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リモート採用の勤務条件、対応時間の枠と求人票への書き方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 対応時間は、チームの会議やレビューが集まる時間帯を書き出してから、勤務時間の中ですぐ応じてほしい時間帯として決めます。
- 厚生労働省のガイドラインは、時間外等のメールに対応しなかったことを理由に不利益な人事評価をするのは適切でないとしています。
- 決めた対応時間と時間外の連絡の扱いは求人票の始業・終業の時刻に書き添え、面談で候補者の抜けやすい時間とすり合わせます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
リモートで働くエンジニアを採ったものの、チャットを送っても昼過ぎまで返事がない。反対に、採られた側は夜に届く連絡にも応じなければならないと思い込み、入社してひと月で疲れてしまった——。リモート採用では、勤務時間は決めてあっても、連絡や会議に応じる時間が決まっていないために、こうした行き違いが起こりがちです。ここでいう対応時間とは、勤務時間のうちチャットの返事や会議の呼び出しにすぐ応じる時間帯と、それ以外の時間に届いた連絡の扱いをまとめた約束のことです。
対応時間をリモート採用の勤務条件として先に決めて示しておけば、候補者は自分の暮らしと照らし合わせて応募でき、チームは返事を待つ時間を見込めます。ただし、対応時間は労働時間の制度そのものではなく、制度の選び方は就業規則や労務の担当者と決める話です。本記事では、エンジニアを採る開発の現場のマネージャーに向けて、在宅勤務で働く時間帯と在席確認の実態、対応時間の決め方、時間外の連絡の扱い、そして求人票と面談での示し方を整理します。
目次
リモート採用の対応時間とは
オフィスで働いていれば、相手の席を見るだけで、いま話しかけてよいかどうかがおおよそ分かります。リモートでは、相手が会議中なのか、昼休みなのか、集中して作業しているのかが見えません。そこで「何時から何時までは連絡にすぐ応じる」「会議はこの時間帯に入れる」「それ以外の時間に届いた連絡は翌営業日に返す」といった約束を、あらかじめ決めておく必要が出てきます。
似た言葉がいくつかあるので、ここでの使い分けを先に示しておきます。
| 言葉 | 中身 | 決める場所 |
|---|---|---|
| 勤務時間 | 始業から終業までの時間。労働条件として示す | 求人票、労働条件通知書、就業規則 |
| コアタイム | フレックスタイム制で、労働者が働かなければならないと定めた時間帯 | 就業規則、労使協定 |
| 対応時間 | 勤務時間のうち、チャットや会議の呼び出しにすぐ応じる時間帯 | チームの決まり、求人票の書き添え、面談 |
| 時間外の連絡 | 勤務時間の外に届いた連絡を、いつ誰が受けるか | チームの決まり、就業規則 |
対応時間は、勤務時間と同じ長さにしなくてもかまいません。勤務時間のすべてを「すぐ返す時間」にすると、エンジニアが集中して実装やレビューをする時間が細切れになります。開発のチームなら、午前と午後に2時間ずつ程度の枠を置き、残りは返事が少し遅れてもよい時間にする、といった分け方が考えられます。コアタイムを置く制度の決まりは「フレックスタイム制と通常勤務、残業代の違い」で扱っています。
在宅勤務で働く時間帯
対応時間をいつに置くかを考えるうえで、在宅勤務をしている人が実際にどの時間帯に働いているかが参考になります。厚生労働省の委託で三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った「テレワークの労務管理等に関する実態調査」は、2020年8月から9月にかけて、調査対象の企業が選んだ従業員にWEBで回答してもらったものです(有効回答4,184件)。*1 このうち在宅勤務をしている1,343人に、在宅勤務をすることが多い時間帯を複数回答で聞いています。
最も多いのは午前中(8時以降〜12時まで)の94.4%で、午後(12時以降〜16時まで)の91.9%、夕方(16時以降〜18時まで)の75.9%が続きます。夜間(18時以降〜22時まで)は14.1%、早朝(5時以降〜8時まで)は5.4%、深夜(22時以降〜翌朝5時まで)は1.3%でした。*1
在宅勤務をしている人の大半は、昼の時間帯に働いています。午前と午後に対応時間を置けば、多くの人の働き方と重なります。一方で、夜間に働くことが多い人も1割台いるので、全員が同じ時間に応じられるとは限りません。なお、この調査は2020年に行われ、職種を分けて集計していないため、エンジニアだけの値ではありません。夜に働く副業の人と時間を合わせる話は「副業エンジニアの夜間稼働、返事が遅れる理由と稼働時間の決め方」で扱っています。
在席と報告の確かめ方
同じ調査は、在宅勤務をしている1,343人に、在宅勤務中の在席や勤務状況をどう確かめられているかも聞いています(複数回答)。最も多いのは「始終業時の報告を求めている」の48.5%で、「各種ツール(在席確認アプリ、チャットツール等)で在席状況を表示している」が17.4%、「共有スケジューラーで在席状況を表示している」が15.9%でした。「Webカメラで勤務中の様子を映すようにしている」は0.6%にとどまり、「特に確認されない」が36.6%あります。*1
業務の報告の仕方(複数回答)では、「終業時に上長に対して、業務予定や業務の進捗状況について報告」が37.7%、「上長への日々の業務報告・進捗状況については決めておらず、必要に応じて報告」が29.3%、「始業時に上長に対して、業務予定や業務の進捗状況について報告」が25.8%です。「特に決まっていない」も9.8%ありました。*1
