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熱中症対策で義務になった2つの措置と対象作業
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 2025年6月に規則が増えた:労働安全衛生規則に第612条の2が加わりました*1*3。
- 決めるのは体制と手順の2つ:報告させる体制と、悪化を防ぐ措置の手順です*1。
- 定めるだけでなく周知まで:どちらの項も、作業従事者への周知を求めています*1。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
暑い時期の作業について、事業者がやることが1つ増えました。
2025年6月1日から、労働安全衛生規則に第612条の2が加わっています*1*3。熱中症を生ずるおそれのある作業を対象にした条文です*1。
求められているのは2つです。異変を報告させる体制と、症状の悪化を防ぐ措置の手順で、どちらもあらかじめ定めて周知します*1。
本記事では、対象になる作業、2つの措置の中身、周りにある既存の条文、そして根拠と罰則の位置までを整理します。
目次
2025年6月に規則が1つ増えた
まず、何が変わったかからです。
労働安全衛生規則に第612条の2が置かれました*1。厚生労働省の労働局は、改正労働安全衛生規則が令和7年6月1日に施行されたとしています*3。
条文は2項に分かれています*1。第1項が報告をさせる体制、第2項が悪化を防止するための措置の内容と手順です*1。
どちらも書き出しは同じです*1。「暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ」と始まります*1。
| 項 | 定めるもの | 単位 | 周知の相手 |
|---|---|---|---|
| 第1項 | 熱中症の自覚症状または他の作業従事者が発見した疑いを報告させる体制 | 記載なし | 当該作業に従事する作業従事者 |
| 第2項 | 作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた医師の診察または処置その他悪化を防止するために必要な措置の内容と実施手順 | 作業場ごと | 当該作業に従事する作業従事者 |
労働安全衛生規則第612条の2第1項および第2項より作成*1。
共通しているのはあらかじめという言葉です*1。暑くなってから考える形にはなっていません*1。
もう1つの共通点が周知です*1。決めて終わりではなく、その作業に従事する人に伝えるところまでが条文に書かれています*1。
手を動かす順番も見えてきます*1。対象になる作業を洗い出し、体制と手順を決め、作業に入る人へ伝える、という並びです*1。
入社時の教育とも接点があります。教育の項目そのものは雇入れ時の安全衛生教育で必要な8つの項目で扱いました*1。
季節が来る前に整えておく類の作業です*1*3。
対象になる作業には目安がある
次に、どの作業が対象かです。
条文の言い方は幅があります*1。「暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業」という書き方です*1。
具体的な目安は行政の側が示しています*3。厚生労働省の労働局は、WBGT値28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施されることが見込まれる作業としています*3。
WBGTは湿球黒球温度と呼ばれる指標です*3。気温だけでなく湿度や輻射熱を含めて評価する考え方です*3。
時間の条件は2つ並びです*3。連続1時間以上という見方と、1日4時間超という見方のどちらかに当たれば対象になります*3。
屋外に限られていません*1。条文は暑熱な場所とだけ書いており、屋内の作業場も同じ枠に入ります*1。
屋内の暑熱作業には別の条文もあります*1。規則第587条が、溶鉱炉や焼鈍炉、加硫がま、乾燥室など16の類型を作業環境測定を行うべき屋内作業場として挙げています*1。
自社に当てはまるかは、場所と時間の2軸で確かめる形になります*1*3。倉庫や搬入口のように、屋内でも空調が届きにくい場所は見落としやすいところです*1。
季節も限定されていません*1。条文に月や期間の指定はなく、条件に当たる作業があるかどうかで判断します*1。
第587条の16類型を見ると、想定されている場面の幅が分かります*1。溶鉱炉や転炉のような重工業だけでなく、陶磁器やレンガの焼成、乾燥室、給湿を行う紡績や織布の作業場も並んでいます*1。
冷蔵庫や製氷庫のように低温側も同じ条文に入っています*1。暑熱と寒冷と多湿がひとまとめに扱われているのは、いずれも温湿度が健康に影響する場面だからです*1。
作業の切り出しができれば、あとの2つは書き出す作業になります*1。
1つ目は報告させる体制
第1項から見ていきます。
規則第612条の2第1項は、作業に従事する人が熱中症の自覚症状を有する場合と、他の作業従事者が熱中症が生じた疑いがあることを発見した場合に、その旨の報告をさせる体制を整備することを求めています*1。
