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2026.09.19 採用支援コラム

SESの外注依存|IPAが記録する9つの再利用率




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 引き継げた量は9つの欄で記録される:システム化計画書から結合テストのテストケースまで、工程ごとに分かれています。*1
  • 文書とコードは数え方が違う:文書はページ数、ソースコードはSLOC(ソースコードの行数)、部品としてまとめたプログラムは機能の量で計算します。*1
  • 何%なら依存しすぎという線引きは無い:資料が定めているのは分母と分子の取り方までです。*1

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

SES(エスイーエス。外部の技術者に一定の期間参画してもらい、作業した時間に応じて費用を払う契約の呼び方)などの形で外部の要員に長く入ってもらっていると、「うちは外注依存が進んでいるのではないか」という話が出ます。ただ、その状態を何で測るのかは、たいてい決まっていません。手がかりになるのが、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公開している「ソフトウェア開発分析データ集」です。*1 前の案件で作ったものを、次の案件でどれだけ引き継げたかを、9つの欄に分けて記録しています。*1

この欄を見ると、外注依存という言葉で片づけていたものを、文書とコードに分けて数えられるようになります。ただし、何%なら依存しすぎという線引きは、今回参照した資料にはありません。本記事では、開発の現場を預かるマネージャに向けて、IPAが記録している9つの欄、文書の引き継ぎとコードの引き継ぎの違い、なぜ「外注依存」という言葉では測れないのか、どう測るのか、つまずきやすい点、そして外部に頼むときに確認しておきたい点を整理します。

ガラスの間仕切りで区切られたオフィスの通路。奥に応接用のソファが見え、人は写っていない

IPAが記録している引き継ぎの欄

IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」は、企業から提供された開発案件の実績を集計した資料です。発行は社会基盤センターで、どの案件からも同じ項目を集められるよう、項目ごとに書き方と計算のしかたが決められています。*1

そのなかに「開発の進め方」という節があり、前の案件のものをどれだけ引き継げたかを記録する欄が9つ並んでいます。*1 工程ごとに欄が分かれているのが特徴です。

前の案件からどれだけ引き継げたかを記録する欄(出典:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」A5.2.5 開発の進め方。この節には再利用率の欄が9つあり、そのうち7つをここに示した。残る2つは総合テストに関する項目で、本記事では扱わないため省いた。本書の著作権はIPAが保有し無断の改変や公衆送信などは禁じられているため、この表は示された内容をもとに筆者が作成したものであり、資料の表そのものを複製したものではない)
項目 資料が定めている計算のしかた
413_システム化計画書再利用率 システム化計画書の再利用したページ数÷全ページ数
414_要件定義書再利用率 要件定義書の再利用したページ数÷全ページ数
415_基本設計書再利用率 基本設計書の再利用したページ数÷全ページ数
416_詳細設計書再利用率 詳細設計書の再利用したページ数÷全ページ数
417_ソースコード再利用率 再利用したSLOC÷全SLOC
418_コンポーネント再利用率 再利用した機能規模÷システム全体の機能規模
419_テストケース再利用率_結合テスト 結合テストにおいて再利用したテストケース数÷全テストケース数

欄の名前を見ると、システム化計画書、要件定義書、基本設計書、詳細設計書という4つの文書が、それぞれ別の欄になっています。*1 そのあとにソースコード、コンポーネント、テストケースが続きます。*1

文書の引き継ぎとコードの引き継ぎの違い

文書の欄は、いずれも「再利用したページ数÷全ページ数」で計算します。*1 前の案件の設計書を何ページ流用できたかが、そのまま割合になります。

一方、ソースコードの欄は「再利用したSLOC÷全SLOC」です。*1 SLOC(ソースコードの行数)で数えるので、文書とは別の物差しになります。

コンポーネントの欄はさらに違い、「再利用した機能規模÷システム全体の機能規模」で計算します。*1 コンポーネント(部品としてまとめられたプログラムの単位)、たとえばライブラリのように、まとまりで持ってきたものを数える欄です。機能規模(その部品が担う機能の量を決まった方法で数値にしたもの)で計算します。*1

