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応募者の個人情報で収集してはいけない3つの事項
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 枠は「業務の目的の範囲」:収集も保管も使用も同じ枠です*1。
- 集めてはならない3事項がある:思想信条や組合加入状況などです*2。
- 管理は4つの措置で具体化:不要になった情報の削除も含みます*2。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
選考で受け取った履歴書、面接メモ、スカウトのために集めた候補者リスト。これらをいつまで持っていてよいのか、社内で決まっている会社は多くありません。
採用の側にも、明文の枠があります。職業安定法第5条の5第1項は、求職者等の個人情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして収集し、収集の目的の範囲内で保管し、使用しなければならないとしています*1。
名宛人には求人者が入っています。条文は職業紹介事業者及び求人者、労働者の募集を行う者及び募集受託者などを並べています*1。人材紹介会社だけの話ではありません*1。
本記事では、この枠、収集してはならない3つの事項、集め方の作法、そして適正な管理として求められる措置を整理します。
枠は「業務の目的の範囲」
まず、条文の構造からです。
第5条の5第1項が縛るのは3つの行為です。収集し、保管し、又は使用するに当たつてはと書かれており、集める場面だけの規定ではありません*1。
基準は業務の目的です。その業務の目的の達成に必要な範囲内で、当該目的を明らかにして収集し、当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならないとされています*1。
「求職者等」の範囲も条文にあります。求職者、労働者になろうとする者、供給される労働者が含まれます*1。応募には至っていない段階の候補者も、視野に入る書き方です*1。
例外もあります。ただし書は本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでないとしています*1。同意を取れば広がる部分と、そうでない部分が分かれます*1。
目的の明らかにし方は省令にあります。職業安定法施行規則第4条の4は、法第5条の5第1項の規定により業務の目的を明らかにするに当たってはインターネットの利用その他適切な方法により行うものとすると定めています*3。
つまり、募集ページや応募フォームに書いておけばよい形です*3。口頭で伝えるだけの運用は、この書き方と合いません*3。
収集と保管・使用で表現が分かれている点にも意味があります*1。収集は「目的を明らかにして」、保管と使用は「収集の目的の範囲内で」です*1。後から目的を足すことは想定されていません*1。
管理義務も条文に置かれています。第2項は求職者等の個人情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならないとしています*1。何をすればよいかは指針が具体化しています*2。
自社で募集する会社も対象です。条文が挙げる労働者の募集を行う者に当たるためで、外部に委託せず自社サイトだけで採用していても枠は同じです*1。
紹介会社を使う場合の論点は人材紹介会社の選び方|公表データと手数料の確かめ方で扱いました。委託先にも同じ枠がかかります*1。
収集してはならない3つの事項
具体化しているのが指針です。
厚生労働省が公表している指針(平成11年労働省告示第141号)は、職業紹介事業者等についてその業務の目的の範囲内で求職者等の個人情報を収集することとし、次に掲げる個人情報を収集してはならないとしています*2。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| イ | 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項 |
| ロ | 思想及び信条 |
| ハ | 労働組合への加入状況 |
厚生労働省が公表する指針(平成11年労働省告示第141号)第4より作成*2。
ただし書もあります。特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合はこの限りでない*2。無条件の禁止ではありません*2。
ただし、条件は3つ重なっています。必要不可欠であること、収集目的を示すこと、本人から収集することです*2。どれか一つでも欠ければ、ただし書には乗りません*2。
指針は、同じ告示のなかで均等待遇についても定めています。申込みの受理、面接、指導、紹介等の業務について、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として差別的な取扱いをしてはならない、という並びです*2。収集の禁止と重なる項目が並んでいます*2。
