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豪州の既定共有|病理と画像診断の検査結果の共有は24時間以内
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 豪州は、病理と画像診断の報告書をMy Health Recordへ24時間以内に共有するよう、2つの規則で求めています。
- 24時間は、結果が依頼した医療提供者や患者本人などへ最初に渡った時点から数えます。
- 共有するのは医師が承認した報告書の情報で、画像そのものは対象外です。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
検査結果を連携先へ送る仕組みはあるのに、いつまでに送ればよいのかが決まっていない。送ったつもりでも、結果がどの経路で先に届いたのかを後から説明できない——。医療データの連携では、こうした問題が起こりがちです。豪州の既定共有(Share by Default)とは、病理検査(血液や組織を調べる検査)と画像診断の報告書を、24時間以内にMy Health Record(豪州の全国的な電子健康記録)へ共有するよう求める制度です。*1
この制度は、共有しなければその検査について公的医療保険の給付が支払われない、という仕組みにしている点に特徴があります。ただし、すべての検査が対象になるわけではなく、共有しなくてよい検査も条文で決められています。本記事では、医療データの連携を設計するIT部門の担当者に向けて、2つの規則の違い、共有する情報、24時間の数え方、共有しなくてよい検査、そして外部に委託するときに確認したい点を整理します。
目次
豪州の既定共有とは
既定共有は、2025年12月9日に制定された2つの規則で成り立っています。健康保険(既定共有)規則2025と、My Health Record(既定共有)規則2025です。*2 前者は健康保険法1973の第19AD条第1項に、後者はMy Health Records Act 2012に基づいています。どちらも、検査を行った医師が承認した報告書の情報を、My Health Recordシステムへ共有するよう求める点は共通です。
制度の名前にある「既定で共有する」は、共有することを原則にし、共有しなくてよい場合だけを条文で列挙する考え方を指します。2026年7月1日には、臓器提供などに伴う適合性検査を両方の規則の対象から外す改正規則が施行されました。*3 全体を図にまとめると、次のようになります。
2つの規則の違い
健康保険(既定共有)規則2025は、放射線科医や認定病理実務者が行う検査などのサービスを、対象として指定する規則です。第6条の注記には、例外が適用されない限り「そのサービスについてメディケア給付が支払われるためには、情報がMy Health Recordシステムと共有されている必要がある」と書かれています。*2 メディケアは豪州の公的医療保険で、共有しなければその給付が支払われない仕組みです。
My Health Record(既定共有)規則2025は、第5条で画像診断施設の所有者を、第10条で病理検査室の所有者を、所定の医療提供組織に指定し、My Health Records Act 2012の第78A条第1項による共有の義務を課しています。*1 こちらは、メディケア給付が支払われるかどうかを問わずに適用されます。
| 観点 | 健康保険(既定共有)規則2025 | My Health Record(既定共有)規則2025 |
|---|---|---|
| 根拠 | 健康保険法1973 第19AD条第1項 | My Health Records Act 2012(第5条・第78A条・第70AA条) |
| 義務のかけ方 | 共有していなければメディケア給付が支払われない | 所定の医療提供組織としての共有義務。給付の有無を問わない |
| 対象 | 放射線科医・認定病理実務者により、またはその者に代わって行われるサービス | 画像診断施設の所有者/病理検査室の所有者 |
| 対象の広さ | 各サービス表の項目と、それとみなされる保健サービス | 上記に加えて、報告書が作成されるその他あらゆる種類の医療 |
| 期限 | 24時間(依頼した医師、依頼がなければ治療している医師へ最初に提供された時点から) | 24時間(依頼した医療提供者・治療している医療提供者・患者本人のいずれかへ最初に提供された時点から) |
2つを並べると、給付の支払いを通じて共有を求める規則と、制度に参加する組織の義務として共有を求める規則の2本立てになっていることが分かります。給付の対象にならない検査でも、My Health Record側の規則で共有の義務がかかります。義務を負うのは施設の所有者なので、共有の仕組みを発注する立場になるのも所有者です。参加する組織に求められる方針や記録の要件は別の規則にあり、「My Health Records規則2026」で扱っています。
共有する情報は何か
