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IT人材不足の対応の選び方|採用・育成・委託の比べ方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- IPAの調査の公開データを集計すると、IT人材不足への対応方針は中途採用による補充が54.2%で最も多く挙がっています。
- 外部委託(国内)は44.1%で3番目に多く、採用や育成と並んで検討されている方法です。
- 採用や育成が間に合わない工程は、何を作るかの判断を社内に残し、作業だけを期間を決めて委託すると進めやすくなります。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
開発の人手が足りないことは分かっている。けれども、中途で採るのか、社内で育てるのか、外部に委託するのかを決められないまま、工程の遅れだけが広がっていく——。システム開発の現場では、こうした状況が起こりがちです。IT人材不足の対応とは、開発や運用を担う人が足りないときに、採用、育成、配置転換、外部委託などの方法を選び、組み合わせて人を確保することを指します。
どの方法にも使いどころがあり、組み合わせて使うこともできます。ただし万能な方法はなく、選ぶ順番を決めておかないと、検討しているうちに工程が遅れていきます。本記事では、エンジニアの確保を担う実務担当者に向けて、IPAの調査で企業が挙げた対応方針、外部委託の位置、社内と社外の方法の組み合わせ方、そして最初に取りかかる対応を決める手順を整理します。
目次
IT人材不足の対応とは
対応の方法は、大きく4つに分けられます。1つ目は社外から人を採用するやり方で、中途採用と新卒採用があります。2つ目は、いまいる社員に新しい技術を学んでもらうリスキル(学び直し)です。3つ目は、社内の別の部署やグループ会社から人を移す方法で、他部門からの配置転換、本社と情報システム子会社の間の出向、シニア人材の再活用、退職した人の呼び戻しが含まれます。
4つ目が、作業を社外の会社や個人に委託する外部委託です。このほか、AIなどの新しい技術を使って、人が行う作業そのものを減らすやり方もあります。採用、リスキル、配置転換、外部委託の4つは、効果が出るまでの時間が違います。採用は募集から入社までに時間がかかり、リスキルは学んだ内容を仕事で使えるようになるまでに時間がかかります。外部委託は、任せる作業と期間が決まっていれば、比較的早く開発チームに人を加えられる方法です。
企業が挙げた対応方針
企業がどの方法を考えているかを知る手がかりに、IPA(情報処理推進機構)の「2024年度ソフトウェア動向調査」があります。2024年12月17日から2025年2月14日にかけて行われ、企業向けの調査には799件の回答がありました。*1 その中のQ4-5は、今後の人材不足への対応として考えている方法を、当てはまるものすべて選んでもらう設問です。*3 以下の比率は、公開されている調査結果のCSVから集計した値です。*2
最も多かったのは「中途採用による補充」で、799件のうち433件、54.2%でした。次いで「既存人材のリスキル」が50.6%、「外部委託(国内)」が44.1%、新卒採用が39.8%と続きます。*2 上位4つの内訳は、採用が2つ、育成と外部委託が1つずつです。
複数回答なので、1社がいくつもの方法を挙げています。選ばれた数の合計は2,705で、799件で割ると1社あたり平均3.39個です。*2 多くの企業は、1つの方法に決めているのではなく、3つ前後の方法を同時に候補にしていることになります。
外部委託はどの位置にあるか
外部委託(国内)の44.1%は、中途採用の54.2%より10.1ポイント低く、リスキルの50.6%より6.5ポイント低い値です。外部委託は特別な場合に限った方法ではなく、採用や育成と並んで検討されている方法だといえます。
同じ外部委託でも、海外への委託は57件、7.1%にとどまりました。国内の44.1%との差は37.0ポイントです。*2 外部委託を考えている企業の多くは、国内の委託先を想定していることになります。なぜ国内が選ばれるのかは、設問では尋ねられていません。
中途採用では、入社したあとも、社内のシステムや仕事の進め方に慣れるまでの期間が要ります。外部委託なら、任せる作業と期間を決めれば、その作業の経験がある人に加わってもらえます。いま遅れている工程を立て直すには、外部委託のほうが早く人をそろえやすい方法です。
社内で人を動かす方法
社内で人を動かす方法では、「他部門からの配置転換」が33.7%、「シニア人材の再活用」が19.6%でした。「本社、情報システム子会社間での人材出向」は12.8%、「情報システム部門の中に閉じて人材の配置転換を行う」は12.3%、「既退職者の呼び戻し」は8.1%です。*2 人を動かす方法の多くは、採用やリスキル、国内への外部委託より低い値にとどまっています。
配置転換は、社内のシステムや業務を知っている人に加わってもらえる点が強みです。一方で、移ってもらった部署では人が減るため、その部署の仕事をどうするかを同時に決めておく必要があります。移ってきた人がこれまでと違う技術を使う場合は、リスキルと組み合わせることになります。
社内と社外、両方を挙げる企業
企業ごとに、社内で人を動かす方法と、社外から人を入れる方法のどちらを挙げたかも数え直しました。社内側にはリスキル、他部門からの配置転換、情報システム部門内の配置転換、出向、シニア人材の再活用、退職者の呼び戻しの6つを、社外側には新卒採用、中途採用、外部委託(国内・海外)の4つを入れています。「新技術(AI等)の活用」は人の配置に関わる方法ではないため、どちらにも入れていません。
社内側のいずれかを挙げた企業は500件で62.6%、社外側のいずれかを挙げた企業は560件で70.1%でした。両方を挙げた企業は439件、54.9%と半分を超えています。どちらも挙げていない企業は178件、22.3%で、そのうち177件は「わからない」「今後増やす予定はない」「その他」のいずれかを選んでいました。*2
半分以上の企業が、社内の方法と社外の方法を組み合わせて考えていることになります。社内の人を育てて移すには時間がかかるので、その間の作業を社外の人に任せる、という組み合わせ方が考えられます。組み合わせる場合は、どの方法でどの作業を担うかを先に決めておくと、社内の人と社外の人の担当が重なりにくくなります。
