LASSIC Media らしくメディア
引き取りに関わる4つの経験、業務分野は25.1%が下端
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 業務分野は25.1%が下端:4項目の中で最も低い値です*2。
- 言語・ツールは38.7%:差は13.6ポイントです*2。
- 全員が経験なしは4.1%:業務分野だけ4%台です*2。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
担当者が抜けたあと、残るメンバーで引き取れるかは何で決まるでしょうか。
手がかりは、残る側にどの経験がどれだけ残っているかという構成です。
IPAが公開している開発プロジェクトのデータでは、経験を4つの項目に分けて集計しています*1*2。
「全員が十分な経験」と答えた割合は、言語・ツールの利用が38.7%に対し、業務分野は25.1%でした*2。
差は13.6ポイントです*2。薄いのは技術の側ではなく、業務分野の側という並びになっています*2。
目次
引き取れるかは残る側の構成で決まる
担当者が1人抜けたとき、チームに残るのは人数ではなく経験の構成です。同じ人数でも、どの経験が残っているかで引き取れる範囲が変わります。
その構成を業界の分布として測れる資料があります*1。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」で、公開は2022年9月26日、最終更新は2025年8月28日と記されています*1。
規模も示されています*1。これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析したと書かれています*1。
性質を先に書きます*1。この資料には「事業終了に伴い今後の発行予定はございません」と明記されています*1。最新の調査ではありません*1。
構成も確かめられます*4。本編のほかに業種編3編、サマリー版、マンガ解説版、グラフデータが公開されています*4。
業種編の対象も書かれています*1。プロジェクト数の多い金融・保険業、情報通信業、製造業の3業種について、本編と同一の分析を行ったとされています*1。
数値の扱いを書きます*2*3。件数は本編の表に示された値をそのまま引き、合計と割合はその件数から筆者が算出しました*2*3。
グラフデータの著作権はIPAが保有しています*3。使用条件に従い、著作権表示としてCopyright 2022 IPAを記します*3。
照合もしました*2*3。グラフデータには同じ項目の値が1行1プロジェクトの形で入っており、数えた件数が本編の表と一致することを確認しています*2*3。
項目の定義も資料にあります*2。データ収集フォームには開発要員スキルとして、業務分野の経験、分析・設計経験、言語・ツール利用経験、開発プラットフォームの使用経験の4項目が並んでいます*2。
収集の仕方も載っています*2。フォームはVersion 4.3で、全項目を入力する版と簡易入力版の2種類が示されています*2。
単位を確認します*2。数えているのはプロジェクトの件数で、人数でも企業数でもありません*2。
沿革も書かれています*4。IPAは2005年からエンタプライズ分野の開発データを収集し、2020年に書籍版の名称を変えて現在の形になったとされています*4。
まず4項目の並びを見ます*2。
「全員が十分な経験」は25.1%から38.7%
本編の表A3-2-10は、要員の経験を4段階で示しています*2。
選択肢は4つです*2。全員が十分な経験、半数が十分な経験で残り半数はいくらかの経験、半数がいくらかの経験で残り半数は経験なし、全員が経験なしです*2。
上端は言語・ツール利用経験でした*2。「全員が十分な経験」が335件で、N865に対して38.7%です*2。
次が開発プラットフォームの使用経験です*2。303件で、N820に対して37.0%でした*2。
3番目が分析・設計経験です*2。254件で、N872に対して29.1%です*2。
下端は業務分野の経験でした*2。219件で、N872に対して25.1%です*2。
上端と下端の差は13.6ポイントです*2。同じプロジェクトの要員でも、項目によって十分とされる割合が違います*2。
本編の記述もあります*2。4項目それぞれについて「全員が十分な経験」が2割強から4割弱だと書かれています*2。
順序に注意して読みます*2。技術に近い項目のほうが十分とされる割合が高く、業務分野が低い並びです*2。
ただし理由は書かれていません*2。なぜこの順序になるのかは、資料からは読めません*2。
言えるのは並びだけです*2。それでも、どの経験が薄いかを社内で示す材料にはなります*2。
次に、いちばん下の選択肢を見ます*2。
