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2026.09.28 採用支援コラム

SESの外注依存を見直し、ベンダーロックインを防ぐ4つの手順




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 官公庁の調査では、既存ベンダーと再度契約した理由で最も多いのは、機能の詳細を既存ベンダーしか把握できなかったことで、48.3%でした。
  • SESの外注依存は、システムの知識・権利・データが委託先の側にしか残らないことで、ベンダーロックインにつながります。
  • 作業ごとに書き残すものを決め、仕様や改修を判断する社員を2人以上置き、引き継ぎのやり方を契約に書くと、外注依存を減らせます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

契約を更新するたびに、同じSES(技術者が客先で働く契約形態)の会社から同じ技術者が来てくれている。けれども、その人が抜けたら、システムのどこを直せばよいのかを社内の誰も説明できない——。開発の多くを外部の技術者に任せている現場では、こうした状態が起こりがちです。SESの外注依存とは、システムの仕組みや改修の判断に必要な知識が、委託先の技術者の側にしか残っていない状態を指します。

外注依存が続くと、委託先を替えたくても替えられないベンダーロックインにつながります。ただし万能の解決策はなく、SESの利用をやめれば解決するという話でもありません。本記事では、開発の体制を預かるマネージャーに向けて、外注依存がベンダーロックインにつながる仕組み、委託先の側にしか残らないもの、担当者が替わるときに起きること、解消の手順、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

緑の照明が当たるラックのパッチパネルに、LANケーブルが並んで差し込まれている写真。人も読める文字も写っていない

SESの外注依存とは

外注依存は、SESの技術者を何人使っているかという人数の話ではありません。SESの技術者が多くても、仕様書と設計書が社内で読める形で残り、改修をどう進めるかを社員が決めていれば、委託先を替えることはできます。反対に、SESの技術者が1人だけでも、その人しかシステムの中身を説明できなければ、その人が所属する会社との契約をやめられなくなります。

気をつけたいのは、SESの技術者が日々の改修で得た知識は、何を書き残すかを決めておかない限り、文書として社内に残らないことです。改修の指示を口頭で出し、記録を残さずに進めていると、知識は技術者本人しか持たないままになります。契約を何年も更新するうちに、社内の担当者が替わり、経緯を知っているのは委託先の技術者だけ、という状態になります。

公正取引委員会は、ベンダーロックインを「ソフトウェアの機能改修やバージョンアップ、ハードウェアのメンテナンス等、情報システムを使い続けるために必要な作業を、それを導入した事業者以外が実施することができないために、特定のベンダーを利用し続けなくてはならない状態」と定義しています。*1 SESの外注依存は、この状態になる一歩前の段階です。

なぜベンダーロックインにつながるのか

公正取引委員会は2021年6月から、すべての国の機関と都道府県・市区町村の計1,835機関にアンケートを送り、1,021機関から回答を得ました。*1 情報システムの保守・改修・更改(作り替え)の際に、いま使っているシステムを扱う既存ベンダーと再度契約することになった事例があるかを尋ねると、有効回答1,011機関のうち1,000機関、98.9%が「ある」と答えています。*1

既存ベンダーと再度契約することになった理由を、再度契約した事例があると答えた官公庁1,000機関に占める割合で並べた横棒グラフ。既存ベンダーしか既存システムの機能の詳細を把握できなかった48.3%、入札の結果既存ベンダーが落札した33.6%、機能(技術)の権利が既存ベンダーに帰属していた24.3%、技術的には他社にも委託できるが特命随意契約を結んだ21.7%、既存ベンダーしかデータの内容を把握できなかった21.1%、データの権利が既存ベンダーに帰属していた7.1%、その他16.1%。出典は公正取引委員会「官公庁における情報システム調達に関する実態調査報告書」図表2。

「ある」と答えた機関に理由を尋ねると、最も多いのは「既存ベンダーしか既存システムの機能の詳細を把握することができなかったため」で、48.3%でした(複数回答)。*1 入札で既存ベンダーが落札したという理由の33.6%を上回ります。「既存ベンダーしか既存システムに保存されているデータの内容を把握することができなかったため」も21.1%ありました。

報告書は、こうした回答の背景に、発注する側で情報システムの知見や人員体制が足りない可能性を挙げています。発注する側と委託先との間に知識の差があると、対等な立場で話し合えず、「情報の非対称性によりベンダーロックインが発生しやすい状況となり得る」とも書いています。*1 情報の非対称性とは、取引の一方だけが事情を詳しく知っている状態のことです。

調査の対象は官公庁で、民間企業の値ではありません。それでも、システムの中身を知る人が委託先にしかいないと契約先を替えられない、という仕組みは、SESに開発を任せている企業でも同じ形で起こり得ます。

