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2026.09.19 採用支援コラム

経験者だから任せきり|エンジニア中途採用の入社後に用意する育成

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

暗い部屋で、投影された折れ線グラフを後ろ姿の人が見ている写真。顔は写っていない

この記事の結論

  • 育成を行っている事業所の割合は、新規学卒73.2%、中途72.6%で、ほとんど差がありません。
  • 調査が挙げる4つの育成方法はすべて中途が低く、仕事を離れての教育訓練は新卒37.5%、中途27.8%です。
  • 中途で採用した人には、研修や入社前の資料など業務の外で伝える内容から先に決めると進めやすくなります。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

中途で採用したエンジニアは経験があるから、入社後は現場に任せておけばよい。あるいは、新卒と同じ研修に入ってもらえば足りる——。エンジニア中途採用の入社後の準備は、このどちらかで済ませてしまいがちです。中途採用者の入社後の育成とは、中途で採用した人が自社で仕事を進められるように、会社が教える機会や学ぶ機会を用意することを指します。

何を用意するかは、新卒のときとどこが違うのかを比べると決めやすくなります。ただし、この比べ方も万能ではなく、公的な調査で比べられるのは、事業所がどの育成方法を取っているかという割合までです。本記事では、エンジニアを採用する実務担当者に向けて、育成の4つの方法、新卒と中途の違い、数字を見るときの注意、入社後に用意するものの決め方、そして外部に委託するときに確認したい点を整理します。

入社後の育成の4つの方法

厚生労働省の「令和5年若年者雇用実態調査」は、若年正社員(満15歳から34歳までの正社員)をどう育てているかを事業所に尋ね、新規学卒で採用した人と中途で採用した人を分けて集計しています。*1 育成の方法として挙げられているのは、OJT(仕事をしながらの教育訓練)、OFF-JT(仕事を離れての教育訓練)、自己啓発への支援、ジョブローテーションの4つです。

資料は、OJTを「業務遂行の過程内において行う教育訓練」、OFF-JTを「業務遂行の過程外において行う教育訓練」としています。*1 研修や勉強会のように、仕事から離れて教えるものはOFF-JTに入ります。自己啓発への支援は、本人が自分で学ぶことへの手助けを指します。ジョブローテーションは、いくつかの部署や職務を順に経験してもらう進め方です。

中途で採用したエンジニアには、前の職場で身につけた技術があります。それでも、自社の開発の決まりごと、使っている道具、誰に何を聞けばよいかといったことは、入社してから覚えてもらうしかありません。4つの方法は、こうした社内の事情をどの方法で伝えるかを選ぶ目安になります。

新卒と中途で何が違うのか

調査の表から、新規学卒と中途の割合を並べると次のようになります。差は2つの割合から計算した値で、中途から見て高いか低いかで書いています。

採用区分別の、若年正社員に対する育成(厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」事業所調査の表5をもとに作成。育成方法は複数回答。単位のポイントは割合どうしの差)
項目 新規学卒 中途 差
育成を行っている 73.2% 72.6% 0.6ポイント低い
OJT 65.9% 63.5% 2.4ポイント低い
OFF-JT 37.5% 27.8% 9.7ポイント低い
自己啓発への支援 33.2% 29.7% 3.5ポイント低い
ジョブローテーション 23.8% 19.2% 4.6ポイント低い
育成を行っていない 6.1% 9.7% 3.6ポイント高い
不明 20.7% 17.6% 3.1ポイント低い

育成を行っている事業所の割合は、新規学卒が73.2%、中途が72.6%で、差は0.6ポイントです。*1 中途で採用した人だから育てていない、という結果にはなっていません。育成を行っていないと答えた事業所は、新規学卒で6.1%、中途で9.7%でした。*1

ところが方法ごとに見ると、4つとも中途のほうが低くなります。差がいちばん大きいのはOFF-JTで、新規学卒の37.5%に対して中途は27.8%と、9.7ポイント開いています。*1 残りの3つの差は、ジョブローテーションが4.6ポイント、自己啓発への支援が3.5ポイント、OJTが2.4ポイントで、いずれも5ポイントに届きません。

