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2026.08.10 らしくコラム

在庫最適化AIの始め方|発注点と適正在庫の決め方

欠品で販売機会を逃す一方、余った在庫が倉庫を圧迫し値引きや廃棄につながる——多くの現場が、この相反する悩みを同時に抱えています。担当者の経験と勘に頼った発注では、品目数が増えるほど一つひとつに目が届かなくなり、どこかで在庫の偏りが生じがちです。そこで検討されるのが、需要予測を踏まえて発注のタイミングと数量をはじき出す在庫最適化AIです。

ただ、在庫最適化は「需要予測」や「在庫管理システム」としばしば混同されがちです。役割が違うものを一緒にしてしまうと、要件定義でつまずきかねません。本記事では、発注担当者やプロジェクト責任者に向けて、在庫最適化AIの考え方・需要予測や在庫管理との違い・導入で扱うデータ・進め方の勘所を整理します。

倉庫と在庫のイメージ

在庫最適化AIとは——需要予測・在庫管理との違い

在庫最適化AIとは、需要の見込みやコスト、リードタイムといった条件をもとに、品目ごとに「いつ・いくつ発注すればよいか」を導き出す仕組みを指します。混同されやすい2つの言葉と並べると、役割の違いがはっきりします。

まず需要予測AIは、「この品目が今後どれだけ売れそうか」を推定する仕組みです。売れ行きの見込みを出すところまでが役割で、その数字をどう発注に反映するかは別の判断になります。次に在庫管理システムは、入出庫や棚卸しを記録し、今どこに何がいくつあるかを正確に把握するための仕組みです。いわば現状を「記録」する役割を担います。

これに対して在庫最適化は、需要予測という「見込み」と在庫管理という「現状」を入力として受け取り、欠品と過剰在庫のバランスを取りながら発注の方針を決める——いわば「判断」の部分を担うものです。予測が当たっても、発注のタイミングや数量の決め方が適切でなければ在庫は偏ります。だからこそ、予測・記録・判断を切り分けて考えることが、要件を整理する出発点になります。

この記事のポイント

  • 在庫最適化は、需要予測(見込み)と在庫管理(記録)を入力に、発注の判断を担う点で両者と役割が異なります。
  • 核になるのは発注点・発注量・セーフティストックの設計で、欠品と過剰在庫のトレードオフをどう取るかが問われます。
  • まず売上や欠品リスクの大きい品目に絞って導入し、人の判断と併用しながら広げる進め方が現実的です。

なぜ在庫の最適化は難しいのか

在庫の適正化が難しいのは、相反する2つのコストを同時に抑えようとするためです。在庫を厚めに持てば欠品は減りますが、保管費用や資金の寝かせ、陳腐化のリスクも見過ごせないものです。逆に在庫を絞れば費用は下がる一方、欠品による販売機会の損失や顧客離れを招きかねません。この綱引きの落としどころを、品目ごとに見つける必要があります。

さらに現場の条件が、この判断を一段と複雑にします。品目数が数千・数万に及べば、一つずつ手作業で発注量を詰めるのは現実的ではありません。仕入れから納品までのリードタイムは仕入先や時期によって揺れ、需要そのものも曜日・季節・販促によって上下しがちです。加えて、複数の倉庫や店舗に在庫が分散していると、どこにどれだけ配置するかという問題も重なります。人の経験だけでこれらを同時にさばくのは負担が大きく、機械の計算が力を発揮する場面といえます。

基本的な考え方——発注点と適正在庫

在庫最適化の土台になるのが、発注点・発注量・セーフティストックという考え方です。用語を整理しておきましょう。

用語 意味 決め方を左右する要素
発注点 在庫がこの水準まで減ったら発注する、という引き金の在庫量 リードタイム中に見込まれる需要+セーフティストック
発注量 1回の発注でどれだけ仕入れるかの数量 発注コストと保管コストのバランス
セーフティストック 需要やリードタイムのばらつきに備える上乗せ分 需要のばらつきの大きさ・目標とする欠品の許容度
サービスレベル 欠品をどこまで許すかの目標(例:需要の95%を在庫でまかなう) 品目の重要度・欠品時の影響の大きさ

これらは古くから在庫管理の理論で扱われてきた考え方で、AIが新しく生み出したものではありません。AIが寄与するのは、需要のばらつきやリードタイムの変動を過去データから捉え、品目ごと・時期ごとに条件を細かく反映して計算し続けられる点です。担当者が主要な品目だけ手計算していた部分を、多数の品目に広げて更新し続けられるようになります。処理の流れを図にすると次のとおりです。

在庫最適化AIの基本的な流れの図

導入で扱うデータと前提

在庫最適化AIの精度は、モデルの巧拙より入力データの整い方に大きく左右されます。着手前に、次のようなデータがどこまで揃っているかを確認しておくと見通しが立てやすくなります。

基本となるのは、過去の販売・出荷の実績、現在の在庫量、入出庫の履歴です。加えて、仕入先ごとのリードタイム、発注や保管にかかるコスト、品目の単価や賞味期限・保証期間といった制約も判断を左右する要素です。これらが在庫管理システムや基幹システムに正確に記録されているほど、計算の土台は安定します。逆に、実在庫と記録がずれている、リードタイムが感覚値でしか分からない、といった状態では、いくら計算しても出てくる発注提案は現実と噛み合いません。

