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2026.09.19 採用支援コラム

障害時の開発要員の初動|到着時間で決める一次対応の範囲

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

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この記事の結論

  • IPAの非機能要求グレードは、保守員の到着とSEの到着を別の行に分け、それぞれ6つの選択肢から選ぶ形にしています。
  • SEの到着は平均時間で決める項目なので、遅いときにどこまで遅れるかはその項目では決まりません。
  • 受付を24時間にしても、SEの到着が「数日中」の段なら着くのは数日中なので、2つの行を突き合わせます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

障害が起きたら、開発した会社の技術者にもすぐ来てほしい。契約では駆けつけの時間を決めたはずなのに、実際に来たのは一次対応の担当者だけだった——。システムの運用を外部に委託している現場では、こうした食い違いが起こりがちです。開発要員の初動とは、障害などの異常を検知してから、対応する人が現地に着くまでの動きを指します。

この初動を契約で決めるときに使える資料が、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「非機能要求グレード2018」です。システムに求める条件を項目ごとに並べ、選べる段階(段)を用意しているので、契約で決め忘れた項目に気づきやすくなります。ただし万能ではなく、資料は選択肢の一覧で、契約条項の文例ではありません。本記事では、発注側の担当者に向けて、資料が到着をどう分けているか、保守員とSEの段の違い、平均時間の意味、そして外部に委託するときに確認したい点を整理します。

開発要員の初動とは

非機能要求とは、システムで何ができるかではなく、どれだけ止まらずに動くか、誰がどう運用するかといった側の条件のことです。IPAの非機能要求グレードは、この条件を項目ごとに並べ、それぞれに何段階かの選択肢を置いています。ここで取り上げるのは、2018年4月25日に公表された改訂情報の資料に付いている「活用シート」です。*1

活用シートの項目はAからFの6つの区分に分かれ、Cが運用・保守性、つまり誰がいつ対応するかを決める区分です。区分の中はさらに細かい項目に分かれ、1行ずつ番号(項番)が付いています。初動に当たるのは、「障害時運用」の中の「システム異常検知時の対応」という項目に置かれた3行です。*1

3行の名前は、C.3.3.1「対応可能時間」、C.3.3.2「駆けつけ到着時間」、C.3.3.3「SE到着平均時間」です。*1 資料は異常を検知したあとの動きを1つの数字で表さず、受付の時間帯、保守員の到着、SEの到着の3つに分けて決める形にしています。ここでいう保守員は障害が起きたときに最初に対応にあたる要員、SEは設計や開発を担う技術者のことです。

異常を検知したあとに資料が別々に決める3つの行を並べた図。C.3.3.1対応可能時間はいつ受け付けるかで3段、主語は保守員。C.3.3.2駆けつけ到着時間は保守員が現地に着くまでで6段、測るのは到着までの時間。C.3.3.3のSE到着平均時間はSEが到着するまでで6段、測るのは平均時間。出典はIPA「非機能要求グレード2018 改訂情報」付録。

3行は1つの小項目の下にまとまっていますが、段はそれぞれの行で別に選びます。開発要員の初動として「SEがいつ来るか」を決めたいなら、C.3.3.3の行で段を選んでおく必要があります。

保守員とSEの到着の違い

駆けつけの行は2つあり、C.3.3.2は保守員が着くまで、C.3.3.3はSEが着くまでの時間を決める行です。段の欄も行ごとに別に並んでいます。*1 2つの行の段を、資料の文言のまま並べます。

C.3.3.2とC.3.3.3の段(IPA「非機能要求グレード2018 改訂情報」付録の活用シートから引用。確認日2026年9月19日)
段 C.3.3.2 駆けつけ到着時間 C.3.3.3 SE到着平均時間
0 保守員の駆けつけ無し SEの駆けつけ無し
1 保守員到着が異常検知から数日中 SE到着が異常検知から数日中
2 保守員到着が異常検知からユーザの翌営業日中 SE到着が異常検知からユーザの翌営業日中
3 保守員到着が異常検知からユーザの翌営業開始時まで SE到着が異常検知からユーザの翌営業開始時まで
4 保守員到着が異常検知から数時間内 SE到着が異常検知から数時間内
5 保守員が常駐 SEが常駐

