選ぶ数字を誤ると、成果が出ていても社内に伝わりません。本記事では、開発の遅れを立て直す担当者に向けて、調査で見た成果の有無と中身、取組項目ごとの違い、成果を1つの数字で示す手順、そしてつまずきやすい点を整理します。
目次
DXの成果とは
IPAの「DX動向2026」は、DXによる経営面の成果を、コスト(人件費・材料費等)削減、従業員満足度向上、製品・サービス等提供日数削減、利益増加、売上高増加といった項目に分けて尋ねています。*2 資料は、コスト削減や業務効率化を「内向き」の成果、新規ビジネスの創出や顧客価値向上を「外向き」の成果と呼んで区別しています。*2
内向きの成果は、社内の費用や作業の手間が減ったことを指します。外向きの成果は、顧客に届くものや売上が変わったことを指します。開発の遅れを立て直した結果は、多くの場合、日数や作業の手間という内向きの数字に表れます。立て直しの直後に、売上や利益の変化まで結び付けて示すのは簡単ではありません。
項目の中で、立て直しにいちばん近いのは製品・サービス等提供日数削減です。製品やサービスを届けるまでの日数が縮んだことを指す項目で、取り戻した遅れが、そのまま短くなった日数として表れます。立て直しの成果を示す数字を選ぶときは、まずこの項目を手がかりにするとよいでしょう。
成果が出ている企業はどれくらいか
「DX動向2026」は、IPAが2026年7月30日に公開した調査報告です。*1 日本の企業を対象に、2026年4月17日から6月12日にかけて調査しており、調査対象の10,000社のうち、1,799社から有効な回答を得ています。*3
DXに取り組んでいると答えた企業のうち、「成果が出ている」とした企業は2025年度で60.8%でした。*2 資料は、4年間で見ると大きな変化はないとしています。一方で、成果が「わからない」と答えた企業も26.8%あり、取り組んでいるものの成果を把握できていない企業が多い状況が続いているとされています。*2
26.8%は、4社のうち1社あまりに当たります。取り組みを続けていても、何が良くなったのかを社内で説明できない企業は珍しくありません。
ここでいう「取り組んでいる」企業とは、全社戦略に基づいて全社的に、または一部の部門で取り組んでいる企業と、部署ごとに個別で取り組んでいる企業を指します。*2 DXに取り組んでいない企業は、この集計に入っていません。
成果の中身は何が多いのか
成果が出ていると答えた企業に中身を尋ねた結果では、コスト(人件費・材料費等)削減が70.9%で最も多く、従業員満足度向上が42.4%、製品・サービス等提供日数削減が34.3%と続きます。利益増加は19.6%、売上高増加は17.9%でした。*2
この割合は、全企業ではなく、成果が出ていると答えた企業の中での割合です。複数回答なので、5項目を足すと100%を超えます。資料は、成果の中心がコスト削減や業務効率化といった内向きの領域にある状況は2024年度から大きく変化しておらず、外向きの成果創出にはまだ多くの企業が至っていないとしています。*2
掲載値から計算すると、コスト削減の70.9%は、提供日数削減の34.3%の約2.07倍です。一方、利益増加と売上高増加の差は1.7ポイントしかなく、どちらが上かを論じるほどの差ではありません。外向きの成果は、どちらも2割前後とまとめて見るのが妥当です。
提供日数削減を成果に挙げた企業は、3社に1社あまりにとどまります。日数を成果として示している企業は多数派ではありませんが、日数を数えておけば、立て直しの成果として示しやすくなります。なお、この調査は成果を挙げた企業の割合を尋ねたもので、成果の金額や日数、成果が出た理由は示されていません。
取組項目ごとの違い
取組項目ごとの成果状況も、経年で集計されています。*2 「アナログ・物理データのデジタル化」と「業務の効率化による生産性の向上」では、「すでに十分な成果が出ている」と「すでにある程度の成果が出ている」を合わせた割合が高い状態が続いているとされています。
その他の項目は、成果が出ている割合が相対的に低いものの、今後の成果が見込まれているとする企業がいずれも3割前後あります。*2 すでに成果が出たと言いやすいのはデジタル化と効率化で、それ以外の項目はまだ見込みの段階にある、という違いがあります。
開発の立て直しで成果を示すなら、この結果に合わせて、効率化で縮んだ日数や作業時間から選ぶほうが社内の説明が通りやすくなります。縮んだ日数を記録しておけば、次の案件で人員を増やすかどうかを話し合うときの根拠にも使えます。
立て直しの成果をどう示すのか
ここまでの結果を踏まえると、開発の遅れを立て直すときは、次の4つの手順で進めると成果を示しやすくなります。
- 遅れている案件で、縮めたい数字を1つ選ぶ
- その数字を毎週数える
- 日数を縮めるための作業と、何を優先するかを決める判断を分ける
- 日数を縮めるための作業を、期間を決めて外部に委託する
一つ目の手順では、全部を測ろうとせず、いま遅れている1件に絞って数字を選びます。たとえば「結合テストの完了予定日までの残り日数」や「未解決の不具合の件数」のように、毎週同じ方法で数えられるものにします。成果の中身で提供日数削減が34.3%挙がっていたように、日数は立て直しの成果として示しやすい数字です。
二つ目の手順で毎週数えるのは、数えていない成果は後から示せないためです。成果が「わからない」とした企業が26.8%あったことを考えると、数え方を最初に決めておく意味は小さくありません。数えた値は、案件の関係者が同じ表で見られるようにしておきます。