どう進めるのか
調査では、1社あたり平均3.39個の方法が挙がっていました。すべてを同時に進めようとすると、どれも中途半端になりやすくなります。そこで、いま遅れている工程を立て直すことから始め、次の4つの手順で最初に取りかかる対応を決めます。
- 遅れている工程を1つ選ぶ
- その工程で足りないのが、作業の人手か、仕様を決める人かを見分ける
- 何を作り、何を後回しにするかの判断は社内に残す
- 作業を、期間を決めて外部に委託する
1つ目では、全社の要員計画を作る前に、いま遅れている案件を1件に絞ります。2つ目では、テストの作業量に対して人数が足りないのか、仕様を決める人の判断が遅れて作業が止まっているのかを切り分けます。判断が遅れているのであれば、人を増やしても工程は進みません。
3つ目の判断は、社内の事情を知っている人でなければ下せないため、社外に委ねません。4つ目では、判断が済んで作業の量が見積もれる部分から委託します。たとえば「結合テストの設計を来月末まで」のように、作業名と期間を決めて任せると、委託が終わったあと、社内で引き継ぎやすくなります。フリーランスを含む業務委託は、こうした期間を決めた依頼に向いています。
人員の稼働と契約期間の管理は「人的リソースの管理の実態」で、遅延の原因を切り分ける方法は「開発の遅延の原因を切り分ける」で扱っています。
つまずきやすい点
一つ目は、方法を比べることに時間をかけすぎることです。採用、育成、外部委託のどれにも長所と短所があり、比べているうちに工程の遅れが広がります。いま遅れている1件については、先に手順の2つ目までを済ませ、足りないのが作業の人手だと分かれば、委託を並行して進めます。
二つ目は、判断まで委託先に任せてしまうことです。何を作り、何を後回しにするかを委託先が決めると、社内の事情と合わない判断が出てきます。委託するのは、判断が済んだあとの作業にとどめます。前任者から仕様書を引き継ぐときの準備は「レガシーの仕様書を引き継ぐ手順」でまとめています。
三つ目は、調査の数値を実際の結果として受け取ることです。Q4-5は今後の方針として考えている方法を尋ねた設問で、実際にどの方法をとったか、何人分を確保できたかは示されていません。回答した企業は自由参加で集まっており、2025年4月7日時点の回答です。*1 ほかの企業が多く挙げた方法が、自社の遅れている工程に合うとは限りません。
まとめ:IT人材不足の対応で確かめたい3つの点
IT人材不足の対応を決めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、採用、育成、配置転換、外部委託では、人が加わるまでの時間が違うこと。第二に、多くの企業が社内の方法と社外の方法を組み合わせて考えており、外部委託(国内)も採用や育成と並ぶ方法であること。第三に、遅れている工程を1つ選び、判断は社内に残して、作業を期間を決めて委託することです。この3点を踏まえておけば、「採るか育てるかを決めているうちに、工程がさらに遅れた」という事態を避けやすくなります。どの作業から委託するかに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
この調査のデータは、自社で分析に使えますか
使えます。IPAは回答を匿名化してオープンデータとして公開し、分析レポートを募集しています。*1 設問一覧と調査結果のCSVがあるので、自社に近い条件の企業だけを集計し直すこともできます。
調査はいつ公開され、どの回答が含まれていますか
2025年2月27日に公開され、最終更新日は2025年4月25日です。2025年4月7日時点で企業799件と個人74件、計873件の回答がありました。*1 本記事の数値は、企業向けの799件だけを集計したものです。
外部委託と中途採用は、どちらを先に進めればよいですか
遅れている工程があるなら、その工程の作業を委託で進めながら、並行して中途採用の募集を始めるやり方があります。採用は入社までに時間がかかるため、採用が決まるのを待つ間にも工程が遅れるからです。長く社内に残したい知識や判断は、採用や育成で社員が担う形にしておくと進めやすくなります。
開発の要員体制を相談したいとき
遅れている工程のうち、どの作業を、どのくらいの期間委託するかの整理からご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査」調査結果データの公開と分析レポートの募集(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/result-software2024.html)。出典:IPA。公開日2025年2月27日・最終更新日2025年4月25日、調査期間2024年12月17日から2025年2月14日、2025年4月7日時点で企業799件と個人74件の計873件の回答、回答を匿名化してオープンデータとして公開し分析レポートを募集していることを参照(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 企業向け 調査結果(選択肢項目文字列)」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/h5f8pg00000028n8-att/software2024-c-result-data-str.csv)。出典:IPA。Q4-5の回答を集計した元データ。本記事の件数・比率・ポイント差・倍率・企業単位の数え直しは、このCSVから集計・計算した値(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 企業向け 設問一覧」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/h5f8pg00000028n8-att/software2024-c-questions.xlsx)。出典:IPA。Q4-5の設問文、14の選択肢とその表記(「新卒よる補充」は資料の表記どおり)、回答種別(複数選択)、すべての企業種別が回答対象であることを参照(2026年9月確認)