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エンジニア採用の技術面接、面接官の人数と評価のそろえ方を決める
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 技術面接の面接官は、任せる仕事を知っていて面接の研修を受けた2〜3人にし、全候補者を同じ顔ぶれで見ます。
- 採点は、面接官が話し合う前に1人ずつ付け、そのあと点数の差の理由を突き合わせて合意の点数を決めます。
- 評価の尺度は3〜7段階にして、段階ごとに答えの例を付けておくと、面接官の間で評価がそろいやすくなります。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
技術面接のあと、ある面接官は「設計の考え方がしっかりしている」と言い、別の面接官は「経験が浅い」と言う。候補者ごとに出てくる面接官が違い、誰と誰を比べればよいのかも分からない——。エンジニア採用の技術面接では、こうした食い違いが起こりがちです。技術面接の面接官とは、候補者に質問し、答えを記録し、決めておいた基準で採点する役目を持つ社員を指します。
面接官の顔ぶれと人数、採点の手順を選考の前に決めておけば、面接官が替わっても同じ物差しで候補者を比べやすくなります。ただし万能ではなく、何を評価するのかという評価項目が決まっていなければ、面接官をそろえても採点は割れます。本記事では、エンジニアを採用する開発部門のマネージャーに向けて、面接官を誰にするか、何人にするか、採点をそろえる手順、そして評価の尺度と研修を整理します。
目次
技術面接の面接官とは
面接官の仕事は、質問する、記録する、採点するの3つに分けられます。質問は決めておいた順に尋ね、記録は候補者が話した内容をなるべくそのまま残し、採点は面接が終わってから記録をもとに付けます。このうち評価が割れる原因になりやすいのは採点です。質問が同じでも、どの答えを何点とするかが面接官ごとに違えば、結果はそろいません。
厚生労働省は、複数の面接担当者で面接する場合は、全員で公正採用選考の考え方に基づいた対応ができるよう確認し、「意思統一を図っておきましょう」と呼びかけています。あわせて、面接での評価は、あらかじめ評価基準を決めておき、できるだけ客観的かつ公正に行うよう求めています。*3 面接官が複数いることを前提に、考え方と基準の両方を事前にそろえておくという順番です。
では、その「そろえる」を具体的にどう進めるのか。手がかりになるのが、米国の連邦政府で人事を担う人事管理局(OPM)が2008年に公開した構造化面接の手引きです。構造化面接とは、全員に同じ質問を同じ順で尋ね、共通の評価尺度で採点し、どの答えを合格とするかについて面接官の間で合意しておく面接を指します。手引きは、決まった形のない面接では面接官の間で評価の一致が低くなると書いています。*1 以下では、この手引きと、連邦政府の面接を調べた報告書をもとに、面接官の決め方を見ていきます。
面接官を誰にするか
OPMの手引きは、複数の面接官で面接する場合の典型的な構成を、その仕事について深い知識を持ち、面接の実施について研修を受けた2人以上としています。条件は、仕事を知っていることと、面接のやり方を学んでいることの2つです。手引きは面接のよくある失敗の一つに「仕事を知らないこと」を挙げ、仕事に必要な技能を理解していない面接官は、何が最良の候補者かを自分の印象で決めてしまうと書いています。*1
エンジニア採用の技術面接に当てはめると、1人は配属先で実際に開発をしているエンジニアにします。任せる予定の作業を自分でしている人なら、候補者の説明が作業の手順として筋が通っているかを判断できます。もう1人は、配属先の管理者か人事の担当者にします。技術の細部を確かめるよりも、質問の順番と時間を守り、仕事と関係のない話題に入らないように面接を進める役目です。
国内の企業でも、面接官の組み合わせは回ごとに決めています。労働政策研究・研修機構(JILPT)が2017年に行った聞き取り調査では、従業員1,000人以上の医薬品メーカーのE社が、中途採用の1次面接を事業役員と事業部長、人事担当者で担当し、応募者のこれまでの経験と入社後の業務内容が合うかを見ています。2次面接は人事管掌役員と人事部長です。同じく1,000人以上の建設業のF社は、中途採用の一次面接を採用担当者2人、二次面接を役員2人で担当しています。*4 どちらも、1回の面接に2人以上が入り、回によって面接官の立場を変えています。
何人にするか
人数について、米国のメリット・システム保護委員会(MSPB)が2003年に大統領と議会に出した報告書は、構造化面接を使う多くの組織が2人か3人の面接官で面接していると書いています。報告書が挙げる利点は3つです。1人では聞き漏らす質問や情報を拾えること、別の見方が採点に加わって釣り合いのとれた評価になること、面接官の属性に幅が出て、候補者が面接の結果を受け入れやすくなることです。*2
OPMの手引きも、2人か3人の面接官のほうが情報を記録し解釈しやすく、評価の偏りのおそれも減るとし、同時に面接する形でも1人ずつ順に面接する形でも、できる限り全候補者に同じ面接官を充てるよう勧めています。一方で、連邦政府の機関では面接は通常その職の選考を担う上司1人が行うとも書いており、1人の面接を否定してはいません。*1
