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副業エンジニアの稼働時間と納期設定、遅れが出る理由と区切り方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 本業が雇用者の副業者の45.0%は本業で残業をしており、副業エンジニアの稼働時間は週ごとに揺れるものとして納期を組みます。
- 作業は本人の見積もりで1〜2週に収まる大きさに区切り、区切りごとに納期と受け取るものを決めて、その都度文書に残します。
- 遅れそうなときに知らせてもらう期限と、範囲を減らすか納期を延ばすかの選び方を、作業を始める前に決めておきます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
副業のエンジニアに開発の一部を頼んだものの、約束した日に仕上がらない。週に何時間使えるかは聞いていたのに、なぜ遅れるのかが分からない——。副業エンジニアに仕事を頼む現場では、こうした行き違いが起こりがちです。副業エンジニアの納期設定とは、本業の合間に使える限られた稼働時間をもとに、頼む作業の量と、仕上げてもらう日を決めることを指します。
決め方を先にそろえておけば、遅れが出ても早めに手を打てます。ただし、本業の予定は依頼する側からは見えないので、どれだけ丁寧に組んでも遅れは起こりえます。本記事では、開発の現場を預かるマネージャーに向けて、本業の残業による時間の揺れ、作業量の見積もり方、納期の区切り方、余裕の見込み方、遅れたときの扱い、つまずきやすい点を整理します。
目次
副業エンジニアの納期設定とは
社員に仕事を頼むときは、勤務時間の中でほかの仕事を止めてもらえば、納期に間に合わせる手立てがあります。副業エンジニアの場合は本業が先にあり、依頼する側から本業の予定を動かすことはできません。そのため副業エンジニアの納期設定では、作業量を稼働時間で割るだけでなく、本業の都合で使える時間が減る週を見込んでおく必要があります。
本記事では、副業として業務委託で開発を請け、自宅などで作業する人に頼む場面を扱います。厚生労働省のガイドラインは、こうした働き方を含む自営型テレワークを「注文者から委託を受け、情報通信機器を活用して主として自宅又は自宅に準じた自ら選択した場所において、成果物の作成又は役務の提供を行う就労」と定めています。*2
なお、本業の会社で副業が認められているか、届け出が要るかは、本人と本業の会社の間で決まることで、依頼する側が判断するものではありません。契約の前に本人に確かめてもらうことは「副業エンジニアと契約する前に本人と確かめる5つのこと」で扱っています。
本業の残業で時間は揺れる
労働政策研究・研修機構(JILPT)が2022年10月に行った調査では、本業が雇用者の副業者8,984人に本業での残業の頻度を尋ねています。「ほとんどしていない」は55.0%で、「たまにしている」が27.6%、「よくしている」が9.6%、「ほとんど毎日のようにしている」が7.8%でした。*1 何らかの形で残業をしている人を合わせると45.0%です。本業が雇用者の副業者の半数近くは、本業の終わる時刻が日によって変わりうることになります。
| 区分 | 回答者数 | ほとんどしていない | たまにしている | よくしている | ほとんど毎日のようにしている |
|---|---|---|---|---|---|
| 副業者 | 8,984人 | 55.0 | 27.6 | 9.6 | 7.8 |
| 本業のみの人 | 2,032人 | 51.0 | 28.8 | 10.2 | 10.0 |
本業のみの人と比べると、副業者の方が残業をしている割合はやや低いものの、大きな差はありません。副業をしているからといって、本業の残業が少ない人ばかりではないということです。特に「たまにしている」人は、どの週に残業が入るかを前もって決めにくいと考えられます。こうした人の稼働時間を毎週同じだけ取れるものとして納期を組むと、残業が重なった週に予定がずれます。
本業に出る日数にも幅があります。同じ調査で副業者1万1,358人の本業での1カ月あたりの実労働日数は、「20日以上25日未満」が57.2%で最も多く、「25日以上」も14.6%いました。本業のみの人の「25日以上」は7.7%なので、副業者の方が多い計算です。*1 本業で休日にも出ることがある人には、「週末にまとめて作業してもらう」という前提が当てはまらない週があります。
週に何時間使えるかの聞き方は「副業エンジニアの稼働時間、依頼の前に決める3つのこと」で扱っています。聞き取った週の稼働時間は、あくまで平均の値です。
作業量は時間で見積もる
納期を決める前に、頼む作業を、1つが数時間から十数時間で終わる大きさまで分けます。画面ごと、機能ごと、APIごとなど、終わったかどうかをこちらで確かめられる単位にしておくと、後で区切りを作るときにそのまま使えます。
分けた作業は、副業エンジニア本人に時間で見積もってもらい、社内で見込んだ時間と並べます。差が大きい作業は、仕様の受け取り方や、開発環境の前提がずれているしるしです。どちらが正しいかを決めるより先に、何を前提にした数字かを話し合います。
