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2026.09.19 採用支援コラム

SESの組織再編|取引先の会社分割と技術者の雇用の扱い

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

白い面の上に銅色のクリップが数本、重なったり離れたりして置かれた写真。人も文字も写っていない

この記事の結論

  • 会社分割での労働契約の行き先は、承継される事業の仕事を主にしているかと、分割の契約に承継すると書かれているかで4つに分かれます。
  • 定めと実際の仕事が食い違う2つの場合は、働く人が異議を申し出られ、通知から期限日までに少なくとも13日間が置かれます。
  • 発注側と取引先との契約がどちらの会社に行くかは、会社分割の法律ではなく契約書と取引先の説明で確かめます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

取引先から、会社を分けることになったと知らされた。来てもらっている技術者は、この先どちらの会社の人になるのか——。SES(技術者に来てもらう契約の形)で開発や運用を任せていると、取引先の組織再編をきっかけに、こうした疑問が出てきます。組織再編にはいくつかの手法があり、そのうち会社分割については、分割をする会社で働く人の労働契約がどちらの会社に行くかを「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」(以下、承継法)が定めています。*1

承継法の仕組みを知っておくと、取引先から組織再編の話が出たときに、何を尋ねればよいかが分かります。ただし万能ではなく、承継法が扱うのは取引先とそこで働く人のあいだの労働契約で、発注した側と取引先との契約がどちらの会社に行くかは定めていません。本記事では、SESで技術者に来てもらっている発注側の担当者に向けて、労働契約の行き先の決まり方、異議の仕組み、通知の時期、そして発注側が確かめておきたい点を整理します。

会社分割とは

承継法の条文を読む前に、登場する会社と書類の呼び方をそろえておきます。本記事では、技術者に来てもらっている先の会社を取引先と呼びます。その取引先が会社分割をするとき、分割をする側を分割会社、事業を受け取る側を承継会社等と呼びます。どちらも承継法の条文で使われている言い方です。

会社分割には、すでにある会社に事業を引き継ぐ吸収分割と、新しく作る会社に引き継ぐ新設分割の2つがあります。承継法は、吸収分割のときの吸収分割契約と、新設分割のときの新設分割計画をまとめて「分割契約等」と呼んでいます。*1 働く人の労働契約を承継会社等が引き継ぐかどうかは、この分割契約等に書かれます。以下では、分割契約等に「承継する」と書かれていることを「承継の定めがある」と言います。

労働契約はどちらの会社に行くのか

行き先を分けるのは2つの点です。1つは、その人が承継会社等に承継される事業に主として従事しているかどうか。もう1つは、分割契約等にその人の労働契約を承継する旨の定めがあるかどうかです。*1 この2つを組み合わせると、次の図のように4つに分かれます。

会社分割で労働契約が承継されるかどうかを示した図。承継される事業に主として従事するかどうかと、分割契約等に承継の定めがあるかどうかの組み合わせで4つに分かれる。主として従事し定めがあるときは承継される。主として従事し定めがないときは異議を申し出れば承継される。主として従事せず定めがあるときは異議を申し出れば承継されない。主として従事せず定めもないときは通知の対象にならない。

会社分割のときに労働契約がどうなるか(承継法第2条から第5条まで。4つへの整理は本記事によるもの。2026年9月19日確認)
組み合わせ 承継の定めがある 承継の定めがない
主として従事する 分割の効力が生じた日に承継される(第3条) 異議を申し出れば承継される(第4条)
主として従事しない 異議を申し出れば承継されない(第5条) この法律に規定がない

表の左上は、承継される事業に主として従事していて、承継の定めもある人です。第3条は、こうした人の労働契約は、分割の効力が生じた日に承継会社等に承継されるものとしています。*1 仕事の実際と分割契約等の定めが一致しているので、この場合に異議の仕組みはありません。表の右下は、主として従事しておらず、承継の定めもない人です。第2条第1項の通知の相手にも、第3条から第5条までの対象にも入りません。

どの人が「主として従事する」に当たるかは、厚生労働省令で定めることになっています。*1 来ている技術者が表の上の行と下の行のどちらに入るかは、発注側からは判断できません。取引先に確かめてもらうことになります。

異議を申し出られる2つの場合

残る2つの組み合わせは、仕事の実際と分割契約等の定めが食い違っている場合です。承継法は、この2つについて、働く人が書面で異議を申し出られるようにしています。

第4条の対象は、承継される事業に主として従事しているのに、承継の定めがない人です。この人は、分割会社に対し、労働契約が承継会社等に承継されないことについて異議を申し出ることができます。申し出たときは、分割の効力が生じた日に承継会社等に承継されるものとされます。*1 担当している事業と一緒に移りたい、という申し出です。

第5条の対象は、承継される事業に主として従事していないのに、承継の定めがある人です。この人は、労働契約が承継会社等に承継されることについて異議を申し出ることができ、申し出たときは承継されないものとされます。*1 こちらは分割会社に残りたい、という申し出です。

異議を申し出られる期間にも決まりがあります。第4条第2項は、分割会社が異議申出期限日を定めるときは、通知がされた日と異議申出期限日との間に少なくとも13日間を置かなければならないとしています。第5条第2項が第5条の異議にもこの決まりを当てはめているので、どちらの異議にも同じ13日間がかかります。*1

通知はいつ、誰に届くのか

異議を申し出る前提になるのが、分割会社からの通知です。第2条第1項は、会社分割をする会社に、承継される事業に主として従事する人と、従事していないのに承継の定めがある人に対し、通知期限日までに書面で通知するよう義務づけています。通知する事項は、分割契約等における承継の定めの有無、異議申出期限日、その他厚生労働省令で定める事項です。*1