報告する人が2通りある点が要点です*1。本人が申し出る経路と、周りが気づいて知らせる経路の両方が条文に書かれています*1。
厚生労働省の労働局も同じ整理で案内しています*3。連絡先や担当者を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に周知することとされています*3。
本人が動けない場面を想定した設計です*1。熱中症は判断力が落ちることがあり、自己申告だけに頼る形では拾えません*1。
周知の相手も条文にあります*1。「当該作業に従事する作業従事者」に対して、その体制を周知させなければならないとされています*1。
作業従事者という言い方にも意味があります*1。自社の労働者だけを指す書き方にはなっていません*1。
同じ場所で複数の会社が作業する現場では、周知の範囲を先に決めておく必要が出てきます*1。誰に伝えるかを曖昧にしたままでは条文の求めに届きません*1。
体制の中身は難しいものではありません*3。誰に、どの手段で伝えるかを決めて、掲示や朝礼で共有する形が想定されています*3。
ここまでが1つ目です*1。次が、報告を受けた後に何をするかです*1。
2つ目は悪化を防ぐ手順
第2項が実際の対応です。
規則第612条の2第2項は、作業場ごとに、措置の内容と実施に関する手順を定めることを求めています*1。第1項と違い、単位が明示されています*1。
条文に例示があります*1。当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察または処置を受けさせること、その他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置です*1。
順番も読み取れます*1。まず作業から離し、体を冷やし、必要なら医療につなぐという並びになっています*1。
厚生労働省の労働局は、事業場における緊急連絡網や緊急搬送先の連絡先および所在地なども挙げています*3。手順の中身として具体化した形です*3。
ここでも周知が求められます*1。措置の内容と実施に関する手順を、当該作業に従事する作業従事者に周知させなければならないとされています*1。
作業場ごとという条件は実務に効きます*1。搬送先も連絡経路も場所によって変わるため、1つの様式を全社で使い回すだけでは足りません*1。
手順を紙で持つ意味もここにあります*3。判断する人が現場にいないときでも、書いてあれば同じ順番で動けます*3。
実際に発症した場合は労災の手続きにもつながります。起きた後の流れは労災が起きたときの手順|報告と補償と給付の順番で整理しました*1。
2つの措置は、報告を受ける側と動く側で対になっています*1。片方だけでは条文の求めを満たしません*1。
周りの条文は前からある
暑さに関する規定は、今回が最初ではありません。
温湿度の調節が規則第606条です*1。暑熱、寒冷または多湿の屋内作業場で有害のおそれがあるものについて、冷房、暖房、通風等適当な措置を講じなければならないとしています*1。
測定は第607条です*1。第587条に該当する屋内作業場について、半月以内ごとに1回、定期に気温、湿度およびふく射熱を測定することとされています*1。
休憩設備の規定もあります*1。第614条が、著しく暑熱な作業場などでは作業場外に休憩の設備を設けなければならないとしています*1。
ただし書きも置かれています*1。坑内等特殊な作業場でこれによることができないやむを得ない事由があるときは、この限りでないとされています*1。
立入りの制限も条文にあります*1。第585条が、多量の高熱物体を取り扱う場所または著しく暑熱な場所について、関係者以外の立入りを禁止し、その旨を見やすい箇所に表示することを求めています*1。
保護具の備え付けも同様です*1。第593条が、著しく暑熱な場所における業務などについて、保護衣や保護眼鏡等の適切な保護具を備えなければならないとしています*1。
産業医の要件にも暑熱が出てきます*1。第13条第1項第3号イが、多量の高熱物体を取り扱う業務および著しく暑熱な場所における業務に常時500人以上を従事させる事業場について、専属の産業医を選任することとしています*1。
つまり第612条の2は、既にある枠組みに異変が起きたときの動き方を足した条文だと読めます*1。設備や測定の話とは別の層です*1。
健康面の枠組み全体との関係も整理しておくと動きやすくなります。心身の不調への対応はメンタルヘルス対策はなぜ人事労務と切り離せないのかで扱いました*1。
設備の側で防げる部分もあります*1。第606条の冷房や通風、第614条の作業場外の休憩設備は、暑さそのものにさらされる時間を減らす方向の規定です*1。
測定は状態を知るための規定です*1。第607条が半月以内ごとに1回という頻度を定めており、感覚ではなく数値で押さえる形になっています*1。
既存の条文と重ねて見ると、抜けている層が分かります*1。
根拠と罰則はどこにあるか
条文の位置づけも見ておきます。
規則の上位にあるのが労働安全衛生法第22条です*2。事業者は次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならないとし、第2号に放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害を挙げています*2。
