LASSIC Media らしくメディア
承認データ標準とは、英国が様式・公開・ソフトまで縛る
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 標準は法令の外に置かれる:随時公表される文書です*2。
- 提出の様式まで指定できる:従わない提出は拒絶できます*3。
- ソフトの承認権限まである:未承認の利用を制限できます*4。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
行政のデータを標準化する制度は各国にありますが、標準そのものをどこに置くかで運用の速さが変わります。英国は、標準を法令の外に出しました。
計画データ(イングランド)規則2026が2026年4月16日に制定され、5月7日に施行しました*1。根拠はレベリングアップ・再生法2023の第84条第1項と第86条第1項です*1。
この制度の面白さは、規則の短さにあります。中身は3つの別表だけで、「適用される承認データ標準に従え」としか書いていません*1。その仕組みを、授権法の側から読み解きます。
目次
標準の本体は、法令に載っていない
まず全体像です*1*2。
2023年法の第84条第1項は、規則により、関連する計画当局に対して、規則で指定または記述された計画データの処理にあたり、適用される承認データ標準に従うことを求める規定を置けるとしています*2。
ここでいう計画データは広く定義されました*2。関連する計画当局に関して、関連する計画法令に基づく機能のために、またはイングランドにおける計画もしくは開発に関するその他の目的のために、当局へ提供され、または当局が処理するあらゆる情報です*2。
そして第84条第3項が、この制度の要です*2。承認データ標準とは、計画データに関して、データについての、またはデータの提供もしくは処理についての技術仕様その他の要求を含む書面の標準であって、所管庁が随時公表するものとされました*2。
随時公表するもの(as may be published … from time to time)という書き方に注目したいところです*2。標準の中身は法令の本文にも別表にも入りません*2。規則の説明ノートは、大臣が標準を公表するウェブサイトのURLを示すにとどめています*1。
この作りには、はっきりした利点があります*1*2。標準の改訂に議会の手続きが要らないことです*2。項目の追加や書式の修正を、法令の改正を待たずに反映できます*2。豪州が障害登録簿の項目を法令の別表に書き込んだのとは、逆の設計です。障害履歴の公開仕様と比べると、対照がわかりやすくなります*1。
規則が指定したのは、3つの計画データ
規則2026の本体は、第3条の別表1から別表3までが効力を有するという一文だけです*1。中身は別表にあります*1。
| 別表 | 対象と義務 |
|---|---|
| 別表1 | 地方計画の工程表を、2023年法第84条の目的における計画データとする。地方計画当局は、2004年法第15B条第8項に従ってこれを公表するにあたり、適用される承認データ標準に従わなければならない |
| 別表2 | 鉱物・廃棄物計画の工程表を計画データとする。鉱物・廃棄物の計画当局に、同じ内容の遵守義務を課す |
| 別表3 | 住宅必要量のデータ(地方計画が計画の期間中に供給されると見込む住宅の最少戸数)を、第84条と第86条の両方の目的における計画データとする。公表の時点を4つ指定し、公表にあたり適用される承認データ標準に従わせる |
別表3だけが第86条も根拠に挙げている点が違いです*1。第86条は、後述するとおり、承認オープンライセンスのもとで公衆へ提供させる権限です*2。住宅必要量のデータは、標準に沿った形で作るだけでなく、公開の対象にもなります*1。
公表の時点も具体的です*1。地方計画規則2026の第27条第1項に基づく意見聴取を公表する日、2004年法第15D条第1項に基づき大臣へ資料と情報を提供する日、同法第15D条第13項に従う日、地方計画規則2026の第39条第1項(a)(i)に従う日の4つです*1。
手続きの節目に合わせて、同じデータを繰り返し公表させる設計です*1。計画の途中で数字が変われば、その変化が外から追えることになります*1。
提出の様式まで指定でき、拒絶もできる
2023年法の第85条は、当局から見て外側の話です*3。
第1項は、関連する計画当局が通知を公表することにより、ある者または特定の記述に当たる者に対して、計画データ規則で指定または記述された計画データを当局へ提供するにあたり、適用される承認データ標準に適合する形式と方法で提供するよう求めることができるとしました*3。任意の形式と方法で、または特定の形式と方法で、のいずれかを指定できます*3。
