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DXの効果は生産効率で49%|わからないは33%
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 生産効率は49%:労働環境の改善も同じ49%で並びました*1。
- 外向きの効果は25%:新規事業の創出は上位2区分で25%でした*1。
- 「わからない」が33%から51%:測っていない側が厚い分布です*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
道具を入れたのに、現場の稼働が軽くなった実感がない。よく聞く話です。
止まっている工程は止まったまま、担当者の残業だけが続く。効果を測る仕組みもないので、次に何をすればよいかも決まりません。
手がかりは、DXの効果をどう実感しているかを企業に聞いた調査です。
IPAの調査では、生産効率の向上で「効果があった」と「やや効果があった」を合わせて49%でした*1。労働環境の改善も同じ49%です*1。
そして「わからない」が33%から51%を占めます*1。効果を測れていない側が、どの項目でも3割を超えていました*1。
目次
道具を入れても稼働が軽くならない
要員が足りないとき、道具で置き換える案がまず挙がります。人を増やすより早く見えるからです。
ところが入れたあとに、現場の手が空いた感じがしない。どこが軽くなったのかを示す数字も社内にありません。
この実感の分布を集計した調査があります*1。IPAの「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」で、2023年6月12日に発行されました*1。
調査の時期も示されています*1。2022年11月から12月にかけて実施されたものです*1。
規模も書かれています*1。調査票の配布は7,864件で、回答は1,214件でした*1。
回答者の立場も示されています*1。企業の経営層や事業部門の責任者を対象としたとされています*1。
今回見るのはQ17です*1。DXの効果について、5つの項目それぞれの実感を尋ねたものです*1。
回答の形も確かめておきます*1。効果があった、やや効果があった、あまり効果がなかった、効果がなかった、わからないの5つから1つを選びます*1。
項目名は資料の選択肢名をそのまま使いました*1。言い換えていません*1。
数値の出所も断っておきます*1。比率は資料の図に示された整数です*1。この記事で行ごとに足すと、合計は99から101の幅になります*1。
上位2区分の合計は、その整数から筆者が算出しました*1。資料に載っている数字ではありません*1。
出典はIPA「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」です*1。示された値を用いて図と表を作成する編集と加工を筆者が行いました*1。
利用の条件も資料に書かれています*1。政府標準利用規約に準拠する形で、出典の記載と、編集や加工を行った場合はその旨の記載が求められています*1。
集計対象は「DXに取り組んでいる企業」に限られる
先に母集団を確かめます*1。この設問の集計対象は、回答者の全体ではありません*1。
資料に条件が書かれています*1。Q11のDXの取り組み状況で「非常に活発」「活発」「あまり活発ではない」と答えた企業に絞られています*1。
そのうえでN=830でした*1。取り組んでいないと答えた企業は入っていません*1。
つまり全企業の割合ではありません*1。すでに動いている側の中での実感の分布として扱うことになります*1。
ここを外すと数字の意味が変わります*1。「日本企業の49%が生産効率の効果を実感している」とは書けません*1。
対象の区分も示されています*1。全体の集計はユーザー企業、メーカー企業、サブシステム提供企業、サービス提供企業、その他の5区分です*1。
位置づけ別だけ範囲が違います*1。こちらは「その他」を含まない4区分でした*1。
区分の中身も資料に定義があります*1。組込みやIoTの製品を利用して調達する側、製品を開発して提供する側、部品やサブシステムを提供する側、受託開発や教育研修や運用などのサービスを提供する側です*1。
行ごとの回答数も違います*1。805から821の幅があり、設問のN=830とも一致しません*1。
「その他」の行もありますが、回答数が15しかないため扱いません*1。少ない回答数の行で割合を論じても、意味のある差にならないためです*1。
背景の数字も添えておきます*1。同じ調査のQ11では、DX全般の動きが事業に与える影響について「非常に大きい」が15%、「大きい」が42%でした*1。Nは1,128です*1。
取り組みの中身そのものは別の設問です*1。何に着手したかはDXの取り組み11項目の違い、実施中は38.8%から8.6%で扱っています。
