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SESから自社雇用へ切り替える手順、派遣元は3年で義務
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 派遣元は正当な理由がなければ引き抜きを禁じられない:派遣元事業主は、正当な理由がなく、雇用関係の終了後に派遣先に雇用されることを禁ずる契約を、働く人との間でも派遣先との間でも締結してはならないとされています。*1
- この4つのうち自社が負う義務は募集の周知:同一の事業所で1年以上継続して同一の派遣労働者を受け入れていて、通常の労働者の募集を行うときは、募集に係る事項をその人に周知しなければならないとされています。*1 雇い入れのほうは努力義務で、生じるには3つがそろう必要があります。*1*2
- 3年の見込みで、派遣元の措置が義務になる:期間を定めて雇用され、同じ組織単位の業務に1年以上従事する見込みがある人として省令で定めるものについて、派遣元は第1号から第4号の措置を講ずるよう努めます。*1 3年の見込みになると講じなければならないに変わります。*1
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
SES(システムエンジニアリングサービス。開発や運用にあたる人に来てもらう形を指して使われる呼び方)で来ている人を、自社が雇う形に切り替えられないか。労働者派遣として受け入れている場合に、この記事が柱にする条文は4つです。
労働者派遣法の第33条、第30条、第40条の4、第40条の5です。*1 この4つは、義務を負う相手も強さも期間の数え方も違います。語の定義のために第26条も引きます。ほかに見るべき条文がないかどうかは確かめていません。
以下、人を出す側を派遣元、受け入れる自社を派遣先と呼びます。省令は労働者派遣法施行規則のことです。条文が別の条文の語を置き換えて使うことを読み替えといいます。SESという名前の契約は、今回参照した法律と省令には出てきません。自社の受け入れ方が労働者派遣に当たるかどうかの判断は、この記事では扱いません。読むのは契約書と条文だけで、現場で誰が指示を出しているかといった実態は見ていません。
目次
派遣元は、正当な理由がなければ引き抜きを禁じる契約を結べない
まず第33条「派遣労働者に係る雇用制限の禁止」で、2つの項があります。*1
第1項の相手は働く人です。派遣元事業主が、その雇用する派遣労働者や雇用しようとする労働者との間で、「正当な理由がなく」、その者が派遣先に「当該派遣元事業主との雇用関係の終了後」雇用されることを禁ずる旨の契約を締結してはならない、と定めています。*1
第2項の相手は会社です。派遣元事業主が、派遣先である者や派遣先となろうとする者との間で、「正当な理由がなく」、その者が当該派遣労働者を「当該派遣元事業主との雇用関係の終了後」雇用することを禁ずる旨の契約を締結してはならない、という定めです。*1 自社の契約書に関わるのはこちらです。
どちらの項にも「正当な理由がなく」が付いているので、禁止が一切できないという条文ではありません。*1 何が正当な理由に当たるかは、この条には書かれていません。
3年の見込みで、派遣元の措置が努力義務から義務に変わる
次に第30条「特定有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等」で、派遣元事業主が義務を負います。*1
対象は特定有期雇用派遣労働者などです。条文はこれを、期間を定めて雇用される派遣労働者であって、派遣先の同一の組織単位の業務について継続して1年以上の期間従事する見込みがあるものとして厚生労働省令で定めるもの、としています。*1 組織単位は、労働者の配置の区分であって、その業務の配分に直接の権限を持つ地位の者がいるものとして省令で定めるもの、と第26条第1項第2号にあります。*1「など」には、安定を図る必要性が高い者として省令で定めるものが入ります。*1
その人について条文は、第1号から第4号まで並べたうえで「次の各号の措置を講ずるように努めなければならない」としています。*1 第1号が「派遣先に対し、特定有期雇用派遣労働者に対して労働契約の申込みをすることを求めること」です。*1 派遣元が派遣先に、この人に労働契約を申し込んでほしいと求めるものです。