まとめると、中途で採用した人にも育成は行われていますが、研修のように仕事から離れて教える機会は、新卒より少なくなっています。現場で仕事をしながら覚えてもらう形は、新卒とあまり変わりません。OFF-JTだけ差が大きい理由は公表されていません。

数字を見るときの注意

この調査は、5人以上の常用労働者(臨時や日雇いでない働き方の人)を雇う事業所と、そこで働く満15歳から34歳の労働者を対象にしており、16の産業にまたがります。*2 エンジニアに限った調査ではありません。事業所に尋ねた調査の有効回答は、調査対象17,355事業所のうち7,867事業所で、有効回答率は45.3%でした。*2

表の割合は、どれも事業所の数を数えた割合で、人数の割合ではありません。事業所とは、工場や支店のように場所ごとに分けた単位で、1社が複数の事業所を持つこともあります。分母は、それぞれの区分の若年正社員がいる事業所です。新規学卒と中途では分母になる事業所の集まりが違うので、2つの列を足し合わせても意味のある数にはなりません。方法ごとの割合も、それぞれの列の事業所を分母とみなして比べています。資料は方法ごとの欄について分母を書き分けていません。

もう一つ気をつけたいのが「不明」の欄です。新規学卒で20.7%、中途で17.6%と、どちらも2割前後あります。*1 そのため、この表は数ポイントの差を細かく比べるよりも、「4つとも中途が低く、そのなかでOFF-JTの差がいちばん大きい」という傾向をつかむのに向いています。

入社後に何を用意するのか

表の結果をもとにすると、中途で採用した人の入社後に用意するものは、次の3つの順で決めると進めやすくなります。

中途で採用した人の入社後に決める3つを箱で示した図。1つ目は仕事を離れての教育訓練を先に決めること。2つ目はジョブローテーションを使うかどうかを決めること。3つ目は4つのうち自社が用意しているものを書き出すこと。

1つ目は、研修や資料など、業務の外で伝える内容を決めることです。4つの方法のうち、新卒と中途の差がいちばん大きいのがOFF-JTでした。資料のいうOFF-JTは業務の外で行う教育訓練全般で、具体的に何を教えているかまでは書かれていません。そのため、業務の外で伝える内容は、自社で書き出す必要があります。半日の説明会でも、入社前に読んでもらう文書1本でもかまいません。

2つ目は、ジョブローテーションを使うかどうかを決めることです。中途は19.2%と、4つの方法のなかでいちばん低い割合でした。*1 即戦力として特定の開発に加わってもらうなら、部署を移ってもらわない判断もあります。使わないなら、使わないと決めて記録しておきます。決めていないと、あとで担当を変えたくなったときに、本人にどう説明するかで迷います。

3つ目は、4つの方法のうち自社が用意しているものを書き出すことです。書き出してみてどれも用意していなければ、入社後に渡すものをこれから作る段階と考えて、1つ目のOFF-JTから手をつけるとよいでしょう。

つまずきやすい点

一つ目は、方法ごとの差を「中途は育てられていない」と受け取ることです。育成を行っている割合は73.2%と72.6%で、ほとんど変わりませんでした。*1 違うのは、どの方法を取っている事業所がどれだけあるかです。この表は、育てるかどうかではなく、どの方法で伝えるかを見直す材料になります。

二つ目は、経験者だからと、自社の決まりごとを文書にしないまま現場に入ってもらうことです。前の職場のやり方と自社のやり方の違いは、本人からは見えにくいものです。コードの書き方の決まり、レビューの進め方、障害が起きたときの連絡先などは、入社前に文書で渡しておくと、現場の先輩が同じ説明を何度も繰り返さずに済みます。

三つ目は、4つの方法を「やっている」「やっていない」だけで埋めて、中身を決めないことです。OJTと書いても、誰が教えるのか、いつまでに何ができるようになってもらうのかが決まっていなければ、教える人によって内容がばらつきます。書き出した方法ごとに、担当する人と時期まで書いておくと、入社した人にも説明しやすくなります。