業務分野だけ「全員が経験なし」が4.1%
4段階のうち最も下の選択肢は「全員が経験なし」です*2。
業務分野の経験では36件でした*2。N872に対して4.1%です*2。
他の3項目はもっと少ないです*2。開発プラットフォームが20件2.4%、言語・ツールが4件0.5%、分析・設計が1件0.1%でした*2。
つまり4項目のうち業務分野だけが4%台です*2。他の3項目は2%台以下にとどまります*2。
1つ上の選択肢も同じ向きです*2。「半数がいくらかの経験、残り半数は経験なし」は業務分野が144件16.5%で、4項目の中で最も高くなります*2。
他は1割前後です*2。開発プラットフォームと分析・設計が11.2%、言語・ツールが8.8%でした*2。
下2つを合わせると差が広がります*2。業務分野は180件20.6%、分析・設計は99件11.4%、言語・ツールは80件9.2%、開発プラットフォームは112件13.7%です*2。
読み方が決まります*2。経験が薄い側に寄っているのは、4項目の中で業務分野です*2。
実務でこれが意味するのは、埋める順番です。業務分野の経験は、外から連れてきた人がすぐに持てるものではありません。
ただし、この資料は誰が抜けたのかを聞いていません*2。離脱と経験の構成の関係は集計に含まれていません*2。
業務システムの側から費用を整理した記事は別にあります。業務システム開発のコスト削減が参考になります。
次に、上2つを合わせた割合を見ます*2。
上2つを合わせると79.4%から90.8%
上2つの選択肢を合わせると、一定の経験がある構成の割合が出ます*2。
上端は言語・ツール利用経験でした*2。335件と450件を合わせて785件、90.8%です*2。
次が分析・設計経験です*2。254件と519件を合わせて773件、88.6%でした*2。
3番目が開発プラットフォームの使用経験です*2。303件と405件を合わせて708件、86.3%です*2。
下端はここでも業務分野の経験でした*2。219件と473件を合わせて692件、79.4%です*2。
本編の記述と一致します*2。上2つを合わせると8割弱から9割強になると書かれています*2。
この合計は件数から算出しています*2。25.1%と54.2%という丸めた割合を足したものではありません*2。
4項目の順序は変わりません*2。どの指標で見ても業務分野が下端に来ます*2。
ここで母数の違いも押さえます*2。Nは820から872まで違うため、割合の差を細かく論じることはしません*2。
「半数が十分な経験、残り半数はいくらかの経験」が多数派です*2。分析・設計が519件59.5%、業務分野が473件54.2%、言語・ツールが450件52.0%、開発プラットフォームが405件49.4%でした*2。
つまり全員が十分という構成は少数派です*2。半数が十分という構成が業界の標準的な形になっています*2。
体制の相場そのものは別の指標で測れます。外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場で同じ資料の別の項目を扱っています。
次に、この集計の弱点を書きます*2。
未回答が607件から659件ある
この4項目には未回答も表に示されています*2。
業務分野と分析・設計はどちらも607件でした*2。言語・ツールが614件、開発プラットフォームが659件です*2。
Nと足すと同じ数になります*2。872と607、865と614、820と659は、いずれも合計が1,479です*2。
つまり未回答はNの7割前後にのぼります*2。回答されたプロジェクトだけの分布だという前提を外せません*2。
資料は未回答の理由を説明していません*2。なぜこの項目の回答率が低いのかは読めません*2。
読み方を限定します*2。業界全体の平均ではなく、この項目に回答したプロジェクトの中での分布として扱います*2。
それでも使える理由があります*2。4項目は同じ1,479件の中から回答されており、項目間の順序を比べる用途には向きます*2。
逆に使えないのは水準の断定です*2。「業界の4分の1しか業務分野の経験が十分でない」と書くことはできません*2。
選択肢の言葉づかいにも幅があります*2。「十分な経験」「いくらかの経験」の境目は回答した側の判断です*2。
この点は前提として置きます*2。基準が示されていないため、割合から質を論じることはしません*2。
工程ごとにどこを自社に残しているかの分布は別に集計しました。レガシー刷新を止めるのは理解不足ではなく要員の不足で扱っています。
次に、管理する側の分布を見ます*2。
PMのレベルは管理する要員数で対応が変わる
本編の図A3-2-9は、PMの経験とスキルの分布を示しています*2。