実務でよく問題になるのはイの範囲です。本籍や出生地だけでなくその他社会的差別の原因となるおそれのある事項という受け皿があるため、列挙されていない項目も入り得ます*2。
ロの思想及び信条は、応募書類の設問や面接の雑談から入りがちな領域です*2。支持政党や宗教は、まさにここに当たります*2。
ハの労働組合への加入状況は、前職の話を聞く流れで出てくることがあります*2。話題として触れることと、記録に残して選考に使うことは別です*1*2。
3つの事項は、いずれも本人の努力では変えられないか、本来自由であるべき領域です*2。適性や能力の判断材料にならない、という点で共通しています*2。
選考の場面での質問そのものについては高卒採用と大卒採用の違い|学校を通す仕組みを整理するでも、就職差別につながるおそれがある14事項として整理しました。
集め方と使い方の作法
次に、経路の話です。
指針は収集の手段を定めています。個人情報を収集する際には、本人から直接収集し、又は本人の同意の下で本人以外の者から収集する等適法かつ公正な手段によらなければならない*2。
本人以外から集める場面は珍しくありません*2。前職や取引先への問い合わせ、紹介者からの情報がこれに当たります*2。いずれも本人の同意が前提になります*2。
「等」という言葉にも幅があります*2。列挙された2つの経路以外でも、適法かつ公正な手段であればよいという書き方です*2。逆に言えば、経路の適法性と公正さを説明できることが条件になります*2。
SNSなど公開されている情報も、集めれば収集です*1*2。公開の事実は、業務の目的の達成に必要な範囲という枠を外す理由にはなりません*1。
新規学卒者には様式の指定があります。指針は、高等学校若しくは中等教育学校又は中学校の新規卒業予定者から応募書類の提出を求めるときは職業安定局長の定める書類により提出を求めることとしています*2。
保管と使用の範囲も明記されています。個人情報の保管又は使用は、収集目的の範囲に限られること*2。採用選考のために集めた情報を、別の目的に流用することはできません*2。
ここにも例外があります。他の保管若しくは使用の目的を示して本人の同意を得た場合又は他の法律に定めのある場合はこの限りでない*2。目的を示したうえでの同意が鍵です*2。
実務では、不採用者の情報を次回の募集で使いたい場面が出てきます*2。その場合は、あらかじめ目的を示して同意を得ておく形になります*2。
関連して、指針は再就職支援の事業にも触れています。いわゆるアウトプレースメント業のうち、教育訓練、相談、助言等のみならず職業紹介を行う事業は職業紹介事業に該当し、許可の取得が必要とされています*2。
候補者を探索して勧誘する行為にも注意が要ります。指針は、求人者に紹介するため求職者を探索して就職を勧奨し、応じた者をあっせんするいわゆるスカウト行為を事業として行う場合は職業紹介事業に含まれるとしています*2。
自社のための採用活動と、他社に紹介する事業は別です*2。後者の枠組みは無料職業紹介事業とは|自社が人を紹介する側になるときで扱いました。
適正な管理として講ずる4つの措置
持ち方についての規定です。
指針は、保管または使用に係る個人情報に関して4つの措置を挙げ、求職者等からの求めに応じ、当該措置の内容を説明しなければならないとしています*2。説明できる状態にしておく必要があります*2。
1つ目が正確性です。個人情報を目的に応じ必要な範囲において正確かつ最新のものに保つための措置*2。古い連絡先を放置しない、という水準の話です*2。
2つ目が保全です。個人情報の紛失、破壊、改ざんを防止するための措置が求められます*2。紙の応募書類を机上に置いたままにする運用は、ここに引っかかります*2。
3つ目がアクセス制御です。正当な権限を有しない者による個人情報へのアクセスを防止するための措置*2。採用管理システムの権限設計が直接に対応します*2。
4つ目が削除です。収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置*2。持ち続けることが、それ自体でリスクになります*2。
4つの措置は、性質が違います*2。イは正確さ、ロは事故の防止、ハは権限、ニは期間です*2。どれか一つを整えれば足りるという構成ではありません*2。
秘密に当たる情報には上乗せがあります。求職者等の秘密に該当する個人情報を知り得た場合には当該個人情報が正当な理由なく他人に知られることのないよう、厳重な管理を行わなければならないとされています*2。
説明義務が付いている点も見落とされがちです*2。措置を講じるだけでなく、求職者等から求めがあれば内容を説明することとされています*2。社外に出せる言葉でまとめておく必要があります*2。
この4つは、社内のどこかに割り当てないと動きません*2。人事だけでなく、情報システムの担当と分担する部分が含まれます*2。
番号を扱う場合は別の枠も重なります。個人番号の取扱いについてはマイナンバーの取扱に不備はない?安全管理措置を整備を参照してください。