外部に委託するときに確認しておきたい点

業務委託で開発に加わってもらう専門人材には、この4つの方法はそのまま当てはまりません。調査が尋ねているのは、事業所が雇っている若年正社員への育成だからです。*1 委託先の人材を自社の社員のように育てる、という考え方は取りにくいでしょう。

それでも、開発に加わる前に説明資料を渡すやり方は、社員にも業務委託の人にも使えます。自社の開発の決まりごと、使っている道具、問い合わせ先を文書にまとめておく進め方です。正社員として採る場合も業務委託で頼む場合も、この文書が1つあれば使い回せます。

同じ調査で定着のための対策を集計した表は「エンジニア中途採用の早期離職と定着の対策」で、入社後に新しく覚えてもらう技術の決め方は「エンジニア中途採用の育成と新技術」で扱っています。求人票に研修ありと書ける水準は「研修ありと書けるのはどの水準からか」にまとめました。

まとめ:入社後の育成で確かめておきたい3つの点

エンジニア中途採用の入社後の育成を考えるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、育成を行っている割合は新規学卒と中途でほとんど変わらず、違いは方法に出ていること。第二に、4つの方法のうち新卒と中途の差がいちばん大きいのはOFF-JTで、業務の外で伝える内容から決めると進めやすいこと。第三に、自社が用意している方法を書き出し、担当する人と時期まで決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「経験者だから大丈夫だと思って任せたら、社内の決まりが伝わっていなかった」という事態を避けやすくなります。入社後に渡すものの用意に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

入社後に渡すものが決まったら、次は実際に人を探す段階です。業務の外で渡す資料が決まっていれば、その内容を候補者に伝えられます。

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よくある質問

新規学卒と中途の割合を足し合わせて比べられますか

足し合わせることはできません。新規学卒で採用された若年正社員がいる事業所は全事業所の52.8%、中途で採用された若年正社員がいる事業所は58.9%で、2つの列は分母が違います。*1 両方の若年正社員がいる事業所は両方の列に数えられるため、割合を並べて比べるだけにします。

4つの方法のほかに、どんな回答がありますか

「その他」があり、新規学卒で3.6%、中途で3.7%でした。*1 そのため、4つの方法のどれにも当てはまらなくても、育成を行っていないとは決まりません。

どの育成方法を選べば、中途で採用した人が定着しますか

この調査の表5は、どの方法を取っている事業所がどれだけあるかを示したもので、定着との関係は示していません。同じ調査では定着のための対策を別の表で集計しているので、あわせて確認すると判断しやすくなります。

この調査の結果はどこで確認できますか

厚生労働省のページで公開されています。 育成方法の表と、OJT・OFF-JT・ジョブローテーションの定義は「若年労働者の育成状況」のPDFに、調査の対象や有効回答数は「調査の概要」のPDFに載っています。

入社後に渡すものが決まったら相談

自社の決まりごとや道具の説明をどこまで用意できるかが見えていれば、そのままご相談いただけます。まだ決めきれていない段階でも承ります。

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出典

  1. *1 参考:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」若年労働者の育成状況(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/4-21c-jyakunenkoyou-r05_03.pdf)。出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」。表5(雇用形態、採用区分、若年労働者の育成方法別事業所割合)と、OJT・OFF-JT・ジョブローテーションの定義を参照。表と図は資料の数値をもとに作成し、差は資料の割合から計算した(2026年9月確認)
  2. *2 参考:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」調査の概要(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/4-21c-jyakunenkoyou-r05_gaiyou.pdf)。調査の範囲及び対象、調査対象数17,355事業所・有効回答数7,867事業所・有効回答率45.3%、16大産業を参照(2026年9月確認)
  3. *3 参考:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/4-21c-jyakunenkoyou-r05.html)。調査結果の公表ページ(2026年9月確認)




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