画像診断では、医療を行った放射線科医が承認した報告書その他の文書に含まれる情報が共有の対象です。そのうえで、画像には適用しないと明記されています。*1 共有されるのは所見を書いた報告書で、撮影した画像のデータそのものではありません。健康保険(既定共有)規則2025にも、同じ規定があります。
病理検査も同じで、病理医が承認した報告書その他の文書に含まれる情報が対象です。どちらも「承認した」報告書と書かれているため、承認前の下書きや途中の値は共有の対象に含まれないことになります。システムの側では、報告書が承認された時点を記録し、そこで共有の処理を始める作りが考えられます。
対象となる医療は、給付のサービス表に載っている検査に限られず、報告書が作成されるその他の医療も含みます。
24時間はいつから数えるのか
My Health Record側の規則の第8条と第13条は、共有するまでの期間を24時間とし、その起点を、情報が次のいずれかへ最初に提供された時点と定めています。その医療を依頼した医療提供者、患者を治療している医療提供者、そして患者本人の3者です。*1
健康保険法側の規則の第7条と第10条も期間は24時間ですが、起点の書き方が少し違います。その専門的サービスの提供を依頼した医師、依頼がなかった場合は、その情報が関係する人を治療している医師です。*2
どちらの規則でも、起点は検査が終わった時刻でも、報告書が承認された時刻でもありません。結果が誰かに最初に渡った時刻です。たとえば、依頼元の医療機関へ電子的に結果を返した時刻と、患者向けのサイトに結果を載せた時刻があれば、早いほうが起点になります。結果を届ける経路が複数ある施設では、経路ごとに配信した時刻を記録しておかないと、いつまでに共有すればよいのかを計算できません。
共有しなくてよい検査
画像診断と病理検査に共通する除外は3つです。職場の薬物またはアルコールの検査、裁判所の命令による検査、法執行のための検査の目的で行われる医療は、共有の対象から外れます。*1 いずれも、患者の診療記録として残す目的の検査ではありません。
病理検査には、さらに2つの除外があります。1つは研究や臨床試験のための検査で、一定の条件を満たすものです。もう1つが、2026年7月1日に加わった適合性検査です。改正規則は、両方の規則の定義に同じ文言を加えました。適合性検査とは「臓器、組織、血液および血漿製剤、細胞、体液(生殖細胞および生殖のための材料を含む)の提供に関して、提供者と受領候補者の検体について適合性を確認するために行う検査であって、その結果が、提供者と受領候補者の双方についての情報を含む単一の要約または報告として提供されるもの」です。*3
除外の理由は、定義の後半から読み取れます。結果が提供者と受領候補者の2人の情報を含む1つの報告書として出るため、どちらか一方の記録として共有すると、もう一方の情報まで入ってしまいます。施行後に分かった問題に、定義を加えて対応した改正です。同じ豪州では、年齢制限SNSの規則も、施行後に条件を加える改正を行っていました。
システムでつまずきやすい点
一つ目は、共有しないことを例外として扱えていないことです。既定共有の考え方では、共有しなくてよい検査を条文で挙げ、それ以外はすべて共有します。システムでも、既定の動きを「共有する」にしておき、除外に当たるかどうかを明示的な印で持たせる作りにすると、制度の考え方と合わせやすくなります。
二つ目は、除外に当たるかどうかを後から判定しようとすることです。職場の薬物検査、裁判所の命令、法執行といった区分は、依頼票の情報から機械的に判定できるとは限りません。依頼を入力する画面に検査の目的の区分を設け、入力しないと先に進めないようにしておかないと、結局は人が1件ずつ確認することになります。
三つ目は、期限の管理を手作業に頼ることです。24時間の残り時間を監視し、まだ共有していない報告書を見つける仕組みが要ります。まとめて手作業で送る運用では、経路ごとに異なる配信時刻に対応できません。共有に失敗したときの再試行、システム障害の間に作られた報告書の扱い、時刻がずれたときの記録も、後から手を入れると作業が大きくなります。
四つ目は、共有の失敗を技術的な問題としてだけ扱うことです。健康保険法側の規則では、共有が給付の条件になっています。*2 会計や請求のシステムから見れば、共有できなかった報告書はそのまま入金に響きます。共有の失敗を業務の未完了として扱い、担当者の目に入るところに出す作りが必要です。
外部に委託するときに確認しておきたい点
この制度は豪州のもので、日本の事業者に義務を課すものではありません。ただし、期限つきのデータ連携を外部に委託するときに、委託先と決めておきたい点を考える参考になります。
まず、期限の起点を業務の出来事で決めておくことです。「作成から24時間」ではなく「最初に誰かへ渡してから24時間」という決め方をすると、期限をどう数えるかで解釈が分かれにくくなります。社内の連携でも、起点を業務の出来事に結び付けておけば、遅れたときにどこで止まっていたのかがはっきりします。
