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2026.11.04 らしくコラム

工場のペーパーレス化を進める4つのステップ|点検表から始める順番

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

工作機械の操作盤の横でタブレットに点検結果を入力するヘルメット姿の担当

この記事の結論

  • 工場のペーパーレス化は、点検表・日報・作業指示書を電子の記録に置き換え、集計や改善に使える形にする取り組みです。
  • 紙の流れの書き出し、順番の決定、1つのラインでの試行、展開とつなぎ込みの4つのステップで進めます。
  • 法令で保存が決まっている点検記録は、必要な項目と保存期間、すぐに表示や印刷ができる手段を備えます。

※ 本記事は2026年11月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

点検表の束を毎月ファイルに綴じているのに、去年の記録を探すのに半日かかる。日報の数字を事務所でExcelに打ち直していて、集計が翌週になる——。紙の帳票で現場を回している工場では、こうした手間が積み重なりがちです。工場のペーパーレス化とは、点検表・日報・作業指示書といった紙の帳票を、タブレットやパソコンで記入し確認できる電子の記録に置き換えていく取り組みです。

記入した内容をそのまま集計に使え、過去の記録もすぐに探せるようになります。ただし万能ではなく、すべての紙を一度に置き換えようとすると、現場の入力が続かずに紙へ戻ってしまうこともあります。本記事では、工場の情報システム担当者や現場の改善担当者に向けて、ペーパーレス化の考え方、紙ごとの違い、電子化を進める4つのステップ、法令で保存する記録の扱い、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

工場のペーパーレス化とは

IPA(情報処理推進機構)の製造分野DXの用語集は、デジタイゼーションを「デジタル化。IT化と同義。」、デジタライゼーションを「デジタル化して価値を創ること。」と説明しています。*1 工場のペーパーレス化は、まず前者のデジタイゼーションにあたります。紙をなくすこと自体が目的ではなく、電子になった記録を集計や改善に使える状態にして、はじめて後者に近づきます。

  • 点検表:設備や治具の始業前の点検や定期の点検の結果を記入する表
  • 日報:作業者が1日の生産数・不良数・設備の停止時間などを書く報告
  • 作業指示書:何を・いくつ・どの手順で作るかを現場へ伝える書類
  • 対象外:取引先から届く注文書や納品書など、社外の紙を読み取ってデータにする作業

ここで扱うのは、現場が自分で「書く」紙を、最初から電子で書く形に変える話です。すでにある紙や社外から届く紙を読み取ってデータにする方法は、AI-OCRによる帳票の電子化で扱っています。読み取りは過去の紙を片づける手段、ペーパーレス化はこれから生まれる紙を減らす手段です。

点検表・日報・作業指示書の違い

IPAの製造分野DX推進ステップ例は、業務と業務の間が紙で情報を伝えていると、受け取った部署で電子データへの転記という無駄な作業が生まれ、転記の間違いや、情報が伝わるまでの時間のロスも起こりうると指摘しています。*2 ただ、工場の紙は誰が書いて誰が使うかが紙ごとに違うため、電子化で変わることも、難しさも変わります。

紙の点検表のバインダーを指して話す現場リーダーと、ノートPCに向かう生産管理担当

工場の3つの紙を電子化するときの違い
紙の種類 書く人と使う人 電子化で変わること 電子化の難しさ
点検表 設備の担当者が書き、保全の担当者や管理者が見る 記入漏れに入力の時点で気づける。過去の記録をすぐ探せる 低い。項目が決まっていて選択式にしやすい
日報 作業者が書き、現場の管理者や生産管理の担当者が使う 事務所での打ち直しがなくなり、生産数や停止時間をその日のうちに集計できる 中くらい。自由に書く欄をどう残すかを決める必要がある
作業指示書 生産管理や技術の担当者が書き、作業者が使う 最新の手順や図面を現場で確かめられ、古い版の取り違えを防げる 高い。生産管理の仕組みや図面の版の管理とつながる

