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2026.09.29 採用支援コラム

エンジニア人材紹介で紹介されない要因、年収条件を統計と比べる




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 情報通信業では50.7%の事業所が、転職者の賃金を決めるときに前職の賃金を考慮しており、調査産業計の27.0%を大きく上回ります。
  • 年収条件は、賃金構造基本統計調査で職種・年齢・経験年数の近い行を選び、所定内給与額と賞与を年額に直して比べます。
  • 情報通信業の転職者が勤め先を選んだ理由で、賃金が高いことは23.7%にとどまり、仕事の内容の50.4%を下回ります。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

人材紹介会社に求人を出してしばらくたつのに、候補者が1人も紹介されない。担当者に理由を聞くと「年収が合う方が少なくて」と言われるものの、本当にそれが原因なのか分からない——。エンジニアの中途採用では、こうした行き詰まりが起こりがちです。エンジニア人材紹介で紹介されないときに年収条件を確かめるとは、提示している年収を、同じ職種・年齢・経験の人がいま受け取っている賃金と並べ、差があるかどうかを見ることです。

確かめ方が分かれば、年収を上げるべきか、別の条件を直すべきかを、数字をもとに社内で話し合えます。ただし万能ではなく、統計の平均と一人ひとりの候補者の給与は一致しません。本記事では、エンジニアを採用する実務担当者に向けて、採用する側が年収を決めるときに見ているもの、公的統計との比べ方、年収の幅の書き方、そして年収以外の条件を整理します。

夕暮れの淡い空を背に、展望台に置かれた据え置き型の双眼鏡を正面から写した写真

年収条件が合わないとは

年収条件が合わないといっても、中身は2つに分けられます。一つは、紹介会社の登録者の中に、提示した年収の範囲で転職を考える人がいない場合です。紹介会社は求人の条件に合う人を探して推薦するので、範囲の上限が登録者のいまの給与より低ければ、推薦の候補から外れます。もう一つは、推薦まではできても、求職者が他社の求人と比べて応募を見送る場合です。

どちらの場合も、比べる相手は「その仕事を任せたい人が、いまどのくらいの給与を受け取っているか」です。求人票の年収を社内の給与表だけで決めていると、この比較が抜け落ちます。担当者から年収が理由だと言われても、それが本当に紹介されない原因かどうかは、社外の数字と並べてみないと見極められません。

社外の数字として使いやすいのが、厚生労働省の賃金構造基本統計調査です。職種、年齢、経験年数ごとに給与の平均が公表されているので、任せたい人の姿に近い行を選んで比べられます。業務の内容や必須の経験といった求人要件の見直し方は「エンジニア人材紹介で紹介されないときに見直す求人要件の4つの点」で扱っているので、本記事では年収に絞ります。

なぜ前職の賃金が物差しになるのか

厚生労働省の「令和7年転職者実態調査」は、2025年10月1日時点で、転職者を受け入れた事業所に、転職者の賃金を決めるときに考慮した要素を尋ねています(有効回答9,154事業所、複数回答)。*1 情報通信業では「これまでの経験・能力・知識」が81.3%でいちばん多く、次いで「年齢」が50.8%、「前職の賃金」が50.7%でした。*2

転職者の賃金を決めるときに考慮した要素を、情報通信業と調査産業計の2本の横棒で並べた図。これまでの経験・能力・知識は81.3%と59.2%、年齢は50.8%と35.3%、前職の賃金は50.7%と27.0%、賃金の世間相場は28.4%と34.2%、免許・資格は15.1%と30.6%、学歴は10.9%と12.0%、その他は9.6%と17.9%。出典は厚生労働省の令和7年転職者実態調査 事業所調査 第12表

目立つのは前職の賃金です。調査産業計では27.0%なので、情報通信業では2倍近い割合の事業所が、前の勤め先での給与を見て賃金を決めています。最も重視した要素を1つだけ選んだ場合でも、情報通信業では前職の賃金が15.0%で、調査産業計の9.2%を上回りました。*3 一方で「賃金の世間相場」は28.4%と、調査産業計の34.2%より低くなっています。*2

