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2026.10.24 採用支援コラム

業務委託契約書のChatGPT利用条項|ひな形と書き方の例

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

契約書本体の束に別紙を重ねてホチキスで綴じる手元

この記事の結論

  • 外部のエンジニアに生成AIの利用を認めるなら、業務委託契約書に利用の可否から記録の保存まで8項目の条項を足します。
  • 入力してよい情報はサービスが入力を学習に使うかで変わり、個人データや秘密情報、他人の著作物は承諾なく入れない形にします。
  • AI生成物には著作権が生じない部分があり得るため、権利の移転に加えて自由に使えることと、使った箇所の申告と記録を書きます。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

外部のエンジニアに開発を業務委託することになり、契約書のひな形を見直していたら、ChatGPTなどの生成AIを使ってよいかについて何も書かれていなかった。禁止すれば作業が遅れそうだが、認めるなら何を条件にすればよいのか分からない——。エンジニアに仕事を頼む企業で出てきている迷いです。

本記事は、外部のエンジニアに業務委託する企業の担当者に向けて、業務委託契約書に足す生成AIの利用条項を8項目のひな形の表にまとめます。個人情報保護委員会の注意喚起、経済産業省の「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」、文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」などをもとに、入力してよい情報、成果物の権利、申告と記録の書き方を整理します。

業務委託で生成AIの条項が要る理由

業務委託で加わるエンジニアは、自分の端末や自分で契約したサービスを使って作業することがあります。その途中でChatGPTのような生成AIのサービスに設計の資料や不具合の記録を貼り付けると、委託した側の情報が、自社が契約していない事業者のサービスに渡ります。公的な資料は、次のような注意を挙げています。

  • 個人情報保護委員会:個人情報を含む指示(プロンプト)を入力するときは、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめる
  • 同:本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合は、個人情報保護法に違反する可能性がある。そのため、提供する事業者が機械学習に使わないことなどを十分に確かめる*1
  • 経済産業省:一度AIモデルに取り込まれた情報を取り除くことは一般的に難しく、不必要な情報はできる限り入力に含めないことが基本になる
  • 同:第三者との契約で秘密保持の義務を負う情報を入力すると、契約の内容によっては契約違反になるおそれがある*2

個人情報保護委員会は2023年6月、ChatGPTを開発・提供する事業者にも注意喚起を行っています。*1 ただ、こうした注意は利用する会社に向けたもので、業務委託で加わる人がどう使うかまでは決めてくれません。誰が、どのサービスに、何を入れてよいかは、業務委託契約書か、契約に付ける別紙で決めておく必要があります。

生成AI利用条項のひな形

業務委託契約書に足す生成AIの利用条項を、8つの項目のひな形にまとめました。経済産業省のチェックリストは、契約の構成や表現は各社さまざまだとして、具体的な条項例ではなく確かめる点を挙げる形をとっています。*2 下の記入の例は、その確かめる点と文化庁の資料をもとに本記事で作った書き方の一例で、サービス名や期間は伏せ字にしています。

契約書の下書きの余白に鉛筆で書き込む手元と定規

業務委託契約書に足す生成AI利用条項のひな形(8項目。出典:経済産業省「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」、文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」をもとに本記事で作成。2026年10月22日確認)
項目 書く中身 記入の例 よくある抜け
①利用の可否と対象のサービス 使ってよいか。使ってよいサービスと、誰が契約したアカウントで使うか 受託者は、委託者が別紙に記したサービス(〇〇)に限り、本業務に生成AIを利用できる 開発ツールに組み込まれたコードの補完機能が含まれるかを書いていない
②入力してよい情報 入力してよい情報と、承諾なく入れない情報の区分 受託者は、個人情報、委託者の秘密情報、第三者から預かった情報を、委託者の書面による承諾なく入力しない 何が秘密情報に当たるかの例を示していない
③サービスの規約と設定 利用前に規約と、入力を学習に使うかの扱いを確かめること。規約が変わったときの扱い 受託者は、利用前に当該サービスの利用規約を確かめ、入力が学習に使われない設定で利用する。規約が変わったときは委託者に知らせる 契約した後の規約の変更を追っていない
④成果物の権利 生成AIの出力を含む成果物の権利の移転と、使える範囲 成果物(生成AIの出力を含む)の著作権は検収の時点で委託者に移転し、著作権が生じない部分も委託者が自由に利用できる 著作権が生じない部分を想定していない
⑤他人の権利の確認 出力を成果物に使う前に、既存の著作物と似ていないかを確かめること 受託者は、生成AIの出力を成果物に用いる前に、既存の著作物と類似していないかを確かめる 確かめる方法と、似ていたときの扱いを決めていない
⑥利用の申告 どの成果物のどこに、どのサービスを使ったかを伝える時期と方法 受託者は、納品の際に、生成AIを用いた成果物と箇所、利用したサービスを書面で報告する 申告する時期が決まっていない
⑦記録の保存 生成に用いた指示と出力の記録を残す期間と、示し方 受託者は、生成に用いた指示(プロンプト)と出力の記録を〇か月保存し、委託者の求めに応じて示す 契約が終わった後の記録の消去を決めていない
⑧決まりに反したときの報告 決まりに反する入力などが分かったときの報告と対応 受託者は、本条に反する入力が判明したときは、直ちに委託者に報告し、その指示に従う 報告を受ける社内の窓口が決まっていない

