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SESと組織再編|情シス統合で見直す契約と個人データの扱い
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 情シス統合の前に、各社が結んでいるSESの契約を一覧にし、契約している会社と作業するシステムの持ち主が違う契約を見つけます。
- 別のグループ会社の個人データに触れる作業は、委託か共同利用かを整理し、共同利用ならデータの本人に知らせる事項を先にそろえます。
- 情シスをどの会社にまとめるかは企業ごとに異なるため、契約の結び直し方を決めてから、次の更新の時期に合わせて切り替えます。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
グループの情報システム部門を一つにまとめることになったが、各社が別々に契約しているSES(技術者の作業を提供する契約)のエンジニアをどう扱えばよいか分からない。統合した後は子会社のシステムも担当してもらいたいが、今の契約のままで進めてよいのか判断がつかない——。グループ会社の組織再編で情シス(情報システム部門)をまとめる現場では、こうした迷いが出てきがちです。情シス統合とは、グループ各社が別々に持っていた情報システム部門の仕事を、一つの組織にまとめることを指します。
情シス統合では、同じSES会社との契約が各社に別々に残っていたり、ある会社が結んだ契約のエンジニアに、別の会社のシステムの作業を頼むことになったりします。統合の前に契約と作業を一覧にしておけば、統合した日に、どの契約でどの作業を頼んでいるのかが分からなくなる事態を防ぎやすくなります。ただし万能ではなく、どの会社に情シスをまとめるのか、どの仕事までまとめるのかは、グループの事業の形によって変わります。本記事では、グループ会社の情シスを統合する実務担当者に向けて、統合の形、情報子会社とDX推進の置き方、SESの契約の一覧の作り方、別の会社の個人データの扱い、そしてつまずきやすい点を整理します。
目次
情シス統合とは
情シス統合の形は一つではありません。親会社の情シスに子会社の仕事を集める形、情報子会社(情報システムの仕事を担う子会社)に各社の仕事を集める形、システムの運用と保守だけをまとめて企画は各社に残す形などがあります。どの形でも、SESのエンジニアから見ると、作業を頼んでくる会社や、作業の対象になるシステムの持ち主が変わることがあります。
経済産業省の「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)」(2019年)は、グループの組織を機能・事業・地域のどれを軸に設計するかは「各社の置かれた状況や発展段階により異なりうる」としています。*3 同じ指針は欧米企業の例として、購買やITといった管理の機能を全社で統一してコストを減らしている会社と、地域ごとの会社に権限を分けている会社の両方を紹介しています。組織再編で情シスをどこまで一つにまとめるかにも、決まった正解はありません。
指針はまた、グループ本社が法律・会計・税務・ITシステムなどの専門サービスを各社に提供する役割を担うこともあると述べています。子会社の管理については、グループ共通の方針を文書にして業務の手順をそろえるためにも、ITシステムの統合を進めることが有効だとしています。*3 情シス統合を検討するときは、こうしたグループ全体の決まりづくりとあわせて考えると、どの仕事をまとめるかを決めやすくなります。
情報子会社を持つ企業の割合
情シスをまとめる先として、情報子会社を選ぶ企業もあります。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が東証上場企業などを対象に行った「企業IT動向調査2026」で、2025年度に情報子会社を持っていると答えた企業は27.7%でした(957社が回答)。*1 2023年度は27.5%、2024年度は26.7%で、3年の間に大きな変化はありません。
売上高で分けると差がはっきりします。売上高1兆円以上の企業では62.5%が情報子会社を持っており、100億円未満から1000億〜1兆円未満までの3つの区分の21.9〜30.8%を大きく上回ります。*1 情報子会社を持つ企業では、統合先を親会社の情シスにするのか、情報子会社にするのかも選ぶことになります。どちらを選ぶかで、SES会社と契約を結ぶ会社が変わる場合があります。
DX推進の機能をどこに置くか
情シスを統合するときには、DX(デジタル技術を使った事業の変革)を進める役割をどこに置くかも決めることになります。同じ調査は、IT部門・情報子会社とDX推進の機能の関係を尋ねています。2025年度は「ITの整備・管理機能とDX推進機能の両方をIT部門・情報子会社に設置している」が40.6%、「ITの整備・管理機能のみ(DX推進の機能は明示的にはない)」が39.0%、DX推進の機能を別の組織に置いている企業が20.4%でした(954社が回答)。*2
ここでも企業の規模で分かれ方が違います。売上高1兆円以上の企業では、両方をIT部門・情報子会社に置く企業が70.2%で、2023年度の57.5%から増えました。売上高100億円未満の企業では29.0%にとどまり、「ITの整備・管理機能のみ」が54.5%で最も多くなっています。*2 報告書は、1兆円以上の企業がIT部門内にDX推進の機能を置く理由を、基幹システムなどとの連携が必要になるためと推察しています。
統合する情シスにDX推進の仕事まで集めるのか、システムの整備と運用に絞るのかで、SESのエンジニアに頼む作業の中身も変わります。
SESの契約を一覧にする
