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リモートオンボーディングの入社前準備|質問できる相手の決め方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- リモートオンボーディングでは、入社前に端末とアカウント、相談窓口と緊急時の連絡先をそろえて本人に渡します。
- 最初の1週間は、チャットや会議ツールなど道具の使い方と情報の扱い方を、仕事の説明より先に伝えます。
- 業務の質問に答える担当者と時間を入社前に決めておくと、ガイドラインのいう特段の配慮が具体的なものになります。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
リモートオンボーディングでは、入社の前に端末とアカウント、質問に答える担当者を決めておき、最初の1週間で道具の使い方と最初に任せる仕事を伝えます。なかでも欠かせないのは誰にいつ質問できるかを決めておくことで、厚生労働省のテレワークガイドラインも、中途採用の社員などにはコミュニケーションの円滑化に特段の配慮をすることが望ましいとしています。リモートオンボーディングとは、リモートで働く前提で採用した人を受け入れ、仕事を始められる状態にするまでの段取りのことです。
本記事では、エンジニアを採用する実務担当者に向けて、入社前・最初の1週間・質問の相手という3つの場面で決めることを、ガイドラインの記述に沿って整理します。あわせて、ガイドラインのどの記述が義務でどれが望ましい取組なのか、就業規則との関係、リモートで働いた経験のある人の割合も見ておきます。
目次
リモートオンボーディングで準備すること
オフィスで働く場合は、近くの席の先輩に声をかければ済むことも多いのですが、リモートではチャットを送るか会議を予約しなければ質問できません。入ったばかりの人ほど「こんなことを聞いてよいのか」と迷います。ガイドラインは3(3)「テレワークの対象者等」で、「特に、新入社員、中途採用の社員及び異動直後の社員は、業務について上司や同僚等に聞きたいことが多く、不安が大きい場合がある」と書き、そのためコミュニケーションの円滑化に特段の配慮をすることが望ましいとしています。*1
ただし、何をすれば特段の配慮になるのかは書かれていません。そこで本記事では、ガイドラインの本文と、末尾に付いている事業者用のチェックリスト(別紙1)の項目から受け入れに関わるものを選び、場面ごとに並べ直しました。この並べ方は本記事のものです。
| 場面 | 決めること | ガイドラインの箇所 |
|---|---|---|
| 入社前 | 端末とアカウントの用意、雇入れ時の安全衛生教育の中身、健康相談の窓口と緊急時の連絡先 | 別紙1 1(2)・2(1)・6(2) |
| 最初の1週間 | チャットや会議ツールなど道具の研修、情報セキュリティの教育、最初に任せる仕事の説明 | 本文4(3)・11 |
| 質問の相手 | 業務の質問に答える担当者と時間、定期的なオンラインミーティング | 本文3(3)、別紙1 6(1) |
3つの場面のうち、ほかの2つを支えるのは質問の相手です。端末や研修を用意しても、つまずいたときに聞ける相手がいなければ、入った人は手を止めたまま待つことになります。以下では、場面ごとに決めることを順に見ていきます。
入社前に用意すること
入社日までに、端末とアカウントを使える状態にしておきます。貸与するパソコンの発送や初期設定、受け取りの確かめ方は「リモート採用のオンボーディング、貸与PCの発送から返却までの手順」で扱っています。
安全衛生の面では、事業者用のチェックリストが「雇入れ時にテレワークを行わせることが想定されている場合には、雇入れ時の安全衛生教育にテレワーク作業時の安全衛生や健康確保に関する事項を含めているか」を確認項目に挙げています。チェックリストは、雇入れ時の安全衛生教育を法定事項の欄に印を付けて示しています。*1 自宅の作業環境の確かめ方と初日の進め方は「リモート採用のオンボーディング、入社初日の作業環境の不備を防ぐ」にまとめました。
連絡先も入社前にそろえます。チェックリストには、健康相談を行うことができる体制を整備し、相談窓口や担当者の連絡先を労働者に周知しているかという項目と、災害発生時や業務上の緊急事態が発生した場合の連絡体制を構築し、テレワークを行う労働者に周知しているかという項目があります。*1 業務の質問先、健康相談の窓口、緊急時の連絡先を1枚の一覧にして入社前に渡しておけば、初日から問い合わせ先に迷わずに済みます。
オフィスに来てもらう日がある場合は、その日数と決め方も入社前に伝えておきます。日数の決め方と求人票への書き方は「出社頻度とリモート採用、日数を決める手順と求人票の書き方」で扱っています。
最初の1週間で伝えること
ガイドラインは4(3)で、テレワークでは「新たな機器やオンライン会議ツール等を使用する場合があり、一定のスキルの習得が必要となる場合がある」とし、テレワークを導入した初期あるいは機材を新規導入したときなどには、必要な研修等を行うことも有用だとしています。*1 入社した人にとっては、会社の道具はどれも初めて使うものです。チャット、会議ツール、ソースコードや課題を管理する仕組みの使い方を、仕事の説明より前に一通り伝えておくと、最初の作業で迷いにくくなります。
同じ4(3)は、社内教育等をオンラインで行うことも有効だとし、オンラインならではの利点の例として「動画にしていつでも学べるようにする」ことを挙げています。*1 道具の使い方やシステムの全体像の説明を録画しておけば、入った人は分からなくなったときに見返せますし、次に入る人にも使えます。