実感されているのは社内の回り方、49%と49%
全体の分布から見ます*1。生産効率の向上は、効果があったが14%、やや効果があったが35%でした*1。
足すと49%になります*1。この行の回答数は821です*1。
労働環境の改善も同じ値でした*1。13%と36%で、合わせて49%です*1。回答数は807でした*1。
「効果があった」だけで見ると順序が付きます*1。生産効率の向上が14%、労働環境の改善が13%です*1。
ただし1ポイントの差です*1。整数で示された値なので、どちらが上かを断定できる差ではありません*1。
否定側も出しておきます*1。生産効率の向上は、あまり効果がなかったが14%、効果がなかったが3%でした*1。
労働環境の改善も近い形です*1。13%と6%です*1。
つまり否定の側は2割前後にとどまります*1。効果がなかったと言い切った企業は、生産効率の向上では3%でした*1。
この2つは、どちらも社内の回り方に関わる項目です*1。作っているものではなく、作り方の側に当たります*1。
体制の話に引き寄せると、ここが出発点になります。すでに動いている企業でも、社内の回り方の効果を実感できたのは半分ほど、という分布です*1。
外向きの効果は33%と25%
残りの3項目は水準が違います*1。製品・サービスの価値向上は9%と24%で、合わせて33%でした*1。回答数は805です*1。
新規事業の創出はさらに低くなります*1。7%と18%で25%、回答数は805でした*1。
地域社会への貢献が下端です*1。3%と10%で13%、回答数は807でした*1。
並べ直すと形が見えます*1。49%、49%、33%、25%、13%という並びです*1。
上端と下端の差は大きいものです*1。49%と13%なので、3倍を超えるひらきがあります*1。
否定側も見ておきます*1。新規事業の創出は、あまり効果がなかったが20%、効果がなかったが13%でした*1。
地域社会への貢献も同じ向きです*1。16%と19%で、効果がなかったの側が5項目のうち最も高い値になります*1。
つまり社内の回り方と、外に出す成果では実感の水準が違います*1。順序としては、内側のほうが上に来る分布です*1。
ただし理由は書かれていません*1。なぜ差が出るのかを尋ねた設問ではないため、因果については書けません*1。
この並びは、要員の使い方を決めるときの前提になります。外向きの成果を狙う前に、内側の回り方が半分しか実感されていない段階だということです*1。
「わからない」が33%から51%
この設問でいちばん目を引くのは、5つ目の区分です*1。「わからない」の割合が高く出ています*1。
生産効率の向上と労働環境の改善は、どちらも33%でした*1。3社に1社が答えを保留しています*1。
ほかの3項目はさらに高くなります*1。製品・サービスの価値向上が40%、新規事業の創出が43%、地域社会への貢献が51%です*1。
地域社会への貢献では過半数を占めます*1。この行だけで、効果を実感した13%の4倍近い割合になります*1。
この高さは、読み方に関わってきます*1。効果があったかどうかを答えられない企業が3割から5割いる分布だからです*1。
資料は理由を説明していません*1。なぜ「わからない」が多いのかは書かれていません*1。
ですから測っていないとも、測ったが判断できないとも書けません*1。読めるのは割合の高さまでです*1。
それでも実務では意味があります。自社が同じ状態なら、効果を語る前に測る対象を決める作業が残っている、ということになります。
何を測るかの手前で、どの業務が変わるのかを数える話はAIで変わる業務の把握、着手は1割前後にとどまるで扱っています。
位置づけ別は束ね方で順位が入れ替わる
生産効率の向上には位置づけ別の集計も載っています*1。ユーザー企業、メーカー企業、サブシステム提供企業、サービス提供企業の4区分です*1。
上位2区分で並べます*1。メーカー企業が54%で上端、ユーザー企業が52%、サービス提供企業が48%、サブシステム提供企業が44%でした*1。
回答数も添えておきます*1。それぞれ191、217、257、134です*1。
ところが「効果があった」だけで並べると変わります*1。ユーザー企業が18%で上端、サービス提供企業が15%、メーカー企業が14%、サブシステム提供企業が7%です*1。
メーカー企業が1番目から3番目に下がります*1。上位2区分では54%で上端でしたが、強く効果があったと答えた割合では14%でした*1。
内訳を見ると理由がわかります*1。メーカー企業は「やや効果があった」が40%で、4区分の中でいちばん高い値です*1。
ユーザー企業は逆の形でした*1。「効果があった」が18%で上端、「やや効果があった」は34%です*1。
ですからこの順位は、差がついたものとしては扱えません*1。どこまでを効果ありと数えるかで並びが変わります*1。