各社の情シスが別々にSESの契約を結んでいると、統合した後も、同じSES会社との契約が複数の会社に残ることがあります。統合の後には、A社が結んだ契約で参画しているエンジニアに、B社のシステムの作業を頼みたくなる場面も出てきます。契約している会社と作業するシステムの持ち主が違うと、契約書に書いた作業内容と実際の作業が合わなくなります。そこで、統合の前に、各社が結んでいるSESの契約を一覧にしておきます。
一覧には、次のような項目を並べておくと、統合の後にどの契約をどう扱うかを決めやすくなります。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 契約している会社 | グループのどの会社がSES会社と契約しているか |
| 契約の相手と人数 | SES会社の名前と、参画しているエンジニアの人数 |
| 作業の中身 | 担当している作業(例:販売管理システムの保守、社内ネットワークの運用) |
| 作業の対象 | 作業するシステムと、そのシステムやデータを持っている会社 |
| 契約期間 | 契約の終了日と、次の更新の時期 |
| 秘密保持 | 秘密保持の取り決めを、グループのどの会社とSES会社の間で結んでいるか |
| 連絡の窓口 | 契約している会社の側で、作業の相談を受けている担当者 |
「作業の対象」の列に、契約している会社とは別の会社の名前が入った契約は、統合の後に見直しが要る候補です。統合より前から、親会社の契約で参画しているエンジニアが子会社のシステムを扱っている契約も、一覧にすると見つかります。
SES会社が複数ある場合は、統合の後にどの会社にどの作業を任せるかという役割分担も決め直すことになります。複数のSES会社の役割分担の決め方は「SESパートナー複数社の役割分担」で扱っています。
別の会社の個人データの取扱い
統合した情シスが、グループの別の会社の顧客や従業員のデータを扱うようになると、個人情報保護法の扱いを確かめる必要が出てきます。グループ会社であっても、法人としては別の会社です。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、親会社と子会社や、同じ親会社を持つ会社どうしといったグループ会社の間で個人データを交換する場合を、第三者提供(別の事業者に個人データを渡すこと)に当たる事例として挙げています。*5 個人情報保護法の第27条第1項は、第三者提供には原則として、あらかじめデータの本人の同意が要るとしています。*4
同じ条の第5項は、提供を受ける者が第三者に当たらない場合として、個人データの取扱いの委託、合併などによる事業の承継、特定の者との共同利用の3つを定めています。共同利用では、次の事項をあらかじめ本人に通知するか、本人が容易に知り得る状態に置いておくことが条件です。*4
- 共同利用をすること
- 共同して利用する個人データの項目
- 共同して利用する者の範囲
- 利用する者の利用目的
- 管理について責任を有する者の氏名または名称と住所(法人は代表者の氏名も)
ガイドラインは、親会社と子会社などの間で、取得したときの利用目的の範囲内で個人データを共同利用する場合を、共同利用に当たる事例として挙げています。*5
SESのエンジニアとの関係で押さえておきたいのは、ガイドラインの注記です。共同利用する者の範囲に委託先の事業者が含まれていても、委託先との関係は共同利用にはならず、委託元は委託先を監督する義務を免れないとしています。*5 エンジニアが作業の中で個人データを扱い、SES会社と契約しているグループ会社を委託元として整理するなら、グループ会社どうしで共同利用の手続きをとっていても、その会社はSES会社を委託先として監督し続けることになります。
共同利用では、開示の請求や苦情を受け付ける会社を「管理について責任を有する者」として示します。統合でこの会社が変わることもあり、第27条第6項は、責任を有する者を変更しようとするときは、あらかじめ本人に通知するか、本人が容易に知り得る状態に置くよう定めています。*4 委託先の監督で確かめる事項は「個人データを任せる前の確認」で扱っています。委託と共同利用のどちらで整理するかは、統合の計画の段階で法務の担当者と確かめておくと進めやすくなります。
統合後の契約のそろえ方
一覧ができたら、統合の後にSESの契約をどの会社で結ぶかを決めます。やり方は大きく2つあります。1つは、統合先の会社がSES会社と契約を結び直し、各社の契約を順に終える方法です。もう1つは、各社の契約は残したまま、作業の中身と作業の対象を、統合した後の分担に合わせて書き直す方法です。前者はグループの側で契約する会社が1社にまとまり、後者は契約の数を変えずに進められます。どちらが合うかは、統合の形や、作業の対象になるシステムの持ち主によって変わります。
どちらの方法でも、切り替えの時期は、一覧に書いた契約期間と次の更新の時期を見て決めます。更新の時期に合わせて契約を結び直せば、契約期間の途中で契約を終える手続きを減らせます。
なお、組織再編の手法が合併か、会社分割か、事業譲渡かによって、SES会社との契約が統合先の会社に移るかどうかの扱いが変わります。手法ごとの違いは「合併・会社分割・事業譲渡の違い」で、取引先のSES会社の側が会社分割をするときの技術者の雇用は「会社分割で移る技術者の雇用」で扱っています。
つまずきやすい点
一つ目は、統合の日が決まってから契約の一覧を作り始めることです。契約の相手や更新の時期は各社の担当者に聞かないと分からず、調べるのに時間がかかります。統合の計画を立てる段階で、各社に同じ項目で書き出してもらうようにしておきます。
二つ目は、統合をきっかけに作業の対象を広げたのに、契約書の作業内容を直していないことです。統合の前は親会社のシステムだけを担当していたエンジニアに子会社のシステムの保守も頼むなら、契約の作業内容と、作業の対象になる会社を書き直します。
