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中途採用の理由|情報通信業は拡大が7割
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 産業計の首位は「歪みの是正」:重視した事項は人員構成の歪みの是正が43.8%で、既存事業の拡大・強化42.0%と並びます*1。
- 情報通信業だけ形が違う:既存事業の拡大・強化が73.8%、新規事業分野への進出15.6%と、他産業より高い水準です*1。
- 技術職の採用理由は即戦力と専門知識:専門的・技術的な仕事では即戦力66.1%、専門知識・能力52.7%が上位です*1。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
中途採用の枠を立てるとき、社内では「人が足りないから」で話が通ってしまいます。ただ何のために採るのかを言語化しないと、要件も訴求も決まりません。
厚生労働省の転職者実態調査には、事業所が中途採用で何を重視したかが産業別・規模別に載っています。産業計では「人員構成の歪みの是正」とする事業所割合が43.8%と最も高く、次いで、「既存事業の拡大・強化」が42.0%という結果です*1。
ところが情報通信業だけ、この形が崩れます。「既存事業の拡大・強化」が73.8%で、産業計より30ポイント以上高い水準です*1。IT分野の中途採用は、欠員補充より事業の拡大を動機にしている割合が高い。この差は、要件の書き方と訴求の組み立てに直結します。
本記事では同調査の数字を追い、自社の採用がどちらの動機に立っているのかを整理します。なお同調査は不定期で、令和2年調査が最新結果です*2。年次で動く指標ではないため構造の理解には使えますが、直近の市況を示すものではない点に留意してください。
目次
情報通信業だけ、動機の並びが違う
まず、事業所が中途採用で何を重視したのかを見ます。
調査は転職者がいる事業所が転職者の採用に当たり重視した事項(複数回答)を集計しています*1。産業計と情報通信業を並べると、順位そのものが入れ替わります。
| 重視した事項 | 産業計 | 情報通信業 |
|---|---|---|
| 既存事業の拡大・強化 | 42.0% | 73.8% |
| 人員構成の歪みの是正 | 43.8% | 37.5% |
| 組織の活性化 | 29.1% | 34.9% |
| 新規事業分野への進出 | 5.1% | 15.6% |
| 新技術の導入・開発 | 1.8% | 7.5% |
| その他 | 17.3% | 7.8% |
| 特に意識しなかった | 10.1% | 4.9% |
差が大きいのは上の3行です。既存事業の拡大・強化は産業計42.0%に対して情報通信業73.8%。新規事業分野への進出は5.1%に対して15.6%、新技術の導入・開発は1.8%に対して7.5%。いずれも情報通信業のほうが高くなっています*1。
逆に人員構成の歪みの是正は、産業計43.8%に対して情報通信業37.5%で下がります*1。「特に意識しなかった」も10.1%に対して4.9%で、動機が明確な業種だと読めます。
他産業の並びも確認しておくと位置がわかります。調査は人員構成の歪みの是正を重視する割合の高い産業として不動産業,物品賃貸業56.4%、鉱業,採石業,砂利採取業55.8%、生活関連サービス業,娯楽業51.9%を挙げています*1。情報通信業は、この軸ではむしろ低いほうです。
規模による傾向も示されています。調査は既存事業の拡大・強化、新規事業分野への進出、新技術の導入・開発、人員構成の歪みの是正、組織の活性化では、おおむね、事業所規模が大きいほど事業所割合が高くなっているとし、特に意識しなかったでは、事業所規模が小さいほど事業所割合が高くなっているとしています*1。
規模別の数値も公開されています。両端を並べると差の大きさが見えます*1。
| 重視した事項 | 1,000人以上 | 100〜299人 | 5〜29人 |
|---|---|---|---|
| 既存事業の拡大・強化 | 69.9% | 47.7% | 41.5% |
| 人員構成の歪みの是正 | 49.2% | 48.1% | 42.4% |
| 組織の活性化 | 45.4% | 32.6% | 28.0% |
| 新規事業分野への進出 | 25.3% | 5.3% | 5.2% |