情報の扱い方も最初の週に伝えます。ガイドラインは11「テレワークの際のセキュリティへの対応」で、総務省の「テレワークセキュリティガイドライン」等を活用した対策の実施や労働者への教育等を行うことが望ましいとしています。*1 社内の資料をどこに置いてよいか、私物の端末を使ってよいかといった自社の決まりを、作業を始める前に説明しておきます。
最初に任せる仕事は、目的と締め切りがはっきりした小さな作業を1つ選ぶのがおすすめです。作業の中で道具を一通り使い、質問の担当者とやり取りする経験を積めるからです。配属先のリーダーが指示やレビューのやり方をどう変えるかは、「リモート採用の社内合意|現場責任者と合わせる指示と評価の材料」で扱っています。
質問に答える人と時間
事業者用のチェックリストは、6(1)「コミュニケーションの活性化」で、同僚とのコミュニケーション、日常的な業務相談や業務指導等を円滑に行うための取組がなされているかを確認項目にしており、例として「定期的・日常的なオンラインミーティングの実施等」を挙げています。*1
受け入れで決めておくのは、誰が答えるか、いつ答えるか、どこに書けばよいかの3つです。たとえば、質問を受ける担当者を1人決め、毎日決まった時間に短い打ち合わせを入れ、急ぎでない質問はチャットの決まった場所に書いてもらいます。誰にいつ聞けるかが決まって、はじめてガイドラインのいう配慮が具体的なものになります。
担当者を上司とは別に、同じチームの先輩から選ぶこともできます。メンターの選び方と任せ方は「リモート採用のオンボーディング、メンターの選び方と任せ方」で扱っています。
ガイドラインの言い方と就業規則
ガイドラインのうち、入った人の受け入れに当てはまる本文の記述は、対象者の決め方(3(3))と人材育成(4(3)・4(4))の節に集まっています。文末の言い方とあわせて拾い出すと、次の6か所です。
| 箇所 | 書かれていること | 言い方 |
|---|---|---|
| 3(3) テレワークの対象者等 | 新入社員、中途採用の社員及び異動直後の社員には、コミュニケーションの円滑化に特段の配慮 | 望ましい |
| 4(3) テレワーク状況下における人材育成 | 社内教育等についてもオンラインで実施 | 有効 |
| 4(3) 同 | 導入した初期あるいは機材を新規導入したときなどに必要な研修等 | 有用 |
| 4(3) 同 | 社内教育や研修制度に関する定めをする場合は就業規則に規定 | しなければならない |
| 4(4) テレワークを効果的に実施するための人材育成 | 各労働者が自律的に業務を遂行できるよう人材の育成に取り組む | 望ましい |
| 4(4) 同 | 管理職のマネジメント能力向上に取り組む | 望ましい |
6か所のうち5か所は「望ましい」「有効」「有用」という言い方で終わっており、義務としては書かれていません。*1 「しなければならない」と書かれているのは、4(3)の「テレワークを行う労働者について、社内教育や研修制度に関する定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならない」の1か所で、根拠として労働基準法第89条第7号が挙げられています。
労働基準法第89条は、「常時十人以上の労働者を使用する使用者」に就業規則の作成と届出を義務づけており、その第7号が「職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項」です。*3 義務が生じるのは、社内教育や研修制度の定めを置いた場合です。入社のたびに担当者が説明する形にとどめるか、受け入れの研修を制度として置くかで、就業規則に書き足すかどうかが変わります。どちらにするかは、人事と現場のマネージャーで先に決めておきます。
リモートで働いた経験のある人の割合
国土交通省の「令和7年度テレワーク人口実態調査」は、雇用型就業者36,391人に勤務先のテレワーク制度等の有無を尋ねています。雇用型就業者とは、会社や官公庁などに雇われて働いている人のことです。勤務先に制度等が導入されていると答えたのは34.1%で、そのうちテレワークをしたことがある人は64.8%でした。*2
雇用型就業者全体で見ると、いまの主な仕事でテレワークをしたことがある人は25.2%(9,178人)です。内訳は、勤務先に制度等がある人が22.1%(8,038人)、制度等がない人が3.1%(1,140人)でした。裏返すと、74.8%はいまの主な仕事でテレワークをしたことがありません。*2 中途で採用する人の多くも、リモートでの仕事の進め方に慣れていない前提で、受け入れの段取りを組み立てておくのが無難です。
つまずきやすい点
一つ目は、ガイドラインの記述をどれも守るべき規則として受け取ってしまうことです。受け入れに関わる本文の6か所のうち5か所は、義務ではありません。一方で、ガイドラインには、テレワークを行う場合にも労働基準関係法令が適用されると書いた箇所もあります。*1 そちらは守るべき規則の話で、受け入れの工夫とは分けて扱います。
二つ目は、配慮を「いつでも聞いてください」という声かけだけで済ませることです。入ったばかりの人ほど、相手の作業を止めてまで聞いてよいかを迷います。聞ける相手と時間を決めておくのは、この迷いをなくすためです。
三つ目は、端末とアカウントの準備だけで受け入れを終えたと考えることです。道具が届いても、使い方と情報の扱い方を説明しなければ、入った人は最初の作業で手が止まります。最初の1週間に何を伝えるかまで、入社前に決めておきます。