規程に書く4項目
文書化についても定めがあります。
指針は、職業紹介事業者及び労働者供給事業者について個人情報の適正管理に関する規程を作成し、これを遵守しなければならないとし、そこに含める事項を4つ挙げています*2。
1つ目が個人情報を取り扱うことができる者の範囲に関する事項です*2。誰が見られるかを、あらかじめ決めておく形です*2。
2つ目が個人情報を取り扱う者に対する研修等教育訓練に関する事項*2。権限を与えるだけでなく、扱い方を教える工程が入っています*2。
3つ目が本人から求められた場合の個人情報の開示又は訂正(削除を含む。)の取扱いに関する事項です*2。求めがあったときの手順を決めておきます*2。
4つ目が個人情報の取扱いに関する苦情の処理に関する事項*2。窓口と処理の流れを書いておくことになります*2。
4項目のうち、2つ目の教育訓練は忘れられがちです*2。権限を持つ人が増えるほど、扱い方の共有が必要になります*2。
あわせて禁止規定もあります。本人が個人情報の開示又は訂正の求めをしたことを理由として、当該本人に対して不利益な取扱いをしてはならない*2。開示を求めたことが選考に響く扱いは認められません*2。
この規程の作成義務は、指針上は職業紹介事業者と労働者供給事業者に向けられたものです*2。自社採用のみを行う会社に直接課される形にはなっていません*2。
とはいえ、4項目の中身は自社採用でもそのまま使えます*2。第5条の5第2項が求める適正な管理の措置を、社内で具体化する下敷きになります*1*2。
採用実務に落とす
手順にします。
最初に決めるのは目的の書き方です。募集ページや応募フォームに、収集した情報を何に使うのかを明示します*1*3。施行規則がインターネットの利用を挙げているのは、この形を想定しているためです*3。
次に、集める項目を絞ります*1。業務の目的の達成に必要な範囲という基準に照らして、応募フォームの設問を一つずつ点検します*1。
3つ目が、設問の中身の点検です*2。本籍や家族の情報、思想信条に触れる項目が残っていないかを確認します*2。
あわせて、面接で聞く内容の擦り合わせも要ります*2。書類の設問を直しても、面接での質問が変わらなければ、収集していることに変わりはありません*1*2。
4つ目が、権限の設計です*2。採用管理システムで誰がどの情報を見られるかを決め、退職者や異動者のアカウントを整理します*2。
5つ目が、保管期間です*2。不採用者の情報をいつ削除するかを決めておかないと、4つ目の措置が空文になります*2。
6つ目が、説明の準備です*2。求めに応じて措置の内容を説明することとされているため、答えられる形にまとめておきます*2。
苦情への備えも指針に出てきます。職業紹介事業者等は、求職者等からの苦情を迅速、適切に処理するための体制の整備に努めることとされています*2。窓口を決めておくと、問い合わせが来たときに動けます*2。
そのうえで、社内の規程に落とします*2。指針が挙げる4項目は、そのまま見出しとして使えます*2。
本人以外から情報を集める運用がある場合は、同意の取り方も決めます*2。リファレンスチェックの手順はリファレンスチェックの手順と同意の取り方で扱いました。
7つ目が、委託先との取り決めです*1*2。求人媒体や紹介会社、採用管理システムの提供者に情報が渡る場合、どこまでを目的の範囲とするかを契約段階で揃えておきます*1。
ここまでの作業は、人事だけでは完結しません*2。システムの権限設計や削除の仕組みは、情報システムの担当と一緒に決めることになります*2。
点検と整備に人手を割く期間も、募集と選考は動きます。その期間だけ実務の一部を業務委託で受け持たせるという分け方も、時間を作る方法として検討する余地があります。
まとめ:確認する3点
第一に、枠です。職業安定法第5条の5第1項は、職業紹介事業者及び求人者、労働者の募集を行う者及び募集受託者などについて、求職者等の個人情報を収集し、保管し、又は使用するに当たっては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、当該目的を明らかにして収集し、当該収集の目的の範囲内で保管し、使用しなければならないとしています。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は除かれます。目的を明らかにする方法について、職業安定法施行規則第4条の4はインターネットの利用その他適切な方法によるとしています。第二に、収集してはならない事項です。厚生労働省が公表する指針(平成11年労働省告示第141号)は、人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項、思想及び信条、労働組合への加入状況の3つを挙げています。特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合は除かれます。また、収集は本人から直接、または本人の同意の下で本人以外の者から行うなど、適法かつ公正な手段によることとされています。第三に、管理です。指針は、正確かつ最新のものに保つ措置、紛失・破壊・改ざんを防止する措置、正当な権限を有しない者によるアクセスを防止する措置、収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除する措置の4つを挙げ、求職者等からの求めに応じてその内容を説明しなければならないとしています。