③は見落とされやすい項目です。経済産業省のチェックリストは、利用規約は定期的に変わり得るため、変更の状況を随時確かめるべきだとしています。*2

業務委託の流れの中で生成AI利用条項の8項目を使う時期の図。契約の前に①利用の可否と対象のサービス、②入力してよい情報、③規約と設定を決める。作業中は②の範囲で入力し、規約が変わったら知らせ、決まりに反したら⑧で直ちに報告する。納品のときは⑤既存の著作物と似ていないかを確かめ、⑥使った箇所を申告し、④成果物の権利を移す。契約が終わるときは⑦の記録を受け取り、秘密情報を含む記録を消してもらう。

契約の前に社内で決めておかないと埋められないのは、②の入力してよい情報と④の成果物の権利です。次の節から、この2つと⑥⑦の申告と記録を順に見ていきます。

入力してよい情報の決め方

経済産業省のチェックリストは、入力した情報がサービスの側でどう扱われるかを3つの場合に分け、場合ごとに入力に含める情報の範囲を考えるとよいとしています。*2 業務委託先が使うサービスがどれに当たるかで、②に書く範囲が変わります。

入力の扱いごとのリスクと、②に書く範囲の考え方(出典:経済産業省「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」4.2をもとに作成)
サービスでの入力の扱い 資料が挙げるリスク ②に書く範囲の考え方
第三者も使うAIサービスの改良のための学習に使われる 取り込まれた情報の除去は難しい。秘密情報の流出や秘密保持の義務に反するおそれがある 不必要な情報はできる限り入れない。公開済みの情報や一般的な技術の質問にとどめる
自社へのサービス提供に必要な範囲でのみ学習に使われる 一部のリスクは低くなるが、漏えいや契約の例外による利用のリスクは残る 入れる情報は慎重に選び、システムの構造やセキュリティの水準も確かめる
学習に使われない リスクはさらに低くなることが少なくないが、なくなるわけではない 入れる情報は慎重に選び、使い方の決まりを周知する

どの場合でも、承諾なく入れない情報は先に決めておけます。個人情報保護委員会と経済産業省の資料が挙げるリスクから、次の4つを②の区分に入れておくと、相手にも伝わりやすくなります。*1*2

  • 個人データを含む情報(顧客の名簿や問い合わせの記録など)
  • 第三者と秘密保持の約束をしている情報(取引先から預かった仕様書など)
  • 自社の営業秘密に当たる情報。公知になると、それ以後は保護されなくなる可能性がある
  • 第三者の著作物。権利を制限する規定が当てはまらない場合は、著作権の侵害になるおそれがある

区分を書くときは、「秘密情報」のような言葉だけでなく、その案件で実際に扱う資料の名前を例として並べます。

成果物の権利と申告・記録

成果物の著作権を委託者に移すと書く条項は、成果物に著作権があることを前提にしています。文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」は、AIは著作者になれず、AI生成物が著作物かどうかは個々の生成物ごとに判断されるとしています。目安は次のとおりです。*3

申告と記録の束に卓上パンチで綴じ穴を開ける両手

  • 生成AIへの指示が、表現に至らないアイデアにとどまる場合は、著作物性は認められないと考えられる
  • 創作的な表現を具体的に示す詳細な指示は、創作的寄与があると評価される可能性を高める
  • 生成物を確かめ、指示を直しながら試行を重ねた場合は、著作物性が認められることも考えられる
  • 人が創作的な表現といえる加筆・修正をした部分は、通常、著作物性が認められる

このため④では、著作権の移転に加えて、著作権が生じない部分も委託者が自由に使えることを書いておく方法があります。成果物の著作権の基本は業務委託エンジニアの参画後に知る成果物の著作権の基本で扱っています。

⑤⑥⑦は、問題が起きたときに経緯を説明するための項目です。文化庁のチェックリストは、著作権の侵害には既存の著作物との類似性と依拠性の両方が必要で、AI生成物は使う前にまず類似していないかを確かめることが必要だとしています。*4 さらに、依拠性がないことを説明できるよう、生成に用いたプロンプトなど生成の過程を確かめられる状態にしておくよう努めることが望まれるとしています。*4 申告と記録には、次の中身を入れます。