エンジニアを採る会社の半数が前職の賃金を見ているなら、求職者の側も、いまの給与を下回らないかどうかで求人を見比べると考えておくのが自然です。自社の年収条件が合っているかどうかは、世の中全体の相場よりも、採りたい人がいま受け取っている給与と比べて確かめます。

賃金構造基本統計調査で見る年齢と経験

採りたい人のいまの給与を知る手がかりになるのが、賃金構造基本統計調査の職種第10表です。職種ごとに、年齢階級と経験年数階級を掛け合わせた所定内給与額と年間賞与その他特別給与額が載っています。*4 所定内給与額は、毎月決まって支払われる給与から残業代などの超過労働給与額を差し引いた額です。年間賞与その他特別給与額は、原則として調査の前の年の1月から12月までに支払われた賞与などの合計です。*5

調査は毎年、その年の6月分の賃金について7月に行われます。*8 令和7年の表なら、2025年6月分の所定内給与額と、2024年1年間の賞与が並んでいることになります。

経験年数は、年齢や勤続年数とは別の軸です。調査時点の職種の仕事に従事した年数を指し、過去の勤め先での年数もすべて通算します。*5 「30代前半で、開発の経験が5年以上」のように求める人の姿を決めておけば、表の中からその行を選べます。

エンジニアに当たる職種は、システムコンサルタント・設計者、ソフトウェア作成者、その他の情報処理・通信技術者の3つです。システム全体の設計を任せるのか、決まった仕様に沿ってソフトウェアを作る仕事なのかで、見る行が変わります。3つの職種の違いは「エンジニア採用で内製化する給与、職種と規模による差」で詳しく扱っています。

提示額と統計をどう比べるのか

ソフトウェア作成者の行を、企業規模10人以上の全体で見ると次のとおりです。

ソフトウェア作成者の所定内給与額と年間賞与(令和7年、企業規模10人以上、単位は千円)
年齢階級 経験年数 所定内給与額(月額) 年間賞与その他特別給与額
25〜29歳 経験年数計 299.6 861.9
30〜34歳 経験年数計 347.7 981.2
30〜34歳 5〜9年 349.7 1,116.0
35〜39歳 経験年数計 391.2 1,217.9
40〜44歳 経験年数計 407.1 1,459.3

表の値は1か月分の所定内給与額と1年分の賞与なので、自社の年収とそのままでは並べられません。比べるときは、統計を年額に直すか、自社の年収を月額に直します。統計を年額に直すなら、所定内給与額の12か月分に年間賞与を足します。30〜34歳・経験5〜9年のソフトウェア作成者なら、349.7千円×12か月+1,116.0千円で約531万円です。残業代を含まない、いま働いている人の平均から出した目安で、1人ひとりの給与の範囲ではありません。

自社の年収を月額に直すときは、賞与の見込み額と固定残業代(決まった時間分の残業代を毎月定額で払うもの)を除きます。たとえば年収500万円のうち賞与が100万円、固定残業代が月3万円なら、所定内給与額に当たる月額は約30.3万円です。30〜34歳・経験5〜9年の349.7千円を、4万円あまり下回ることになります。

年齢の階級による差にも目を向けます。ソフトウェア作成者の所定内給与額は、25〜29歳から30〜34歳で48.1千円、30〜34歳から35〜39歳で43.5千円上がっています。これに対して、30〜34歳の中で経験年数を比べると、1〜4年が335.9千円、5〜9年が349.7千円、10〜14年が339.5千円で、差は13.8千円に収まります。*4 この表で見る限り、求める経験年数を1段変えるより、求める年齢の幅を変えるほうが、比べる相手の給与は大きく動きます。

