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レガシー移行の重視事項|計画と人材の確保の比べ方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- IPAの2024年度の調査では、レガシー移行で重要な要素として「ビジョンの明確化及び経営者のコミットメント」を47.7%が挙げました。
- 「移行推進に必要な人材やスキルの確保」は23.2%で、10の選択肢のうち6番目でした。
- 決めることと調べることを分け、調べる作業のうち社内に担当者がいないものは、期間を区切って外部の専門人材に任せると進めやすくなります。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
古いシステムを新しくする話を始めたのに、会議では方針や予算の話ばかりが続く。いまのシステムの中身を調べようにも、その仕組みを知る担当者がもう社内にいない——。長く使い続けてきた古いシステム(レガシーシステム)の移行を検討する現場では、こうした行き詰まりが起こりがちです。レガシー移行の重視事項とは、企業が移行を進めるうえで特に重要だと考える要素のことです。
企業が何を重視しているかは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「2024年度ソフトウェア動向調査」で確かめられます。ただし、この調査が尋ねたのは重要だと思う要素で、重視した結果どうなったかは尋ねていません。本記事では、レガシーシステムの移行を担当する方に向けて、企業が重視している要素、人材の確保との差、選ばれ方の特徴、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
レガシー移行の重視事項とは
IPAの調査には、レガシーシステムの移行を進める上で特に重要と思われる要素を、10の選択肢から3つまで選ぶ設問があります。*3 調査は2024年12月17日から2025年2月14日にかけて行われ、2025年4月7日時点で企業799件、個人74件の回答がありました。*1 本記事で扱うのは企業向けの799件です。
この設問に答えたのは、799件から2段階で絞り込まれた企業です。まず、答える対象はシステムを使う側のユーザー企業662件と、ユーザー系情報システム子会社(親会社のシステムを担う子会社)20件を合わせた682件で、開発を請け負うベンダー系の117件は対象に入りません。*2 そのうえで、レガシーシステムを保有している322件と、過去に保有していた62件を合わせた384件が答えています。
答える前には、経営上及びビジネス上最も重要と考えられるシステムを一つ思い浮かべるよう指示されています。*3 つまり、その1つのシステムを移行する前提で重要な要素を選んでいます。3つまで選ぶ形式なので、それぞれの割合を足し合わせると100%を超えます。
企業が重視する上位5つ
384件のうち最も多くの企業が選んだのは「ビジョンの明確化及び経営者のコミットメント」で、183件、47.7%でした。*2 移行で何をめざすかをはっきりさせ、経営者が責任を持って関与することを指します。2番目は「移行ロードマップや計画、移行コストの明確化」(ロードマップは工程表のこと)の175件、45.6%、3番目は「現行システムの課題と移行リスクの可視化」の172件、44.8%です。
4番目は「移行方針の明確化」の143件、37.2%です。設問の説明によると、業界の仕様などを取り入れて業務を変えるのか、業務にシステムを合わせるのかといった方針を決めることです。*35番目は「移行後の効果の明確化」の129件、33.6%でした。
上位5つは、どれも移行の目的や計画、方針を決めることか、いまのシステムの課題を見えるようにすることです。選ばれた数を全部足すと1007件で、そのうち802件が上位5つです。割合を計算すると79.6%になります。
人材の確保との差
6番目は「移行推進に必要な人材やスキルの確保」で、89件、23.2%でした。設問の説明によると、業務やシステムの全体を設計する人(アーキテクト)や、プロジェクト管理者などがそろっていることを指します。*3
1番目の47.7%と比べると24.5ポイント低く、選んだ企業の数は183件に対して89件と、半分に届きません。7番目は「業務部門との合意形成と連携強化」の76件、19.8%でした。残りは「わからない」が19件、「他社の移行の状況や類似事例」が18件、「その他」が3件です。
重視する順位が低いからといって、人の問題が小さいとは言えません。同じ調査の別の設問では、移行の計画を実行に移せない34件の理由として、人材が上位に挙がっていました。*2 母数も対象も違うため数値は比べられませんが、重要だと思う要素の並びと、実際に止まっている理由の並びは同じではありません。止まる理由は「レガシー移行が進まない理由」で扱っています。
選ばれ方の特徴
3つまで選べる枠を何個使ったかで分けると、3個すべてを使ったのが293件、76.3%でした。1個は54件、14.1%、2個は37件、9.6%です。*2 選んだ個数の平均は2.62個です。8割近くの企業が上限まで選んでおり、重要なものを1つか2つに絞る答え方にはなっていません。
10の選択肢を、決めることと見えるようにすることの5項目(上位5つ)と、人と合意の2項目(人材やスキルの確保、業務部門との合意形成)に分けて数えます。決めることと見えるようにすることの5項目を1つ以上選んだのは356件、92.7%、人と合意の2項目を1つ以上選んだのは153件、39.8%でした。重なりを見ると、5項目の側だけを選んだのが209件、54.4%、両方が147件、38.3%、2項目の側だけが6件、1.6%、どちらも選ばなかったのが22件、5.7%です。
人材やスキルの確保を選んだ89件が、ほかに選んだ要素も数えました。ビジョンが43件、ロードマップが38件、方針が31件、効果と可視化が21件ずつ、合意形成が12件、他社事例が3件です。人材やスキルの確保だけを選んだのは1件でした。人を重視した企業も、残りの枠の多くは決めることや見えるようにすることに使っています。
どう進めるのか
こうした選ばれ方からすると、移行の会議の議題は決めることに集まりやすくなります。ところが、方針や計画を決めるには、いまのシステムが何をしているかが分かっている必要があります。調べる人がいなければ、決める話も止まります。そこで、調べる作業を1つ切り出して任せるまでを、次の4段で進めると整理しやすくなります。