表のとおり、点検表は項目が決まっていて「良・否」の選択で書ける欄が多く、最初に手をつける紙に向いています。作業指示書は現場の外の仕組みとつながるため、後回しにするほうが進めやすいでしょう。日報を集計や報告の仕組みとして作り込みたい場合は、日報・業務報告システムの開発にまとめています。

電子化を進める4つのステップ

工場のペーパーレス化は、入力の画面を作るより先に、紙の流れを確かめるところから始めます。次の4つのステップで進めると、途中で画面を作り直す手間を減らせます。

  • ステップ1:紙の流れを書き出す(何の紙をもとに、どんな作業をして、何の紙を作っているか)
  • ステップ2:電子化する順番を決める(点検表、日報、作業指示書の順が目安)
  • ステップ3:1つのラインで試す(使う端末、電波の届きにくい場所、手袋をしたままの操作を確かめる)
  • ステップ4:ほかのラインへ広げ、集計や生産管理の仕組みとつなぐ

工場のペーパーレス化を4つの段階で左から順に並べた流れ図。STEP1 紙の流れを書き出す、STEP2 電子化する順番を決める、STEP3 1つのラインで試す、STEP4 広げてつなぐ。

ステップ1の書き出しには、IPAの推進ステップ例が紹介しているヒアリングの方法が使えます。部署ごとに、①何の情報をもとに②どんな行為をして③何の情報を作っているかを聞き、業務の流れの図にしていく方法です。*2

つまずきやすいのはステップ3です。事務所では使いやすい画面でも、油のついた手袋では押しにくかったり、設備の陰で電波が届かなかったりします。試している間は紙と電子を並べて使い、記入漏れや入力にかかる手間を比べてから、紙をやめるかどうかを決めます。

法令で保存する点検記録の扱い

点検表の中には、法令で記録と保存が決まっているものがあります。たとえばフォークリフトの定期自主検査について、労働安全衛生規則は、検査を行ったときに次の事項を記録し、3年間保存するよう定めています。*3

倉庫でフォークリフトの前輪の横にしゃがみ、タブレットを手に点検する担当

  • 検査年月日
  • 検査方法
  • 検査箇所
  • 検査の結果
  • 検査を実施した者の氏名
  • 検査の結果に基づいて補修などの措置を講じたときは、その内容

この記録は、厚生労働省の省令で、紙の代わりに電磁的記録(電子のデータ)で保存できるものに挙げられています。電子で保存するときは、必要に応じてすぐに画面に表示し、書面を作成できるようにしておくことが求められます。*4 電子の点検表を作るときは、法令が求める項目が入力画面に揃っているか、保存期間のあいだ消さずに残せるか、印刷できるかを確かめておきます。どの記録が対象になるかの個別の判断は、労働基準監督署や専門家に確かめてください。

外部に頼むときに確認しておきたい点

工場のペーパーレス化を外部に頼むときは、入力の画面を作る作業だけでなく、紙の流れの書き出しや現場での試行まで含めて相談できるかが要になります。見積もりの前に、次の点を確かめておきます。

  • どこまで頼むか:紙の流れの書き出し、入力画面の作成、端末と通信の準備、現場での説明のうち、どれを任せるか
  • 現場で試す方法:1つのラインでの試行に立ち会うか。紙と並べて使う間の比べ方をどう決めるか
  • 法令で保存する記録:必要な項目と保存期間、印刷の手段を、画面と保存の仕組みにどう入れるか
  • つなぐ先:生産管理の仕組みやExcelの集計に、データをどの形で渡すか
  • 運用後の見直し:現場の声で入力項目を直す場を設けるか。その費用をどう扱うか

特に、つなぐ先は後から決めると作り直しになりやすい点です。作業指示書の電子化まで進めて、生産の実績と指示をひとつの仕組みで扱う段階では、MES(製造実行システム)の開発も比べる候補になります。