年収の幅の書き方

求人の年収は、下限と上限の幅で示せます。幅を決めるときは、採りたい人の姿を「いちばん若く、経験の浅い人」と「いちばん上に想定する人」の2つに分け、それぞれの行と比べます。下限は前者のいまの給与を、上限は後者のいまの給与を下回っていないかを見ます。

たとえば30〜39歳のソフトウェア作成者を採りたいなら、下限は30〜34歳の行、上限は35〜39歳の行と比べます。先ほどと同じ計算で年額に直すと、30〜34歳の経験年数計は約515万円、35〜39歳の経験年数計は約591万円です。上限がこの2つの間に収まっている求人は、30代後半の人から見ると、いまの給与と同じか下がる求人に映ります。

幅を広げすぎないことも大切です。下限を低く置きすぎると、任せる仕事が見習いの水準だと受け取られ、経験のある人ほど応募を見送りやすくなります。上限の決め方は「エンジニア中途採用の年収上限|役割と等級で定める年収条件」で扱っています。あわせて、基本給、固定残業代、賞与の内訳を書き分けておくと、求職者がいまの給与と比べやすくなります。

年収以外の条件

統計と比べて年収条件に大きな差が無いのに紹介されないなら、年収以外の条件を見直します。同じ転職者実態調査は、過去1年間に転職した人に、いまの勤め先を選んだ理由を3つまで尋ねています(有効回答7,310人)。*1 いまの勤め先が情報通信業の転職者では、「仕事の内容・職種に満足がいくから」が50.4%、「自分の技能・能力が活かせるから」が45.0%、「キャリアアップできるから」が34.6%でした。「賃金が高いから」は23.7%で、「労働条件(賃金以外)がよいから」の24.9%に次ぐ5番目です。*6

いちばんの理由を1つだけ選んだ場合も、情報通信業では「仕事の内容・職種に満足がいくから」が21.3%、「キャリアアップできるから」が18.3%、「自分の技能・能力が活かせるから」が15.1%で、「賃金が高いから」の13.6%を上回っています。*7

求人票に書く仕事の中身、入社後に広がっていく担当範囲、使う技術、リモートワークの可否や残業の見込みは、年収と並んで比べられる条件です。年収を上げられないときほど、これらを具体的に書いておくと、求職者がいまの勤め先と比べる材料になります。紹介会社の担当者にも、年収と一緒にこうした条件を伝えておくと、登録者に求人を説明してもらいやすくなります。

つまずきやすい点

一つ目は、統計の月額を12倍しただけで年収と比べてしまうことです。所定内給与額には賞与も残業代も入っていないので、12倍しただけでは実際の年収より低く出ます。統計の側に賞与を足すか、自社の年収から賞与と固定残業代を除いてから比べます。

二つ目は、人数の少ない行を使うことです。第10表には行ごとの労働者数も載っています。たとえばシステムコンサルタント・設計者の30〜34歳で経験15年以上の行は、労働者数が20人分(表の単位は十人で「2」)しかありません。*4 こうした行の平均は、少数の人の給与で大きく動きます。経験年数計の行か、隣り合う階級とあわせて見ます。

三つ目は、経験0年の行の賞与をそのまま使うことです。年間賞与その他特別給与額は、前の年の7月2日以降に雇われた人については、雇われた日から調査の年の6月30日までの支給額です。*5 ソフトウェア作成者の経験0年の行では年間賞与が83.9千円で、1〜4年の行の886.8千円と大きく離れています。*4 経験の浅い人の年収を見積もるときは、1〜4年の行もあわせて確かめます。

まとめ:年収条件で確かめておきたい3つの点

エンジニア人材紹介で紹介されない原因が年収条件にあるのかを見極めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、採りたい人の職種・年齢・経験年数に近い行を賃金構造基本統計調査で選び、所定内給与額と賞与を年額に直して並べること。第二に、年収の幅の下限と上限を、それぞれ想定する人のいまの給与と比べ、内訳も書き分けること。第三に、年収に大きな差が無ければ、仕事の内容やキャリアアップの見通しといった年収以外の条件を具体的に書くことです。この3点を踏まえておけば、「年収を上げたのに、やはり紹介されない」という事態を避けやすくなります。年収条件の決め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