始業と終業の報告はしていても、その間のどの時間なら声をかけてよいかまでは決まっていない職場が多いと考えられます。在席を特に確かめられていない人も3人に1人を超えます。対応時間を決めるなら、いま応じられるかどうかを相手に知らせる手段も一緒に決めておくと運用しやすくなります。チャットの状態表示を対応時間の間だけ「応答可」にする、共有の予定表に集中作業の枠を入れておく、といった方法です。
対応時間の決め方
対応時間は、次の3つの手順で決めると進めやすくなります。
1つ目は、チームの会議、レビュー、他部署からの問い合わせが集まる時間帯を、1〜2週間分書き出すことです。朝会が10時、顧客との定例が火曜の15時、リリース前の確認が夕方に集中する、といった実際の予定を並べます。今ある予定から決める方が、入社後に「結局この時間も呼ばれる」という食い違いが起こりにくくなります。
2つ目は、書き出した予定をもとに、すぐ応じてほしい時間帯を決めることです。たとえば「10時〜12時と14時〜16時は、チャットに30分以内に反応し、会議の呼び出しに応じる」のように、時間帯と反応の目安を組にして決めます。目安の数字はチームの事情で決めてかまいません。
3つ目は、対応時間の途中で私用のために抜けるときの扱いです。同じ調査の企業調査では、通常の労働時間制度で在宅勤務中の中抜けをどう扱うかについて、976社のうち「特に決まっていない」が31.3%で最も多く、「休憩として取扱い、休憩時間分だけ終業時刻を遅らせている」が19.3%、「中抜けの取得を認めていない」が17.0%、「半日単位や時間単位の年次有給休暇の取得を必須としている」が15.9%でした。*1
厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(以下、テレワークガイドライン)は、中抜け時間の扱いについて「あらかじめ使用者が就業規則等において定めておくことが重要である」としています。*2 中抜けを休憩として扱うのか、年次有給休暇として扱うのかは、就業規則と労務の担当者に確かめて決めます。現場で決めておきたいのは、抜けるときに誰へどう伝えるか、対応時間の間に抜けたときの急ぎの連絡を誰が受けるか、という連絡の段取りです。
時間外の連絡の扱い
対応時間と同じくらい候補者が気にするのが、勤務時間の外に届く連絡の扱いです。テレワークガイドラインは、人事評価について述べた箇所で、「テレワークを実施している者に対し、時間外、休日又は所定外深夜(以下「時間外等」という。)のメール等に対応しなかったことを理由として不利益な人事評価を行うことは適切な人事評価とはいえない」としています。*2
この考え方を踏まえると、時間外の連絡は「届いても、次の対応時間に返せばよい」と明文化しておくのが基本になります。送る側の決まりもあわせて決めます。夜に連絡を送るときは「明日の対応時間で大丈夫です」と書き添える、チャットの予約送信を使って翌朝に届くようにする、急ぎのものは電話など別の手段に分ける、といった方法です。決まりが受ける側の約束だけだと、上司から夜に連絡が届いた時点で、返さないと評価に響くのではないかと考える人が出てきます。
障害の一次対応やリリース作業のように、勤務時間の外でも応じてもらう必要がある仕事があるなら、それは対応時間とは別の条件として示します。当番を誰が持つのか、どのくらいの頻度で回ってくるのか、待機や対応した時間をどう扱うのかを書き出しておきます。待機の時間が労働時間に当たるかどうかや、手当をどう支払うかは、働き方によって判断が分かれます。就業規則や労務の担当者、必要に応じて社会保険労務士に確かめてから求人で示すようにします。
求人票と面談での示し方
募集の段階で示す労働条件は法令で決まっています。職業安定法第5条の3第1項は、労働者の募集を行う者などに、募集に当たって「労働時間その他の労働条件」を明示するよう求めています。*3 明示する事項を並べた職業安定法施行規則第4条の2第3項は、第4号で「始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項」を挙げています。*4
法令が挙げる事項の中に「対応時間」という項目はありません。そこで、始業と終業の時刻を書く欄の近くに、対応時間と時間外の連絡の扱いを書き添えておくと、求人票を読むだけで働き方が分かります。書く場所と内容の例は次のとおりです。
| 場所 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 求人票 | 勤務時間:9時〜18時(休憩60分)。うち10時〜12時と14時〜16時はチャットと会議に応じられる時間としてお願いしています。時間外の連絡は翌営業日の返信で問題ありません。夜間の障害当番は月1回程度 |
| カジュアル面談・一次面接 | チームの会議の時間帯、反応の目安、障害当番の有無と頻度 |
| 内定時の案内 | 対応時間、中抜けの連絡の仕方、時間外の連絡の扱い、入社後に見直す時期 |
就業の場所に自宅をどう書くかは「リモート採用の勤務条件、就業場所に自宅を含める書き方」で、出社する日の決め方は「リモート採用の勤務条件で出社頻度を決める手順と書き方」で扱っています。
面談でのすり合わせ
求人票に対応時間を書いても、候補者の暮らしと合うかどうかは面談で確かめる必要があります。聞くときは家族の事情を直接尋ねるのではなく、「毎日決まって連絡に応じにくい時間帯はありますか」と時間で聞くと、答える側も話しやすくなります。抜ける時間が分かれば、対応時間の枠をずらせるかをその場で検討できます。