その意味で、在庫最適化の前提として在庫データの整備が欠かせません。もし現状の記録が心もとない場合は、いきなり最適化を目指すより、在庫管理の仕組みを整えるところから段階を踏む方が結果的に近道になることもあります。

進め方と落とし穴

導入を成功させるには、範囲を欲張らずに始めることが肝心です。よくある進め方は、まず売上や欠品リスクの大きい品目に絞って対象を決めることです。在庫管理では、金額や重要度で品目を上位・中位・下位に分けて優先順位を付ける考え方(ABC分析と呼ばれます)が知られており、影響の大きい品目から着手すると効果を実感しやすくなります。

落とし穴として起こりやすいのが、AIの提案をそのまま鵜呑みにしてしまうことです。新商品で過去データがない、大型の販促を控えている、生産終了が決まっているといった事情は、過去データだけからは読み取れません。こうした例外は担当者が補正する前提で運用し、AIの提案はあくまで叩き台として扱う——この役割分担を最初に決めておくと、現場の納得感も得やすいはずです。導入後も、欠品率や在庫回転率といった指標を見ながら、予測や条件設定を定期的に見直していく運用が求められます。

外注時に確認しておきたい点

在庫最適化AIの開発や導入を外部に委託する場合は、次の点を事前にすり合わせておくと、認識のずれを防ぎやすくなります。まず、対象とする品目や拠点の範囲。全品目を一度に扱うのか、重要な品目から段階的に広げるのかで、進め方も費用も変わります。次に、入力データの状況。在庫や入出庫、リードタイムがどの程度正確に記録されているかは、成果を大きく左右する前提です。

さらに、既存の在庫管理システムや基幹システムとの連携方法、そしてAIの提案を担当者がどう確認・補正して発注につなげるかという運用の流れも、あらかじめ整理しておきたい点です。在庫最適化は一度計算して終わりではなく、実績を見ながら方針を更新し続ける取り組みになります。単発の開発で区切るのか、運用や見直しまで含めて依頼するのかを明確にしておくと、導入後のつまずきを抑えやすくなります。

まとめ:在庫最適化AIで押さえる3つの視点

在庫最適化AIは、需要予測や在庫管理とは役割の異なる「発注の判断」を担う仕組みです。導入を検討するうえで押さえたい視点は3つに整理できます。第一に、予測・記録・判断を切り分け、自社が本当に必要としているのがどれなのかを見極めること。第二に、発注点・発注量・セーフティストックの設計を通じて、欠品と過剰在庫のトレードオフをどこで取るかをビジネス側と決めること。第三に、重要な品目から段階的に始め、例外は人が補正しながら実績で見直す運用を組むこと。この3点を踏まえておけば、「予測は当たるのに在庫は偏ったまま」という状態を避けやすくなります。在庫データの整備状況に不安があれば、要件整理の段階から外部の知見を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)としてシステム開発とデータ活用を一貫して受託しています。在庫最適化は、在庫データの棚卸しから需要予測との連携、発注点・セーフティストックの設計、既存システムとの連携や運用の仕組みづくりまで、工程を分断せずに対応できるのが強みです。現状のデータ整備の状況を含め、要件整理の段階からご相談いただけます。

よくある質問

在庫最適化AIと需要予測AIは何が違うのですか。

需要予測AIは「この品目が今後どれだけ売れそうか」という見込みを推定する仕組みです。在庫最適化AIは、その見込みやコスト・リードタイムを入力として「いつ・いくつ発注すればよいか」を導き出します。予測が当たっても発注の決め方が適切でなければ在庫は偏るため、両者は役割が分かれています。

在庫管理システムがあれば在庫最適化はできますか。

在庫管理システムは入出庫や棚卸しを記録し、今どこに何がいくつあるかを把握する仕組みです。在庫最適化はその記録を入力として発注の判断を行うもので、役割が異なります。正確な在庫記録は最適化の前提になるため、まず在庫管理の仕組みを整えることが近道になる場合もあります。

セーフティストックはどう決めればよいですか。

セーフティストックは、需要やリードタイムのばらつきに備える上乗せ分で、需要のばらつきの大きさと、欠品をどこまで許すかの目標(サービスレベル)から決まります。ばらつきが大きい品目や欠品の影響が大きい品目ほど厚めになります。品目の重要度に応じて目標を変えるのが一般的です。

全品目を一度に対象にすべきですか。

最初から全品目を扱うより、売上や欠品リスクの大きい品目に絞って始める進め方が現実的です。金額や重要度で品目を分けて優先順位を付ける考え方(ABC分析)を使い、影響の大きい品目から着手すると効果を実感しやすくなります。運用に慣れてから対象を広げるとよいでしょう。

外注する場合、どこまで依頼できますか。

在庫データの棚卸しや要件整理といった上流から、需要予測との連携、発注点・セーフティストックの設計、既存システムとの連携、運用や定期的な見直しの仕組みづくりまで、範囲を分けて依頼できます。対象品目の範囲とデータの整備状況、発注への反映方法をあらかじめすり合わせておくと進めやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

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  1. *1 出典:中小企業庁「中小企業・小規模事業者の在庫管理」関連解説(https://www.chusho.meti.go.jp/


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