人数と同じくらい大事なのが、顔ぶれを固定することです。候補者Aは開発リーダーが、候補者Bは別のチームのエンジニアが見る形では、点数の差が候補者の差なのか面接官の差なのかを分けられません。面接官を2人にするなら、募集が続く間は同じ2人に通して担当してもらうのが進めやすいやり方です。3人目は、配属先が2つのチームにまたがる場合などに加えます。
採点をそろえる手順
複数の面接官がいるときの採点の順番は、OPMの手引きに具体的に書かれています。流れを図にまとめました。
まず、候補者が退室したらすぐ、面接官がそれぞれ自分のメモを見直して採点します。この段階では、ほかの面接官と話し合わずに1人ずつ評価を付けます。全員が採点を終えたら、メモと点数とその根拠を突き合わせます。点数に差があれば、差が出た理由を掘り下げたうえで候補者ごとに合意した点数を決め、グループ用の評価票に記録します。最後の候補者まで終わったら、全候補者の合意の点数を見直してから確定し、面接官全員が評価票に署名します。評価票の見本には、話し合いで個人の点数を変えたときは面接官が頭文字を書き入れるよう指示があります。*1
先に話し合いを始めてしまうと、面接官それぞれがどう見たかが記録に残りません。1人ずつ付けた点数が手元にあれば、合意の点数との差が見え、あとから判断の経緯をたどれます。技術面接の評価表に、面接官ごとの点数の列と合意の点数の列を並べておき、話し合いの前に各自の列を埋めてから集まる運用にしておくと、この順番を守りやすくなります。
評価の尺度と答えの例
採点をそろえるもう一つの道具が評価の尺度です。OPMの手引きは、すべての評価項目で同じ段階の幅を使い、段階は少なくとも3つ、できれば5〜7つにし、少なくとも3つの段階には「不十分」「十分」「優秀」のような名前を付けるよう求めています。手引きが示す5段階の例は、段階1が「最も簡単な場面」で使え、細かな指導を受ける水準、段階5が「きわめて難しい場面」で使え、周りに助言する立場にある水準という書き方です。*1
段階ごとに答えの例も付けます。手引きは、その仕事をよく知る社員に、各段階の人ならどう答えるかをまず1人ずつ書いてもらい、話し合って、その段階を最もよく表す例を残す手順を示しています。そのうえで、答えの例は絶対の基準ではなく目安として使うよう面接官に伝えるとし、採点のときに先に面接した候補者と比べないようにも求めています。*1 候補者どうしではなく、段階ごとの答えの例と比べるということです。
| 段階 | 段階の説明 | 答えの例 |
|---|---|---|
| 5 | とても難しい場面で対応し、周りに助言する立場にある | 複数のシステムにまたがる障害で対応の指揮をとり、再発を防ぐための設計の変更を決め、ほかのチームにも手順を助言した |
| 3 | 難しい場面で対応でき、ときどき助言を受ける | ログから原因の候補を自分で絞り込み、影響を受ける機能を上司に説明したうえで、暫定の対処を行った |
| 1 | 最も簡単な場面で対応でき、細かな指示を受けて動く | 先輩の指示を受けて、ログの取得やサーバーの再起動など、決まった手順を実行した |
表では段階2と4の欄を省きました。MSPBの報告書の付録にあるOPMの見本でも、段階の説明が書かれているのは1・3・5で、2と4は答えの例だけです。この見本はIT職の面接用に作られたもので、対人スキルの段階3の例に「ITの各分野について顧客や一般の人に技術的な助言をする」、段階4の例に「システムの設計や構成をめぐる争いを仲裁する」が挙がっています。*2 評価項目そのものの選び方は「エンジニア採用の技術面接、評価項目をスキルの水準から決める」で扱っています。
面接官の研修と記録
OPMの手引きは、面接官の研修は欠かせず、研修によって面接の正確さが高まるとしています。研修で重点を置く内容として、メモを取ることの大切さ、面接官の身ぶりが候補者に与える影響、よくある評価の偏りと誤りの3つを挙げています。メモは、候補者が話した内容と観察できた振る舞いを、項目ごとの点数の理由を示せるだけ詳しく残すよう求めています。*1 技術面接なら、候補者が挙げた技術の名前だけでなく、「どの作業を自分で担当したか」への答えをそのまま残しておくと、話し合いで点数の根拠を示しやすくなります。
MSPBの報告書は、研修で扱う主題を9つ並べ、要点は1〜2日の研修で扱えるとしています。研修が要る理由として、報告書は、面接はたいてい上司や管理職が行うのに、その準備が足りていない点を挙げています。1992年の同委員会の調査では、第一線の監督者の90%近くが新しい職員の選考に関わっていました。一方で、上級管理職の少人数の標本に尋ねると、面接の研修を受けたことがあると答えたのはかろうじて半数でした。*2 開発の現場のエンジニアに面接官を頼むときも、面接の研修を受けたことがあるかを先に確かめておきます。
つまずきやすい点
一つ目は、評価の誤りの型を知らないまま採点することです。OPMの手引きは、よくある評価の誤りを6つ挙げています。属性や性格への先入観で評価する偏り、1つの項目の印象がほかの項目の点数まで動かすハロー効果、全項目を真ん中に付ける中心化、全員に高い点を付ける寛大化、全員に低い点を付ける厳格化、自分に似た候補者を高く付ける類似性の偏りです。*1 研修でこの6つを名前ごと伝えておくと、話し合いの場で「全員が3点になっていないか」と具体的に確かめ合えます。