| 新技術の導入・開発 | 19.8% | 4.4% | 1.3% |
| 特に意識しなかった | 4.8% | 6.0% | 11.0% |
新規事業分野への進出と新技術の導入・開発で、差が飛び抜けています。1,000人以上では25.3%と19.8%ですが、5〜29人では5.2%と1.3%です*1。新しい領域に人を入れるという動機は、規模が小さいほど立ちにくい。逆に人員構成の歪みの是正は49.2%対42.4%で、規模による差が小さい項目です*1。
ここは自社を当てて読む部分でしょう。小さい組織で「特に意識しなかった」が11.0%まで上がるのは、枠を立てる余裕がないまま採用に入っているということでもあります*1。要員の数え方は要員計画に必要な4つの数字と決める順番で扱いました。
採用理由は職種で分かれる
もうひとつの集計が、職種別の採用理由です。こちらは訴求の言葉に直結します。
調査は転職者がいる事業所の転職者の採用理由(3つまでの複数回答)を職種ごとに集計しています*1。結果はこうです。
- 管理的な仕事:経験を活かし即戦力になるから62.3%、専門知識・能力があるから40.7%
- 専門的・技術的な仕事:経験を活かし即戦力になるから66.1%、専門知識・能力があるから52.7%
- 販売の仕事:経験を活かし即戦力になるからが最上位
- 事務的な仕事/サービスの仕事/保安、生産工程、輸送・機械運転、建設・採掘、運搬・清掃・包装等、その他の仕事:離職者の補充のためが最上位
ここに明確な二分があります。管理職と技術職では「経験」と「専門知識」が採用理由の上位に来る一方、事務・サービス・現場系では「離職者の補充のため」が上位に来る*1。前者は積み増しの採用、後者は穴埋めの採用と言い換えてもよいでしょう。
規模による違いも大きく出ています。調査は専門的・技術的な仕事の事業所規模1,000人以上では、専門知識・能力があるからが85.9%、経験を活かし即戦力になるからが85.2%と8割を超えているとしています*1。
この数字は、要件の書き方に対する示唆になります。大きい組織ほど「何ができる人か」を明確にして採っているということです。小さい組織で要件が曖昧になりがちなのは、枠が「人手」として立っているからでしょう。要件を言語化する型は職業能力評価基準とは|採用要件を書く公的な型で扱いました。
管理職についても同じ傾向が出ます。管理的な仕事で転職者を採用した理由は、事業所規模1,000人以上では専門知識・能力があるから73.7%、経験を活かし即戦力になるから80.6%ですが、5〜29人では専門知識・能力があるから35.4%、経験を活かし即戦力になるから62.1%です*1。
即戦力の比重は規模によらず高い一方、専門知識の比重は規模で倍近い差が出ています。小さい組織が管理職を中途で採るとき、専門性より「すぐ回せること」を見ている割合が高いという読み方になります。マネジメント側と専門職側の処遇の分け方はマネジメントに進まないエンジニアの処遇設計で扱いました。
注意したいのは、この集計が3つまでの複数回答である点です*1。ひとつの事業所が複数の理由を挙げているため、割合の合計は100%を超えます。「即戦力だから」と「専門知識があるから」は排他ではなく、多くの事業所が両方を挙げているという読み方になります。
転職者はどこから来ているか
同じ調査には、転職した本人への調査結果も収録されています。母集団チャネルの設計に使える部分です。
調査は転職者が現在の勤め先に就職するためにどのような方法で転職活動を行ったか(複数回答)を集計し、求人サイト・求人情報専門誌・新聞・チラシ等が39.4%と最も高く、次いでハローワーク等の公的機関が34.3%、縁故(知人、友人等)が26.8%としています*3。
縁故が26.8%あるという数字は、リファラルの位置づけを考えるうえで参考になります*3。制度として整えていなくても、実際にはこの経路で動いている人が4分の1以上いるという意味です。アルムナイやリファラルの制度化についてはアルムナイ採用はなぜ制度がないと続かないのかで扱いました。
年齢階級別に見ると経路の重みが変わります。25〜29歳では求人サイト等が48.9%、ハローワーク等が32.3%、縁故が18.7%。60〜64歳ではハローワーク等が47.1%、縁故が31.8%、求人サイト等が22.4%です*3。採りたい層によって、置く場所が変わるということです。