見積もりには、手を動かす時間のほかに、次のような時間を入れておきます。副業の場合、こちらへの質問が夜に届き、返事が翌日になることが多いので、1回の往復に1日かかるものとして数えておくと実際に近くなります。夜間の連絡の扱いは「副業エンジニアの夜間稼働、返事が遅れる理由と稼働時間の決め方」で扱っています。
- 開発環境の準備と、ソースコードを読み込む時間(最初の区切りだけ多めに要る)
- 仕様についての質問と、返事を待つ間に止まる時間
- レビューで受けた指摘を直す時間
- 定例の打ち合わせや、進み具合の報告を書く時間
週の稼働時間が少ないほど、こうした時間の割合は大きくなります。週8時間の人が打ち合わせと直しに1時間を使えば、作業に使えるのは7時間です。見積もりを週の稼働時間でそのまま割るのではなく、作業に使える時間で割るようにします。
納期は区切って決める
大きな作業に1つの納期だけを置くと、遅れていることが分かるのは納期の直前になります。そこで作業を1〜2週で終わる区切りに分け、区切りごとに納期を置きます。下の図は、週の稼働時間が8時間の人に6週間で3つの区切りを頼む場合の例です。区切りごとに見積もりと使える時間の差を余裕として残しています。
区切りごとに納期を決める形は、ガイドラインの考え方とも合います。ガイドラインは、契約を結ぶときに明らかにする事項として成果物の納期を挙げたうえで、受発注が繰り返される場合は、共通する事項を包括的な契約とし、「納期等各回の個別の事項をその都度の契約内容として、それぞれ明示することも可能」としています。*2 基本の契約を1つ結び、区切りごとの作業の中身と納期は、その都度メールなどの文書で示して残すやり方です。
区切りの終わりには、こちらで確かめられるものを受け取ります。動く画面、プルリクエスト、テストの結果などです。「8割まで進んだ」という報告だけでは、残りが本当に2割なのかを確かめられません。
受け取った後のこちらの確認にかかる日数も、計画に入れておきます。ガイドラインは、成果物の内容について検査をする場合はその検査を完了する期日(検収日)を明らかにする事項に挙げています。*2 こちらの確認が遅れると、副業エンジニアは次の区切りに入れず、使えるはずだった週の稼働時間が空いてしまいます。
余裕は本業の予定から見込む
区切りに残す余裕の大きさは、本業の予定を聞いてから決めます。聞くのは、本業での残業の頻度、本業が忙しくなる時期(月末、四半期末、リリースの前など)、休みの予定の3つです。残業の頻度は、上の調査と同じ「ほとんどしていない」から「ほとんど毎日のようにしている」までの4つの中から選んでもらうと、答えやすくなります。
| 本人の答え | 納期の組み方の例 |
|---|---|
| ほとんどしていない | 聞き取った週の稼働時間をもとに組み、区切りごとに少しの余裕を残す |
| たまにしている | 区切りの余裕を多めに取り、本業が忙しい時期にかかる区切りは作業を小さくする |
| よくしている | 週の稼働時間そのものを少なめに見込み、区切りを1週単位にして様子を見る |
| ほとんど毎日 | 平日の稼働を見込まず、本人と休日に使える時間を確かめてから頼む作業を決める |
本業が忙しくなる時期が分かっている場合は、その時期にかかる区切りを最初から小さくしておきます。忙しくなってから納期を延ばすより、初めから作業を軽くしておく方が、双方とも予定を立て直さずに済みます。
1日の作業量にも気を配ります。ガイドラインは、成果物の納期は作業時間が長時間に及び健康を害することがないように設定し、その際には「通常の労働者の1日の所定労働時間の上限(8時間)を作業時間の上限の目安とすること」としています。*2 副業エンジニアは本業の労働時間が先にあるので、副業の分だけで1日8時間を使える日はほとんどありません。本業と合わせた時間の考え方は「副業エンジニアの稼働時間、稼働上限を本業との合計から決める」で扱っています。
遅れたときの扱いを決めておく
余裕を残しても、遅れは起こります。ガイドラインは、契約を結ぶときに明らかにする事項として「その納入等が遅れた場合等の取扱い」を挙げています。*2 副業エンジニアに頼むときは、責任の分け方だけでなく、遅れが見えたときに誰が何をするかを、作業を始める前に決めておくと役立ちます。
まず決めるのは、遅れそうだと分かったときに知らせてもらう期限です。たとえば「区切りの納期の3日前までに、間に合わないと分かったら連絡する」と決めておけば、こちらにも打てる手が残ります。納期の当日に「間に合いませんでした」と知らされると、選べる手はほとんどありません。
次に、遅れたときの選び方の順番を決めておきます。区切りの中で後回しにできる作業を外して範囲を減らすのか、納期を延ばすのか、残りを社内の担当者が引き取るのかです。リリースの日が動かせないなら範囲を減らす、急がない作業なら納期を延ばす、といった形で、頼む前に決めておきます。
納期を動かすときは、口頭で済ませずに文書に残します。ガイドラインは、契約の内容を変えるときは変更の内容を文書等で明示し、自営型テレワーカーと合意すること、従前の契約にもとづく作業の成果物や報酬の扱いも双方で十分協議することを明らかにしておくよう求めています。*2 途中まで進んだコードを受け取るのかどうかも、このときに決めます。
