LASSIC Media らしくメディア
求人票と実際の相違、年3297件の内訳
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 申出は令和6年度に3,297件:内容別では賃金に関することが929件・20.2%で、件数がいちばん多い項目です*1。
- 要因の上位2つは求人側にある:求人票の内容が実際と異なる1,478件、求人者の説明不足932件が並びます*1。
- 件数は減ってきている:平成29年度の8,507件から令和6年度の3,297件へと減少しています*2。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
「求人票と実際が違った」という不満は、入社後の早期離職の理由として語られがちです。ただ、それが実際にどれくらい起きていて、何について起きているのかは、意外に知られていません。
厚生労働省はハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数を公表しています*2。令和6年度の件数は3,297件で、前年度の3,761件から減っています*1。
この統計の価値は、件数そのものより内訳が公開されている点にあります。何について申し出があり、どこに要因があったのか。求人を出す側が自社の書き方を点検する材料になります。
本記事では令和6年度の内訳を追い、自社の求人票と説明のどこを見直すかを整理します。個別の表示が法令に照らしてどうかという判断は、社会保険労務士等に確認したうえで進めてください。
目次
内容別では賃金が2割を占める
まず、何について申し出があったのかを見ます。
令和6年度の内容別の件数は次のとおりです*1。
| 内容 | 令和6年度 | 令和5年度 |
|---|---|---|
| 賃金に関すること | 929件(20.2%) | 1,108件(21.6%) |
| 就業時間に関すること | 661件(14.4%) | 711件(13.9%) |
| 職種・仕事の内容に関すること | 591件(12.9%) | 644件(12.6%) |
| 選考方法・応募書類に関すること | 470件(10.2%) | 642件(12.5%) |
| 休日に関すること | 320件(7.0%) | 332件(6.5%) |
| 雇用形態に関すること | 274件(6.0%) | 280件(5.5%) |
| 就業場所に関すること | 207件(4.5%) | 219件(4.3%) |
| 雇用期間に関すること | 201件(4.4%) | 215件(4.2%) |
| 社会保険・労働保険に関すること | 152件(3.3%) | 169件(3.3%) |
読み方に注意が必要です。資料は1件の申出等で複数の内容を含むものは、それぞれの内訳に計上としています*1。したがって内容別の件数を足しても全体の3,297件にはなりません。ひとつの申出が賃金と就業時間の両方に触れているケースが含まれます。
そのうえで並びを見ると、賃金が20.2%で件数がいちばん多く、就業時間14.4%、職種・仕事の内容12.9%が続きます*1。上位3つで全体の半分近くを占める形です。
賃金が首位という結果は、額そのものが低いという話とは限りません。求人票の書き方の問題として考えると、固定残業代の扱い、賞与や手当の位置づけ、レンジのどこが提示されるのかといった点が、相違として認識されやすい領域だとわかります。求人票に書く項目そのものはエンジニア求人票の書き方と必須14項目で扱いました。
4番目の選考方法・応募書類に関することが470件あるのも見落とせません*1。労働条件ではなく、選考の進め方についての申出です。面接の回数、課題の有無、提出書類。ここも書いた内容と実際が食い違うと申出の対象になります。
要因の上位2つは、いずれも求人側にある
この統計でとくに目を引くのが、要因別の内訳です。
令和6年度の要因別件数は次のようになっています*1。
- 求人票の内容が実際と異なる:1,478件(令和5年度1,609件)
- 求人者の説明不足:932件(同1,221件)
- 言い分が異なる等により要因を特定できないもの:373件(同450件)
- 求職者の誤解:364件(同307件)
- ハローワークの説明不足:59件(同76件)
1番目と2番目が別の問題だという点が重要です。「求人票の内容が実際と異なる」は書いてあることが違うケース。「求人者の説明不足」は書いてある内容が誤っているわけではなく、伝え方が足りなかったケースです。
後者が932件あるという事実は、求人票の記載を正確にするだけでは足りないことを示しています。書面が正確でも、選考の場で補足しなければ相違として認識される。この構造を踏まえると、面談で何をどこまで伝えるかの設計が要ります。明示のタイミングについてはカジュアル面談と面接の違い、義務はどこからで扱いました。
