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2026.10.02 採用支援コラム

エンジニア採用と資金調達、採用優先順位を不足職種の統計で考える




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 資金調達後の採用優先順位は、調達額から人数を出すのではなく、不足の深い役割から並べます。
  • IT人材が足りない企業の調査では、不足が深刻な職種にプロジェクトマネージャと開発の専門職を挙げる企業が多くなりました。
  • 判断を社内に残したい役割は社員で採り、期間で区切れる仕事は業務委託などの外部の力と組み合わせます。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

資金調達が決まり、エンジニアを採る予算がついた。ところが、プロジェクトをまとめる人、設計を担う人、手を動かす開発者のうち、誰から採るかで社内の意見が分かれる——。成長の途中にある会社では、よく聞く悩みです。エンジニア採用の採用優先順位とは、限られた予算と時間のなかで、どの役割の人を先に迎え、どの役割を後に回すか、あるいは外部の力で埋めるかを決めた並びのことです。

本記事では、厚生労働省の「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業」の企業アンケートと、中小企業庁の委託で行われたスタートアップの資金調達の実態調査を手がかりに、不足が深刻とされる職種、不足への対応の仕方、事業の段階との関係を整理します。どちらの資料も、調達額から採用人数を導く関係は示していません。人数は、役割と時期を決めたあとに数えるものとして読み進めてください。

仕切りのある透明な収納箱に、木や真珠のビーズを種類ごとに分けて入れた接写

資金調達と採用優先順位の関係

資金調達のあとに採用で迷うのは、予算が増えても、候補者が見つかる速さや、社内で一度に受け入れられる人数には限りがあるからです。全員を同時に採ることは難しく、先に採る役割と後に回す役割を決めることになります。この並びが採用優先順位です。

順位を決める材料として、本記事では2つの公的な調査を使います。1つは、厚生労働省が2024年3月にまとめた「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業」の調査報告書です。IT・デジタル人材を雇用する企業に、人材の充足状況、不足が深刻な職種、不足への対応方針を聞いています。もう1つは、中小企業庁の委託で三菱総合研究所が行った、スタートアップの資金調達に関する実態調査(2023年3月)です。

前者は資金調達の有無で集計を分けておらず、後者は採用した職種や人数を聞いていません。そのため、「調達額がいくらなら何人採れる」という形の答えは、どちらからも出てきません。2つの資料からわかるのは、どの職種で不足が深刻と受け止められているか、不足をどの方法で埋めようとしているか、そして資金の使い道のなかで人材獲得がどう扱われているかです。

調達した資金の使い道と人材獲得

スタートアップの資金調達の実態調査は、借入などのデット・ファイナンス(返済が必要な資金調達)を使ったことのあるスタートアップ516社から、インターネットで回答を集めたものです。*2 成長の段階ごとに回答を集め、集計では段階ごとの会社数の偏りを補正しています。

借入で得た資金の使い道(複数回答)を見ると、運転資金が83.5%で最も多く、設備投資が38.5%、起業・開業資金が33.2%と続きます。人材獲得は8.8%でした。*2 報告書も、人材獲得や研究開発費、広告宣伝費は1割以下で、回答の割合が低い傾向があるとしています。

一方で、金融機関の話からは別の面も見えます。スタートアップ向けの融資商品(ベンチャーデット)を扱う金融機関への聞き取りとして、資金使途は「エンジニア等の人材獲得のための費用として使用されるケースが多い」と記されています。*2 上の割合は借入に限った回答で、出資で調達した資金の使い道は含みません。借入で得た資金を人件費に回す場合は、毎月の給与が返済の予定と重なるため、財務の担当者と返済の計画を見比べておきます。

人材不足が深刻な職種

厚生労働省の企業アンケートは、2,132社に依頼し、158社から回答を得ています(回答率約7.4%)。*1 情報通信業と、それ以外の業種でIT・デジタル人材を雇う企業が対象です。ここでいうIT・デジタル人材は、IT・デジタル関連の業務を主な仕事にしている人を指します。

IT・デジタル人材を雇用している120社のうち、「量的にも質的にも足りていない」と答えた企業は63.3%でした。*1 人数も、求める能力も足りないという状態が多数派です。量か質のどちらかが足りていないと答えた105社に、不足が深刻な職種を複数回答で聞くと、プロジェクトマネージャが67.6%、ソフトウェア開発スペシャリストが55.2%で、この2つが抜けて高くなりました。*1

人材不足が深刻なIT・デジタル人材の職種を、複数回答の割合が高い順に横棒グラフで示した図。対象はIT・デジタル人材の量か質が足りていないと答えた105社。プロジェクトマネージャが67.6%、ソフトウェア開発スペシャリストが55.2%で、この2つが濃い色の棒で目立つ。続いてシステムアーキテクト38.1%、基盤スペシャリスト36.2%、ネットワークスペシャリスト32.4%、情報セキュリティアーキテクト30.5%、運用スペシャリスト29.5%、データサイエンティスト27.6%、ISストラテジスト23.8%。厚生労働省「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業」調査報告書(令和6年3月)の企業アンケート単純集計をもとに作成。

