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技術面接で人事が見極める5つの質問
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 面接の前に決めるものがある:質問項目と評価基準をあらかじめ決めておくこととされています*1。割れる原因はここの未整備です。
- 技術の正解は判定しなくてよい:答え方の構造から、切り分けの手順・担当範囲・比較検討の実在は確認できます。
- 把握しない事項が定められている:本人に責任のない事項、本来自由であるべき事項、身元調査などの方法は就職差別につながるおそれがあります*1。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
エンジニアの面接で人事が抱える不安は、たいてい同じ形をしています。「技術の話になると、答えが正しいのか判断できない」。そこで現場の同席を待つことになり、日程が伸び、候補者が別の会社に決まる——よくある流れでしょう。
ただ、面接で人事が担うべき仕事は、技術の正解を判定することではありません。職務を遂行できる適性・能力があるかどうかを、決めておいた基準に照らして確認することです。厚生労働省の「公正な採用選考の基本」でも、面接を行う場合は職務遂行のために必要となる適性・能力を評価する観点から、あらかじめ質問項目や評価基準を決めておくこととされています*1。
本記事では、技術の中身を判定せずに確認できる質問の型、経歴書やスキルシートを担当範囲で読む手順、外部の物差しとしての資格の使い方、そして把握しないこととされている事項を整理します。要件そのものの書き方はエンジニア求人票の書き方と必須14項目で扱っているため、本記事はその要件を選考でどう使うかに絞ります。
目次
評価が割れるのは技術力の差ではなく、基準の未整備
面接官の間で合否が割れる状況を分解すると、たいてい原因は候補者側ではなく自社側にあります。
厚生労働省の資料は、公正な採用選考を行う基本として2点を挙げています。応募者の基本的人権を尊重することと、応募者の適性・能力に基づいた基準により行うことです*1。そして採用基準については、応募者のもつ適性・能力が求人職種の職務を遂行できるかどうかを基準として採用選考を行うことと説明されています*1。
この「基準」が言葉になっていないと、面接官はそれぞれの経験と好みで判断します。ある面接官は使用技術の新しさを見て、別の面接官はコミュニケーションの印象を見る。どちらも間違いではないため、議論が収束しません。
面接についての記載はさらに具体的です。職務遂行のために必要となる適性・能力を評価する観点から、あらかじめ質問項目や評価基準を決めておき、適性と能力に関係のない事項を尋ねないよう留意しましょう、とされています*1。あわせて、応募者の基本的人権を尊重する姿勢、応募者の潜在的な可能性を見いだす姿勢で臨み、できるだけ客観的かつ公平な評価を行うようにしましょうとも書かれています*1。
つまり「質問項目」と「評価基準」は面接の前に用意しておくものという整理です。面接の場で考えることではありません。求人票の必須要件をそのまま評価項目に移し、要件ごとに「何をもって満たすと判断するか」を1行で決めておけば、この2つは満たせます。
経歴書は技術名ではなく「担当範囲」で読む
書類選考の段階から見ていきましょう。エンジニアの経歴書やスキルシートには、使用技術・フレームワーク・クラウドサービスの名前が並びます。ここを読み比べようとすると、技術に詳しくない読み手は手が止まります。
読む順番を変えると進みます。技術名は最後に見ることにして、先に次の4つを拾ってください。
| 拾う項目 | 見るところ | 読み取れること |
|---|---|---|
| 規模 | チームの人数、期間、利用者数や取扱件数 | 1人で完結する仕事だったか、調整が必要な環境だったか |
| 役割 | 担当工程(要件定義/設計/実装/テスト/運用)の記載範囲 | 上流から入っていたか、指示された範囲の実装だったか |
| 意思決定 | 「選定」「提案」「見直し」などの動詞がある箇所 | 自分で決めた経験があるか、決まったものを受けていたか |
| 継続 | 同じ案件・同じ領域に何年関わっているか | 作って終わりか、運用して直す側まで見ているか |
この4つは技術の知識を必要としません。それでいて、求人票で決めた要件との距離をかなり測れます。たとえば「1人目のエンジニアとして要件から任せたい」役割であれば、意思決定の欄が空いている経歴書は要件との距離が遠いと判断できます。
逆に技術名の多さは、そのままでは評価材料になりません。多くの現場を短期で回ると名前は増えます。名前の数ではなく、どの技術について意思決定の動詞が付いているかを見るほうが、実態に近づけるでしょう。
なお、応募書類そのものについても留意事項があります。事業主が独自に応募用紙やエントリーシートの項目・様式を設定する場合は、適性と能力に関係のない事項を含めないよう留意しましょうとされています*1。自社で入力フォームを用意している場合は、この観点での見直しが要ります。