次に、共有しない理由を選択式で記録することです。除外が目的の区分で決められている以上、目的を選択式で持たないと判定できません。自由記述に頼ると、後から件数を数えることも、監査で説明することも難しくなります。あわせて、まだ共有していない件数と、共有されずに残っている時間を、業務の日次の確認に載せておくと、放置されにくくなります。
最後に、除外の決まりが変わる前提で作ることです。適合性検査の除外は、2026年7月1日に後から加わりました。*3 除外の一覧をプログラムに直接書き込まず、設定として持たせておけば、追加や削除のたびに改修する必要がありません。参照する法令の改正を誰が確認するのかも、保守の契約に書いておきたい点です。
まとめ:豪州の既定共有で確かめておきたい3つの点
豪州の既定共有に対応するうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、給付の支払いを通じて共有を求める規則と、施設の所有者に共有の義務を課す規則の2本立てになっていること。第二に、24時間は報告書の作成や承認の時刻ではなく、結果が最初に誰かへ渡った時刻から数えること。第三に、共有するのは医師が承認した報告書の情報で、目的によって共有しなくてよい検査が条文で決められていることです。この3点を踏まえておけば、「送ったつもりだったのに期限に間に合っておらず、給付も受けられなかった」という事態を避けやすくなります。期限つきのデータ連携の設計に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
研究や臨床試験のための病理検査は、すべて共有しなくてよいのですか
すべてではありません。研究または臨床試験のみを目的として行われ、かつ、その情報が患者を治療している医療提供者にも患者本人にも提供されない場合に外れます。*1 2つの条件がそろって初めて除外になるため、結果を患者本人に伝える検査は共有の対象です。
報告書のほかに、扱える情報は決められていますか
決められています。My Health Records Act 2012の第70AA条第3項(b)の目的で、報告書その他の文書の種別と、そのサービスが依頼された日時または実施された日時の2つが指定されました(第9条・第14条)。*1 付随して扱う情報の種類が条文で決まっているので、連携する項目を設計するときの目安になります。
給付のサービス表に載っていない検査も、対象になりますか
対象になり得ます。画像診断では、診断画像サービス表規則(第2号)2020や一般医療サービス表規則2021の表の項目に当たるサービスのほか、報告書が作成される、放射線科医による(またはその者に代わって行われる)その他あらゆる種類の医療が対象に含まれています。*1
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出典
- *1 参考:オーストラリア連邦法令登録簿「My Health Record (Share by Default) Rules 2025」(F2025L01569・編集版第1号/2026年7月1日時点)(https://www.legislation.gov.au/F2025L01569/latest/text)。第3条の根拠(My Health Records Act 2012)、第4条の定義、第5条と第10条(画像診断施設の所有者と病理検査室の所有者を所定の医療提供組織として指定)、第6条と第11条(対象となる医療と除外)、第7条と第12条(共有する情報は医師が承認した報告書その他の文書に含まれる情報であり、画像には適用しない旨)、第8条と第13条(24時間の期間と起点)、第9条と第14条(法第70AA条第3項(b)の目的で指定される健康情報の種類)を参照。確認日は2026年9月10日(2026年9月確認)
- *2 参考:オーストラリア連邦法令登録簿「Health Insurance (Share by Default) Rules 2025」(F2025L01568・2025年12月9日制定)(https://www.legislation.gov.au/F2025L01568/latest/text)。健康保険法1973 第19AD条第1項に基づく指定であること、第5条と第8条(対象となる専門的サービス)、第6条と第9条(共有する情報、画像には適用しない旨、メディケア給付の支払には共有が必要である旨の注記)、第7条と第10条(24時間の期間と起点)を参照。確認日は2026年9月10日(2026年9月確認)
- *3 参考:オーストラリア連邦法令登録簿「Health Legislation Amendment (Share by Default – Pathology) Rules 2026」(F2026L00804・2026年6月24日制定/2026年7月1日施行)(https://www.legislation.gov.au/F2026L00804/asmade/text)。第2条の施行日(2026年7月1日)、別表1・別表2(両規則の第4条への適合性検査の目的の定義の挿入と、除外の追加)を参照。確認日は2026年9月10日(2026年9月確認)