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外部エンジニアのテスト体制、IPAが定める4つの区分
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- テストの人手不足は4つに分かれる:IPAはテストの人手不足を、スキルと人数の組み合わせで4つに分けて記録しています。*1
- テストケース数は4倍ひらく:新規開発の結合テストのテストケース数は、1KFPあたり少ないほう4分の1で539.1件、多いほう4分の1で2,393.7件でした。*1
- 総合テストの平均は580.9件:新規開発の総合テストは、テストケース数の中央値が418.7件、テストケース数の平均が580.9件です。*1
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
結合テストの残件が計画どおりに減らないまま、リリース日だけが近づいてくる。あるいは、人を入れた週にかえって進みが落ちた——。テストが終わらない局面では、多くの現場が「増やせば進むのか」という判断に突き当たります。手がかりになるのが、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公開している「ソフトウェア開発分析データ集」です。企業から提供された開発案件の実績を集めた資料で、その収集項目のひとつに「テスト体制」があります。*1
4つの区分を見れば、自社の不足がスキルと人数のどちらなのかを先に決められます。ただし万能ではなく、4つの区分がどう分布しているかの集計はなく、社内の要員が担ったのか外部の要員が担ったのかも区別されていません。本記事では、開発の現場を預かるマネージャに向けて、テスト体制の4つの区分、スキルの不足と人数の不足の違い、なぜ人を増やしても残件が減らないのか、必要なテストの量、どう決めるのか、つまずきやすい点、そして外注の勘所を整理します。
目次
テスト体制とは——IPAが定める4つの区分
IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」は、企業から提供された開発案件の実績を集計した資料です。発行は社会基盤センターで、規模や工数や品質の指標が案件ごとに並んでいます。その収集項目のひとつが「テスト体制」で、そのプロジェクトのテスト体制がどうだったかを記録します。*1
用意されている答えは4つです。「a:スキル、員数ともに十分」「b:スキルは十分、員数は不足」「c:スキルは不足、員数は十分」「d:スキル、員数ともに不足」となっています。*1 ここでいう員数は人数のことです。この資料は、テストの不足をはじめからスキルと人数の2つに分けて記録していました。
テスト体制は案件のメンバーで組む体制を想定しているが、専任のテスト部隊であっても構わない、と補足されています。*1 専任の組織があるかどうかを聞いているのではなく、目の前の案件で実際にテストを担う人たちを見て答える欄です。外部の要員が入っていても、4つのどれかには当てはまります。
スキルの不足と人数の不足の違い
十分な体制を除くと、不足の形は3通りになります。人数だけが足りない(b)、スキルだけが足りない(c)、両方が足りない(d)です。*1
人数だけなら、手順に沿って件数を消化できる要員で足ります。テスト仕様書が書かれていて、実行と記録が残っているだけの作業だからです。担い手が増えた分だけ、消化する件数も増えます。
一方スキルなら、どこを確かめるかを決められる要員が要ります。観点の抜けを見つける作業は、担当者の経験に依存するためです。依頼に書く条件は、ここで分かれます。
なぜ人を増やしても残件が減らないのか
テストの作業は2種類あります。ひとつは手順が書かれていて、実行と記録で終わる作業。もうひとつは、どこを確かめるかを決める作業です。前者は人を足した分だけ進みますが、後者は決められる人が増えなければ止まったままです。
引き継ぎの説明にも時間がかかるため、人を入れた最初の数日はむしろ遅くなります。増えた人に仕様の背景を説明するのは、たいてい一番手が離せない担当者だからです。
「テストを手伝ってほしい」とだけ伝えると、この2つが混ざったまま相手に渡ります。相手は何人を出すのか、どの程度の経験が要るのかを決められません。ここは資料が述べていることではなく、4つの区分がスキルと人数を分けている理由として読める説明です。
必要なテストの量は規模から決まらない
人数だと決めたあと、では何人分の量なのかという話になります。同じ資料は、FP(ファンクションポイント)という規模の単位あたりで、テストケースが何件だったかを集計しました。新規開発の結合テストは、1KFPあたり1,596.8件が中央値です。*1
| 区分 | 少ないほう4分の1 | 真ん中 | 多いほう4分の1 |
|---|---|---|---|
| 新規開発の結合テスト | 539.1件 | 1,596.8件 | 2,393.7件 |
| 新規開発の総合テスト | 107.9件 | 418.7件 | 659.1件 |
| 改良開発の結合テスト | 950.1件 | 1,807.8件 | 8,914.1件 |
| 改良開発の総合テスト | 511.1件 | 1,500.0件 | 2,058.1件 |
ところが案件ごとの散らばりを見ると、話が変わります。少ないほうから4分の1の案件は539.1件以下、多いほうから4分の1は2,393.7件以上でした。*1 同じ1KFPの規模でも、4倍を超える差がついています。規模に係数を掛けて人数を出す見積り方は、この分布では当たりません。
散らばりの幅を示す標準偏差は1,508.8件で、中央値とほぼ同じ水準です。*1 平均を基準にすると、件数の多い案件に引っ張られます。新規開発の総合テストも、中央値が418.7件に対して平均は580.9件でした。*1 自社の直近の案件が上と下のどちらに寄っているかを先に見てから、幅で見込むほうが実務に合います。
どう決めるのか
決め方は、止まっている作業を見て、不足を人数とスキルのどちらか一方に寄せるところから始めます。両方に見えても、いま一番詰まっている側を選んでください。手順が書かれた確認作業が積み上がっているなら人数、どこを確かめるかが決まらずに止まっているならスキルです。
人数だと決めたら、直近の案件で1KFPあたりのテストケース数を数えます。その値が539.1件の側に近いのか、2,393.7件の側に近いのかで、同じ規模でも必要な手の数が変わります。*1 上の側に寄っているなら、規模だけで人数を決めると足りません。
