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医療画像診断AIとは|薬機法と医師の判断支援
X線やCT、内視鏡、病理標本といった医療画像から病変の候補を見つけ出し、医師の読影を助ける——医療画像診断AIは、医療分野でAIの活用がとくに進んできた領域の一つです。読影する画像の枚数は年々増え、専門医の負担や地域による偏りが課題となるなか、見落としを減らし業務を効率化する手立てとして関心が高まっています。
ただ、医療画像診断AIの開発は、一般的な画像認識システムと同じ感覚で進められるものではありません。人の健康に関わる判断を支えるため、薬機法という規制の枠組みや、医師との役割分担といった、この分野ならではの前提が関わる領域です。本記事では、医療機器メーカーや医療機関でシステム化を検討する発注担当者に向けて、医療画像診断AIの位置づけ・規制の前提・データと精度の難しさ・外注時の確認点を整理します。
目次
医療画像診断AIとは——何をするのか、しないのか
医療画像診断AIとは、X線やCT、MRI、内視鏡、病理といった医療画像を解析し、病変の候補を検出したり、その位置や確からしさを示したりして、医師の読影や診断を支援する仕組みを指します。ここで押さえておきたいのは、AIが診断そのものを下すわけではないという点です。あくまで医師が最終的な診断を行い、AIはその判断を支える材料を提供する立場にあります。
同じ画像を扱うAIでも、製造現場の外観検査AIとは前提が大きく異なります。外観検査が製品の良否を判定する仕組みであるのに対し、医療画像診断AIは人の健康に関わる判断を支えるため、後述する薬機法の規制や医師との役割分担が重くのしかかる点が特徴です。また、医療分野全般のAI活用の進め方はヘルスケアAI開発委託で扱っていますが、本記事はそのなかでも画像診断に的を絞って掘り下げます。「AIに任せて省力化する」というより、「医師の目を補い、見落としのリスクを下げる」ものだと捉えると、位置づけを理解しやすくなります。
この記事のポイント
- 医療画像診断AIは診断を下すのではなく、病変候補を提示して医師の判断を支える立場にあります。
- 診断を支援するプログラムは薬機法上の医療機器(SaMD)に該当し得るため、開発の初期から規制対応を見据える必要があります。
- 要配慮個人情報である医療画像の扱いや、施設ごとの画像のばらつき、市販後の性能変化が固有の論点です。
どのような場面で使われるか
医療画像診断AIは、画像を読み解く負担が大きい場面で活用が進んでいます。診療科や画像の種類によって狙いが変わるため、自社が対象とする領域を整理しておくのが近道です。代表的な場面を次の表にまとめました。
| 場面 | 支援の内容 | 扱う画像の例 |
|---|---|---|
| 放射線科の読影支援 | 病変候補の検出・位置の提示による読影の補助 | 胸部X線・CT・MRI |
| 内視鏡検査 | ポリープや病変の疑いをその場で示す | 消化管内視鏡の映像 |
| 病理診断の支援 | 標本画像から着目すべき領域を絞り込む | 病理スライドのデジタル画像 |
| 健診・スクリーニング | 多数の画像から要精査の候補を一次選別 | 健診で撮影する各種画像 |
いずれの場面でも共通するのは、AIが示すのは「候補」であって「確定した診断」ではないという点です。見落としを減らす助けになる一方で、AIが拾いすぎれば医師の確認の手間が増えることもあります。どこまでを提示し、どこからを医師に委ねるかの線引きが、実務では重要になります。
薬機法とプログラム医療機器(SaMD)という前提
医療画像診断AIを一般的なソフトウェアと分ける大きな違いが、薬機法(医薬品医療機器等法)の規制です。診断や治療を支援するプログラムは、その使われ方によっては「プログラム医療機器(SaMD:Software as a Medical Device)」として、薬機法上の医療機器に該当します*1。医療機器に当たる場合、リスクに応じたクラス分類のもとで、承認・認証・届出といった手続きが求められ、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)による審査の対象になります*2。
この前提が、開発の進め方に直結します。まず、自社がつくろうとしているものが医療機器に該当するのか(該当性)を、開発の初期に見極めておく必要があります。単に画像を整理・表示するだけの機能なのか、病変の疑いを示して診断を支援する機能なのかで、規制上の扱いが変わってくるためです。該当性の判断を後回しにすると、開発を進めてから規制対応のためにつくり直す、といった手戻りが生じかねません。加えて、機械学習を用いる場合は、市販後に性能が変化し得る点や、学習データのかたよりが審査・運用の論点として検討されています*2。規制対応は開発と切り離せる作業ではなく、設計の段階から織り込む前提だと捉えておくことが欠かせません。
データと精度の難しさ
医療画像診断AIの精度は、学習に使うデータの質と量に大きく左右されます。着手前に想定しておきたい論点を挙げます。
一つ目は、データの機微性です。医療画像は個人情報のなかでも要配慮個人情報にあたり、収集や利用、外部への提供は、個人情報保護法や医療情報の取り扱いに関する国のガイドラインに沿って進める必要があります。誰が匿名化するのか、どこに保管するのかを含め、扱いの設計が欠かせません。二つ目は、画像のばらつきです。撮影する機器のメーカーや設定、施設ごとの手順の違いによって、同じ部位でも画像の見え方が変わります。特定の施設のデータだけで学習させると、別の施設ではうまく機能しないこともあります。三つ目は、正解づくりの難しさです。何が病変かというラベル付けには専門医の知見が要り、医師によって判断が分かれる場合もあります。四つ目は、見落とし(偽陰性)と拾いすぎ(偽陽性)の重みです。病変を見逃す影響は大きい一方、拾いすぎれば確認の負担が増えるため、どちらをどこまで許容するかを医療現場と決める必要があります。