ほかの項目も並べておきます*1。労働環境の改善は上位2区分でサービス提供企業52%、ユーザー企業49%、メーカー企業とサブシステム提供企業が46%でした*1。
製品・サービスの価値向上はメーカー企業が40%で上端です*1。サブシステム提供企業が33%、ユーザー企業とサービス提供企業が31%でした*1。
新規事業の創出も同じ向きです*1。メーカー企業が31%で上端、サブシステム提供企業が30%、サービス提供企業が24%、ユーザー企業が18%でした*1。
地域社会への貢献はどの区分でも低い水準です*1。サブシステム提供企業とサービス提供企業が15%、メーカー企業が14%、ユーザー企業が11%でした*1。
4つの区分は別々の企業の集まりです*1。同じ企業を追いかけた集計ではありません*1。
この集計から読めないこと
使う前に、限界を並べておきます*1。
第一に、集計対象が絞られています*1。DXに取り組んでいると答えた企業だけが対象で、取り組んでいない企業は含まれません*1。
第二に、効果の中身が含まれません*1。何がどれだけ変わったのかを尋ねた設問ではありません*1。
第三に、測り方も示されていません*1。どこから効果があったと答えるかは回答者の判断に任されています*1。ですから水準の比較はしていません*1。
第四に、因果が読めません*1。どの取り組みが効果につながったのかは、この設問からは示されていません*1。
第五に、行ごとに回答数が違います*1。805から821の幅があり、設問のN=830とも一致しません*1。
第六に、値は整数です*1。行ごとに足すと99から101になるため、区分どうしの細かい差は論じていません*1。
第七に、4つの位置づけは別々の企業です*1。同じ企業の変化ではないため、立場が変わると効果も変わる、とは書けません*1。
第八に、範囲があります*1。この調査は組込みやIoTの分野が対象で、2022年11月から12月に実施されたものです*1。ほかの分野や、それより後の傾向は読めません*1。
なお、この設問には従業員数別、事業分野別、地域別の集計も載っています*1。この記事では扱いませんでした*1。
稼働を軽くする順番の4段
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*1。
| 項目 | 効果があった | やや効果があった | 上位2区分 | わからない | 回答数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 生産効率の向上 | 14% | 35% | 49% | 33% | 821 |
| 労働環境の改善 | 13% | 36% | 49% | 33% | 807 |
| 製品・サービスの価値向上 | 9% | 24% | 33% | 40% | 805 |
| 新規事業の創出 | 7% | 18% | 25% | 43% | 805 |
| 地域社会への貢献 | 3% | 10% | 13% | 51% | 807 |
1段目は、止まっている工程を書き出すことです。担当者ごとの体感ではなく、待ちに入っている作業を並べます。
2段目は、道具で減る分と人が要る分に分けることです。手順が決まっていて判断が入らない作業から印をつけます。
3段目は、人が要る分をさらに判断と手に分けることです。決めが必要な作業と、量をこなす作業を切り離します。
4段目は、手の側を期間を区切って外へ出すことです。作業量が読める部分から動かします。
この順番にする理由は、分布に出ています*1。すでに動いている企業でも、社内の回り方の効果を実感できたのは49%でした*1。
道具を足せば軽くなるという前提では、半分の企業の結果と合いません*1。人が要る分が残るためです。
「わからない」の高さも同じ方向を指します*1。33%から51%が答えを保留している以上、効果を測ってから判断する形では止まります*1。
ですから測る作業と、いま止まっている工程を動かす作業は分けて置きます。前者は社内で決め、後者は人数で吸収します。
実務では、4段目が外部要員の枠になります。フリーランスを含む業務委託は、この枠と相性があります。範囲を区切って渡し、片づいたら戻せるためです。
逆に、2段目と3段目の判断まで渡すと、次に同じことが起きます。何を道具に任せて何を人が持つかの決めは社内に残します。
工程ごとにどこまで外へ出しているかの分布は工程別の内製化|設計開発テストだけ委託が34.4%で扱っています。
枠の大きさを決めるときは、体制の中の比率が目安になります。外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場で分布を出しています。
最後に範囲を添えておきます*1。この調査は組込みやIoTの分野が対象で、2022年11月から12月に実施されたものです*1。ほかの分野やそれより後の傾向は読めません*1。
まとめ:測る作業と動かす作業を分ける