年齢の両端では縁故の比重がさらに上がります。15〜19歳では縁故が86.0%、65歳以上では47.1%です*3。媒体で届く層と、人のつながりでしか届かない層が分かれているということです。男女差も出ており、求人サイト等は男36.9%・女42.8%、ハローワーク等は男31.7%・女37.8%となっています*3。
準備の状況も示されています。調査は転職に当たっての準備活動について特に何もしていないが66.1%、転職準備活動を行ったが30.9%とし、行った場合の内容(複数回答)は産業・職業に関する情報等の収集をしたが42.9%と最も高く、次いでその他が22.4%、キャリアコンサルティングを受けたが16.0%としています*3。
3分の2が「特に何もしていない」という数字は、募集要項の読まれ方に影響します。下調べを重ねた上で応募してくる人は少数派だという前提で、求人票と面談の情報量を設計する必要があります。求人票の記載と実際の食い違いは求人票と実際の相違、年3297件の内訳で扱いました。
期間の分布も参考になります。転職活動を始めてから直前の勤め先を離職するまでの期間は1か月以上3か月未満が28.8%、転職活動期間なしが23.6%、1か月未満が18.3%という並びです*3。短期で動く人が相当数いるため、選考の所要期間がそのまま辞退の理由になり得ます。
この調査の読み方の注意
数字を使う前に、調査の性格を確認しておきます。
そもそも何を調べる調査なのかも押さえておきます。報道発表用資料は「転職者実態調査」は、転職者の採用状況、就業・意識の実態を把握することを目的としていますと述べています*2。事業所側と個人側の両方を同時に調べているのが、この調査の特徴です。採用した側の動機と、応募した側の行動を同じ時点で突き合わせられる資料は多くありません。自社の仮説を検算する場面では、この二面性が使いどころになります。
まず時点です。この調査は不定期に実施されており、令和2年調査が最新結果とされています*2。報道発表用資料によれば、5人以上の常用労働者を雇用する事業所から約17,000事業所及びそこで働く転職者から約10,000人を抽出し、令和2年10月1日現在の状況について実施したもので、有効回答率は事業所調査で53.1%、個人調査で55.9%でした*2。
令和2年10月という時点は、市況の影響を受けている可能性があります。採用の動機や職種別の理由といった構造的な項目は年次で大きく動きませんが、活動方法の割合などは現在と差があると考えるほうが安全側でしょう。
次に集計の単位です。重視した事項は複数回答で、括弧内の数値は、回答のあった事業所を100とした割合とされています*1。採用理由は3つまでの複数回答で、括弧内の数値は、該当する職種で転職者を採用した事業所を100とした割合です*1。分母が「全事業所」ではないため、単純に足し引きできません。
もうひとつ、この調査には満足度の集計もあります。報道発表用資料は満足度D.I.(「満足」-「不満足」)は、42.0ポイントとし、現在の勤め先に満足な転職者は、不満足な転職者を大幅に上回るとしています*2。転職した人の多くは現在の勤め先に肯定的だという結果です。
この点は、採用の場面での前提に関わります。「転職者は不満を抱えて動いている」という想定で訴求を組むと、実際の分布とずれる可能性があります。離職の背景についてはなぜ中途エンジニアは早期に離職するのかで扱いました。
着手の順序——枠の動機を1行で書く
順序を置きます。統計の使い道は、自社の枠を分類することにあります。
- ① いま立てている枠の動機を1行で書く。拡大・強化なのか、歪みの是正なのか、補充なのか
- ② ①に合わせて要件の粒度を決める。拡大なら「何をできる人か」、補充なら「何を引き継ぐか」です
- ③ 職種で採用理由を分ける。技術職は即戦力と専門知識、事務系は補充という並びを前提にします
- ④ 訴求の言葉を動機にそろえる。拡大の枠に「安定した環境」と書くとずれます
- ⑤ 経路を採りたい層に合わせる。若手なら求人サイト、シニアならハローワークや縁故の比重が上がります
- ⑥ 選考期間を短く設計する。活動期間1か月未満と期間なしで4割を超えます
①を最初に置く理由は、これが決まらないと②以降が全部ぶれるからです。「人が足りない」は動機ではなく症状です。拡大のために増やすのか、抜けた穴を埋めるのか。どちらかを選ぶと、要件も訴求も自然に決まります。