技術の正解を判定せずに成立する5つの質問
面接の本番です。技術の中身を判定するのではなく、答え方の構造から読み取る質問を用意します。以下の5つは、聞き手に技術知識がなくても成立します。
| 質問 | 答え方から読み取ること | 気になる答え方 |
|---|---|---|
| 直近で一番難しかった不具合を、原因が分かるまでの順番で説明してください | 切り分けの手順を持っているか。仮説と検証を交互に置けるか | 結論だけを話す。「調べたら分かりました」で経過が出てこない |
| その判断を最終的に決めたのは誰ですか | 担当範囲と裁量の実際。経歴書の記載との整合 | 主語が「チームで」のまま具体化されない |
| 選ばなかった代替案は何でしたか。なぜ選ばなかったのですか | 比較検討が実在したか。制約を言語化できるか | 代替案が出てこない。「一般的にこれが良いので」で終わる |
| もう一度やるなら、どこを変えますか | 結果を振り返る習慣。うまくいかなかった点を言えるか | 「特にありません」。成功談としてのみ語る |
| エンジニアでない人に説明するとき、どこがいちばん伝わりにくいですか | 相手に合わせて抽象度を変えられるか | 専門用語のまま説明を続ける。相手側の理解を想像しない |
5つとも、評価するのは技術的な正しさではなく、説明の構造です。原因究明の順番を追える人は、聞き手が素人でも順番どおりに話します。順番が飛ぶ、結論から動かない、質問の焦点がずれる——こうした様子は技術知識がなくても観察できます。
特に3つ目の「選ばなかった代替案」は効率のよい質問です。実際に検討した人は、制約(納期・費用・既存システム・運用体制)を挙げて説明します。検討していない場合は一般論に寄ります。制約が具体的に出てくるかどうかは、専門知識がなくても判別できる差でしょう。
やり方の注意点を2つ挙げます。1つは、質問を全員に同じ順序で聞くこと。順序が変わると比較ができません。もう1つは、面接官が答えを評価するのではなく、事前に決めた基準のどこに当たるかを記録すること。「良かった/合わなかった」ではなく「要件2は満たす、要件3は判断できず」と書くと、後の議論が短くなります。
資格は外部の物差しとして使える(ただし実務力とは別)
技術の深さを社内で判定しづらい場合、外部の物差しを1つ持っておくと会話が進みます。国家試験である情報処理技術者試験は、区分が知識・技能の水準で階層化されているため、この用途に向いています*2。
| 位置づけ | 試験区分 |
|---|---|
| 共通的知識(ITを活用する全ての社会人) | ITパスポート試験(IP) |
| 基本的知識・技能(セキュリティマネジメント領域) | 情報セキュリティマネジメント試験(SG) |
| 基本的知識・技能(情報処理技術者) | 基本情報技術者試験(FE) |
| 応用的知識・技能 | 応用情報技術者試験(AP) |
| 高度な知識・技能 | ITストラテジスト(ST)/システムアーキテクト(SA)/プロジェクトマネージャ(PM)/ネットワークスペシャリスト(NW)/データベーススペシャリスト(DB)/エンベデッドシステムスペシャリスト(ES)/ITサービスマネージャ(SM)/システム監査技術者(AU)/情報処理安全確保支援士(SC) |
この階層が役に立つのは、社内で「どのくらいの人が要るのか」を話すときです。「応用情報の範囲を一通り説明できる程度」「ネットワークは高度区分の領域まで踏み込める人」といった言い方をすると、技術者ではない参加者にも水準の話が通ります。求人票で使ったスキルの深さの指定と組み合わせると、社内の合意はさらに取りやすくなるでしょう。
注意点も明確にしておきます。資格の有無は実務経験の代わりになりません。合格していなくても実務で高い成果を出している人は多く、逆に合格していても担当範囲が狭いままの場合もあります。資格は必須要件ではなく、あくまで社内で水準を語るための共通語、または歓迎要件として扱うのが無理のない位置づけです。
なお試験制度そのものも動いています。令和8年度(2026年度)の応用情報技術者試験、高度試験、情報処理安全確保支援士試験はCBT(Computer Based Testing)方式で実施されるとされており*2、受験のしやすさが変わってきています。候補者に受験予定を尋ねる場合は、現行の実施方式と申込期間を確認したうえで話すほうが実務的でしょう。
把握しないこととされている事項——エンジニア採用で起きやすい形
質問を設計するときに同時に決めておきたいのが、聞かないことです。厚生労働省の資料では、適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり、面接で尋ねる、作文の題材とするなどによって把握すること、および特定の方法を実施することは、就職差別につながるおそれがあるとされています*1。
| 分類 | 挙げられている事項 |
|---|---|