第一に、資料です。IPAの「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」は2023年6月12日に発行され、2023年7月25日に一部が改版されています。調査期間は2022年11月から12月で、調査票の配布は7,864件、回答は1,214件でした。回答者は企業の経営層や事業部門の責任者です。第二に、集計対象です。Q17は回答者の全体ではなく、Q11のDXの取り組み状況で「非常に活発」「活発」「あまり活発ではない」と答えた企業に絞られており、N=830でした。全企業の割合ではありません。第三に、数値の扱いです。比率は資料の図に示された整数で、行ごとに足すと合計は99から101になります。上位2区分の合計はその整数から筆者が算出しました。第四に、全体の分布です。生産効率の向上が上位2区分で49%、労働環境の改善も49%で並びます。回答数はそれぞれ821と807でした。第五に、外向きの項目です。製品・サービスの価値向上が33%、新規事業の創出が25%、地域社会への貢献が13%でした。第六に、「わからない」です。生産効率の向上と労働環境の改善が33%、製品・サービスの価値向上が40%、新規事業の創出が43%、地域社会への貢献が51%で、どの項目でも3割を超えています。第七に、位置づけ別です。生産効率の向上の上位2区分はメーカー企業54%が上端ですが、「効果があった」だけで並べるとユーザー企業18%が上端でメーカー企業は14%の3番目になり、束ね方で順位が入れ替わります。第八に、限界です。効果の中身も測り方も因果も含まれず、行ごとの回答数は805から821の幅があります。
よくある質問
DXの効果はどのくらい実感されていますか。
IPAの2022年度組込み/IoTに関する動向調査のQ17では、生産効率の向上について「効果があった」が14%、「やや効果があった」が35%で、合わせて49%でした。回答数は821です。労働環境の改善も13%と36%で49%でした(確認日2026年9月4日)。
この数字は企業全体の割合ですか。
違います。Q17の集計対象は回答者の全体ではなく、Q11のDXの取り組み状況で「非常に活発」「活発」「あまり活発ではない」と答えた企業に絞られており、N=830です。取り組んでいないと答えた企業は含まれていません。
項目によって差はありますか。
あります。上位2区分の合計は生産効率の向上と労働環境の改善が49%、製品・サービスの価値向上が33%、新規事業の創出が25%、地域社会への貢献が13%でした。社内の回り方に関わる項目のほうが上に来る並びです。
「わからない」はどれくらいありますか。
生産効率の向上と労働環境の改善が33%、製品・サービスの価値向上が40%、新規事業の創出が43%、地域社会への貢献が51%です。どの項目でも3割を超えており、地域社会への貢献では過半数を占めます。理由は資料に記載がありません。
企業の立場によって違いはありますか。
生産効率の向上の上位2区分は、メーカー企業54%、ユーザー企業52%、サービス提供企業48%、サブシステム提供企業44%でした。ただし「効果があった」だけで並べるとユーザー企業18%が上端で、メーカー企業は14%の3番目になります。束ね方で順位が入れ替わるため、断定はできません。
出典
- *1 参考:IPA「2022年度組込み/IoT産業の動向把握等に関する調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/kumikomi-iot2022.html)。発行日・改版日・調査期間・配布数7,864件・回答数1,214件の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「組込み/IoTに関する動向調査」調査結果(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022.pdf)。Q17の比率・回答数・集計対象の絞り込み条件・5つの選択肢・位置づけ別の4区分、およびQ11の事業への影響の値の一次情報として。示された値を用いた図表の作成という編集・加工を筆者が実施(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「アンケート調査票」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022-chousahyou.xlsx)。Q17の5つの項目の並びと選択肢の確認として(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「組込み/IoT産業の動向把握等に関する調査」一覧(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/index.html)。2018年度から2022年度まで年度ごとに調査が公開されているという構成の確認として(2026年9月確認)