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外部人材活用を年度計画に書くと、予算編成で費用を説明しやすい
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 外部人材の費用は、年度の途中から加わった人の来期の通年分、複数年の契約の来期の支払い、終わる作業の減額を先に分けると見積もりやすくなります。
- IT予算のうち新しい取り組みに回る割合は2025年度で24.1%で、3年後の目標の32.7%とはまだ開きがあります。
- IT投資の事後評価をしていない企業は2025年度で31.8%あり、外部人材の費用は何を成果とするかを予算の段階で決めておきます。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
来期も外部のエンジニアに入ってもらうつもりだったのに、年度計画に費用が載っていなかった。予算編成の場で「この費用は何のためか」と聞かれ、うまく答えられなかった——。開発の現場を預かるマネージャーの周りでは、こうした食い違いが起こりがちです。外部人材の費用は年度の途中で決まることが多く、翌年度の計画を作る時点では見落とされやすいためです。外部人材活用を年度計画に組み込むとは、社外の専門人材に任せる作業とその費用を、来期の作業の一覧と予算の案に最初から載せておくことを指します。
年度計画に書いておけば、予算編成で費用の理由を説明する材料がそろいます。ただし万能ではなく、年度の途中で作業が増えたときは、計画を変える手続きが別に要ります。本記事では、開発の現場を預かるマネージャーに向けて、IT予算の配分の現状、来期に続く費用の洗い出し方、契約の形と執行計画、成果の測り方、そして外部に委託するときに確認したい点を整理します。
目次
年度計画と予算編成とは
年度計画は、来期に進める作業と、その時期や担当者を並べたものです。予算編成は、それぞれの作業にかかる費用を部門ごとに見積もり、会社として承認するまでの手続きを指します。外部人材の費用は、この両方に載ってはじめて、年度の初めから使えるお金になります。
外部人材の費用には、いくつかの種類があります。業務委託で開発に加わるフリーランスのエンジニアへの報酬、開発会社に作業を請け負ってもらう費用、人材紹介を使って社員を採用するときの手数料などです。同じ外部人材でも、作業した時間に払うのか、納めてもらう成果物に払うのか、採用が決まったときに払うのかで、予算の費目も見積もり方も変わります。
政府の情報システムについては、デジタル庁の「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」(DS-100)が、予算を要求する前に何を整理するかを定めています。*2 民間企業の予算の手続きとは違いますが、来期に続く費用をどう洗い出すかという考え方は、外部人材活用の年度計画にもそのまま使えます。本記事では、この資料とJUAS(一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査2026」を手がかりにします。
維持の費用と新しい取り組みの費用の違い
JUASの「企業IT動向調査2026」は、東証上場企業とそれに準じる企業の計4500社を対象に、2025年9月5日から10月24日にかけて実施された調査で、25年度(2025年度)の回収数は957社です。この調査は、IT予算を「現行ビジネスの維持・運営」に使うランザビジネス予算と、「ビジネスの新しい施策展開」に使うバリューアップ予算に分けて、その割合を尋ねています。*1
| 年度(回答企業数) | ランザビジネス予算 | バリューアップ予算 |
|---|---|---|
| 21年度(n=1078) | 76.4% | 23.6% |
| 22年度(n=993) | 76.1% | 23.9% |
| 23年度(n=936) | 75.5% | 24.5% |
| 24年度(n=941) | 76.2% | 23.8% |
| 25年度(n=929) | 75.9% | 24.1% |
| 22年度調査の3年後目標(n=992) | 67.0% | 33.0% |
| 25年度調査の3年後目標(n=927) | 67.3% | 32.7% |
25年度の配分は75.9対24.1でした。バリューアップ予算の割合は21年度から24%前後で推移しており、大きな変動はありません。25年度調査で聞いた3年後の目標は32.7%ですが、22年度調査で聞いた3年後の目標も33.0%で、その3年後にあたる25年度の実際の割合は24.1%でした。*1 新しい取り組みに予算を回したいという目標はあっても、実際の割合は上がっていません。
外部人材の費用も、この2つのどちらに入るかを分けて年度計画に書いておくと、予算編成で説明しやすくなります。既存システムの保守に入ってもらう外部のエンジニアへの費用は維持の側、新しいサービスの開発に加わってもらう人の費用は新しい取り組みの側です。両方をまとめて「外部委託費」の1行にすると、維持の費用が増えた分だけ新しい開発の予算が減っているのかどうかが、決裁する人から見えなくなります。
来期に続く費用の洗い出し方
DS-100は、次年度の予算の額を調整する前に、まず「当然増減」を整理するよう求めています。*2 当然増減とは、新しく何かを始めなくても、すでに決まっている事情だけで来期に増えたり減ったりする費用のことです。資料が挙げているのは次の3つです。たとえば平年度化増は、年度の途中で始めたものを、来期は12か月分に増やして予算に載せることを指します。右の列は外部人材の費用に当てはめた例です。
| 項目 | DS-100の内容 | 外部人材の費用での例 |