外部に委託するときに確認しておきたい点
ここまでは、自社の社員として採用する人の話でした。業務委託で開発に加わる外部の専門人材の場合は、自社の就業規則をそのまま当てはめる話ではなくなります。労働基準法第89条が作成を義務づけているのは、労働者を使用する使用者の就業規則です。*3 委託先に所属している人の研修をどちらが行うかは、委託の取り決めで決まります。
それでも、質問の窓口を決めることと、道具の使い方を最初に伝えることは、外部の人材に加わってもらうときにも役立ちます。委託の取り決めを結ぶ前に、質問の窓口と、使う道具を誰が用意して誰が説明するかを確かめておくと、作業を始めてから迷わずに進められます。
中途で入ったエンジニアが早く辞める理由は「なぜ中途エンジニアは早期に離職するのか」で、外部エンジニアのスキルの確かめ方は「外部エンジニアのスキル確認、4つの軸で評価する」で扱っています。
まとめ:リモートオンボーディングで決める3つの場面
リモートオンボーディングで決めておくことは、3つの場面に整理できます。第一に入社前で、端末とアカウント、健康相談の窓口と緊急時の連絡先をそろえて本人に渡します。第二に最初の1週間で、チャットや会議ツールの使い方と情報の扱い方を、仕事の説明より先に伝えます。第三に質問の相手で、誰がいつどこで質問に答えるかを入社前に決めておきます。受け入れの研修を制度として置くなら、就業規則への規定が要るかも確かめておきます。受け入れの段取りづくりに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
リモートオンボーディングは、何から準備すればよいですか
まず、業務の質問に答える担当者と時間を決めるのがおすすめです。そのうえで、入社日までに端末とアカウントを使える状態にし、健康相談の窓口と緊急時の連絡先を一覧にして渡します。最初の1週間に伝える道具の使い方と情報の扱い方も、入社前に決めておきます。
テレワークガイドラインに、受け入れで使えるチェックリストはありますか
ガイドラインの末尾には、事業者用と労働者用の安全衛生のチェックリストが付いています。*1 事業者用には、雇入れ時の安全衛生教育、相談窓口の周知、緊急連絡体制、日常的な業務相談の取組といった項目があり、受け入れの準備を確かめるときにも使えます。
受け入れの段取りは、誰が決めればよいですか
現場のマネージャーと人事が一緒に決めるのがおすすめです。質問を受ける担当者や打ち合わせの時間は、仕事を任せる現場でないと決められません。研修を制度として置くかどうかや、就業規則に書き足すかどうかは、人事が確かめます。
入社直後の配慮は、いつまで続ければよいですか
期間はガイドラインでは示されていません。質問の数が減ってきたら打ち合わせの回数を減らすなど、本人と相談しながら少しずつ調整するとよいでしょう。一人で進めてもらう作業が増えてきたかどうかも、目安になります。
リモートでの受け入れを相談したいとき
聞ける相手と時間が決まっていれば、その前提でご相談いただけます。まだ決めていない段階でも承ります。
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出典
- *1 参考:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/000759469.pdf)。出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」。3(3) テレワークの対象者等(新入社員、中途採用の社員及び異動直後の社員への特段の配慮)、4(3) テレワーク状況下における人材育成(オンラインでの社内教育、導入初期や機材の新規導入時の研修、就業規則への規定)、4(4) テレワークを効果的に実施するための人材育成、5(1) 労働基準関係法令の適用、11 テレワークの際のセキュリティへの対応、別紙1 テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト【事業者用】の1(2)・2(1)・6(1)・6(2)を参照。引用は本文の表記に従い、改行のみ省いた(2026年10月確認)
- *2 参考:国土交通省「令和7年度テレワーク人口実態調査 -調査結果-」(PDF)(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001989216.pdf)。出典:国土交通省「令和7年度テレワーク人口実態調査」(令和8年3月)。WEB調査、2025年10月24日から11月4日、有効サンプル40,000人(雇用型36,391人・自営型3,609人)。2-3 勤務先のテレワーク制度等の導入割合(34.1%・64.8%)、2-4 テレワーク制度等に基づく雇用型テレワーカーの割合(22.1%=8,038人、3.1%=1,140人、25.2%=9,178人、74.8%=27,213人)を参照。テレワーカーは、現在の主な仕事でこれまでテレワークをしたことがあると回答した人(2026年10月確認)
- *3 参考:労働基準法(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)。出典:労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条(作成及び届出の義務)の本文と第7号(職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項)を参照(2026年10月確認)