  • 使ったサービスの名前と、会社が用意したアカウントかどうか
  • 生成AIの出力を使った成果物と箇所(ファイルや機能の名前)
  • 生成に用いた指示(プロンプト)と出力
  • 既存の著作物と似ていないかを確かめた方法と結果
  • 記録を残す期間と、契約が終わるときの扱い(秘密情報を含む記録の消去)

外部に頼むときに確認しておきたい点

ひな形を埋めるには、頼む側が先に方針を決めておく必要があります。生成AIを使う開発の経験がある外部人材に頼むなら、次の点を確かめておくと、②から⑦をそのまま埋められ、人材を探す相談の準備にもなります。

  • 範囲:生成AIを使ってよい工程(設計、コードを書く作業、テスト、文書作り)と、使わない工程
  • 期間:始めたい時期と契約の期間、規約の変更を確かめ直す区切り
  • 体制:使うサービスのアカウントを会社が用意するか本人が用意するか、申告を受ける社内の窓口
  • 費用の決まり方:会社が用意しないサービスの利用料を、報酬に含めるか実費で払うか
  • 引き継ぎ:契約が終わるときに受け取る記録と、相手の手元で消してもらう情報

面談では、これまでどの工程で生成AIを使ってきたか、入力する情報をどう分けてきたかを聞くと、②の範囲を相手と合わせやすくなります。政府が生成AIのシステムを調達するときの決まりは外部人材活用で生成AIの仕事を頼むときに行う5つのことで扱っています。条項の読み方や個別の契約の判断は、専門家に確かめてください。

まとめ:生成AI条項で押さえる3つの点

業務委託契約書で生成AIの利用を認めるときに押さえたい点は3つです。第一に、利用の可否と対象のサービス、入力してよい情報、規約の確認、成果物の権利、他人の権利の確認、申告、記録、報告の8項目を条項に入れること。第二に、入力してよい情報は、サービスが入力を学習に使うかどうかで範囲を決め、個人データや秘密情報、他人の著作物は承諾なく入れない形にすること。第三に、AI生成物には著作権が生じない部分があり得ることを前提に、権利の書き方と、使った箇所の申告と記録を決めておくことです。

LASSICに相談するメリット

生成AIを使ってよい工程と、入れてよい情報の範囲が書き出せたら、その条件で開発に加わる人材を探す相談に進めます。業務委託で頼むか社員で採るかを決めきれていなくても、両方の形で候補を比べられます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

業務委託のエンジニアにChatGPTの利用を禁止してもよいですか

使わないと決めるなら、その旨を①の項目に書きます。禁止する場合も、開発ツールに組み込まれたコードの補完機能などが含まれるかを書き分けておくと、受け取る側との食い違いを防げます。

生成AIで作った部分の著作権は誰のものになりますか

AIは著作者になれず、AI生成物が著作物と判断される場合は、AIを使って創作した人が著作者になるとされています。指示がアイデアにとどまる場合は著作物性が認められないと考えられ、個々の生成物ごとに判断されます。*3

プロンプトの記録はどのくらいの期間残せばよいですか

文化庁の資料は、生成に用いたプロンプトなど生成の過程を確かめられる状態にしておくよう努めることが望まれるとしていますが、期間は示していません。*4 成果物の不具合に対応する期間など、契約のほかの期間に合わせて決める方法があります。

業務委託で開発に加わる専門人材を探す

生成AIを使ってよい範囲が決まっていれば、そのままご相談いただけます。条項の中身を固めきれていない段階でも構いません。

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出典

  1. *1 参考:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日・PDF)(https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf)。出典:個人情報保護委員会。(1)個人情報取扱事業者における注意点①②と、OpenAIへの注意喚起の記載を参照(確認日2026年10月22日)(2026年10月確認)
  2. *2 参考:経済産業省「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(令和7年2月・PDF)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/connected_industries/sharing_and_utilization/20250218003-ar.pdf)。出典:経済産業省。3.2 チェックリストの対象となる条項、4.2 インプット提供に関する留意点(4.2.1〜4.2.3)、4.6 規約改定に関する留意点を参照(確認日2026年10月22日)(2026年10月確認)
  3. *3 参考:文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日・PDF)(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_01.pdf)。出典:文化庁。5.(3)生成物の著作物性について(39〜40頁)を参照(確認日2026年10月22日)(2026年10月確認)
  4. *4 参考:文化庁著作権課「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日・PDF)(https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/94097701_01.pdf)。出典:文化庁。第1部 3. AI利用者(業務利用者)のリスク低減方策 3-1-5、3-1-7を参照(確認日2026年10月22日)(2026年10月確認)




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