進め方と落とし穴
医療画像診断AIの開発でよくあるつまずきが、技術的な性能は出せても、規制対応や医療現場との連携でつまずくことです。試作段階で高い精度が出たとしても、医療機器としての承認や、実際の診療フローへの組み込みには、別の壁が待っています。そのため、医療機器に該当するかどうかの見極めと、必要な体制づくりを早い段階から並行して進めることが現実的です。
また、開発には医師や医療機関との連携が欠かせません。どのような支援が現場で本当に役立つのか、どの画像をどう見せれば読影の助けになるのかは、医療者の視点なしには決められないためです。データの提供元となる医療機関との合意、倫理面の手続き、そして現場が使い続けられる仕組みづくりまでを見据えて進めると、実用化までの距離を縮めやすくなります。技術開発だけを切り出して考えると、この分野では行き詰まりやすい点に注意が要ります。
外注時に確認しておきたい点
医療画像診断AIの開発を外部に委託する場合は、次の点を事前にすり合わせておくと、認識のずれを防ぎやすくなります。まず、医療機器該当性と薬機法対応をどう扱うか。委託先が規制対応の知見や経験を持つのか、承認・認証の手続きまで含めて相談できるのかは、この分野では大きな差になります。次に、データの扱い。医療画像をどのように受け渡し、匿名化し、保管するのか、要配慮個人情報としての管理を含めて取り決めておく必要があります。
さらに、医師や医療機関との連携をどう進めるか、品質を保つための管理の仕組みをどう整えるか、そして開発後の性能監視や更新をどう運用するかも、あらかじめ整理しておきたい点です。医療画像診断AIは、つくって納めれば終わりではなく、規制のもとで品質を保ちながら使い続ける仕組みです。研究開発の段階までを切り出すのか、規制対応や運用まで含めて依頼するのかを明確にしておくと、後の進め方が見通しやすくなります。
まとめ:医療画像診断AIで押さえる3つの視点
医療画像診断AIは、一般的な画像認識とは前提の異なる、規制と医療現場に深く関わる領域です。検討するうえで押さえたい視点は3つに整理できます。第一に、AIは診断を代替するのではなく医師の判断を支える立場であり、どこまでを提示するかの線引きを医療現場と決めること。第二に、診断を支援するプログラムは薬機法上の医療機器に該当し得るため、該当性の見極めと規制対応を開発の初期から織り込むこと。第三に、要配慮個人情報である医療画像の扱いと、施設ごとのばらつきや市販後の性能変化を前提に、データと運用の設計を進めること。この3点を踏まえておけば、「精度は出たが製品化できない」というつまずきを避けやすくなります。規制対応や体制づくりに不安があれば、要件整理の段階から外部の知見を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
医療画像診断AIは医師の代わりに診断するのですか。
いいえ。医療画像診断AIは病変の候補を検出・提示して医師の読影や診断を支援する立場で、最終的な診断は医師が行います。診断の責任は医師が担い、AIはその判断材料を提供するものと位置づけられています。
医療画像診断AIの開発には薬機法の対応が必要ですか。
診断や治療を支援するプログラムは、その使われ方によって薬機法上の医療機器(プログラム医療機器・SaMD)に該当し得ます。該当する場合はクラス分類に応じた承認・認証などの手続きが必要になります。まず医療機器に当たるかどうかの該当性を、開発の初期に見極めておくことが重要です。
一般的な画像認識システムと何が違うのですか。
扱う技術は近くても、前提が異なります。医療画像診断AIは人の健康に関わる判断を支えるため、薬機法の規制、要配慮個人情報である医療画像の扱い、医師との役割分担が重い論点です。製造現場の外観検査などとは、求められる規制対応や体制が大きく変わります。
学習データはどう集めればよいですか。
医療画像は要配慮個人情報にあたるため、収集や利用は個人情報保護法や医療情報の取り扱いに関する国のガイドラインに沿って進める必要があります。医療機関との合意や匿名化の設計に加え、施設ごとの画像のばらつきを踏まえ、偏りの少ないデータを集める工夫も求められます。
外注する場合、どこまで依頼できますか。
要件整理やデータの設計といった上流から、モデルの開発、医療機器該当性や薬機法対応の相談、医療機関との連携、開発後の性能監視や更新の運用まで、範囲を分けて依頼できます。規制対応の知見や経験があるか、データの扱いをどう取り決めるかをあらかじめ確認しておくと進めやすくなります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
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ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:厚生労働省「医療機器プログラムについて」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179749_00004.html)
- *2 出典:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医療機器プログラム(SaMD)の審査ポイント」(https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/devices/0047.html)