通知期限日は、第2条第3項で2通りに分かれています。株式会社が分割をし、分割契約等に株主総会の決議による承認が要るときは、その株主総会の日の2週間前の日の前日です。承認が要らないときや合同会社が分割をするときは、吸収分割契約を結んだ日または新設分割計画を作った日から数えて2週間を経過する日です。*1

通知の相手は、働く人だけではありません。第2条第2項は、分割会社が労働組合と労働協約を結んでいるときは、その労働組合にも、労働協約を承継会社等が承継する旨の定めの有無などを、通知期限日までに書面で通知するよう求めています。*1

通知と異議のほかに定められていること

承継法には、通知と異議のほかにも分割会社の側の決まりがあります。第6条第1項は、分割会社が、労働組合と結んでいる労働協約のうち承継会社等が承継する部分を、分割契約等に定めることができるとしています。*1 「できる」という書き方なので、定めるかどうかは分割会社が選ぶことになります。

第7条は、分割会社は分割に当たって、雇っている労働者の理解と協力を得るよう努めるものとする、としています。*1 第2条の通知が「しなければならない」という義務であるのに対して、第7条は「努めるものとする」という書き方で、努力を求める規定です。

発注する側が確かめておきたい点

ここまでは、分割会社とそこで働く人のあいだの話でした。SESで技術者に来てもらっている発注側は、この労働契約の当事者ではありません。それでも、来ている人の労働契約がどちらの会社に行くかで、今後だれと話を進めることになるかが変わります。取引先から組織再編の話が出たら、次の4つを確かめておくと進めやすくなります。

1つ目は、組織再編の手法です。会社分割なのか、合併なのか、事業譲渡なのかによって、よりどころになる法律が変わります。承継法は会社分割についての法律です。2つ目は、来ている技術者が表の上の行と下の行のどちらに入るかで、これは取引先に確かめてもらいます。

3つ目は、通知と異議申出期限日の日程です。承継法は、発注した側に通知するよう定めてはいないので、日程は取引先に尋ねます。4つ目は、自社と取引先とのあいだの契約です。これがどちらの会社に行くかは承継法には書かれていないので、契約書の記載と取引先の説明で確かめます。4つのうち、自社の手元で確かめられるのは契約書だけです。

つまずきやすい点

一つ目は、技術者の労働契約と一緒に、自社との契約も承継会社等に移ると思い込むことです。承継法が動かすのは分割会社と働く人のあいだの労働契約で、発注した側との契約は扱っていません。技術者が承継会社等に移ったとしても、自社がどちらの会社と契約を続けることになるのかは、別に確かめる必要があります。

二つ目は、来ている人がだれでも承継法の対象になると考えることです。承継法が動かすのは労働契約なので、来ている人が取引先に雇われている労働者であることが前提になります。業務委託で来ている個人事業主には、取引先との労働契約がありません。来ている人が取引先の社員なのか、取引先がさらに業務委託で頼んでいる人なのかを、先に確かめておきます。

三つ目は、組織再編ならどれも会社分割と同じ扱いになると考えることです。承継法は会社分割についての法律なので、合併や事業譲渡のときには、この仕組みをそのまま当てはめられません。取引先から組織再編と聞いたら、まず手法を尋ねます。なお、来てもらう形が労働者派遣にあたり、自社で直接雇う形に切り替える場面については「SESから自社雇用へ切り替える手順」で扱っています。

まとめ:組織再編で確かめておきたい3つの点

SESの取引先が組織再編をするとき、発注側が確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、組織再編の手法が会社分割かどうかを確かめること。第二に、来ている技術者が承継される事業に主として従事する側か、分割契約等に承継の定めがあるかを取引先に確かめ、労働契約の行き先と異議の有無をつかむこと。第三に、自社と取引先との契約がどちらの会社に行くのかを、契約書の記載と取引先の説明で確かめることです。この3点を踏まえておけば、「気づいたら契約の相手も担当者も変わっていた」という事態を避けやすくなります。取引先の組織再編への対応に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

組織再編の話が出た段階で、どの契約を誰に確かめるかの整理からご相談いただけます。手法がまだ決まっていない段階でも構いません。

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よくある質問

会社分割の通知は、発注している側にも届きますか

承継法が通知の相手として定めているのは、分割会社が雇う一部の労働者と、労働協約を結んでいる労働組合です。*1 発注した側への通知は定められていないので、日程や技術者の扱いは取引先に尋ねることになります。

承継の定めがあるかどうかは、どこで分かりますか

吸収分割なら吸収分割契約、新設分割なら新設分割計画に書かれます。対象になる労働者には、分割会社から書面で、定めの有無が通知されます。

13日間はいつからいつまでですか

始まりは通知がされた日、終わりは分割会社が定める異議申出期限日です。条文は、この2つの日の間に少なくとも13日間を置かなければならないとしています。13日間は2つの日にはさまれた日数で、通知の日から数えて13日目が期限日になる、という意味ではありません。

取引先が組織再編をしそうなときは

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出典

  1. *1 参考:会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000103)。出典:会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律。第2条第1項の通知の相手2種類と通知事項、第2項の労働組合への通知、第3項の通知期限日2通り、第3条の承継、第4条の異議と第2項の13日間、第5条の異議と第2項の準用、第6条第1項の労働協約、第7条の労働者の理解と協力の一次情報として(2026年9月確認)




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