同じ「引き継げたか」でも、ページ数・行数・機能規模という3つの数え方があります。コードだけを引き継いでも、設計書の欄は埋まりません。逆に設計書が残っていても、コードを作り直していれば417番の欄は低くなります。

なぜ「外注依存」という言葉では測れないのか

資料には「外注依存」という言葉は出てきません。出てくるのは、工程ごとの再利用率という数え方だけです。*1

この違いは実務でも効いてきます。「外注依存が進んでいる」と言うとき、設計書が社内に無いことを指しているのか、コードを誰も読めないことを指しているのか、その両方なのかで、次に打つ手が変わります。

また、何%なら依存しすぎという線引きも、今回参照した資料にはありません。資料が定めているのは、分母と分子の取り方までです。*1 数字をどう読むかは自社で決めることになります。

設計書が無いのかコードが読めないのかで打つ手が変わる、という上の指摘は、資料に書かれていることではありません。9つの欄が工程ごとに分かれている事実から筆者が導いたものです。外注そのものの良し悪しを、この欄から決めることはできません。

どう測るのか

測り方は、いま進めている案件で、前の案件のものをどれだけ使えたかを工程ごとに書き出すところから始まります。設計書を何ページ流用できたのか、コードを何行持ってこられたのか。

外注依存を数字で測る順番を、左から右へ4つの箱で示した図。1つ目は工程ごとに書き出すこと(設計書は何ページ、コードは何行を前の案件から使えたか)、2つ目は埋まらない欄を見ること(設計書の4欄が空なら文書が社内に残っていない)、3つ目は次に埋めたい欄を決めること(基本設計書は次回流用できる形で残す、など)、4つ目は外部の要員に任せたうえで、どの欄を重く見るかの判断は社内に置いたままにすること。欄はIPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」A5.2.5 開発の進め方による。

次に、割合が低かった欄を見ます。設計書に関する4つの割合がどれも0%に近いなら、前の案件の文書が社内に残っていないということです。ソースコードの再利用率だけが0%に近いなら、コードを毎回作り直す判断が案件ごとに行われているということになります。

そのうえで、次の案件で埋めたい欄を先に決めます。「基本設計書は次回50%を流用できる形で残す」「結合テストのテストケースは全件を引き継ぐ」——このくらい具体的に書ければ、外部の要員に頼むときの条件にもなります。

つまずきやすい難所

一つめは、9つの欄をひとつの数字にまとめることです。資料は工程ごとに欄を分けており、*1 合計や平均の出し方は定めていません。

二つめは、再利用率が低いことをそのまま問題と読むことです。新しく作る案件なら、前の案件から引き継げるものが少ないのは当たり前です。前例の少ない新規開発では、この割合はもともと低く出ます。

三つめは、この数字で外注先を評価しようとすることです。資料が記録しているのは案件の実績で、委託先の良し悪しを測る指標としては定義されていません。何%なら依存しすぎという線引きも、今回参照した資料に記載はありません。

外注時に確認しておきたい点

SESなどの形で外部の要員に入ってもらうときは、次の案件で埋めたい欄を先に伝えてください。「基本設計書は次回流用できる形で残す」といった書き方で構いません。外部の要員(自社で雇わず、作業ごとに契約して働いてもらう人。フリーランスや請負の会社を含みます)に頼む場合、成果物の残し方まで決めておくと、次の案件の条件が書きやすくなります。

9つの欄のうちどれを重く見るかは、社内で決めてください。設計書を残したいのか、テストケースを残したいのかで、頼む作業の中身が変わります。

9つの欄のうちどれを重く見るかを社内で決めると、正社員の採用と外部の要員のどちらを選ぶかも決まります。コードを読み続ける人を社内に置きたいなら採用、特定の期間だけ手を増やしたいなら外部の要員、という分け方になります。