3番目の言い分が異なる等により要因を特定できないものが373件あることも示唆的です*1。何を伝えたかの記録が双方に残っていない場合、この区分に入ります。面談の内容を1枚の様式で残す運用が、この事態を防ぐ側に働きます。
「求職者の誤解」は364件で、前年度の307件から増えています*1。ただし全体に対する比率で見れば大きくありません。申出の多くは、求人を出した側に起点があるという読み方が素直でしょう。
ここでも同じ注記があります。1件の申出等で複数の内容を含むものは、それぞれの内訳に計上されています*1。要因が複数にまたがるケースがある、ということです。
情報通信業は72件、件数は減っている
産業別の内訳も公開されています。自社の位置を確認する材料になります。
令和6年度で件数が多いのは、医療、福祉725件(令和5年度687件)、サービス業(他に分類されないもの)470件(同555件)、卸売業、小売業415件(同514件)、製造業351件(同451件)、運輸業、郵便業296件(同301件)という並びです*1。
中位以下の並びも公開されています。建設業208件(令和5年度248件)、宿泊業・飲食サービス業179件(同198件)、学術研究・専門技術サービス業137件(同153件)、生活関連サービス業・娯楽業115件(同110件)、不動産業・物品賃貸業87件(同101件)、教育・学習支援業81件(同117件)という具合です*1。ほとんどの産業で前年度より減っており、増えているのは生活関連サービス業・娯楽業などごく一部です。
情報通信業は72件で、前年度の113件から減っています*1。全体の中では少ないほうです。ハローワーク経由の求人がそれほど多くない業種であることも影響しているでしょう。
ただし件数が少ないことを楽観の材料と読むのは早いかもしれません。この統計はハローワークに申し出があったものだけを数えています。民間の媒体や自社サイト経由での応募については、同じ経路の窓口がありません。IT分野の採用がスカウトや紹介中心であるほど、実態はこの数字に表れにくくなります。
全体の推移も公開されています。申出等の件数は平成29年度8,507件、平成30年度6,811件、令和元年度5,778件、令和2年度4,211件、令和3年度3,870件、令和4年度3,890件、令和5年度3,761件、令和6年度3,297件という流れです*2。令和3年度から令和4年度にかけてわずかに増えている年がありますが、全体としては減少傾向です。
母数も併記されています。令和6年度の新規求人件数は5,833,519件で*2、申出等の3,297件はそのごく一部にあたります。比率としては小さい。それでも内訳が公表されている意味は、どこで食い違いが起きるかの地図として使えることにあります。
なお、求職者側の窓口としてハローワーク求人ホットラインが設けられています*2。求人票と実際が違うと感じた場合の申出先です。求人を出す側から見れば、社外に相違を指摘する経路が用意されているということになります。
申出の前に、受理されない場合がある
相違を指摘される段階の前に、そもそも求人の申込みが受理されない場合もあります。ここも押さえておくと、点検の順序が変わります。
厚生労働省の募集・求人業務取扱要領は、職業安定法第5条の6について求人の申込みは全て受理しなければならないこととされているとしつつ、次の3つの場合に受理しないことができると整理しています*3。
- その申込みの内容が法令に違反するとき
- その申込みの内容である賃金、労働時間その他の労働条件が通常の労働条件と比べて著しく不適当であると認めるとき
- 求人者が労働条件等の明示をしないとき
3つめが実務では意外に効いてきます。明示すべき事項が埋まっていない求人は、内容の良し悪しではなく手続きの側で止まる可能性があるということです。
受理しない場合の扱いも定められています。要領は職業紹介事業者は、ただし書により、求人の申込みを受理しないときは、求人者に対し、その理由を説明しなければならないとしています*3。理由が説明されるため、どこが足りなかったかは分かる仕組みです。
2つめの通常の労働条件と比べて著しく不適当という基準は、金額の水準そのものが問われる場面です*3。地域や職種の相場から大きく外れた条件は、この観点で見られる可能性があります。水準の置き方はエンジニアの年収レンジと公的統計の使い方で扱いました。
この受理の原則は、ハローワークだけの話ではありません。要領は職業紹介事業者について定めており、この原則は、職業紹介事業者の取扱職業の範囲及び取扱職種の範囲等の範囲内で適用されるとされています*3。人材紹介会社に求人票を渡す場合も、同じ枠組みの中にあります。