二つ目は、一度作った面接の仕組みを見直さないことです。MSPBの報告書は、構造化面接を運用しながら直していくものとして扱い、面接官が評価の尺度を同じように使えているか、といった問いで定期的に点検するよう勧めています。*2 募集が一段落したら、面接官どうしの点数の差が大きかった評価項目を洗い出し、答えの例を書き足します。面接官の責任者や採否を決める人の分担は「エンジニア中途採用の責任者と、人事・開発現場の役割分担」に、技術がわからない人が面接に入るときの質問は「技術面接で人事が見極める5つの質問」にまとめています。
まとめ:技術面接の面接官で確かめておきたい3つの点
エンジニア採用の技術面接で面接官を決めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、任せる仕事を知っていて面接の研修を受けた2〜3人を面接官にし、募集が続く間は全候補者を同じ顔ぶれで見ること。第二に、面接官が話し合う前に1人ずつ採点し、そのあと点数の差の理由を突き合わせて合意の点数を決めること。第三に、3〜7段階の評価の尺度に答えの例を付け、募集のたびに見直すことです。この3点を踏まえておけば、「面接官によって評価が正反対で、どちらを信じればよいのか分からない」という事態を避けやすくなります。面接官を出せる人数や尺度づくりに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
オンラインの技術面接でも、同じ手順で進められますか
進められます。面接官がそれぞれ別の画面で評価表に点数を書き込み、全員が書き終えてから通話で突き合わせれば、話し合う前に1人ずつ採点するという順番を守れます。評価表の共有の設定を、書き終えるまでほかの面接官の点数が見えない形にしておくと確実です。
面接官の研修では、何を練習すればよいですか
答えを聞いて採点する練習を入れます。OPMの手引きが示す研修の例では、録画した面接を見て採点し、講評を受ける練習が組み込まれています。*1 同じ録画を面接官全員で採点し、点数の差を話し合うと、本番の突き合わせの練習にもなります。
候補者には、面接官の人数や面接の進め方を伝えておくべきですか
伝えておくのがおすすめです。面接の冒頭で面接官を1人ずつ紹介し、進め方と、面接中にメモを取ることを全候補者に同じ言葉で説明します。事前に書面で知らせておくと、候補者も準備しやすくなります。
突き合わせても、面接官の間で点数が合わないときはどうしますか
差が出た評価項目について、それぞれのメモに残っている候補者の発言を読み合わせます。それでも合わなければ、両方の点数と理由を記録に残し、採否を決める責任者に判断を委ねる形にしておくと進めやすくなります。同じ項目で何度も割れるなら、その項目の答えの例が足りていない合図です。
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出典
- *1 参考:U.S. Office of Personnel Management「Structured Interviews: A Practical Guide」(PDF)(https://www.opm.gov/policy-data-oversight/assessment-and-selection/structured-interviews/guide.pdf)。出典:米国人事管理局(OPM)「Structured Interviews: A Practical Guide」(2008年9月)。Introduction(構造化面接と非構造化面接の比較)、Section I 4(評価尺度)、Section II(面接官・研修・メモ・採点)、Appendix D(パネル面接)、Appendix E(研修の例)、Appendix F(評価の誤りと面接の失敗)、Appendix H(グループ評価票の見本)を参照。原文は英語で、本文の訳は筆者による(2026年9月確認)
- *2 参考:U.S. Merit Systems Protection Board「The Federal Selection Interview: Unrealized Potential」(PDF)(https://www.mspb.gov/studies/studies/The_Federal_Selection_Interview_Unrealized_Potential_253635.pdf)。出典:米国メリット・システム保護委員会(MSPB)の大統領と議会への報告書(2003年)。構造化面接の要素(評価尺度・研修・パネル面接・メモ)、面接官の準備不足に関する記述、面接の見直し、Appendix C(OPMのIT職向け質問と評価尺度の見本)を参照。原文は英語で、本文の訳は筆者による(2026年9月確認)
- *3 参考:厚生労働省 公正採用選考特設サイト「採用選考の具体的な方法」(https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/methods.html)。出典:厚生労働省 公正採用選考特設サイト「事業主の皆様へ 採用選考の具体的な方法」。7 面接を参照(2026年9月確認)
- *4 参考:労働政策研究・研修機構「調査シリーズ第179号 企業の多様な採用に関する調査」第3章(PDF)(https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/documents/179_02.pdf)。出典:JILPT調査シリーズ第179号(2018年)第3章 企業の多様な採用に関するヒアリング調査(2017年10月17日から11月21日)。製造業E社と建設業F社の中途採用の面接の担当者を参照(2026年9月確認)