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クラウド移行を業務委託エンジニアに頼む依頼書の書き方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- クラウド移行を業務委託エンジニアに頼むときは、移したあとに何を動かすかまで先に決めておきます。
- JUASの企業IT動向調査は2025年度、多くの企業に普及したとして、クラウドの3項目を調べる項目から外しました。
- 導入済みと試験導入中・導入準備中を合わせた割合はRPAの66.8%がいちばん大きく、前年からの伸びの上位4つはすべて生成AIでした。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
システムをクラウドへ移したいが、社内に経験のある人がいない。業務委託エンジニアに頼もうにも、依頼書に何を書けばよいか決めきれない——。開発の現場では、こうした迷いが起こりがちです。クラウド移行とは、自社で動かしているシステムを、事業者がインターネット越しに提供するサーバーやサービスの上に移すことを指します。
移行を業務委託エンジニアに頼めば、社内に経験者がいなくても作業を進められます。ただし万能ではなく、移したあとに何を動かし、誰が運用するのかが決まっていないと、何を任せるのかも決まりません。本記事では、エンジニアの採用や外部の人材の手配を担う方に向けて、企業ITの調査でクラウドが調べる項目から外れたこと、移行後に使う技術の傾向、依頼の前に決めておくこと、そして外部に委託するときに確認したい点を整理します。
目次
業務委託でのクラウド移行とは
クラウドには、大きく分けて2つの形があります。1つは、自社専用に用意するプライベート・クラウドです。もう1つは、事業者が多くの利用者に共通で提供するパブリック・クラウドで、事業者がどこまで用意するかによって、サーバーなどの基盤を借りる形(IaaS)、アプリを動かす環境まで借りる形(PaaS)、完成したソフトを借りる形(SaaS)に分かれます。
どの形に移すかで、業務委託エンジニアに頼む作業も変わります。基盤だけを借りるなら、サーバーやネットワークの設定を自社側で決めて作ることになります。完成したソフトを借りるなら、いまのデータを新しいソフトに移す作業と、社内での使い方の見直しが中心です。業務委託エンジニアには、個人で働くフリーランスのほか、開発を請け負う会社に所属する人もいます。どちらに頼むにしても、まずはどの形に移すのかを社内で決めておくと、求める経験を書きやすくなります。
なぜ移行後から考えるのか
手がかりになるのが、JUAS(一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)*3 が毎年行っている「企業IT動向調査」です。*2 2026年版の報告書は2025年度の調査をまとめたもので、2025年9月5日から10月24日にかけて、東証上場企業とそれに準じる企業の計4,500社を対象に行われ、957社が回答しました。*1 以下では、この2025年度の調査を25年度調査と呼びます。
新しい技術の導入状況を聞く設問について、25年度調査は前年までの結果を踏まえ、多くの企業に普及した9項目を外しました。そのうち3項目がクラウドで、「プライベート・クラウド」「パブリック・クラウド(IaaS、PaaS)」「パブリック・クラウド(SaaS)」です。*1 残る6項目には、モバイルデバイスマネジメント(社員の端末を会社でまとめて管理する仕組み)やビジネスチャットなどが含まれます。あわせて「AIエージェント」が加わり、聞いた項目は22になりました。
移行を頼む側から見れば、クラウドへ移すこと自体は目新しい仕事ではありません。だからこそ、依頼を考えるときは、移したあとにその上で何を動かすのかから決めておくと、業務委託エンジニアに任せる作業も書き出しやすくなります。
移行後に使う技術の傾向
では、25年度調査の22項目では、どの技術が多く取り入れられているのでしょうか。この設問に答えた952社について、「導入済み」と「試験導入中・導入準備中」の割合を足した合計の大きい順に、上位10項目を並べました。*1
| 項目 | 導入済み | 試験導入中・導入準備中 | 合計 |
|---|---|---|---|
| RPA | 55.1% | 11.7% | 66.8% |
| 言語系生成AI | 33.9% | 19.5% | 53.4% |
| ノーコード・ローコード | 34.0% | 13.8% | 47.8% |
| タレントマネジメント | 24.6% | 10.5% | 35.1% |
| アジャイル開発 | 21.8% | 12.8% | 34.6% |
| 画像および動画系生成AI | 17.0% | 17.2% | 34.2% |
| マイクロサービス・API連携 | 21.8% | 11.0% | 32.8% |
| コード系生成AI | 15.3% | 17.3% | 32.6% |
| ゼロトラストセキュリティ | 18.5% | 13.6% | 32.1% |
| IoT | 20.8% | 10.3% | 31.1% |
合計がいちばん大きいのはRPA(定型作業を自動で行うソフト)の66.8%で、言語系生成AIの53.4%、ノーコード・ローコード(プログラムをほぼ書かずにアプリを作る方法)の47.8%が続きます。「導入済み」だけで比べると、ノーコード・ローコードの34.0%が、言語系生成AIの33.9%をわずかに上回ります。
前年の調査から合計が増えたのは10項目でした。伸び幅が大きかったのは、画像および動画系生成AIの12.4ポイント(前年との割合の差)、言語系生成AIの12.3ポイント、コード系生成AIの11.9ポイント、その他の生成AI(音声など特定の分野向けのもの)の10.0ポイントで、上位4つはすべて生成AIです。*1 5番目のゼロトラストセキュリティ(社内外を問わず通信を確かめる考え方)は3.8ポイントでした。
画像および動画系生成AIは、合計34.2%のうち17.2%が、まだ試験導入中・導入準備中と答えた企業の割合です。移行を頼む側にとっては、移したクラウドの上でこうした技術を動かすのかどうかが、業務委託エンジニアに求める経験を決める材料になります。