申出を受ける側の窓口についても公表されています。厚生労働省はハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に関する申出等については、最寄りのハローワーク、または「ハローワーク求人ホットライン」にご連絡くださいと案内し、電話番号と受付時間(8時30分〜17時15分、土日祝も受付。ただし年末年始を除く)を示しています*2。求人を出す側から見れば、常時開いている指摘の経路があるということです。
この統計を自社の点検に使う
数字を見て終わらせず、点検の順序に落とします。内訳がそのままチェックリストになります。
賃金が20.2%で首位という結果から始めるなら、確認するのは3点でしょう。提示している額に何が含まれているか、固定残業代を採用している場合にその内訳が書かれているか、レンジで示している場合に決まり方が説明されているかです。求人情報の表示に関する義務の側は求人情報の的確な表示、企業に課される義務で扱いました。
就業時間が14.4%で2番目という点も、確認の方向がはっきりしています。所定労働時間だけでなく、所定外労働の有無と見込み、フレックスや裁量労働制の適用の有無。制度を採用しているのに求人票で触れていない場合、入社後に相違として認識されます。
職種・仕事の内容が12.9%という結果は、要件の粒度の問題に行き着きます。「幅広い業務」「その他付随する業務」といった書き方は、入社後に別の仕事を任されたときに相違の認識を生みます。業務の範囲を書けるところまで具体化しておく作業が、そのまま予防になります。要件を書く型は職業能力評価基準とは|採用要件を書く公的な型で扱いました。
選考方法・応募書類が10.2%あることは、募集要項の後半を見直す理由になります。選考のステップ数、各段階の所要期間、課題の有無と分量。ここを書いていない求人は多いはずです。書いていないこと自体が申出につながるわけではありませんが、口頭で伝えた内容と食い違えば対象になります。
そして要因別の2番目、求人者の説明不足932件への対応です。書面を直すだけでは932件の側は減りません。誰が、どの段階で、何を伝えるのかを決めておく必要があります。面談を現場の社員が担当している場合はとくに、伝える範囲がばらつきます。
記録の運用も同じ理由から重要です。要因を特定できないものが373件あるという事実は、「言った・言わない」になった時点で双方が損をすることを示しています。面談で伝えた内容の控えを残しておけば、少なくとも自社の側は説明できます。
着手の順序——内訳の上から3つだけ見る
順序を置きます。全項目を一度に点検する必要はありません。
- ① 賃金の記載を見直す。含まれるもの、固定残業代の内訳、レンジの決まり方の3点です
- ② 就業時間の記載を見直す。所定外労働の有無と見込み、採用している労働時間制度を書きます
- ③ 業務の範囲を具体化する。「幅広い」を、実際に任せる範囲の記述に置き換えます
- ④ 選考のステップを書く。回数、期間、課題の有無を募集要項に載せます
- ⑤ 誰が何を伝えるかを決める。説明不足の932件に対応する部分です
- ⑥ 面談の控えを残す様式を作る。要因を特定できない373件を自社側で減らします
①から③を先に置く理由は、内訳の上位3項目がそのまま並んでいるからです。統計が示す発生頻度の順に手を入れるのが、いちばん無駄がありません。
④は書いていない会社が多い項目です。選考のステップを書くことは応募のハードルを下げる効果もあります。歩留まりの測り方は採用KPIに置く5つの指標と分母の決め方で扱いました。
⑤と⑥は運用の話なので、書式を1枚作るところから始まります。面談の冒頭で伝える項目を決め、その控えを残す。この2つで、書面と説明の食い違いはかなり減ります。
なお、こうした見直しは求人票を書く人の時間を使います。現場が手一杯だと、募集要項は前回の使い回しになりがちです。使い回した求人票は、いまの仕事の内容と少しずつずれていきます。当座の負荷を下げてから点検に入りたい場合は、期間を区切って外部の力を借りる進め方もあります。
まとめ:求人票の相違で押さえる3つの視点
第一に、内容別では賃金がいちばん多いという点です。厚生労働省が公表しているハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数は、令和6年度に全国計3,297件でした。内容別では賃金に関することが929件で20.2%、就業時間に関することが661件で14.4%、職種・仕事の内容に関することが591件で12.9%、選考方法・応募書類に関することが470件で10.2%と並んでいます。なお1件の申出等で複数の内容を含むものはそれぞれの内訳に計上されているため、内容別の件数の合計は全体の件数と一致しません。第二に、要因別の上位2つがいずれも求人を出した側に起点を持つという点です。求人票の内容が実際と異なるものが1,478件、求人者の説明不足が932件でした。前者は記載そのものが違うケース、後者は記載は誤っていないが伝え方が足りなかったケースであり、書面を直すだけでは後者は減りません。あわせて言い分が異なる等により要因を特定できないものが373件あり、何を伝えたかの記録が残っていないことの影響が読み取れます。第三に、件数は減少傾向にあるという点です。平成29年度の8,507件から令和6年度の3,297件へと推移しており、令和3年度から令和4年度にかけてわずかに増えた年を除けば減っています。産業別では情報通信業は72件で、前年度の113件から減少しました。まず内訳の上位3項目にあたる賃金、就業時間、業務の範囲の記載から見直してください。