そのあとにシステムアーキテクト、基盤スペシャリスト、ネットワークスペシャリストが3割台で続きます。職種の区分は、ITスキル研究フォーラムの職種区分を参考にした15区分です。報告書のタスクの集計では、プロジェクトマネージャはプロジェクトマネジメントを中心に、ソフトウェア開発スペシャリストはシステム開発を中心に仕事を受け持っています。計画を回す人と、作る人の両方が足りないと受け止められている、と読めます。

規模と業種で見た不足の違い

同じ質問を、従業員の規模と業種で分けた集計もあります。従業員300人未満の企業(48社)では、プロジェクトマネージャを挙げた企業が67%、ソフトウェア開発スペシャリストが58%でした。300人以上(57社)では68%と53%で、規模による差は大きくありません。*1

差が出るのは業種です。情報通信業(61社)では、プロジェクトマネージャが75%、ソフトウェア開発スペシャリストが70%、システムアーキテクトが48%でした。情報通信業以外(44社)では、それぞれ57%、34%、25%にとどまります。*1 報告書も、情報通信業ではプロジェクトマネージャやシステムアーキテクト、ソフトウェア開発スペシャリストで不足の傾向がより顕著だとしています。

自社のサービスがソフトウェアそのものである会社は、情報通信業の側の数字に近いと見ておくのが無難です。設計の骨組みを決めるシステムアーキテクトも半数近くが不足を挙げているため、計画を回す人、作る人に加えて、設計を固める人も上位の候補に入ります。ただし、回答は各社の受け止めで、実際に何人足りないかを数えたものではありません。業種ごとの回答数も40〜60社台と小さいため、傾向をつかむ材料として使います。

不足への対応は中途採用が中心

量か質が足りていないと答えた105社には、不足への対応方針も複数回答で聞いています。中途採用で補うが81.9%、新卒採用で補うが68.6%、社内の人材を育成するが54.3%でした。*1

外部の力を借りる方法では、業務委託や外注、派遣契約の活用が41.9%です。関連企業からの転籍・出向は13.3%、特定の技術を持つ企業との契約は8.6%、特定の技術を持つ個人(フリーランス)との契約は7.6%、兼業・副業での契約は1.0%でした。*1 社員として採る方法を軸にしながら、4割ほどの企業は外部の力も組み合わせていることになります。

IT・デジタル人材を中途採用している84社に理由を1つだけ選んでもらうと、「経験を活かし即戦力になるから」が57.1%で最も多くなりました。*1 資金調達のあとは、事業計画に書いた期限までに成果を出すことが求められます。すぐに任せたい役割は中途採用で探し、時間をかけて育てられる役割は新卒や社内の育成に回す、という分け方が考えられます。

社員で採る役割と外部に任せる役割

ここからは調査の数字そのものではなく、数字を踏まえた考え方です。採用優先順位を決めるときは、役割ごとに「不足がどれだけ深いか」と「判断を社内に残したいか」の2つを書き出してみます。厚生労働省の調査が使う3つの区分(企画立案・プロジェクト管理、設計・構築、運用・保守)に沿って並べると、抜けている役割に気づきやすくなります。

不足が深く、判断を社内に残したい役割は、最も早く募集を始める候補です。プロジェクトの進め方や設計の方針を決める役割がこれにあたり、社員として迎えることを考えます。不足は深いものの、仕事を期間や範囲で区切れる役割は、社員の採用を進めながら、業務委託などで外部の専門人材に入ってもらう方法を並行させる余地があります。

不足がそれほど深くなく、判断を社内に残したい役割は、社内の育成や次の採用の機会に回せます。不足が浅く、期間で区切れる仕事は、必要になった時点で外部の力を借りる選び方も取れます。4つのどこに入るかは会社ごとに違うため、表にして経営陣と開発の責任者が同じものを見ながら話すと、採用の順番について社内で合意しやすくなります。

事業の段階と採用の時期

スタートアップの資金調達の実態調査は、成長の段階を4つに分けて定義しています。シードは商品やサービスがコンセプトに近く、PoC(概念実証)の段階にあるものが多い時期です。アーリーは開発を終えて試作の段階に達し、販売を始めている会社もあります。ミドルは取引の増加で運転資本が生じる段階、レイターは上場を検討する会社も出始める段階です。

段階によって、採用優先順位の上に来る役割は変わると考えられます。シードからアーリーにかけては、何を作るかがまだ動くため、設計の方針を決められる人が先に要ります。ミドル以降は作るものが増え、運用の手間も膨らむため、開発者の数や、運用を担う人の手当てが課題になりやすくなります。これは調査の結果ではなく、段階の定義から読み取れる見立てです。