いちばん多いのはレベル4でした*2。244件で、N751に対して32.5%です*2。
次がレベル5です*2。238件、31.7%でした*2。
3番目がレベル3です*2。212件、28.2%です*2。
上のレベルは少数でした*2。レベル6とレベル7を合わせて57件、7.6%にとどまります*2。
本編の記述もあります*2。レベル5が約3分の1弱、レベル4も約3分の1、レベル6とレベル7は少数とされています*2。
時系列にも触れています*2。2014年度から2019年度と比較してレベル5がやや減少しているとされています*2。
定義も資料に書かれています*2。ITスキル標準の職種プロジェクトマネジメントで評価すると注記されています*2。
版の情報も添えられています*2。評価に使うのはV2またはV22006で、その後2008年3月にV3、2008年10月にV32008、2012年3月にV32011が公開されたと記されています*2。
対応表も添えられています*2。レベル6とレベル7は管理する要員数がピーク時500人以上、または50人以上500人未満の規模に対応するとされています*2。
下のレベルも同じ形です*2。レベル5はピーク時10人以上50人未満、レベル4はピーク時10人未満、レベル3は特定せずと対応づけられています*2。
ここが要員の話とつながります*2。レベルは管理する要員数の規模で対応が決まる定義なので、人数が増えれば対応するレベルも上がる建て付けです*2。
PMの体制を外から補う場合の考え方は別に整理されています。ITプロジェクトマネージャー(PM)不足を外部委託で補うをご覧ください。
引き取りの順番
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*2。
| 項目 | 全員が十分 | 上2つの計 | 全員が経験なし | N |
|---|---|---|---|---|
| 言語・ツール利用経験 | 335件 38.7% | 785件 90.8% | 4件 0.5% | 865 |
| 開発プラットフォーム使用経験 | 303件 37.0% | 708件 86.3% | 20件 2.4% | 820 |
| 分析・設計経験 | 254件 29.1% | 773件 88.6% | 1件 0.1% | 872 |
| 業務分野経験 | 219件 25.1% | 692件 79.4% | 36件 4.1% | 872 |
1段目は書き出しです。抜けたあとに残るメンバーについて、4項目それぞれを4段階のどこに当てはまるかで記します。
分布と比べる材料があります*2。全員が十分という構成は25.1%から38.7%で、半数が十分という構成のほうが多数派です*2。
2段目は業務分野を先に埋めることです。業務の背景や過去の判断は、資料を読んでも短期には身につきません。
ここは社内で埋める前提に置きます。抜けた担当者と近い距離で仕事をしていた人に、まず範囲を渡します。
3段目は技術側の判断です。言語・ツールや開発プラットフォームの経験は、外から足せる可能性が残ります。
分布もその向きです*2。この2項目は上2つの計が86.3%と90.8%で、業務分野の79.4%より高くなっています*2。
4段目は管理の負荷です。人を足すなら、管理する要員数が増えることも合わせて見ます。
定義がその形になっています*2。PMのレベルは管理する要員数の規模で対応が決まるため、人数を増やす判断は管理側の話とつながります*2。
順番を逆にすると進みません。技術の穴から埋めると、業務の判断ができる人が残らないまま作業だけが動きます。
実務では、業務分野を社内に残し、技術側を外から足す形になります。社員を業務の判断に寄せ、実装や検証を外部の要員に任せる形が取れます。
期間を区切って入れるなら、フリーランスを含む業務委託の使い方が合います。引き取りが終わるまでの数か月だけ人を足し、落ち着いたら戻す形にします。
この集計から読めないことも押さえます*2。誰が抜けたのか、経験の構成と成否の関係、未回答が多い理由は含まれていません*2。
時点の限界もあります*1。この資料は2022年の公開で、事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されているため、それより後の傾向は読めません*1。
まとめ:業務分野から埋める