委託先の側にしか残らないもの

調査で挙がった理由を並べ直すと、委託先の側にしか残らないものは、システムの知識、権利、データの3つに分けられます。1つ目は、機能の詳細の知識です。報告書が紹介するヒアリングでは、ある県が、何度も改修してきたシステムのソースコード(プログラムの本文)の変更履歴を既存ベンダーしか把握しておらず、県の担当者も理解できていないため、ほかのベンダーに発注できないと答えています。*1 SESで改修を重ねている現場でも、どの画面のどの処理をいつ誰が変えたのかが、技術者の記憶にしか無いことがあります。

2つ目は権利です。「既存システムの機能(技術)に係る権利が既存ベンダーに帰属していたため」は24.3%でした。*1 国の機関からは、プログラムの著作権を既存ベンダーが持っていたために運用する会社を変えられず、結局は既存ベンダーと再度契約した、という声が寄せられています。SESの技術者が作ったプログラムや資料を誰が使えるのかは、契約で決めておかないと、委託先を替えるときに、それを使ってよいのかが分からなくなります。

3つ目はデータです。新しいシステムへ移るときに、既存ベンダーが企業秘密だとしてデータの形式を開示せず、移行が遅れたため、その間は古いシステムの契約を結び直したという地方公共団体の例もあります。*1 データの項目や形式を社内の誰も説明できないと、システムを作り直すときにも、今の委託先に頼むしかなくなります。

担当者が替わるときに起きること

外注依存の問題が見えやすくなるのは、担当者が替わるときです。報告書は、担当職員が異動するときに、引き継ぎで工夫していることも尋ねています。最も多いのは、前任の職員が後任の職員に既存システムを十分に説明することで、65.2%でした。システムごとに担当職員を複数名置き、一部が異動しても残りの職員で知見を保つ体制は31.4%、「特になし」は15.5%です(複数回答)。*1

前任者の説明に頼る引き継ぎは、説明できる人がいなくなれば続きません。SESの現場では、社内の担当者だけでなく、SESの技術者も契約の終了や交代で入れ替わります。社内の担当者が替わったときに、仕組みを説明できるのが委託先の技術者だけになっていれば、その時点から委託先を替えにくくなります。

報告書は、情報システムに深い知見を持つ職員が少ない官公庁について、システムの発注(調達)が「特定の職員の知見に依存している可能性」があるとも指摘しています。*1 社内の知識が1人の社員に集まっている状態と、委託先の技術者に集まっている状態は、その人が抜けると改修の判断ができなくなるという点で同じです。

どう解消するのか

報告書には、官公庁がベンダーロックインを防ぐためにとっている工夫も並んでいます。多いのは、構築が終わったときにベンダーから機能の詳細の説明や設計書などの提供を受けることで44.6%、次いで委託先が変わるときの引き継ぎを仕様や契約に定めることが28.8%、データの権利を発注者に帰属させることが27.9%でした(複数回答)。*1 これをSESの契約に当てはめると、解消の手順は次の4つになります。

  • 委託先の技術者しか説明できない作業を書き出す
  • 作業ごとに書き残すものを決め、成果物として納めてもらう
  • 仕様や改修を判断する社員を2人以上置く
  • 交代や契約の終了に備えて、引き継ぎのやり方を契約に書く

書き出す作業は、月末の締め処理の修正、ほかのシステムとのデータのやり取り、障害が起きたときに前の版へ戻す手順など、作業の名前で挙げます。そうすると、知識がどこに偏っているかが見えてきます。すべてのシステムを一度に調べようとせず、止まると業務が困るシステムから始めます。

書き残すものは設計書だけではありません。報告書のヒアリングでは、設定書や構成図も成果物として提出してもらうよう契約で定めている地方公共団体がありました。*1 改修のたびに、変えた理由と変えた箇所を記録してもらえば、ソースコードの変更履歴を読む手がかりが社内に残ります。

社内で判断する社員は、1人ではなく2人以上にします。仕様を決める、改修の優先順位を決める、委託先の見積りを確かめるといった判断は、社員が担います。1人だけに任せると、社内の側で同じ偏りが生まれます。契約には、技術者の交代や契約の終了に備えて、次の委託先への説明に誰が立ち会うか、どの資料を渡すか、データの形式を開示するかを書いておきます。

つまずきやすい点

一つ目は、同じ委託先との契約を続けていること自体を問題にしてしまうことです。報告書も、既存ベンダーと再度契約する事例が、直ちにベンダーロックインの事例というわけではないとしています。*1 長く付き合う委託先がシステムをよく知っているのは、それ自体が強みです。問われるのは、替えようと思えば替えられる状態を保てているかどうかです。