よくある質問
「求人票と実際が違う」という申出は、年間どれくらいありますか。
厚生労働省の公表によると、ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数は令和6年度に全国計3,297件でした。前年度は3,761件で、平成29年度の8,507件から全体としては減少傾向です。ただし令和3年度の3,870件から令和4年度の3,890件へは、わずかに増えています。同年度の新規求人件数は5,833,519件と併記されています。
どの項目についての申出が多いですか。
内容別では賃金に関することが929件で20.2%と件数がいちばん多く、就業時間に関することが661件で14.4%、職種・仕事の内容に関することが591件で12.9%、選考方法・応募書類に関することが470件で10.2%と続きます。なお1件の申出等で複数の内容を含むものはそれぞれの内訳に計上されているため、各項目の件数を足しても全体の件数にはなりません。
要因はどのように分類されていますか。
令和6年度の要因別では、求人票の内容が実際と異なるものが1,478件、求人者の説明不足が932件、言い分が異なる等により要因を特定できないものが373件、求職者の誤解が364件、ハローワークの説明不足が59件でした。上位2つはいずれも求人を出した側に起点があり、記載そのものの誤りと、記載は正しいが説明が足りなかったケースが分けて集計されています。
IT企業も対象になる統計ですか。
産業別の内訳が公表されており、情報通信業は令和6年度に72件で、前年度の113件から減っています。件数が多いのは医療・福祉725件、サービス業(他に分類されないもの)470件、卸売業・小売業415件です。ただしこの統計はハローワークに申し出があったものを数えているため、民間媒体や自社サイト経由の応募については同じ経路の集計がありません。
この統計を自社の点検にどう使えますか。
内訳の並びを発生頻度の順に読み、上から手を入れる使い方ができます。賃金であれば提示額に含まれるもの、固定残業代の内訳、レンジの決まり方の3点。就業時間であれば所定外労働の有無と見込み、採用している労働時間制度。職種であれば業務の範囲の具体化です。あわせて求人者の説明不足932件への対応として、誰がどの段階で何を伝えるかを決めておく必要があります。
出典
- *1 参考:厚生労働省「令和6年度 ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数」(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001605112.pdf)。令和6年度の申出・苦情等件数、内容別件数と割合、要因別件数、産業別件数、および1件で複数の内容を含む場合の計上方法の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:厚生労働省「ハローワークの求人票と実際が異なる旨の申出等」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/hellowork/hellowork_kyuujinnaiyou.html)。平成29年度から令和6年度までの申出等の件数の推移、参考として併記されている新規求人件数、ハローワーク求人ホットラインの案内の一次情報として(2026年8月確認)
- *3 参考:厚生労働省「募集・求人業務取扱要領」Ⅴ 求人の申込みの原則(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001003066.pdf)。職業安定法第5条の6に基づく求人の申込みの受理の原則と受理しないことができる3つの場合、受理しない場合の理由説明の一次情報として(2026年8月確認)
- *4 参考:厚生労働省「ハローワーク」(制度のページ)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/hellowork.html)。ハローワークに関する各種情報および関連ページの入手先として(2026年8月確認)