まとめ:工場のペーパーレス化で確かめておきたい3つの点

工場のペーパーレス化を進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、画面を作る前に紙の流れを書き出し、どの紙から電子にするかを決めること。第二に、点検表のような項目の決まった紙から始め、1つのラインで試してから広げること。第三に、法令で保存が決まっている記録は、必要な項目と保存期間、表示や印刷の手段を電子の仕組みに入れておくことです。この3点を踏まえておけば、「タブレットを配ったのに、結局紙の点検表に戻ってしまった」という事態を避けやすくなります。進め方や仕組みづくりに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSICは2006年の創業以来、システムの運用・保守に特化したプライム(一次請け)のシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。日本ニアショア開発推進機構の認定ベンダーとして、全国のリモート人材による開発・運用の体制を整えています。

工場のペーパーレス化では、入力画面をPWA(ブラウザで動き、端末に入れて使えるWebアプリ)で作り、電波の届かない設備の陰でも入力を端末に一時保存して、通信が戻ったときに送る設計を検討します。社内アカウントとの連携はOpenID Connectで行い、誰がいつ記録したかを残します。生産管理の仕組みやExcelの集計とはREST APIかCSVの受け渡しでつなぎ、データはPostgreSQLなどのデータベースに置いて、変更の履歴と日次のバックアップを取ります。設計の段階では、法令で保存が決まっている記録の項目と保存期間、印刷の様式をお客様と確かめます。運用では、現場の声をもとに入力項目を見直す手順を文書にしてお渡しします。

よくある質問

電子化したら紙の記録はすぐに捨ててよいですか

法令で保存が決まっている記録は、電子で保存する条件を満たしているかを確かめてから扱いを決めます。過去の紙の記録をスキャナで読み取って保存する方法も、省令に定めがあります。*4 自社の文書の保存規程もあわせて見直し、判断に迷う場合は専門家に確かめてください。

タブレットに慣れていない作業者が多くても進められますか

選択式の欄を中心にして文字の入力を減らすと、始めやすくなります。最初のラインでは紙と並べて使い、作業者の声を聞いて画面を直す時間を見込んでおきます。現場に相談役を1人決めておくと、使い方の質問が事務所に集まりすぎずに済みます。

費用はどのように決まりますか

端末の台数、入力画面の数、生産管理など他の仕組みとつなぐかどうかで大きく変わります。まず対象にする紙の種類と1日あたりの枚数を書き出してから見積もりを取ると、複数の見積もりを比べやすくなります。

工場のペーパーレス化のご相談

点検表や日報の電子化から、生産管理の仕組みとのつなぎ込みまで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。

2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。

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出典

  1. *1 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「中小規模製造業者の製造分野におけるDX推進のためのガイド」用語集160件(https://www.ipa.go.jp/digital/dx/mfg-dx/ug65p90000001kqv-att/000093475.pdf)。出典:デジタイゼーション、デジタライゼーションの説明を参照(2026年11月確認)
  2. *2 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「製造分野DX推進ステップ例(製造分野DXで3つの目指す姿を実現するための秘策)」(https://www.ipa.go.jp/digital/dx/mfg-dx/ug65p90000001kqv-att/000093473.pdf)。出典:4.2節の業務フローのヒアリング方法(入力情報・行為・出力情報)と、紙による情報伝達の弊害(転記の無駄・転記の間違い・時間のロス)の記述を参照(2026年11月確認)
  3. *3 参考:労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032)。出典:第151条の21(フォークリフトの定期自主検査)、第151条の23(定期自主検査の記録と3年間の保存)を参照(2026年11月確認)
  4. *4 参考:厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令(平成十七年厚生労働省令第四十四号)e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000100044)。出典:第4条(電磁的記録による保存の方法、表示と書面の作成)と別表第一(労働安全衛生規則第151条の23の記録の保存)を参照(2026年11月確認)




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