相手方の限定もあります*3。第2項により、国王、裁判所または審判所、そして裁判所や審判所における法的手続きのため、またはそれを予期して行う計画データの提供については、この要求を課せません*3。
他の法令との関係も整理されました*3。第3項は、当局が第1項の要求を課した場合、関連する計画法令の規定は、その要求と矛盾する形式や方法での提供を求め、または認める限りにおいて適用しないとしています*3。古い法令に書かれた提出方法が、新しい標準の妨げにならないようにする規定です*3。
そして実効性の担保です*3。第4項は、提供にあたり第1項の要求に従わなかった場合で、当局がその者に正当な理由があるとは考えないときに、以降の項が適用されるとします*3。第5項により、当局は通知で指定する目的について、その提供を拒絶する旨の通知を送達できることになります*3。
データの標準化で難しいのは、外部からの入力です*3。受け取る側だけを縛っても、入ってくるデータがばらばらでは意味がありません*3。第85条は、形式が合わない提出を受け付けないという手段を、法律の側で用意しました*3。
公開はオープンライセンス、ソフトは承認制
残る2つの権限も、性格が違います*2*4。
第86条第1項は、計画データ規則により、関連する計画当局に対して、規則で指定または記述された計画データを、承認オープンライセンスのもとで公衆に利用可能とすることを求める規定を置けるとしました*2。
承認オープンライセンスの定義も置かれています*2。公衆が無償で当該計画データを利用できる条件を定めるライセンスであって、その時々において大臣が公表する文書で指定または記述された形式と内容を持つものです*2。ここでも、中身は法令の外です*2。
歯止めもあります*2。第86条第2項により、この権限は、当局が負う守秘の義務や、その他の(どのように課されたものであれ)提供の制限に反して計画データを提供させる権限を含みません*2。
もう一つが第87条です*4。大臣が定める計画データ規則は、イングランドの関連する計画当局について、規則で指定または記述された計画データソフトウェアであって、大臣が書面で承認していないものの利用、作成、またはこれに関する権利の保有を、制限し、または妨げる規定を置ける*4。
計画データソフトウェアは、関連する計画当局への計画データの提供、または当局による計画データの処理を可能にし、もしくは容易にする目的で使用できるソフトウェアと定義されました*4。調達の対象そのものに承認の網をかける権限です*4。今回の規則2026は第87条を使っていませんが、権限として控えている点は押さえておく価値があります*1*4。
この設計の利点と、引き受けるコスト
標準を法令の外に置く作りには、両面があります*2。
利点は改訂の速さです*2。データの項目や書式は、実務が回り始めてから直したくなります*2。法令の改正が必要な作りだと、その反映に時間がかかります*2。ウェブサイトでの公表なら、必要なときに直せます*2。
もう一つの利点は粒度です*2。技術仕様は、法令の文体では書きにくいものです*2。項目の型、必須か任意か、コード値の一覧、ファイル形式といった細目は、別の文書に置いたほうが読みやすくなります*2。
一方で、引き受けるコストもあります*2。第一に、何が現に適用されているかを、名宛人が自分で確かめる必要があることです*2。規則は「適用される承認データ標準に従え」としか言いません*1。版の管理と、変更の把握が、遵守の側の仕事になります*2。
第二に、過去の時点で何が求められていたかを再現しにくいことです*2。ウェブサイトの文書は上書きされます*2。監査や紛争の場面で「当時の標準」を示せるかは、公表の側が版を残すかどうかに依存します*2。
第三に、改訂の予告と猶予が制度化されていないことです*2。法令の改正なら、公布から施行までの間隔が置かれます*2。随時の公表には、その保証がありません*2。実装の側は、変更の検知を自前で行う前提で組むことになります*2。
日本のIT部門が持ち帰れる論点
この規則と法は英国の制度で、日本の事業者に直接の義務を課すものではありません*1*2*3*4。ただし、データ標準を設計・運用する立場では参考になります*2。
第一に、規範と仕様を分けるという考え方です*2。「従う義務」を安定した文書に、「何に従うか」を改訂しやすい文書に分けます*2。社内の規程でも、規程本体には「別に定める技術標準に従う」と書き、標準は版管理されたリポジトリで持つと、更新の摩擦が減ります*2。
第二に、版を残す仕組みを先に作ることです*2。改訂しやすくするほど、過去の版が失われやすくなります*2。標準の文書をリポジトリに置き、発効日をタグとして残せば、「その時点で何が求められていたか」を後から示せます*2。
第三に、入力の側も縛ることです*3。第85条は、提出者に対して形式を指定し、従わない提出を拒絶できる仕組みでした*3。社内外からデータを受け取る仕組みでは、受付の段階で検証し、不適合を明示して差し戻す設計にしないと、下流で手作業の補正が発生します*3。