三つ目の手順では、日数を縮めるための作業と、どの機能を先に仕上げ、どれを後に回すかを決める判断を分けます。判断を担う人が作業にも追われていると、判断が遅れ、日数が縮みません。判断を担う人を1人決め、その人には作業を割り当てないようにします。
四つ目の手順では、分けた作業のうち、作業量と期間を見積もれるものから外部に委託します。「テストの設計と実施を2か月」のように作業名と期間を決めて渡せば、終わったあとは社内の体制に戻せます。委託先は、個人のフリーランスでも、開発を請け負う会社でもかまいません。逆に、どの数字を成果とするかを選ぶ判断は社内に残します。
成果を測る指標の設定状況は別の記事「DXの成果指標は23.9%、設定方法がわからない36.0%」で、部門どうしの協力の進め方は別の記事「部門間連携の進め方、協調できている企業は48.9%」で扱っています。
つまずきやすい点
一つ目は、成果の数字を立て直しが終わってから決めることです。終わったあとでは、立て直す前の日数や件数が残っておらず、何がどれだけ縮んだのかを比べられません。数字は立て直しを始める日に決め、その日の値を記録しておきます。
二つ目は、最初から売上や利益を成果に掲げることです。先に見たとおり、成果が出ている企業でも、売上や利益を成果に挙げた企業は多くありません。立て直しの直後に示せるのは、多くの場合、日数や作業時間です。売上や利益は、日数を縮めた結果として後から結び付けるほうが無理がありません。
三つ目は、成果を選ぶ判断まで委託先に任せてしまうことです。作業は委託できても、何を成果とするかは自社の事業の優先順位で決まります。この判断を委託先に預けると、委託が終わったときに、成果を説明できる人が社内に残りません。
まとめ:DXの成果で確かめておきたい3つの点
開発の立て直しでDXの成果を示すうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、立て直しを始める日に、縮めたい数字を1つ選んでその日の値を記録すること。第二に、その数字を毎週同じ方法で数え、日数や作業時間のような内向きの成果から示すこと。第三に、日数を縮めるための作業は期間を決めて委託し、何を成果とするかの判断は社内に残すことです。この3点を踏まえておけば、「立て直したのに、何が良くなったのか説明できない」という事態を避けやすくなります。成果の示し方や作業の分け方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
この調査は、どんな企業を対象にしていますか
日本の企業が対象で、企業データベースから業種や従業員規模で割付けて、ランダムに抽出しています。*3 調査項目は60問で、そのうち7問は回答者の属性を尋ねるものです。*3 成果の有無は、DXに取り組んでいると答えた企業に絞って集計されています。
成果の中身の割合を足すと100%を超えるのはなぜですか
成果の中身は複数回答で、1社が複数の成果を挙げられるためです。本文で挙げた5項目を足すと185.1になります。図にはこれ以外の項目もあるので、185.1は図全体の合計でもありません。
売上や利益を成果にしてはいけませんか
いけないわけではありません。ただ、成果が出ている企業でも利益増加は19.6%、売上高増加は17.9%で、外向きの成果創出にはまだ多くの企業が至っていないと資料は述べています。*2 立て直しの成果はまず日数で示し、売上や利益は後から結び付けて説明する順にすると無理がありません。
委託先には、どの作業を任せればよいですか
作業名と期間を決めて渡せる作業が向いています。テストの設計と実施や、決まった仕様に沿ったプログラムの作成などです。どの数字を成果とするか、どの機能を先に仕上げるかといった判断は社内に残しておくと、委託が終わったあとも説明を引き継げます。
開発の立て直しを担う人を探したいとき
縮めたい数字を決めたあと、委託する作業と期間の整理からご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:IPA「DX動向2026」広がるAI導入、DXは変われるか(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2026.html)。出典:IPA(情報処理推進機構)「DX動向2026」の公開ページ。公開日(2026年7月30日)を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「DX動向2026」(本文)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/rcu1hd0000017uk8-att/dx-trend-2026.pdf)。出典:同報告書の本文。図表2-5(DXの取組成果)、図表2-6(DXによる経営面の成果内容、複数回答)、図表2-7(取組項目別の成果状況)についての記述と各図表の集計対象を参照。図表2-5はDXに取り組んでいると答えた企業、図表2-6・2-7はさらに成果が出ていると答えた企業が対象(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「DX動向2026」(データ集)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/rcu1hd0000017uk8-att/dx-trend-data-collection-2026.pdf)。出典:同報告書のデータ集(2026年7月30日第1版)。調査対象・調査期間・調査項目数・調査対象数・有効回答数・抽出方法を参照(2026年9月確認)