第2号は派遣労働者としての就業の機会、第3号は期間を定めない雇用の機会を、それぞれ確保して提供すること。第4号は教育訓練などです。*1
第2項で強さが変わります。同じ組織単位の業務について継続して3年間従事する見込みがある特定有期雇用派遣労働者については、第1項の「講ずるように努めなければ」を「講じなければ」と読み替える、と定めています。*1 変わるのは語尾で、講じる対象が第1号に絞られるわけではありません。
この4つの中で自社が負う「しなければならない」は募集の周知
ここから派遣先の側。第40条の5第1項は「派遣先に雇用される労働者の募集に係る事項の周知」です。*1
条件は2つです。1つは、同一の事業所その他派遣就業の場所において、派遣元事業主から1年以上の期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けていること。もう1つは、その場所で働く通常の労働者の募集を行うことです。そろうと、掲示その他の措置により、業務の内容、賃金、労働時間その他の募集に係る事項をその派遣労働者に周知しなければならない、とされています。*1
語尾が「しなければならない」なので、努力義務ではありません。*1 ただし要るのは募集を行うときで、募集をしていないときに何かを求める条文ではありません。
第2項に読み替えがあります。同一の組織単位の業務について継続して3年間従事する見込みがある特定有期雇用派遣労働者については、第1項の「通常の労働者」を「労働者」と読み替える、という定めです。*1 通常の労働者が何を指すかも、事業所が何を指すかも、この条には書かれていません。ただ「通常の」という限定が外れる分、周知する募集の範囲は広がります。これはこの記事の読み方です。
この第2項の対象者は省令で絞られています。労働者派遣法施行規則第33条の8は、第30条第2項の読み替えによって同条第1項第1号の措置が講じられた者とする、としています。*2
雇い入れの努力義務は、3つがそろったときに生じる
第40条の4は「特定有期雇用派遣労働者の雇用」です。*1 語尾は「雇い入れるように努めなければならない」で、努力義務です。*1 この記事でいう努力義務は、条文の語尾が「努めなければならない」のものを指します。
条文が置くものを3つに分けます。分け方はこの記事のものです。
派遣実施期間は、条文が「当該労働者派遣の役務の提供を受けた期間」に付けた呼び名です。*1
| そろうもの | 条文が置いているもの |
|---|---|
| 受け入れの実績 | 組織単位ごとの同一の業務について、継続して1年以上、同一の特定有期雇用派遣労働者の派遣を受けたこと |
| 雇い入れる場面 | 派遣実施期間が経過した日以後、引き続き同じ業務に労働者を従事させるため雇い入れようとすること |
| 対象者の限定 | 省令により、第30条第1項第1号の措置が講じられた者であること |
3つめが要点。施行規則第33条の7は、第40条の4の厚生労働省令で定める者を、第30条第1項第1号の措置が講じられた者とすると定めています。*2 その第1号は、派遣元が派遣先に直接雇用を求める措置でした。*1
2つめの「労働者を雇い入れようとする」の労働者は、条文ではその派遣労働者に限られていません。*1 同じ業務に誰かを雇い入れようとする場面で、その派遣労働者を遅滞なく雇い入れるよう努める、という並びです。2つめと3つめの両方が要るので、自社が雇い入れようとしているだけでも、派遣元からの申し入れがあっただけでも足りません。
第40条の5第1項と並べると違いが見えます。周知の義務は事業所の単位で対象は同一の派遣労働者、雇い入れの努力義務は組織単位で対象は省令で絞られた特定有期雇用派遣労働者です。*1*2
発注する側が確かめる順序
自社が動く順に4つ並べます。並べ方はこの記事のものです。
1つめは、契約書の引き抜き禁止の条項です。第33条第2項は会社どうしの約束を対象にしているので、まずここを読みます。*1 理由が書かれていないなら相手の会社に聞きます。判断の基準はこの条にないので、聞いた内容の評価はそこから先の話です。
2つめは、受け入れの実績です。第40条の4は、組織単位ごとの同一の業務について、継続して1年以上、同一の特定有期雇用派遣労働者の派遣を受けたことを置いています。*1 自社の記録で数えます。