第四に、公開の条件を仕様に含めることです*2。第86条は、公開の形式と内容まで、別の文書で指定する建て付けでした*2。オープンデータとして出す予定があるなら、ライセンスの文言、更新の頻度、機械可読の形式を、最初の設計に含めておくと後の改修が小さく済みます*2。同じ論点は、豪州が携帯カバレッジ地図で機械可読の出口を条文に置いたのと通じます*2。
まとめ:英国の計画データ規則で押さえる3つの視点
英国では、計画データ(イングランド)規則2026が2026年4月16日に制定され、2026年5月7日に施行しました。根拠はレベリングアップ・再生法2023の第84条第1項と第86条第1項で、イングランドにのみ適用されます。押さえたい視点は三つあります。第一に、標準の置き場所。2023年法第84条第3項は、承認データ標準を、データについての、またはデータの提供もしくは処理についての技術仕様その他の要求を含む書面の標準であって、所管庁が随時公表するものと定義しました。標準の本体は法令に載らず、規則は「適用される承認データ標準に従え」と書くだけです。計画データは、関連する計画法令に基づく機能のために、またはイングランドにおける計画や開発に関するその他の目的のために、当局へ提供され、または当局が処理するあらゆる情報と広く定義されています。第二に、規則が指定した対象。別表1が地方計画の工程表、別表2が鉱物・廃棄物計画の工程表、別表3が住宅必要量のデータで、いずれも公表にあたり適用される承認データ標準に従う義務が課されます。住宅必要量のデータは第84条と第86条の両方を根拠とし、地方計画規則2026第27条第1項の意見聴取を公表する日、2004年法第15D条第1項により大臣へ資料等を提供する日、同法第15D条第13項に従う日、地方計画規則2026第39条第1項(a)(i)に従う日の4つの時点でウェブサイトに公表します。第三に、周辺の権限。第85条は、当局が通知の公表により、提出者に対して承認データ標準に適合する形式と方法での提供を求められるとし、国王、裁判所・審判所、法的手続きのための提供を除外したうえで、正当な理由なく従わない提供を、指定する目的について拒絶できるとしました。第86条は、承認オープンライセンスのもとで公衆に提供させる権限を与え、そのライセンスは無償で利用できる条件を定め、大臣が公表する文書で形式と内容が指定されるものとされます。第87条は、大臣が書面で承認していない計画データソフトウェアの利用、作成、権利の保有を制限し、または妨げる規定を置く権限を与えています。
よくある質問
承認データ標準の中身は、どこで見られますか。
法令の外で公表されます。2023年法第84条第3項は、承認データ標準を、計画データについての、またはその提供もしくは処理についての技術仕様その他の要求を含む書面の標準であって、所管庁が随時公表するものと定義しています。規則2026の説明ノートは、大臣が関連するデータ標準を随時公表するウェブサイトを示し、あわせて、別表で参照する標準の非公式な印刷版を、所管省の担当部署へ書面で請求すれば閲覧できることを案内しています。
規則2026は、どの計画データを対象にしていますか。
3つです。別表1が地方計画の工程表、別表2が鉱物・廃棄物計画の工程表、別表3が住宅必要量のデータで、いずれも2023年法第84条の目的における計画データとされ、公表にあたり適用される承認データ標準に従う義務が課されます。別表3の住宅必要量のデータは、第84条に加えて第86条の目的でも計画データとされ、地方計画の策定中の4つの時点で、当局のウェブサイトに公表することとされています。
標準に合わない形式で提出したら、どうなりますか。
拒絶されることがあります。2023年法第85条第1項は、関連する計画当局が通知を公表することにより、計画データ規則で指定された計画データを提供する者に対して、適用される承認データ標準に適合する形式と方法での提供を求められるとしています。第4項と第5項は、その要求に従わず、当局が正当な理由があるとは考えない場合に、当局が通知で指定する目的についてその提供を拒絶する旨の通知を送達できるとしました。なお第2項により、国王、裁判所・審判所、および法的手続きのための提供には、この要求を課せません。
ソフトウェアの利用まで制限されるのですか。
そうした権限が置かれています。2023年法第87条第1項は、大臣が定める計画データ規則により、イングランドの関連する計画当局について、規則で指定または記述された計画データソフトウェアのうち、大臣が書面で承認していないものの利用、作成、またはこれに関する権利の保有を、制限し、または妨げる規定を置けるとしています。計画データソフトウェアは、計画データの提供や当局による処理を可能にし、または容易にする目的で使用できるソフトウェアと定義されました。ただし、規則2026はこの権限を使っていません。