三つ目は、個人データの扱いの整理を後回しにすることです。共同利用なら、あらかじめデータの本人に知らせる事項があります。統合した日から作業を始めるには、それより前に通知や公表を終えておく必要があります。システムの切り替えの日程と合わせて、個人データの扱いの整理も日程に入れておきます。
まとめ:情シス統合で確かめておきたい3つの点
情シス統合でSESのエンジニアとの契約と作業を整えるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、統合の前に各社が結んでいるSESの契約を一覧にし、契約している会社と作業するシステムの持ち主が違う契約を見つけること。第二に、別のグループ会社の個人データを扱う作業について、委託か共同利用かを整理し、共同利用ならデータの本人に知らせる事項を先にそろえること。第三に、統合先の会社で契約を結び直すのか、各社の契約を書き直すのかを決め、次の更新の時期に合わせて切り替えることです。この3点を踏まえておけば、「統合した日から、誰の契約でどのシステムの作業を頼めばよいのか分からなくなった」という事態を避けやすくなります。組織再編に合わせた体制づくりに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
情シス統合の準備では、SESの契約の見直しをいつ始めればよいですか
統合の計画を立てる段階で始めます。契約ごとに次の更新の時期が違うため、統合の日から逆算して、更新の時期が早い契約から順に扱いを決めていきます。個人データを共同利用するなら、本人への通知や公表も作業を始める前に終えておきます。*4
統合を機に、契約するSES会社を1社にまとめたほうがよいですか
一律にはいえません。契約の相手が1社になれば手続きは簡単になりますが、各社のシステムに詳しいエンジニアが別々のSES会社から来ている場合、まとめると作業の引き継ぎが必要になります。作業ごとに、今の担当者に続けてもらうほうがよいかを見て決めます。
情報子会社に情シスをまとめる場合、グループ各社は何を決めておけばよいですか
各社が情報子会社にどの作業を頼むのかを、書面で取り決めておきます。情報子会社がSES会社と契約する形なら、各社から見ると、SESのエンジニアは情報子会社を通じて自社のシステムの作業をすることになります。個人データを扱う作業があれば、各社と情報子会社の関係を委託として整理するのかも確かめておきます。
統合の前から参画しているエンジニアに、統合の後も続けてもらえますか
契約を整えれば続けてもらえます。契約を結ぶ会社や作業の対象が変わるなら、契約の結び直しや作業内容の書き直しが必要です。本人に続けてもらえるかどうかは、SES会社との相談で決まります。
情シス統合に合わせた体制を相談したいとき
統合した後に任せる作業の整理から、加わってもらうエンジニアの候補探しまでご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:JUAS「企業IT動向調査報告書2026」(PDF)(https://juas.or.jp/cms/media/2026/04/JUAS_IT2026.pdf)。出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書2026」(2025年度調査)。アンケート調査は2025年9月5日から10月24日、調査対象は東証上場企業とそれに準じる企業の計4500社、回収数957社。図表1-1-22(年度別 情報子会社の保有状況)、図表1-1-23(売上高別 情報子会社の保有状況(25年度))を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:JUAS「企業IT動向調査報告書2026」(PDF)(https://juas.or.jp/cms/media/2026/04/JUAS_IT2026.pdf)。出典:同報告書 6.3(1)の本文と、図表6-3-1(IT組織とDX機能の関係)、図表6-3-2(売上高別 IT組織とDX機能の関係)を参照(2026年9月確認)
- *3 参考:経済産業省「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)」(PDF)(https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/keizaihousei/pdf/ggs/190628ggsguideline.pdf)。出典:経済産業省「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)」(2019年6月28日策定)。2.2(グループ設計に関する基本的な考え方)と参考の欧米企業の取組例、2.3.1(グループ本社(業務執行)の役割)の脚注30、2.3.3(グループ本社による子会社の管理・監督の在り方)を参照(2026年9月確認)
- *4 参考:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057)。出典:個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第27条第1項・第5項・第6項(第三者提供の制限)を参照(2026年9月確認)
- *5 参考:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(PDF)(https://www.ppc.go.jp/files/pdf/260614_guidelines01.pdf)。出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(平成28年11月、令和8年6月一部改正)。3-6-1(第三者提供の制限の原則)の第三者提供とされる事例、3-6-3(第三者に該当しない場合)の(3)共同利用の事例と注記(※5)を参照(2026年9月確認)