依頼の前に決めておくこと
業務委託エンジニアにクラウド移行を頼む前に、社内で決めておきたいことは3つあります。
1つめは、移行そのものと、移したあとの使い方を分けて書くことです。依頼書を「クラウドへ移す」だけで終わらせず、移したクラウドの上でどのソフトウェアやサービスを動かし、誰がどう運用するのかまで書き出します。移行の作業と移行後の作業では、求める経験が同じとは限らないからです。
2つめは、移行後に動かすものを名前で書くことです。RPAなのか、生成AIのサービスなのか、マイクロサービス・API連携(機能を小さく分けてつなぐ作り方)なのか。名前が決まっていれば、「RPAを動かす環境を作った経験」のように、求める経験を具体的に書けます。何を動かすかは自社の業務で決めることで、表の上位の技術を選ぶ必要はありません。
3つめは、調査から外れた9項目のうち、ビジネスチャットなどすでに社内で使っている仕組みを、移行に含めるかどうか決めることです。調査からは外れても、社内で使っている仕組みは移行のときに扱いを決める必要があります。どの仕組みを使っているかを、依頼の前に社内で書き出しておきます。
つまずきやすい点
一つ目は、表の割合を自社の予定と取り違えることです。RPAの66.8%は、回答した952社のうち、導入済みか試験導入中・導入準備中と答えた企業の割合です。回答したのは東証上場企業などで、規模の小さい会社を含めた全体の姿ではありません。自社で何を動かすかは、自社の業務から決めます。
二つ目は、表に無い技術を「もう使われていない」と受け取ることです。クラウドが表に無いのは、順位が下がったからではなく、調査項目から外れたからです。表に無いことは、その技術が使われなくなったことを示すものではありません。
三つ目は、移行の範囲を工程だけで区切ることです。「設計から運用まで」のように工程だけを書くと、どのシステムが含まれるのかが業務委託エンジニアに伝わりません。「人事と勤怠の2つのシステムを移す。会計は移さない」のように、移すシステムの名前で書いておくと、見積もりや作業の計画を立ててもらいやすくなります。
外部に委託するときに確認しておきたい点
まず確かめたいのは、移行が終わったあとに誰が運用するかです。移行後も社内でずっと運用を続けるなら、その役割は正社員として採用する候補になります。移行の作業だけを頼むなら、期間を決めて業務委託エンジニアに加わってもらう形が合います。
次に、移行後に動かすものに合わせて、求める経験を書きます。前の節で挙げた「移すシステムの名前」と「移行後に動かすものの名前」がそろっていれば、候補者の経歴と照らし合わせて判断できます。候補者の技術を確かめる方法は外部エンジニアのスキルを4つの軸で確かめる記事で、テストをどこまで行うかは外部エンジニアのテスト体制を扱った記事で整理しています。
移す対象の大きさを見積もるときは、機能やデータの数え方をそろえておくと、委託先との食い違いを減らせます。数え方は機能とデータの数え方の違いを扱った記事に、工程のどこを自社に残すかは内製化支援の選び方を扱った記事にまとめています。
まとめ:クラウド移行で確かめておきたい3つの点
業務委託エンジニアにクラウド移行を頼むうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、移行そのものと、移したあとに何を動かして誰が運用するのかを分けて書くこと。第二に、移すシステムと移行後に動かすものを、名前で書き出すこと。第三に、調査から外れた9項目のうち社内にあるものを、移行の対象に入れるかどうか確かめておくことです。この3点を踏まえておけば、「移し終えてから、その上で動かしたいものに詳しい人がいないと気づいた」という事態を避けやすくなります。依頼書の書き方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
25年度の調査で、クラウドの導入率は分かりますか
25年度の報告書には、クラウドの3項目の数字は載っていません。前年までの結果を踏まえ、多くの企業に普及したとして調査項目から外されたためです。*1
新しく加わったAIエージェントは、どのくらい導入されていますか
導入済みと試験導入中・導入準備中を足した合計は21.0%で、上位10項目には入っていません。*1 25年度調査で初めて聞いた項目なので、前年との比較はできません。
移行だけを頼む場合と、運用まで頼む場合で何が変わりますか
主に、業務委託エンジニアに関わってもらう期間と、求める経験が変わります。運用まで任せるなら期間は長くなり、移行後に動かすソフトウェアやサービスに詳しい人が必要です。移行だけなら期間は短くなり、移行の作業そのものの経験を重く見ます。
移行の対象と移行後が決まったら相談
「このシステムを移して、移行後はRPAを使う」と決まっていればそのままご相談いただけますし、切り分けを決めきれていない段階でも承ります。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:JUAS「企業IT動向調査2026」(2025年度調査)報告書(PDF)(https://juas.or.jp/cms/media/2026/04/JUAS_IT2026.pdf)。出典:JUAS「企業IT動向調査2026」(2025年度調査)。調査期間2025年9月5日から10月24日、調査対象は東証上場企業とそれに準じる企業の計4,500社、回収数957社・有効回答率21.3%。図表8-1-1(新規テクノロジーやフレームワーク等の導入状況、n=952)、図表8-1-2(24年度から合計値が増加した10項目の伸び幅)、8.1節の本文(9項目を外しAIエージェントを追加した記述、各生成AIの定義)を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:JUAS「企業IT動向調査」(https://juas.or.jp/library/research_rpt/it_trend/)。調査が毎年実施され、報告書が公開されていることの確認として(2026年9月確認)
- *3 参考:JUAS 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(https://juas.or.jp/)。発行元の確認として(2026年9月確認)