第一に、資料の性質です。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」は公開が2022年9月26日、最終更新が2025年8月28日となっており、これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析されています。事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されているため、最新の調査ではありません。件数は本編の表に示された値で、合計と割合はその件数から筆者が算出しました。グラフデータの著作権はIPAが保有しており、著作権表示としてCopyright 2022 IPAを記します。第二に、4項目の並びです。「全員が十分な経験」は言語・ツール利用経験が335件38.7%、開発プラットフォーム使用経験が303件37.0%、分析・設計経験が254件29.1%、業務分野経験が219件25.1%でした。上端と下端の差は13.6ポイントです。第三に、下の選択肢です。「全員が経験なし」は業務分野が36件4.1%で、開発プラットフォームの20件2.4%、言語・ツールの4件0.5%、分析・設計の1件0.1%より高くなります。下2つを合わせると業務分野が180件20.6%で、他の3項目は9.2%から13.7%です。第四に、上2つの合計です。言語・ツールが785件90.8%、分析・設計が773件88.6%、開発プラットフォームが708件86.3%、業務分野が692件79.4%で、どの指標でも業務分野が下端に来ます。本編も8割弱から9割強と記しています。第五に、弱点です。未回答が607件から659件あり、Nと足すといずれも1,479になります。回答されたプロジェクトの中での分布として扱う必要があります。第六に、管理する側です。PMのレベルはレベル4が244件32.5%、レベル5が238件31.7%、レベル3が212件28.2%、レベル6とレベル7が57件7.6%でした。ITスキル標準の職種プロジェクトマネジメントで評価され、管理する要員数の規模で対応レベルが変わる定義です。第七に、限界です。誰が抜けたのか、経験の構成と成否の関係、未回答が多い理由、2022年より後の傾向は今回の集計に含まれていません。
よくある質問
要員の経験はどの項目がいちばん薄いですか。
IPAのソフトウェア開発分析データ集2022の本編の表A3-2-10では、「全員が十分な経験」の割合が言語・ツール利用経験の335件38.7%に対し、業務分野経験は219件25.1%で4項目の下端でした。差は13.6ポイントです(確認日2026年9月4日)。
「全員が経験なし」はどれくらいありますか。
業務分野経験が36件、N872に対して4.1%です。他の3項目は開発プラットフォーム使用経験が20件2.4%、言語・ツール利用経験が4件0.5%、分析・設計経験が1件0.1%で、業務分野だけが4%台になります。
一定の経験がある構成はどれくらいの割合ですか。
「全員が十分な経験」と「半数が十分な経験、残り半数はいくらかの経験」を合わせると、言語・ツール利用経験が785件90.8%、分析・設計経験が773件88.6%、開発プラットフォーム使用経験が708件86.3%、業務分野経験が692件79.4%です。本編も8割弱から9割強と記しています。
PMのレベルはどのように決まっていますか。
ITスキル標準の職種プロジェクトマネジメントで評価すると注記されており、管理する要員数の規模で対応レベルが変わる定義です。レベル6とレベル7はピーク時500人以上または50人以上500人未満、レベル5はピーク時10人以上50人未満、レベル4はピーク時10人未満、レベル3は特定せずと対応づけられています。
この数字を業界の平均として使えますか。
使えません。この4項目には未回答が607件から659件あり、Nと足すといずれも1,479になります。回答されたプロジェクトの中での分布として扱う必要があります。項目間の順序を比べる用途には向きますが、業界全体の水準を断定することはできません。
出典
- *1 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。公開日・最終更新日・5,546プロジェクト・事業終了に伴う発行予定なしの記述の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。表A3-2-10・図A3-2-9・表A3-2-9の件数と選択肢の定義、データ収集フォームの項目名として(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022グラフデータ」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000103288.zip)。行単位の値の確認として。著作権はIPAが保有(Copyright 2022 IPA)(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/index.html)。業種編3編・サマリー版・グラフデータという構成の記述として(2026年9月確認)