採用にかかる期間について、2つの資料は数字を示していません。期間の見込みは、自社の過去の採用や、相談する紹介会社の実績で確かめます。前の節で見たとおり、プロジェクトマネージャやソフトウェア開発スペシャリストは多くの企業が不足を挙げる職種です。同じ候補者を複数の会社が探している前提で、募集を始める時期に余裕を持たせておくと、事業計画との食い違いを小さくできます。

外部に委託するときに確認しておきたい点

外部の専門人材に入ってもらう場合は、任せる仕事の範囲と、成果を誰が受け取って判断するかを先に決めておきます。設計の方針まで社外の人に任せきりにすると、契約が終わったときに、なぜその設計にしたのかが社内に残りません。期間、引き継ぎの方法、成果物の権利の扱いは契約で取り決めるものなので、契約書の内容は弁護士などの専門家にも確かめてもらいます。

採用の順番と時期の決め方はエンジニア採用の増員計画、資金調達のあとに決める採用の順番で扱っています。

要員計画に必要な数字は要員計画に必要な4つの数字と決める順番にまとめました。

大学発ベンチャーの調査から見た人材の獲得状況はエンジニア採用と資金調達の関係、大学発ベンチャー調査の読み方で整理しています。

まとめ:採用優先順位で確かめておきたい3つの点

資金調達のあとにエンジニア採用の採用優先順位を決めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、調達額から人数を出すのではなく、不足の深い役割から並べること。第二に、IT人材が足りない企業ではプロジェクトマネージャとソフトウェア開発スペシャリストを不足が深刻な職種に挙げる企業が多く、同じ候補者を探す会社が多い前提で募集の時期を考えること。第三に、判断を社内に残したい役割は社員で採り、期間で区切れる仕事は外部の力と組み合わせることです。この3点を踏まえておけば、「予算はあるのに、誰から採るかが決まらないまま半年が過ぎた」という事態を避けやすくなります。採る役割は決まったものの候補者の探し方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

採用優先順位の上位に来る役割と、社員で採るか外部に任せるかの見通しが立ったら、次は候補者を探す段階です。任せる仕事と参画してほしい時期が決まっていれば、求める経験を具体的に伝えられ、条件に合う候補者を探しやすくなります。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

調達額から、採用できるエンジニアの人数を見積もれますか

本記事で使った2つの資料は、調達額と採用人数の関係を示していません。先に役割と、その人に参画してほしい時期を決め、自社の給与の水準や採用にかかる費用をもとに人数を数えるほうが、社内に根拠を説明しやすくなります。

プロジェクトマネージャと開発者は、どちらを先に採るべきですか

調査では、不足が深刻な職種としてプロジェクトマネージャを挙げた企業が67.6%、ソフトウェア開発スペシャリストが55.2%で、どちらも上位でした。*1 何を作るかがまだ動く段階なら、計画や設計の方針を決められる人を先に考えます。作るものが固まっていて手が足りないなら、開発者を先にする選び方もあります。

不足する役割を外部の人材で埋める企業は多いのですか

不足への対応方針として、業務委託や外注、派遣契約の活用を挙げた企業は41.9%でした。*1 中途採用の81.9%に比べると少ないものの、社員の採用と組み合わせる企業は一定数あります。任せる範囲と期間を決めてから相談すると、合う人を探しやすくなります。

採る順番が決まったら相談

どの役割から採るか、社員で採るか外部の人材に任せるかが見えてきたら、そのままご相談いただけます。順番を決めきれていない段階でも構いません。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:厚生労働省「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業」調査報告書(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001244078.pdf)。出典:厚生労働省「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業」調査報告書(令和6年3月)。アンケート調査の実施概要(企業向けアンケートの対象・回答数・調査期間、P7)、職種の15区分と3区分(P12)、職種別のタスクの構成(P24)、人材不足が深刻な職種の従業員規模別・業種別の集計(P26)、別添6 企業アンケート単純集計の(8)・(8)-1・(8)-2・(9)-1-1を参照(確認日2026年10月2日)(2026年10月確認)
  2. *2 参考:三菱総合研究所「令和4年度中小企業実態調査事業(スタートアップの資金調達に関する企業の実態調査および検討会実施等)調査報告書」(中小企業庁委託・PDF)(https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2022FY/000211.pdf)。出典:2023年3月、経済産業省中小企業庁事業環境部金融課の委託。2.1.1 インターネット調査の概要(P4)、表2-3 本調査における成長ステージの定義(P5〜6)、図2-3 デット・ファイナンスの資金使途(P7)、2.2.2 インタビュー調査の結果(P22)を参照(確認日2026年10月2日)(2026年10月確認)




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