標準に沿った入出力とデータ公開の設計はLASSICへ
元請(プライムベンダー)として、スキーマの版管理・受付時の検証・公開データの整備までご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
出典
- *1 参考:英国法令データベース「The Planning Data (England) Regulations 2026」(SI 2026 No. 420・2026年4月16日制定/2026年5月7日施行)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2026/420/made)。本記事の一次情報。制定と議会提出の日時、施行日(2026年5月7日)、適用(イングランドおよびウェールズに及ぶが、適用はイングランドのみ)、根拠(レベリングアップ・再生法2023 第84条第1項・第86条第1項)、第3条(別表1から別表3が効力を有する旨)、別表1(地方計画の工程表を計画データとし、2004年法第15B条第8項に従って公表する際に適用される承認データ標準に従う義務)、別表2(鉱物・廃棄物計画の工程表について同旨)、別表3(住宅必要量のデータの定義、第84条と第86条の両方の目的における計画データとする旨、4つの公表時点、承認データ標準に従う義務)、ならびに説明ノート(標準を公表するウェブサイトの案内、非公式な印刷版の閲覧方法)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)
- *2 参考:英国法令データベース「Levelling-up and Regeneration Act 2023」第84条(計画データの処理に関する権限)(https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2023/55/section/84)。授権規定の一次情報として。第1項(計画データ規則により、指定された計画データの処理にあたり適用される承認データ標準に従うことを求められる旨)、第2項(計画データの定義。関連する計画法令に基づく機能のため、またはイングランドにおける計画もしくは開発に関するその他の目的のために、当局へ提供され、または当局が処理するあらゆる情報)、第3項(承認データ標準の定義。技術仕様その他の要求を含む書面の標準であって、所管庁が随時公表するもの)、第4項(委譲された当局が公表できる範囲)、および2024年3月31日に施行した旨を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)
- *3 参考:英国法令データベース「Levelling-up and Regeneration Act 2023」第85条(計画データの提供に関する権限)(https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2023/55/section/85)。提出側の規律の一次情報として。第1項(当局が通知の公表により、任意の形式と方法で、または特定の形式と方法で、適用される承認データ標準に適合する提供を求められる旨)、第2項(国王、裁判所または審判所、法的手続きのためまたはそれを予期した提供の除外)、第3項(関連する計画法令の規定が、要求と矛盾する範囲で適用されない旨)、ならびに第4項と第5項(正当な理由なく従わない場合に、通知で指定する目的についてその提供を拒絶する通知を送達できる旨)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)
- *4 参考:英国法令データベース「Levelling-up and Regeneration Act 2023」第86条・第87条(公開と計画データソフトウェア)(https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2023/55/section/86)。公開とソフトウェアの権限の一次情報として。第86条第1項(承認オープンライセンスのもとで公衆に利用可能とすることを求められる旨)、第2項(守秘の義務その他の制限に反して提供させる権限を含まない旨)、第3項(承認オープンライセンスの定義。無償で公衆が利用できる条件を定め、大臣が公表する文書で形式と内容が指定されるもの)、ならびに第87条第1項と第2項(大臣が書面で承認していない計画データソフトウェアの利用・作成・権利の保有を制限または妨げる規定を置ける旨、および計画データソフトウェアの定義)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)