高温がここに入っています*2。熱中症に関する規則は、この条文を受けた具体的な内容という位置づけです*1*2。
罰則の規定も法にあります*2。第119条第1号が、第20条から第25条までなどの規定に違反したときは、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処するとしています*2。
第22条はこの範囲に含まれています*2。健康障害を防止するための措置は、努力義務ではなく義務として書かれている条文です*2。
事業者の責務も第3条に置かれています*2。単に最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の健康を確保するようにしなければならないとされています*2。
注文者側への配慮規定もあります*2。第3条第3項が、建設工事の注文者その他の仕事を他人に請け負わせる者について、施工方法、作業方法、工期、納期等に関する配慮を求めています*2。
発注の仕方が現場の負荷を決める場面はあります*2。工期や納期の設定が、暑い時間帯の作業量に直結するためです*2。
条文の並びを追うと、責務、措置義務、具体的な規則、罰則という層になっているのが分かります*1*2。
責務の条文には協力の話も入っています*2。第3条第1項後段が、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならないとしています*2。
自社がどの層で手を打つかを決めておくと、毎年の見直しがしやすくなります*2。
採用実務で押さえる3点
最後に、採用の担当が押さえる3点です。
1点目は、募集の段階で作業環境を書けるようにしておくことです。屋外作業や暑熱作業がある職種では、条件の説明に含めておくと入社後の齟齬が減ります*1。
対策の中身も説明の材料になります*3。報告の経路と、体調が悪くなったときの手順が決まっていること自体が、働く側から見れば分かりやすい情報です*3。
2点目は、入社時の教育に組み込むことです*1。第612条の2は周知を求めており、入ってきた人にも同じ内容が届く形にしておく必要があります*1。
雇入れ時の教育とは別枠の周知です*1。教育の項目に足す形でも、作業手順書に載せる形でも、伝わっていることが確認できれば足ります*1。
3点目は、複数の会社が入る現場での範囲を決めておくことです*1。条文は作業従事者と書いており、自社の労働者に限る書き方をしていません*1。
受け入れる側と送り出す側で、誰がどこまで周知するかを最初に決めておくと重複も抜けも起きにくくなります*1。
健康診断や体調の把握とも重なります。入社前後の健康診断の位置づけは雇入時の健康診断と選考時の健康診断は別物で扱いました*1。
持病がある人への配慮も別の枠組みがあります。両立の進め方は治療と就業の両立支援の進め方|努力義務化と3つの様式で整理しています*1。
人が集まりにくい職種ほど、働く環境の説明が効いてきます*3。決めた内容を書き出しておけば、募集にも教育にも同じ材料が使えます*1*3。
採用の広報でも使える材料になります*3。設備や休憩の取り方まで含めて書ければ、職場の様子が伝わる情報になります*1。
作業場ごとに手順を作る過程は、現場を見直す機会にもなります*1。搬送先や連絡経路を書き出す作業を通じて、人の配置や交代のさせ方まで見えてくることがあります*1。
暑い時期が来る前に、対象作業の洗い出しから始めるのが現実的な順番でしょう*1*3。
まとめ:熱中症対策の要点
第一に、加わった条文です。労働安全衛生規則第612条の2は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときについて、2つのことをあらかじめ定めて周知することを事業者に求めています。厚生労働省の労働局は、改正労働安全衛生規則が令和7年6月1日に施行されたとしています。第二に、2つの中身です。第1項は、作業に従事する人が熱中症の自覚症状を有する場合と、他の作業従事者が熱中症の疑いを発見した場合に報告をさせる体制を整備し、当該作業に従事する作業従事者に周知することとしています。第2項は、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察または処置を受けさせることその他症状の悪化を防止するために必要な措置の内容と実施に関する手順を定め、同じく周知することとしています。厚生労働省の労働局は、対象をWBGT値28度以上または気温31度以上の環境下で連続1時間以上または1日4時間を超えて実施されることが見込まれる作業とし、緊急連絡網や緊急搬送先の連絡先および所在地なども手順の内容として挙げています。第三に、根拠の位置です。労働安全衛生法第22条第2号は高温による健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならないとし、第119条第1号は第20条から第25条までなどの規定に違反したときに6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処するとしています。規則には第606条の温湿度調節、第607条の半月以内ごとの測定、第614条の作業場外の休憩設備など、以前からの規定も置かれています。