どの工程を社内で担っているかはシステム開発の外部委託|設計・実装・テストで63.4%で扱っています。

発注する側がどこまで手を動かすかは内製化支援の伴走、どこまで一緒にやるかは4つの段階にまとめました。

作り直しと作り変えの分け方はSESに頼むシステム刷新|機能仕様を変えないのが再開発で整理しています。

契約が終わるときに何を残してもらうかはSES契約終了で決める6項目|アクセス権と知財の帰属にあります。

まとめ:外注依存を測るときに確かめる3つのこと

外注依存は、言葉のままでは何も測れません。IPAの記録項目に当てはめると、確かめておくことは3つに整理できます。第一に、前の案件からどれだけ引き継げたかは、システム化計画書から結合テストのテストケースまで、工程ごとに9つの欄で記録されること。*1 第二に、文書はページ数、ソースコードはSLOC、コンポーネントは機能規模と、数え方が分かれていること。*1 第三に、何%なら依存しすぎという線引きは、今回参照した資料には書かれていないことです。この3点を踏まえておけば、「外注依存が進んでいると言われたが、何を直せばよいのか誰も答えられない」という事態を避けやすくなります。どの欄が埋まっていないかを書き出すところまでは社内でできます。その先、次の案件で残す形まで作れる人が社内にいなければ、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

埋めたい欄が決まったあとは、担い手を探す段階です。基本設計書を次回流用できる形で残しながら受注管理システムを改修する仕事を6か月間、結合テストのテストケースを全件そろえる仕事を3か月間——このくらい具体的に書けていれば、求める経験の条件も決まります。文書を残す作業まで頼むのか、コードだけ頼むのかで、声をかける相手が変わるためです。

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よくある質問

IPAは引き継ぎの量をどう記録していますか

「ソフトウェア開発分析データ集2022」の開発の進め方という節で、前の案件からどれだけ引き継げたかを工程ごとに9つの欄で記録しています。*1 確認日は2026年9月19日です。

文書とコードで数え方は違いますか

違います。文書は再利用したページ数を全ページ数で割り、ソースコードは再利用したSLOCを全SLOCで割り、コンポーネントは再利用した機能規模をシステム全体の機能規模で割ります。*1 確認日は2026年9月19日です。

何%なら外注依存が進んでいると言えますか

今回参照した資料に記載はありません。資料が定めているのは分母と分子の取り方までで、基準となる割合は示されていないためです。確認日は2026年9月19日です。

この数字で委託先を評価できますか

今回参照した資料に記載はありません。この欄は案件の実績を記録するためのもので、委託先を測る指標としては定義されていないためです。確認日は2026年9月19日です。

資料に「外注依存」という言葉はありますか

ありません。記録されているのは工程ごとの再利用率で、外注依存という語は使われていません。*1 確認日は2026年9月19日です。

埋めたい欄が決まったら相談

「基本設計書は次回流用できる形で残す」といった形で残したい成果物が書けていれば、そのままご相談いただけます。まだどの欄を重く見るか決めきれていない段階でも構いません。

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出典

  1. *1 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(PDF)(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。出典:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」。独立行政法人情報処理推進機構 社会基盤センター発行。A5.2.5「開発の進め方」のデータ項目のうち、413から421までの再利用率の定義と計算のしかたの一次情報として。本書の著作権はIPAが保有し無断の改変や公衆送信などは禁じられているため、この記事は示された定義を引用し、図と表は内容をもとに筆者が作成した。資料の図表そのものは複製していない(2026年9月確認)
  2. *2 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(公開ページ)(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。本編と業種編・サマリー版という構成と、収録されている指標の範囲の確認として(2026年9月確認)
  3. *3 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/index.html)。年度ごとに公開されていることの確認として(2026年9月確認)




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