|---|---|---|
| 平年度化増 | 年度の途中で運用を始めた場合など、12か月分の予算を計上していないものは、次年度予算で12か月分に増額する | 年度の途中から加わってもらった外部のエンジニアに、来期も通年で続けてもらう |
| 複数年の契約の来期支払い分(国庫債務負担行為の歳出化額) | 契約済みの複数年度にわたる契約について、次年度に支払う額を整理する | 複数年で結んだ保守の委託契約のうち、来期に支払う分 |
| システムの廃止 | 廃止が決まっているシステムは、廃止の時期に合わせて減額を整理する | 移行が終わるシステムの保守に入っていた外部の要員の費用を減らす |
国庫債務負担行為は、国が複数の年度にまたがる契約を結ぶための仕組みです。その契約で各年度に払う額が歳出化額で、民間企業でいえば複数年の契約の2年目以降の支払いにあたります。見落とされやすいのは1つ目の平年度化増です。年度の途中から加わってもらった人の費用は、今年度の予算には一部の月の分しか載っていません。同じ額のまま来期の予算を組むと、通年で続けてもらうには足りなくなります。
当然増減のほかに、DS-100は2つの整理を求めています。1つは、法律の施行のような外部の事情で一時的に費用が増えるものについて情報を集め、早めに見積りを取っておくことです。もう1つは、新しく作る費用や、今のシステムを入れ替える費用のように増額が見込まれるものを早く把握し、整備の優先順位を検討することです。*2 外部人材活用でいえば、法改正に合わせた改修に加わってもらう人の費用が前者、新しい開発のために加わってもらう人の費用が後者にあたります。
なぜ予算の段階で契約の形を決めるのか
DS-100は、プロジェクトの担当者が予算を管理するうえで必要な要素の1つとして、どのような調達方法・契約方式にするのか、単年度契約なのか複数年度契約なのかを、予算要求の段階からあらかじめ検討しておくことを挙げています。*2 契約の形によって、来期の予算にいくら載せるかが変わるためです。
外部人材活用に当てはめると、作業した時間に応じて毎月払う契約なのか、成果物を納めてもらう請負の契約なのかで、予算の載せ方が変わります。毎月払う契約なら、月ごとの額を年度の中に並べて書けます。請負の契約なら、支払いは納品と検収(納めた物を確かめて受け取ること)のあとにまとめて出ます。作業が年度をまたぐ場合は、どの年度にいくら払うのかまで決めておかないと、翌年度の当然増減として拾えません。
同じ資料は、予算編成や予算執行の日程に合わせて作業を進めること、既存のシステムについては整備や運用に要した費用を作業の工程や機器・ソフトウェアの単位まで分解して把握することも挙げています。*2 外部のエンジニアへの費用を「開発費」の1行で済ませず、設計、プログラムの作成、テストのどの作業にいくらかかったかまで記録しておくと、来期の見積もりにそのまま使えます。
執行計画と年度途中の変更
予算が決まったあとの手続きも、DS-100は定めています。執行計画(予算を何に、いつ使うかの計画)の案を作るときは、調達案件ごとに金額と執行予定時期(調達予定時期)を整理して記載し、その時点で判明している契約金額を反映させます。入札で見込みより安く契約できて余った予算は、決まった執行計画以外の案件に、担当者の判断だけで使うことはできません。*2
民間企業でも、承認された予算の使い道を年度の途中で変えるには、改めて承認を得るのが普通です。外部人材の費用なら、「いつから、どの作業に、いくら」を案件ごとに書いた一覧を年度の初めに作っておくと、途中で作業が増えたときに、どの案件の予算を振り替えるのかを示して承認を求められます。
DS-100は、システムの整備や更改が一時期に集中しないようにスケジュールを調整すること、ハードウェアのリース期間やソフトウェアのサポート期間の終了によって運用の費用が増減する時期を把握しておくことも求めています。*2 サポートの終了に合わせた移行作業は、外部人材に加わってもらうことが多い作業の一つです。終了の時期が分かっているなら、その作業の費用を年度計画に先に載せておけます。
事前評価と事後評価
予算編成では、費用の根拠と並んで、その費用で何が得られるかも問われます。JUASの調査は、IT投資の効果を投資の前に見積もる事前評価と、投資のあとに確かめる事後評価を、投資の種類ごとに実施しているかを尋ねています(複数回答)。*1
25年度に「評価を実施していない」と答えた企業は、事前評価で23.2%、事後評価で31.8%でした。24年度の35.0%と42.8%からは、どちらも10ポイント以上減っています。項目別では「業務効率化系投資」が事前評価54.8%、事後評価44.1%で、どちらも最も高い実施率です。*1
外部人材活用の費用も、予算を要求する段階で何をもって成果とするかを決めておくと、翌年度の予算編成で続けるかどうかを判断する材料になります。業務の効率化のための開発なら、対象の業務にかかる作業時間がどれだけ減ったかで測れます。既存システムの保守なら、問い合わせへの対応件数や、障害から復旧するまでにかかった時間を記録しておけます。
つまずきやすい点
一つ目は、年度の途中から加わってもらった人の費用を、今年度の実績の額のまま来期の予算に載せてしまうことです。来期も通年で続けてもらうなら、平年度化増の考え方で12か月分に直します。
二つ目は、維持の費用と新しい取り組みの費用を分けずに書くことです。外部人材の費用がどちらに使われているかが見えないと、新しい開発のために人を追加したいときに、どの費用を減らせばよいかを決められません。
三つ目は、契約の形を予算が決まってから考えることです。毎月払う契約か請負の契約かで支払いの時期が変わり、年度をまたぐ作業では、どちらの年度の予算に載せるかも変わります。年度計画を書く時点で契約の形の案まで決めておけば、予算編成で聞かれたときに答えられます。