| a 本人に責任のない事項の把握 | 本籍・出生地に関すること/家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)/住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)/生活環境・家庭環境などに関すること |
| b 本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握 | 宗教に関すること/支持政党に関すること/人生観、生活信条などに関すること/尊敬する人物に関すること/思想に関すること/労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること/購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること |
| c 採用選考の方法 | 身元調査などの実施/本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用/合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施 |
これらの事項は採用基準としないつもりでも、把握すれば結果として採否決定に影響を与えることになってしまい、就職差別につながるおそれがあると説明されています*1。「参考までに」の質問が、実務上いちばん危ないという理解になります。
個人情報の観点からの記載もあります。職業安定法第5条の5及び平成11年告示第141号により、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などの収集は原則として認められないとされ、これらの法令中の「公共職業安定所等」「職業紹介事業者等」には「労働者の募集を行う者」も含まれると注記されています*1。募集する企業自身が対象に含まれる点は押さえておきたいところです。
エンジニア採用でとくに注意したいのが、公開情報の扱いです。候補者の技術ブログやコード公開の内容を、応募書類に書かれた職務経歴の裏付けとして読むことと、そこから私生活や思想信条をうかがい知ることは別の行為です。見る範囲を「職務に関係する記述」に限定し、面接で触れる内容も職務の話に限るという運用を、事前に面接官の間で決めておきたいところです。あわせて、出自、障害、難病の有無および性的マイノリティなど特定の人を排除しないことが必要とされている点も、質問設計の前提になります*1。
また、リモート前提の募集では、通信環境や作業場所についての確認が必要になる場面があります。この場合も、住宅の間取りや同居家族といった生活環境の把握に踏み込まず、職務遂行に必要な条件(安定した通信、機密情報を扱える環境の確保方法)に限って確認する形にとどめてください。リモートを前提とした体制づくりの考え方はリモート開発チームの作り方で扱っています。
評価が割れたときの処理と、現場を呼ぶタイミング
最後に、面接後の意思決定です。基準を用意していても、判断が分かれることはあります。そのときの処理を先に決めておきましょう。
- 割れた要件を1つ特定する。全体の印象で議論せず、「どの要件について判断が違うのか」に絞ります。要件が特定できないなら、そもそも基準が粗いというサインです。
- その要件の深さを確認する。必須要件(高い実践力や一定の実践力を求める項目)で割れているなら、次の工程で現場のエンジニアに同席してもらう価値があります。歓迎要件で割れているだけなら、そこで止める理由は薄いでしょう。
- 追加で聞く質問を1つだけ決める。再面接の目的を「割れた要件の確認」に限定すると、候補者の時間も短く済みます。
もう1つ決めておきたいのが、見送りの記録です。どの要件を満たさなかったのかを1行で残しておくと、同じ役割で次の候補者を見るときの基準がぶれません。逆に「経験不足」「カルチャーが合わない」といった書き方で残すと、次の選考でも同じ言葉が繰り返され、要件の側に問題があっても気づけないまま進みます。見送りの理由が要件の言葉で書けないなら、それは候補者ではなく求人票を見直すべき状況だと考えたほうが実態に合うでしょう。
この整理をしておくと、現場のエンジニアを呼ぶ回数が減ります。人事だけで進める範囲と、技術の判断が必要な範囲が分かれるためです。現場の工数を面接に取られすぎる問題は、選考の設計を変えるほうが解決に近いでしょう。
なお、選考を整えても採用の決定までには時間がかかります。並行してプロジェクトを進める必要がある場合は、期間を埋める手段として業務委託の併用も選択肢に入ります。ただし要件と評価基準が固まっていない段階で外部に出すと、判断の根拠が社内に残りません。順序としては本記事の作業を先に置く形が無理のない進め方です。
採用選考の運用が労働関係法令に触れる部分については、社内規程との整合を含め、社会保険労務士等への確認を経て進めてください。
まとめ:人事だけで見極めるための3つの整理