- 移行の対象を1つに絞り、そのシステムをいま扱える人がいるかを名前で確かめる
- 決めることと調べることを、分けて書き出す
- 調べることのうち、社内に担当できる人がいない作業を洗い出す
- その作業を期間で区切って任せ、結果を文書で受け取る
1段目で対象を1つに絞るのは、調査の回答も1つのシステムを思い浮かべたものだからです。2段目で分けるのは、決めることを挙げた企業が92.7%に上り、混ぜて書き出すと、調べることが議題から抜けやすいためです。3段目では、人材やスキルの確保だけを選んだ企業が1件だったように、人の話は単独では議題になりにくいことを意識して、担当者のいない作業を一つずつ書き出します。
4段目で期間と受け取る文書を決めておくと、調べた結果が口頭の説明だけで終わらず、後から見返せます。どのプログラムやデータを、いつまでに、どんな文書にまとめてもらうかまで書いておくと、任せる側も受ける側も進めやすくなります。関係者の間での情報共有は「レガシー対応の情報共有」で、同じ調査の別の設問を扱っています。
外部に委託するときに確認しておきたい点
3段目で洗い出した作業と4段目の期間は、そのまま外部の専門人材に頼む作業の単位になります。フリーランスを含む業務委託は、作業と期間を区切って頼み、結果を文書で受け取れるので、この進め方に合っています。委託先には、対象のシステム、調べてほしいこと、期間、受け取りたい文書の形を最初に伝えておきます。
一方で、1段目の対象の絞り込みと2段目の切り分けは社内で行います。ここまで委託すると、何を調べるかという判断まで委託先に移ってしまうためです。社内に残すのは判断で、委託するのは調べる作業と文書にまとめる作業、と分けておくと、委託先とのやり取りも短くなります。
なお、この調査は任意の回答で、答えた企業が全体を代表するように選ばれたものではありません。選んだ3つの中での順位や、産業や規模による違いも、この設問からは分かりません。数値は、自社の議題に抜けがないかを見直す目安として使うのが向いています。
まとめ:レガシー移行で確かめておきたい3つの点
レガシー移行の重視事項を自社の進め方に生かすうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、企業の多くがビジョンや計画、課題の可視化を重視しており、人材の確保は23.2%で6番目にとどまること。第二に、移行の会議では決めることと調べることを分けて書き出し、調べる作業を議題から落とさないこと。第三に、社内に担当できる人がいない調べる作業は、期間を区切って任せ、結果を文書で受け取ることです。この3点を踏まえておけば、「方針は決まったのに、いまのシステムを調べる人がいなくて先に進まない」という事態を避けやすくなります。調べる作業を誰に任せるかに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
この調査はいつ公開されたものですか
IPAの公開ページによると、2025年2月27日に公開され、最終更新日は2025年4月25日です。*1 回答の件数は2025年4月7日時点のもので、それより後の傾向は含まれていません。
調査の回答データは、自社でも集計し直せますか
集計し直せます。IPAは回答を匿名化してオープンデータとして公開し、そのデータを使った分析レポートを募集しています。*1 本記事の件数と割合も、公開されている企業向けの調査結果のデータから集計した値です。*2
同じ調査の別の記事と、同じ数値が出てくるのはなぜですか
同じ384件を母数にした設問がほかにもあるためです。172件44.8%、143件37.2%、89件23.2%、54件14.1%は別の設問の値と一致しますが、指すものは違います。別の設問は「レガシー放置の影響」と「レガシー移行に必要な人材」で扱っています。
調べる作業の切り出し方を相談したいとき
決めることと調べることを分けたあと、調べる作業をどこから任せるか。作業と期間の区切り方からご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
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出典
- *1 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査」調査結果データの公開と分析レポートの募集(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/result-software2024.html)。出典:独立行政法人情報処理推進機構。公開日2025年2月27日・最終更新日2025年4月25日、調査期間2024年12月17日〜2025年2月14日、2025年4月7日時点の回答件数(企業799件・個人74件)、回答を匿名化してオープンデータとして公開し分析レポートを募集していることを参照(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 企業向け 調査結果(選択肢項目文字列)」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/h5f8pg00000028n8-att/software2024-c-result-data-str.csv)。Q5-13の回答の元データ。件数・割合、選んだ個数の分布、選択肢を2つに分けた集計、89件の内訳、差と倍率はこのデータから集計・計算した値(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 企業向け 設問一覧」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/h5f8pg00000028n8-att/software2024-c-questions.xlsx)。Q5-13の設問文・選択肢とかっこ書きの説明・3つまでという上限、回答対象の企業種別、Q5-3の「一つ思い浮かべて」という指示を参照。選択肢の文言はかっこ書きの説明を省いて表記した(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ソフトウェア開発関連調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/index.html)。この調査が置かれている調査群の構成の確認として(2026年9月確認)