スキルだと決めたら、その作業と期間を書き出します。「結合テストの設計を来月末まで」といった粒度で構いません。外部の要員(フリーランスを含む業務委託)は、作業と期間が決まっているほど合わせやすい調達の仕方になります。
つまずきやすい難所
一つめは、4つの区分の分布を読もうとすることです。どの区分の案件が何割あるのかは、この資料に集計がありません。載っているのは区分の定義までです。*1
二つめは、層ごとの目安を作ろうとすることです。回答数は新規開発の結合テストで20件、総合テストで18件にとどまります。*1 条件で絞るとさらに少なくなります。
三つめは、外に出したときの量を読み取ろうとすることです。社内の要員が担ったのか外部の要員が担ったのかを、この集計は区別していません。
外注時に確認しておきたい点
書き出したら、テスト設計から任せるのか、設計は社内で行い実行だけを任せるのかを分けます。前者なら観点の抜けを見つけられる経験が要りますし、後者なら手数を出せる人で足ります。この区別を曖昧にしたまま声をかけると、着任してから作業を詰め直すことになり、社内の確認工数がかえって増えます。
一方、合否を判断する基準づくりは社内に残してください。基準まで外に出すと、受け取った結果を評価する物差しが社内からなくなります。
正社員の採用と外部の要員では、向く場面が違います。テストの体制を恒常的に持ちたいなら採用、特定の期間だけ量と判断を足したいなら外部の要員でしょう。どちらにしても、4つの区分のどれに当たるかを先に決めてからのほうが条件を書けます。
開発の種別ごとのテスト量は改良開発と新規開発のテスト量の違い、中央値で1.8倍で別の指標を扱っています。規模の測り方が違うので、数字どうしはつなげられません。
遅れの理由を人数とスキルに分ける話は開発遅延の要因は社員のスキル不足が46.5%を占めるにあります。工期の遅れ全体が対象で、テストに限った調査ではありません。
止まっている理由を1つに絞る前の段階は開発の遅延の原因、変更管理ができているのは51.9%で整理しました。
誰が何をできるかを社内で把握する話はスキルマップの整備の違い、未対応42.8%と整備済み33.7%にあります。
まとめ:テストの人手不足で押さえる3つの視点
テストの人手不足は、スキルと人数に分かれます。押さえておきたい視点は3つに整理できます。第一に、IPAのデータ集はテスト体制を「スキル、員数ともに十分」から「スキル、員数ともに不足」まで4つに分けて記録しており、不足の形を1つに決められること。*1 第二に、人数側の量は規模だけでは決まらず、新規開発の結合テストのテストケース数は同じ1KFPでも少ないほう4分の1が539.1件、多いほう4分の1が2,393.7件と4倍を超えてひらくこと。*1 第三に、4つの区分の分布も、社内と外部の区別も、この資料には載っていないことです。*1 この3点を踏まえておけば、「テストを手伝ってほしいと伝えたのに、来た要員に何を任せるか決まっていなかった」という事態を避けやすくなります。止まっている作業を見て、人数とスキルのどちらかに決めるところまでは社内でできます。その先、観点を決められる人が社内にいなければ、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
テスト体制の不足は何で分けますか
IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」は、スキルと人数の組み合わせで4つに分けました。*1 「スキルは十分、員数は不足」と「スキルは不足、員数は十分」が別々にあるので、テストの人手不足の形を1つに決められます。確認日は2026年9月18日です。
1KFPあたりのテストケース数はどれくらいですか
新規開発の結合テストのテストケース数の中央値は1,596.8件、総合テストのテストケース数の中央値は418.7件でした。*1 回答数はそれぞれ20件と18件になります。*1 確認日は2026年9月18日です。
規模から必要な人数を見積もれますか
テストケース数のひらきが大きいため、規模だけでは決まりません。新規開発の結合テストは、少ないほう4分の1が539.1件、多いほう4分の1が2,393.7件で、4倍を超える開きがあります。*1 確認日は2026年9月18日です。
外部の要員を入れた場合の量は分かりますか
今回参照した資料に記載はありません。テストを担ったのが社内か外部かを、この集計では区別していないからです。回答数も新規開発の結合テストで20件にとどまります。*1 確認日は2026年9月18日です。
4つの区分のうちどれが多いのですか
4つの区分ごとの分布は、資料に集計がありません。載っているのは区分の定義までです。*1 確認日は2026年9月18日です。
任せる作業が決まったら相談
「結合テストの設計を来月末まで」といった形で作業と期間が書けていれば、そのままご相談いただけます。まだスキルと人数のどちらか決めきれていない段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(PDF)(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。出典:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」。独立行政法人情報処理推進機構 社会基盤センター発行。A5.2.11「品質」のデータ項目1010_テスト体制(回答内容と選択肢、および補足説明)、表5-2-2(FP規模あたりのテストケース数、検出バグ数:新規開発)、表5-2-3(同:改良開発)の一次情報として。本書の著作権はIPAが保有し無断の改変や公衆送信などは禁じられているため、この記事は示された数値を引用し、図と表は数値をもとに筆者が作成した。資料の図表そのものは複製していない(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(公開ページ)(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。本編と業種編・サマリー版という構成と、収録されている指標の範囲の確認として(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/index.html)。年度ごとに公開されていることの確認として(2026年9月確認)