よくある質問
応募者の個人情報にも職業安定法がかかりますか。
かかります。職業安定法第5条の5第1項は、職業紹介事業者及び求人者、労働者の募集を行う者及び募集受託者などを名宛人として、求職者等の個人情報を収集し、保管し、又は使用するに当たっては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、当該目的を明らかにして収集し、当該収集の目的の範囲内で保管し、使用しなければならないと定めています。自社で募集を行う会社は「労働者の募集を行う者」に当たります。
集めてはいけない情報は何ですか。
厚生労働省が公表する指針(平成11年労働省告示第141号)は3つを挙げています。人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項、思想及び信条、労働組合への加入状況です。ただし、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合は除かれます。
不採用者の応募書類はいつまで持てますか。
指針は、適正な管理の措置として「収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置」を挙げています。また、保管または使用は収集目的の範囲に限られ、他の目的で使う場合は、その目的を示して本人の同意を得る必要があります。次回の募集で使いたい場合は、あらかじめ目的を示して同意を得ておく形になります。
収集の目的はどこで示せばよいですか。
職業安定法施行規則第4条の4は、法第5条の5第1項の規定により業務の目的を明らかにするに当たっては、インターネットの利用その他適切な方法により行うものとしています。募集ページや応募フォームに掲載しておく形が想定されており、口頭で伝えるだけの運用はこの規定と合いません。
出典
- *1 参考:e-Gov法令検索「職業安定法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141)。第5条の5第1項(求職者等の個人情報の取扱い。名宛人に職業紹介事業者及び求人者、労働者の募集を行う者及び募集受託者等が含まれること、業務の目的の達成に必要な範囲内で目的を明らかにして収集し収集の目的の範囲内で保管・使用すること、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合の例外)、第5条の5第2項(適正に管理するために必要な措置)の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:厚生労働省「職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針(平成11年労働省告示第141号)」(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/haken4/1a.html)。収集してはならない個人情報の3項目(社会的差別の原因となるおそれのある事項、思想及び信条、労働組合への加入状況)とただし書、本人からの直接収集または本人の同意の下での収集という適法かつ公正な手段、新規卒業予定者からの応募書類に関する定め、保管・使用が収集目的の範囲に限られること、適正な管理として講ずる4つの措置と求職者等への説明、秘密に該当する個人情報の厳重な管理、適正管理に関する規程に含める4項目、開示・訂正の求めを理由とする不利益取扱いの禁止、スカウト行為が職業紹介事業に含まれる旨の一次情報として(2026年8月確認)
- *3 参考:e-Gov法令検索「職業安定法施行規則」(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40002000012)。第4条の4(法第5条の5第1項の規定により業務の目的を明らかにするに当たっては、インターネットの利用その他適切な方法により行うものとする旨)の一次情報として(2026年8月確認)
- *4 参考:厚生労働省 公正採用選考特設サイト「公正な採用選考の基本」(https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/basic.html)。求職者の個人情報を保護する観点から、職業安定法第5条の5及び指針(平成11年労働省告示第141号)により、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などの収集が原則として認められない旨の一次情報として(2026年8月確認)