二つ目は、SESの会社を替えれば解決すると考えることです。知識と権利とデータを社内に残さないまま委託先を替えても、次の委託先の技術者に知識が集まるだけです。替える前に、書き残すものと引き継ぎのやり方を決めておく必要があります。

三つ目は、外部の技術者を急に減らし、社員だけで開発しようとすることです。社員だけで改修を進められる人数がそろわないうちに委託を減らすと、改修が止まります。外部の技術者に加わってもらいながら、書き残すものと判断する人を社内に置くほうが進めやすくなります。技能を社内に残すか委託するかの切り分けは「エンジニア採用と外注依存の分かれ目、技能を社内に残すかで選ぶ」で、企業が実施しているロックイン対策の割合は「ベンダーロックインの対策、企業が実施する4つの取り組み」で扱っています。

外部に委託するときに確認しておきたい点

新しくSESの技術者や業務委託の専門人材に加わってもらうときは、作業を始める前に3つのことを確かめておくと、外注依存を招きにくくなります。1つ目は、作業ごとに何を書き残してもらうか。2つ目は、作ったプログラムや資料を、社内とほかの会社が使えるかどうか。3つ目は、交代や契約の終了のときに、誰にどんな説明をしてもらうかです。

見積りの金額や候補者の経歴と並べて、この3つへの答え方も比べる材料にします。書き残す作業が見積りに入っていれば、ほかの作業と同じように進み具合を確かめられます。反対に、書き残す作業が見積りに入っていなければ、日々の改修に追われて後回しになりやすいため、契約の前に作業として加えてもらいます。

まとめ:SESの外注依存で確かめておきたい3つの点

SESの外注依存がベンダーロックインにつながらないようにするうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、委託先の技術者しか説明できない作業を書き出し、作業ごとに書き残すものを決めること。第二に、仕様や改修を判断する社員を2人以上置くこと。第三に、作ったものの権利、データの形式、交代のときの引き継ぎを契約に書いておくことです。この3点を踏まえておけば、「委託先を替えたいのに、システムの中身を説明できる人が社内にいない」という事態を避けやすくなります。外注依存の解消の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

書き残すものを決めても、それを書く時間が社内に無いことがあります。作業の書き出しや設計書の整理を、作業名と期限を決めて外部の専門人材に任せ、判断は社員が持つ形にすると進めやすくなります。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

外注依存の解消には、どのくらいの期間がかかりますか

システムの大きさと書き残すものの量によって変わるため、一律の目安はありません。止まると業務が困るシステムを1つ選んで作業の書き出しから始め、契約の更新の時期に合わせて成果物と引き継ぎの取り決めを見直していくと、進み具合を確かめやすくなります。

書き残す作業は、誰が担当しますか

作業の中身を知っている委託先の技術者に書いてもらい、社内の担当者が読んで分かるかを確かめる形が進めやすいです。書き残す作業も、委託する作業の一部として見積りに含めてもらいます。

SESから業務委託や自社雇用に切り替えれば、ベンダーロックインは起きませんか

契約の形を変えるだけでは防げません。システムの知識・権利・データが特定の人や会社の側にしか無ければ、自社の社員であっても、その人が辞めたときに同じことが起こります。どの契約の形でも、書き残すものと判断する人を社内に置くことが要になります。

公正取引委員会の調査は、どこで読めますか

公正取引委員会のWebサイトで、2022年2月8日に公表された「官公庁における情報システム調達に関する実態調査報告書」を読めます。*2 アンケートの設問と回答数は、報告書の図表に載っています。

SESへの外注依存を見直したいとき

委託先にしか説明できない作業の洗い出しと、社内に残すものの整理からご相談いただけます。

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出典

  1. *1 参考:公正取引委員会「官公庁における情報システム調達に関する実態調査報告書」(令和4年2月)(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/feb/220208_system/220208_report.pdf)。出典:公正取引委員会「官公庁における情報システム調達に関する実態調査報告書」。第1の2(調査対象及び調査方法:1,835機関に令和3年6月3日からアンケート、1,021機関が回答)と脚注1(ベンダーロックインの定義)、第1の3(1)(情報の非対称性)、第2の図表1・図表2(既存ベンダーと再度契約することとなった事例の有無と理由)とヒアリング意見、図表8(ベンダーロックイン防止のための工夫)、第3の1(2)(特定の職員の知見への依存)、図表21(担当職員の異動時の引継ぎの工夫)を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:公正取引委員会「(令和4年2月8日)官公庁における情報システム調達に関する実態調査について」(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/feb/220208_system.html)。出典:公正取引委員会の報道発表。報告書の公表日(令和4年2月8日)を参照(2026年9月確認)




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