よくある質問
いつから義務になりましたか。
厚生労働省の労働局は、改正労働安全衛生規則が令和7年6月1日に施行されたとしています。加わったのは第612条の2で、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときに、報告をさせる体制の整備と周知(第1項)、および悪化を防止するために必要な措置の内容と実施手順を作業場ごとに定めて周知すること(第2項)を事業者に求めています。
どの作業が対象になりますか。
条文は「暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業」としています。厚生労働省の労働局は、WBGT値28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施されることが見込まれる作業を対象として案内しています。条文は屋外に限っておらず、暑熱な場所であれば屋内の作業場も同じ枠に入ります。
報告体制とは何を決めることですか。
労働安全衛生規則第612条の2第1項は、作業に従事する人が熱中症の自覚症状を有する場合と、他の作業従事者が熱中症が生じた疑いがあることを発見した場合に、その旨の報告をさせる体制を整備することを求めています。厚生労働省の労働局は、連絡先や担当者を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に周知することとしています。本人からの申し出と、周りが気づいた場合の両方の経路が条文に書かれています。
手順にはどこまで書きますか。
同条第2項は、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察または処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容および実施に関する手順を定めることを求めています。厚生労働省の労働局は、事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先および所在地などもその内容として挙げています。作業場ごとという単位が条文に明示されています。
罰則はありますか。
労働安全衛生法第22条は、事業者は健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならないとし、第2号に放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害を挙げています。同法第119条第1号は、第20条から第25条までなどの規定に違反したときは、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処するとしています。
出典
- *1 参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」(昭和四十七年労働省令第三十二号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032)。第612条の2の熱中症を生ずるおそれのある作業(第1項の報告をさせる体制の整備と周知、第2項の作業場ごとの措置の内容と実施手順の策定と周知)、第585条の立入禁止、第587条の作業環境測定を行うべき暑熱の屋内作業場、第593条の保護具、第606条の温湿度調節、第607条の半月以内ごとの気温・湿度・ふく射熱の測定、第614条の有害作業場の休憩設備、第13条第1項第3号の専属の産業医を要する業務の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」(昭和四十七年法律第五十七号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057)。第3条の事業者等の責務(最低基準にとどまらない健康の確保、注文者による施工方法・作業方法・工期・納期等への配慮)、第22条第2号の高温等による健康障害を防止するため必要な措置、第119条第1号の第20条から第25条までなどの違反に対する六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金の一次情報として(2026年8月確認)
- *3 参考:厚生労働省 熊本労働局「熱中症対策が義務化されます(令和7年6月1日施行)」(確認日2026年8月31日)(https://jsite.mhlw.go.jp/kumamoto-roudoukyoku/newpage_01552.html)。改正労働安全衛生規則が令和七年六月一日に施行されたこと、対象がWBGT値二十八度以上又は気温三十一度以上の環境下で連続一時間以上又は一日四時間を超えて実施されることが見込まれる作業であること、体制整備・手順作成・関係者への周知が事業者に義務付けられること、報告体制として連絡先や担当者を事業場ごとにあらかじめ定めること、手順の内容に緊急連絡網や緊急搬送先の連絡先及び所在地が含まれることの一次情報として(2026年8月確認)