年収条件を見直しても、求める経験を持つ人の紹介がすぐには得られないことがあります。採用が決まるまでの開発を、業務委託の専門人材に任せる方法も選択肢に入れておけます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

紹介会社には、年収条件をどう伝えればよいですか

年収の幅と内訳に加えて、下限と上限をそれぞれどんな人に当てているかを伝えます。たとえば「下限は30代前半で開発経験5年ほどの人、上限は30代後半でチームのまとめ役を任せられる人」のように伝えると、担当者が登録者のいまの給与と照らし合わせやすくなります。

統計は毎年見直す必要がありますか

求人を出し直すときは、公表されている最新の年の表で確かめるのがおすすめです。賃金構造基本統計調査は毎年、その年の6月分の賃金について調べています。前の年の表のまま年収の幅を据え置くと、比べる相手の給与とずれていくことがあります。

統計の平均より高い年収を示せば、紹介されるようになりますか

年収だけで紹介が決まるわけではありません。統計はいま働いている人の給与の平均で、転職を考えている人の希望額ではありません。業務の内容や必須の経験が登録者に合わなければ、年収が高くても推薦には至りません。

年収条件を上げられないときは、どうすればよいですか

年収以外の条件を具体的に書き直すほか、求める人の年齢や経験の幅を見直す方法があります。任せる仕事を分けて、社員に任せる部分と、業務委託の専門人材に任せる部分に切り分けることも選択肢になります。

エンジニアの年収条件を相談したいとき

任せる仕事と求める経験の整理から、年収条件の見直しまでご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/6-18c-r07.html)。出典:厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」(2026年9月25日公表)。調査の概要(2025年10月1日現在、有効回答は事業所調査9,154事業所・個人調査7,310人)と、表5(転職者の賃金決定の際に考慮した要素別事業所割合)の項目名を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:e-Stat「令和7年転職者実態調査 事業所調査 第12表」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040505204&fileKind=4)。出典:第12表 産業・事業所規模・企業規模・転職者の採用に当たって重視した点、転職者の賃金決定の際に考慮した要素別事業所割合(複数回答)。情報通信業と調査産業計の行を参照(2026年9月確認)
  3. *3 参考:e-Stat「令和7年転職者実態調査 事業所調査 第13表」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040505205&fileKind=4)。出典:第13表 同、転職者の賃金決定の際に最も重視した要素別事業所割合。情報通信業と調査産業計の行を参照(2026年9月確認)
  4. *4 参考:e-Stat「令和7年賃金構造基本統計調査 職種 第10表」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040421125&fileKind=4)。出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種 第10表「職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」。男女計・企業規模計(10人以上)の、ソフトウェア作成者とシステムコンサルタント・設計者の行(所定内給与額、年間賞与その他特別給与額、労働者数)を参照(2026年9月確認)
  5. *5 参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 主な用語の説明」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/chingin_yougo.pdf)。出典:同資料の経験年数、所定内給与額、年間賞与その他特別給与額の説明を参照(2026年9月確認)
  6. *6 参考:e-Stat「令和7年転職者実態調査 個人調査 第29表」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040505239&fileKind=4)。出典:第29表 性、産業ほか、現在の勤め先を選んだ理由別転職者割合(複数回答3つまで、構成比1)。男女計の情報通信業の行を参照(2026年9月確認)
  7. *7 参考:e-Stat「令和7年転職者実態調査 個人調査 第30表」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040505240&fileKind=4)。出典:第30表 同、現在の勤め先を選んだ一番の理由別転職者割合(構成比1)。男女計の情報通信業の行を参照(2026年9月確認)
  8. *8 参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 調査の概要」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou_b.html)。出典:同ページの調査の時期(調査年6月分の賃金等について同年7月に調査、賞与などは調査前年1年間)を参照(2026年9月確認)




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