段は0から5までの6つで、駆けつけ無し、数日中、翌営業日中、翌営業開始時まで、数時間内、常駐と並びます。*1 駆けつけは現地へ来ること、常駐はその場に人を置いておくことです。表の「ユーザ」は、システムを使う発注側の会社を指します。2つの行で文言が違うのは、来るのが保守員かSEかの一語だけです。表の形で見比べても違いに気づきにくく、片方の行だけを書き写す誤りが起こりやすくなります。

たとえば、保守員の段を「数時間内」、SEの段を「翌営業日中」と決めることもできます。一次対応の保守員は数時間のうちに、SEは翌営業日のうちに着く、という決め方です。大事なのは、どちらの行にも段が書かれていることです。保守員の段だけが決まり、SEの行が空いたままなら、SEがいつ来るかは決まっていません。

「平均時間」とは何を測るのか

2つの行は、何を測るかの説明も違います。資料では、項目の名前とは別に、備考欄に「【メトリクス】」という見出しで何を測るかの説明が書かれています。*1 名前だけを見ていると、この説明を読み落とします。

C.3.3.2の説明は「システムの異常を検出してから、指定された連絡先への通知、保守員が障害連絡を受けて現地へ到着するまでの時間。」です。*1 連絡が届くまでの時間もこの中に含まれ、着いたあとの作業の時間は含まれません。一方、C.3.3.3の説明は「システム異常を検知してからSEが到着するまでの平均時間。」で、指標の名前にも平均という語が入っています。*1

起点はどちらも異常の検知、終点はどちらも到着です。はっきり違うのは、C.3.3.3だけが平均で測る点です。平均は複数回の到着時間をもとにした値なので、1回ごとの到着時間を約束するものではありません。連絡が届くまでの時間を含むと書かれているのも、C.3.3.2の側だけです。

間違えやすいのが段の文言です。C.3.3.3の段は、段1なら「SE到着が異常検知から数日中」のように、いつ着くかだけを書いています。平均という語はどの段にも入っておらず、平均だと分かるのは指標の名前と備考欄だけです。*1 段1を選んだ契約書を見た人は、毎回SEが数日中に着くと受け取りがちです。

受付の時間帯との関係

受付の時間帯を決めるのが、C.3.3.1「対応可能時間」です。段は3つで、受注した企業の営業時間内(例:9時~17時)、ユーザの指定する時間帯(例:18時~24時)、24時間対応です。*1 備考欄の説明は「システムの異常検知時に保守員が作業対応を行う時間帯。」で、ここでも主語は保守員です。SEをいつ呼べるかは、この行には書かれていません。

受付と到着は別の行なので、組み合わせによっては食い違いが生まれます。C.3.3.1で24時間対応を選んでいても、C.3.3.3が段1なら、SEの到着は異常検知から数日中です。 夜中に連絡が受け付けられても、SEが来るのが数日中なら、原因の調査や修正はその後になります。24時間対応という言葉だけで、人がすぐ来ると考えないことが大切です。

復旧目標との関係

初動を1つの数字で決めにくい理由は、もう1つあります。復旧作業の項目の置かれ方です。区分Aの可用性は、システムがどれだけ止まらずに動くかを決める側です。復旧作業の項目は、この可用性の区分(A.4.1.1)と運用・保守性の区分(C.3.1.1)の両方に載っていて、段の中身も同じです。*1

備考欄には「【重複項目】」という見出しがあり、「復旧作業は、可用性の復旧目標(RTO/RPO)を検討するうえで必要な項目であるため、可用性と運用・保守性の両方に含まれている。」と書かれています。*1 RTOは復旧までにかける時間の目標、RPOはどの時点のデータまで戻すかの目標を指します。

一方、到着の行は2回置かれていません。付録を通して見ると、到着や駆けつけが出てくるのはC.3.3.2とC.3.3.3の2行だけで、可用性の区分に同じ行はありません。*1 復旧作業は可用性の区分にも載っていますが、到着の段は運用・保守性の区分にしか載っていません。復旧目標の時間だけを決めても、その時間の中でSEが着く段を選んでいなければ、目標どおりに復旧できるかは見通せません。