3つめは、その人が特定有期雇用派遣労働者に当たるかと、派遣元から直接雇用を求める申し入れがあったかです。どちらも相手の会社の側にある情報なので、相手に聞くことになります。
この申し入れは省令が結び付けています。第40条の4は施行規則第33条の7、第40条の5第2項の読み替えは施行規則第33条の8で、どちらも第30条第1項第1号の措置の対象になった人に絞られています。*2 ただし前者は第30条第1項を、後者は第2項の読み替えを経由していて、同じ道筋ではありません。*2
4つめは、自社が募集を行っているかです。同一の事業所で1年以上継続して同一の派遣労働者を受け入れ、そのうえで通常の労働者の募集を行うなら、第40条の5第1項の周知の義務がかかります。*1
直接雇うときに期間を定めるなら、設計は記事「有期で採って正社員にする設計の落とし穴」で扱っています。
まとめ:条文ごとに、義務を負う相手も強さも違う
SESで来ている人を自社で雇いたい。労働者派遣として受け入れている場合について、柱にした4つの条文から読み取れることは4つです。第一に、第33条は、正当な理由がなく、雇用関係の終了後に派遣先に雇用されることを禁ずる契約を、働く人との間でも派遣先との間でも締結してはならないとしています。*1 一切できないという条文ではありません。第二に、第30条は派遣元の側の条文で、期間を定めて雇用され同じ組織単位の業務に1年以上従事する見込みがある人として省令で定めるものについて、第1号から第4号の措置を講ずるよう努め、3年の見込みなら講じなければならないに変わります。*1 変わるのは語尾です。第三に、派遣先には第40条の5第1項の周知の義務があり、同一の事業所で1年以上継続して同一の派遣労働者を受け入れ、通常の労働者の募集を行うときにかかります。*1 第四に、第40条の4の雇い入れの努力義務は、受け入れの実績、雇い入れようとする場面、省令による対象者の限定の3つがそろって生じます。*1*2 以上から、確かめるのは、引き抜き禁止の条項、受け入れの実績、対象者に当たり申し入れがあったか、募集を行っているかの4つです。これはこの記事の読み方です。
よくある質問
SESで来ている人をそのまま雇ってよいですか
自社の受け入れ方が労働者派遣に当たる場合の話です。その前提なら、この記事が読んだ条文の範囲に、雇うこと自体を禁じる定めはありません。むしろ第33条は、派遣元事業主が、正当な理由がなく、雇用関係の終了後に派遣先に雇用されることを禁ずる契約を結んではならないとしています。*1 労働者派遣に当たるかどうかの判断は、この記事では扱っていません。
1年と3年で何が変わりますか
派遣元側では、第30条第1項の努力義務が、3年間の見込みで第2項の読み替えにより義務になります。*1 派遣先側の第40条の5では、第1項が自社が受け入れてきた期間を事業所の単位で1年以上、第2項の読み替えがその人の従事する見込みを組織単位で3年と数えます。*1 実績か見込みか、事業所か組織単位かが違う、というのがこの記事の読み方です。
派遣先から声をかけると何か問題がありますか
まず契約書の引き抜き禁止の条項を読むことになります。第33条第2項は、正当な理由がなくそうした契約を結んではならないとしていますが、*1 何が正当な理由かはこの条に書かれていません。条文の側では、声をかけること自体を禁じる定めはこの記事が読んだ範囲にありません。第40条の4の努力義務が生じないだけです。*2
切り替えの進め方から相談したいときは
契約書の条項の読み方を含めて、進め方からご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088)。出典:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律。第33条第1項・第2項、第30条第1項の第1号から第4号と第2項の読み替え、第40条の4の条件と語尾、第40条の5第1項と第2項の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/361M50002000020)。出典:同法施行規則。第33条の7が第40条の4の厚生労働省令で定める者を第30条第1項第1号の措置が講じられた者としていること、第33条の8が第40条の5第2項の者を第30条第2項の読み替えによって同条第1項第1号の措置が講じられた者としていることの一次情報として(2026年9月確認)