外部に委託するときに確認しておきたい点
年度計画に外部人材の費用を載せるときは、任せる作業、期間の見込み、契約の形、支払いの時期の4つを書いておきます。委託先の候補とは、来期の作業の一覧ができた段階で話しておくと、単価や支払いの条件を予算の案に反映できます。
どの作業を外部に委託するかは、自社で判断してください。年度計画は、その判断を会社として書き残しておく場でもあります。
稟議書に添える見積りの根拠のそろえ方は「外部人材活用の稟議書と見積りの根拠」で、補助金の経費区分に外部人材の費用を入れる方法は「外部人材活用と補助金の経費区分」で扱っています。
IT予算が増える理由として多い既存システムの刷新は「既存システムの刷新と予算」に、外部の要員の稼働と契約期間を1枚の表で管理する方法は「人的リソースの管理」にまとめました。
まとめ:予算編成で確かめておきたい3つの点
外部人材活用を年度計画と予算編成に組み込むうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、年度の途中から続く費用、複数年の契約の来期分、終わる作業の減額を、来期の予算を組む前に洗い出すこと。第二に、外部人材の費用を維持の費用と新しい取り組みの費用に分け、契約の形と支払いの時期まで年度計画に書くこと。第三に、その費用で何を成果とするかを予算の段階で決め、使ったあとに確かめることです。この3点を踏まえておけば、「予算編成で外部人材の費用の理由を聞かれ、うまく答えられなかった」という事態を避けやすくなります。来期の作業のうち社内で担えない分の見極めに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
年度の途中で外部人材が必要になったら、予算がなくても頼めますか
予算がなければ、すぐに頼めるとは限りません。予算の振り替えや追加の承認の手続きは会社の規程で決まっており、DS-100でも、各府省が執行計画を変える場合はデジタル庁に協議するとされています。*2 案件ごとの一覧が年度計画にあれば、どの案件の予算を振り替えるかを示して承認を求められます。
外部人材の費用は、人件費と外注費のどちらで予算に載せますか
社員に払う給与とは別に、業務委託費や外注費などの費目で扱うのが一般的です。どの費目に載せるかは会社の経理の規程によるので、予算の案を作る前に経理の担当者に確かめておきます。
複数年の契約を結ぶと、予算編成で何に気をつければよいですか
2年目以降の支払いが、毎年の当然増減として予算に載り続けます。DS-100は、複数年度にわたる契約の仕組みを使う場合に、むやみに後年度へ支払いを先送りしないよう求めています。*2 年度ごとの支払額を契約の段階で決め、年度計画にも書いておきます。
外部人材の費用は、年度計画のどの時点で見積もり始めればよいですか
予算編成の日程は会社によって違うため、経理や経営企画の部署が示す日程から逆算して決めます。外部人材の費用は委託先の候補に条件を聞く手間がかかるので、ほかの費用より先に着手しておくと間に合わせやすくなります。
来期の外部人材の費用を相談したいとき
年度計画に載せる作業の切り分けから、加わってもらう人の条件の整理までご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も、来期の作業に合わせて探せます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:JUAS「企業IT動向調査2026」(PDF)(https://juas.or.jp/cms/media/2026/04/JUAS_IT2026.pdf)。出典:JUAS「企業IT動向調査2026」(2025年度調査)。一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会発行。アンケート調査は2025年9月5日から10月24日、調査対象は東証上場企業とそれに準じる企業の計4500社、25年度の回収数957社。図表2-1-18(年度別 IT予算配分)、図表2-3-1(評価項目別 IT投資の事前評価・事後評価実施状況)を参照。この記事は資料に示された数値をもとに表と図を筆者が作成した。資料の図表そのものは複製していない(2026年9月確認)
- *2 参考:デジタル庁「DS-100 デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」(PDF)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/54d8725e/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_01.pdf)。出典:2026年(令和8年)6月12日 デジタル社会推進会議幹事会決定。第2編第6章「予算ガバナンスの基礎」「情報システム経費の要求案作成前作業」、第3編第3章「予算マネジメントの基礎」「一括計上対象システムに関する予算の配分」を参照(2026年9月確認)
- *3 参考:JUAS「企業IT動向調査」(調査報告書の一覧)(https://juas.or.jp/library/research_rpt/it_trend/)。調査が毎年実施され報告書が公開されていることの確認として(2026年9月確認)
- *4 参考:デジタル庁「デジタル社会推進標準ガイドライン」(https://www.digital.go.jp/resources/standard_guidelines)。標準ガイドライン群の公開ページ。DS-100の位置づけと更新日の確認として(2026年9月確認)