外部に委託するときに確認しておきたい点

運用や保守を外部に委託する契約で、初動をどう書くかを決める前に確かめておきたい点を4つ挙げます。1つめは、C.3.3.2とC.3.3.3のどちらの段を決めたのかを分けて確かめることです。保守員の段だけが書かれ、SEの段が空いていれば、SEがいつ来るかは決まっていません。

2つめは、指標の名前だけでなく備考欄の説明まで読むことです。C.3.3.2の名前は「駆けつけ到着時間」ですが、連絡が届くまでの時間も含むと書いてあるのは備考欄です。名前の欄だけを契約書に書き写すと、この条件が抜け落ちます。C.3.3.3が平均で測ることも、あわせて相手と確認しておきます。

3つめは、受付の時間帯と到着の段を突き合わせることです。4つめは、復旧目標の時間の中に到着の段が収まっているかを見ることです。復旧目標は可用性の側、到着の段は運用・保守性の側にしかないので、それぞれを別の担当者が決めていると、2つが突き合わされないまま契約に進みがちです。打ち合わせでは、4つの点を一覧にして相手と1行ずつ確認しておくと進めやすくなります。

リリース前に開発要員を増やすときの考え方は、「リリース前の開発要員|IPAは非活動期間を工期から引く」で扱っています。

まとめ:開発要員の初動で確かめておきたい3つの点

開発要員の初動を契約で決めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、保守員の到着(C.3.3.2)とSEの到着(C.3.3.3)の段を、それぞれ決めること。第二に、指標の名前だけでなく備考欄の説明まで読み、SEの行が平均で測ることを押さえること。第三に、受付の時間帯と復旧目標の時間に、到着の段が合っているかを突き合わせることです。この3点を踏まえておけば、「24時間対応と聞いていたのに、SEが来たのは数日たってからだった」という事態を避けやすくなります。段の決め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

どの段を選ぶのか、受付の時間帯と到着の段がつながっているのかを、契約書を見ながら一緒に確かめられます。段を決める前の段階でもご相談いただけます。

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よくある質問

この資料は、どの版のどこを見ればよいですか

使ったのは「非機能要求グレード2018 改訂情報 ~初版との差異~」(2018年4月25日)の付録にある活用シートです。*1 初版との差をまとめた資料に付いていますが、付録の活用シートは差分だけではなく、AからFの6区分すべての項番を含む一覧になっています。

SEの到着が平均で決まるなら、ほかに何を決めておけばよいですか

平均は複数回の到着時間をもとにした値なので、遅いときにどこまで遅れるかはC.3.3.3の行では決まりません。1回ごとの上限が必要なら、この行とは別に決めることになります。

契約書に「初動」という言葉を書いてもよいですか

資料には初動という語は出てこないため、この一語だけでは受付、保守員の到着、SEの到着のどれを指すのかが相手と揃いません。書くなら、C.3.3.1からC.3.3.3のどの行のどの段かを添えておくと、食い違いを防ぎやすくなります。

駆けつけの段の決め方から相談したいときは

保守員の段とSEの段が分かれていなくてもご相談ください。

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出典

  1. *1 参考:IPA「非機能要求グレード2018 改訂情報 ~初版との差異~」(PDF・2018年4月25日)(https://www.ipa.go.jp/archive/digital/iot-en-ci/jyouryuu/hikinou/ps6vr700000077he-att/000066170.pdf)。出典:独立行政法人情報処理推進機構「非機能要求グレード2018 改訂情報 ~初版との差異~」(2018年4月25日)。付録の「非機能要求グレード2018活用シート」から、項番がA〜Fの6区分に分かれていること、Cが運用・保守性であること、C.3.3.1「対応可能時間」の3段とメトリクス欄、C.3.3.2「駆けつけ到着時間」の6段とメトリクス欄、C.3.3.3「SE到着平均時間」の6段とメトリクス欄、C.3.1.1「復旧作業」の備考欄(重複項目である旨の記述)、可用性側の同じ行であるA.4.1.1、および到着や駆けつけを扱う行が付録全体でC.3.3.2とC.3.3.3の2行であることの一次情報として(2026年9月確認)




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