第一に、面接の前に用意するものがあるという整理です。厚生労働省の「公正な採用選考の基本」では、採用選考は応募者の基本的人権を尊重すること、応募者の適性・能力に基づいた基準により行うことの2点を基本的な考え方とし、面接については職務遂行のために必要となる適性・能力を評価する観点から、あらかじめ質問項目や評価基準を決めておくこととされています。面接官の間で評価が割れる原因は、候補者の技術力の差ではなく、この基準が言葉になっていないことにあります。第二に、技術の正解を判定しなくても確認できることがあるという整理です。経歴書は技術名ではなく規模・役割・意思決定・継続の4項目で読み、面接では「難しかった不具合を原因が分かるまでの順番で」「その判断を最終的に決めたのは誰か」「選ばなかった代替案は何か」「もう一度やるならどこを変えるか」「エンジニアでない人に説明するとき伝わりにくい点はどこか」を同じ順序で聞きます。評価するのは技術的な正しさではなく説明の構造です。外部の物差しとしては情報処理技術者試験の階層が使えますが、資格の有無は実務経験の代わりにはなりません。第三に、把握しないこととされている事項があるという整理です。本人に責任のない事項、本来自由であるべき事項、身元調査などの選考方法の3分類が挙げられており、採用基準としないつもりでも把握すれば採否決定に影響を与えてしまうと説明されています。候補者の公開情報を見る範囲も、職務に関係する記述に限る運用を事前に決めておいてください。
よくある質問
技術がわからない人事だけで、エンジニアの面接をしてよいのでしょうか。
面接で確認すべきなのは、職務を遂行できる適性・能力があるかどうかです。技術的な正解を判定しなくても、説明の構造から確認できることがあります。「難しかった不具合を原因が分かるまでの順番で説明してください」「選ばなかった代替案は何でしたか」といった質問は、聞き手に技術知識がなくても成立します。ただし必須要件について判断が割れた場合は、その要件に限って現場のエンジニアに同席してもらう形が現実的でしょう。
面接の前に決めておくべきことは何ですか。
厚生労働省の「公正な採用選考の基本」では、面接を行う場合は職務遂行のために必要となる適性・能力を評価する観点から、あらかじめ質問項目や評価基準を決めておくこととされています。実務としては、求人票の必須要件をそのまま評価項目に移し、要件ごとに「何をもって満たすと判断するか」を1行で決めておく形が取り組みやすいはずです。質問は全員に同じ順序で聞くと比較ができます。
スキルシートはどこを見ればよいですか。
技術名を読み比べる前に、規模(チーム人数・期間・取扱件数)、役割(担当した工程の範囲)、意思決定(選定・提案・見直しといった動詞が付いている箇所)、継続(同じ領域に何年関わっているか)の4つを拾うと、技術知識がなくても要件との距離が測れます。技術名の多さはそのままでは評価材料になりません。どの技術について意思決定の記述が付いているかを見るほうが実態に近づけます。
面接で聞いてはいけないことは決まっているのですか。
厚生労働省の資料では、採用選考時に配慮すべき事項として3分類が挙げられています。本人に責任のない事項(本籍・出生地、家族、住宅状況、生活環境など)、本来自由であるべき事項(宗教、支持政党、人生観、尊敬する人物、思想、労働組合や社会運動、購読新聞・雑誌・愛読書など)、そして採用選考の方法(身元調査などの実施、適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用、合理的・客観的に必要性が認められない健康診断の実施)です。採用基準としないつもりでも把握すれば採否決定に影響してしまうとされています。
情報処理技術者試験の資格は選考基準にできますか。
社内で水準を語るための共通語としては役に立ちます。ITパスポート試験が共通的知識、基本情報技術者試験が基本的知識・技能、応用情報技術者試験が応用的知識・技能、ITストラテジストやネットワークスペシャリストなどが高度な知識・技能という階層になっているため、「どのくらいの人が要るのか」を技術者以外にも説明しやすくなります。ただし資格の有無は実務経験の代わりにはならないため、必須要件ではなく歓迎要件として扱う位置づけが無理がありません。
出典
- *1 参考:厚生労働省「公正な採用選考の基本」(https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm)。採用選考の基本的な考え方、面接時にあらかじめ質問項目や評価基準を決めておくこと、採用選考時に配慮すべき事項の3分類、職業安定法第5条の5等に基づく個人情報の取扱いの一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:独立行政法人情報処理推進機構「試験区分一覧」(情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験)(https://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/list.html)。国家試験の区分と知識・技能の水準による位置づけ、令和8年度の応用情報技術者試験・高度試験・情報処理安全確保支援士試験のCBT方式による実施の確認として(2026年8月確認)