遅れの原因がこちらにあることもあります。仕様の変更や、質問への返事の遅れ、確認の遅れなどです。こうしたときは、その分の納期を延ばすのが筋です。補修や損害の扱いなど、遅れたときの責任をどう分けるかは契約の書き方によって変わるので、契約書のひな形を作るときに専門家に確かめておきます。
つまずきやすい点
1つ目は、聞き取った週の稼働時間を、そのまま毎週の予定にしてしまうことです。前に見たとおり、本業が雇用者の副業者のうち、本業で残業をしている人は半数近くいます。平均どおりに時間が取れる週ばかりではないので、区切りの余裕を削って納期を詰めると、最初の残業で予定がずれます。
2つ目は、最初の区切りを大きくしすぎることです。初めて頼む相手とは、見積もりの癖も、本業の忙しさの波も分かっていません。最初の1〜2回は小さな区切りにして、見積もりと実際にかかった時間の差を見てから、次の区切りの大きさを決めると無理がありません。
3つ目は、受け取った後のこちらの確認を後回しにすることです。確認待ちで1週止まると、副業エンジニアのその週の稼働時間は無駄になります。受け取りから何日以内に返すかを、こちらの側の約束として決めておきます。
4つ目は、本業の事情を聞きすぎることです。納期の計画に要るのは、忙しくなる時期と、残業の頻度くらいです。本業の案件の中身まで聞き出すと、本人が本業の会社と結んだ秘密を守る約束に触れるおそれがあります。
まとめ:納期設定で確かめておきたい3つの点
副業エンジニアの稼働時間に合わせて納期を決めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、本業が雇用者の副業者の半数近くは本業で残業をしているので、聞き取った週の稼働時間は平均の値として扱い、本業が忙しい時期を先に聞いておくこと。第二に、作業を本人の見積もりで1〜2週に収まる大きさに区切り、区切りごとに納期と受け取るものを決めて、その都度文書に残すこと。第三に、遅れそうなときに知らせてもらう期限と、範囲を減らすか納期を延ばすかの選び方を、作業を始める前に決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「納期の当日に遅れを知らされ、打つ手がなかった」という事態を避けやすくなります。頼む作業に合う人の探し方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
納期は副業エンジニアに決めてもらうのと、こちらで決めるのとどちらがよいですか
作業の見積もりは本人に出してもらい、納期は双方で話し合って決めるのが進めやすい方法です。ガイドラインも、契約を結ぶときは自営型テレワーカーと協議のうえで、納期などを明らかにした文書を交付することとしています。*2 こちらが日付を先に決めてしまうと、本業の予定が入った週を見込めないまま作業が始まります。
週の稼働時間が5時間ほどの人にも頼めますか
頼めますが、区切りを小さくし、質問の往復が少ない作業を選ぶのが向いています。週5時間では、打ち合わせや直しに1時間を使うだけで作業の時間が2割減ります。仕様がはっきりしていて、ほかの作業と切り離して進められるものから頼むと、少ない時間でも区切りごとに成果を受け取りやすくなります。
本業が忙しくなり、しばらく作業できないと言われたらどうすればよいですか
区切りの境目で止めてもらい、そこまでの成果を受け取るのが扱いやすい方法です。再開できそうな時期を本人に確かめ、残りの作業の納期は文書で引き直します。急ぐ作業であれば、残りを社内の担当者が引き取るか、ほかの人に頼むかをその時点で決めます。
頼む作業と区切りが決まったら相談
業務委託で頼む作業と、週に使ってもらいたい時間の見通しが分かっていれば、そのままご相談いただけます。納期をどう区切るか決めきれていない段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査」(JILPT調査シリーズNo.245・PDF)(https://www.jil.go.jp/institute/research/2024/documents/0245.pdf)。出典:労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査」(JILPT調査シリーズNo.245、2024年7月)。調査は2022年10月3日〜13日のインターネット調査で、有効回答18万8,980人のうち副業者1万1,358人と、本業のみの人2,182人を集計。図表2-2-5(本業での残業の状況。本業が雇用者の人が対象)、図表2-2-6(本業での1カ月あたりの実労働日数)を参照。残業をしている人の合計(45.0%)は図表2-2-5の値から筆者が算出。表は資料に示された数値をもとに筆者が作成した(2026年10月確認)
- *2 参考:厚生労働省「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001618743.pdf)。出典:第2(1)(自営型テレワークの定義)、第3(2)イ(契約条件の文書明示。包括的な契約と各回の納期、⑥成果物の納期、⑧検収日、⑩納入等が遅れた場合等の取扱い)、第3(3)イ⑤(イ)(成果物の納期)、⑥(契約条件を変更する場合の取扱い)を参照(2026年10月確認)