会社の側から伝えておきたいのは、対応時間の枠、反応の目安、時間外の連絡の扱い、障害当番の有無の4つです。面談で初めて当番の話をすると、求人票に書いていなかった条件として受け取られかねません。
入社してから合わないことが分かる場合もあります。そのため、入社後3か月などの区切りで対応時間を見直す、と内定時に伝えておくと話し合いを始めやすくなります。見直すときは、本人の枠をずらすだけでなく、チームの会議の時間を動かせないかも検討します。
外部の人材に頼むときに確認しておきたい点
ここまでの話は、会社が雇う社員の勤務条件についてのものです。業務委託(雇わずに仕事単位で契約する形)で開発に加わる人とは、勤務時間ではなく、契約で打ち合わせの時間帯や連絡への返事の目安を取り決めます。
どちらの形で人を探すにしても、1つ目の手順で書き出した「会議やレビューが集まる時間帯」の一覧が役に立ちます。昼の決まった時間に応じてもらう必要が大きければ、その時間に働ける社員を採る方が合います。返事が翌日になってもよい仕事が多ければ、業務委託で加わる人にも任せやすくなります。
まとめ:対応時間で確かめておきたい3つの点
リモート採用の勤務条件として対応時間を決めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、チームの会議やレビューが集まる時間帯を書き出し、そこからすぐ応じてほしい時間帯と反応の目安を決めること。第二に、中抜けのときの連絡の段取りと、時間外の連絡は次の対応時間に返せばよいという決まりを、送る側と受ける側の両方について決めること。第三に、決めた内容を求人票の始業・終業の時刻に書き添え、面談で候補者の抜けやすい時間とすり合わせることです。会議の時間帯の洗い出しや、条件に合う人の探し方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
対応時間を求人票に書くと、その時間以外は連絡できなくなりますか
連絡を送ること自体はできます。対応時間は、すぐ返事を求めてよい時間帯を決めるものです。対応時間の外に送った連絡は、次の対応時間に返ってくる前提で送ります。急ぎのものは電話など別の手段に分けておくと、決まりが崩れにくくなります。
対応時間とコアタイムは同じものですか
同じではありません。コアタイムはフレックスタイム制で働かなければならないと定めた時間帯で、就業規則や労使協定で定める制度の一部です。対応時間は、勤務時間の中でチャットや会議にすぐ応じる時間帯をチームで決めるものです。コアタイムを置く場合は、その中に対応時間を重ねると分かりやすくなります。
時差のある地域に住む人を採るときも、同じ考え方でよいですか
考え方は同じですが、対応時間をどちらの時刻で書くかを決めておく必要があります。日本の時刻で書き、候補者の住む地域では何時になるかを面談で一緒に確かめます。海外に住む人を雇うときの手続きや税・保険の扱いは国によって異なるため、労務や税の専門家に確かめてください。
対応時間を含む勤務条件を相談したいとき
チームの会議の時間帯の洗い出しから、求人票に書く勤務条件の整理までご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:厚生労働省委託事業「テレワークの労務管理等に関する実態調査【概要版】」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング、PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000782363.pdf)。出典:令和2年度テレワークの労務管理に関する総合的実態調査研究事業「テレワークの労務管理等に関する実態調査【概要版】」(令和3年3月)。従業員調査の実施概要(WEB、令和2年8月20日〜9月25日、有効回答4,184件)、従業員調査Q34 テレワーク(在宅勤務)時の在席確認・勤務状況の確認、Q35 テレワーク(在宅勤務)時の業務に関する報告、Q41 テレワーク(在宅勤務)をすることが多い時間帯(いずれも在宅勤務実施層n=1,343、複数回答)、企業調査Q13(8) テレワーク(在宅勤務)中の中抜けの取扱(通常の労働時間制度n=976)を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/000759469.pdf)。出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」。4(1) テレワークにおける人事評価制度、7(4)ア 中抜け時間を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:e-Gov法令検索「職業安定法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141)。出典:職業安定法(昭和22年法律第141号)第5条の3第1項を参照。条文はe-Gov法令APIの全文XMLから確認(2026年10月確認)
- *4 参考:e-Gov法令検索「職業安定法施行規則」(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40002000012)。出典:職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号)第4条の2第3項第4号を参照。条文はe-Gov法令APIの全文XMLから確認(2026年10月確認)