④は見落とされやすい部分です。事業の拡大のために採る枠なら、伝えるべきは「これから何をやるか」でしょう。逆に補充の枠で成長機会だけを語ると、入社後に相違として認識されます。
⑥について補足します。転職活動期間なしが23.6%、1か月未満が18.3%という分布は*3、選考に時間をかけるほど候補者が先に決めてしまう可能性を示します。ステップ数と各段階の所要日数は、統計の側から見ても短くする理由があります。歩留まりの測り方は採用KPIに置く5つの指標と分母の決め方で扱いました。
なお、①の判断は事業側の計画と直結します。現場が手一杯で計画そのものが立っていない場合、枠の動機を書くこと自体が難しくなります。そのときは、まず当座の負荷を下げてから計画に戻るほうが順序として自然です。期間を区切って外部の力を借りる進め方もあります。
まとめ:中途採用の動機で押さえる3つの視点
第一に、産業計と情報通信業で動機の並びが違うという点です。厚生労働省の令和2年転職者実態調査では、転職者の採用に当たり重視した事項として、産業計では人員構成の歪みの是正が43.8%と最も高く、次いで既存事業の拡大・強化が42.0%となっています。一方、情報通信業では既存事業の拡大・強化が73.8%で、新規事業分野への進出15.6%、新技術の導入・開発7.5%もいずれも産業計を上回ります。人員構成の歪みの是正は37.5%で、産業計より低くなっています。第二に、採用理由が職種で分かれるという点です。専門的・技術的な仕事では経験を活かし即戦力になるからが66.1%、専門知識・能力があるからが52.7%で上位に並び、事業所規模1,000人以上ではそれぞれ85.9%、85.2%と8割を超えます。一方で事務的な仕事、サービスの仕事、保安・生産工程等の仕事では、離職者の補充のためが最上位です。第三に、調査の性格を踏まえて使うという点です。この調査は不定期で令和2年調査が最新結果であり、5人以上の常用労働者を雇用する事業所約17,000とそこで働く転職者約10,000人を抽出して令和2年10月1日現在で実施されています。重視した事項は回答のあった事業所を100とした割合、採用理由は該当する職種で転職者を採用した事業所を100とした割合であり、分母が異なります。まず自社が立てている枠の動機を1行で書くところから始めてください。
よくある質問
中途採用で企業が重視している事項は何ですか。
厚生労働省の令和2年転職者実態調査では、転職者の採用に当たり重視した事項として、産業計では人員構成の歪みの是正が43.8%と最も高く、次いで既存事業の拡大・強化が42.0%となっています。組織の活性化は29.1%、特に意識しなかったは10.1%です。複数回答で、割合は回答のあった事業所を100として算出されています。
IT業界の中途採用は他の産業と違いますか。
情報通信業では並びが変わります。既存事業の拡大・強化が73.8%で、産業計の42.0%を大きく上回ります。新規事業分野への進出も15.6%(産業計5.1%)、新技術の導入・開発も7.5%(同1.8%)と高い水準です。一方で人員構成の歪みの是正は37.5%で産業計より低く、特に意識しなかったも4.9%にとどまります。
技術職を中途で採る理由の上位は何ですか。
専門的・技術的な仕事では、経験を活かし即戦力になるからが66.1%、専門知識・能力があるからが52.7%で上位に並びます。事業所規模1,000人以上ではそれぞれ85.9%、85.2%と8割を超えます。管理的な仕事も同じ2つが上位ですが、事務的な仕事やサービスの仕事では離職者の補充のためが最上位となっています。3つまでの複数回答です。
転職者はどの経路で応募してきますか。
同調査の個人調査では、現在の勤め先に就職するための転職活動の方法(複数回答)として、求人サイト・求人情報専門誌・新聞・チラシ等が39.4%と最も高く、ハローワーク等の公的機関が34.3%、縁故(知人、友人等)が26.8%となっています。年齢階級によって重みが変わり、25〜29歳では求人サイト等が48.9%、60〜64歳ではハローワーク等が47.1%です。
この調査のデータはいつ時点のものですか。
不定期に実施される調査で、令和2年調査が最新結果です。5人以上の常用労働者を雇用する事業所から約17,000事業所、そこで働く転職者から約10,000人を抽出し、令和2年10月1日現在の状況について実施されました。有効回答率は事業所調査で53.1%、個人調査で55.9%です。採用の動機や職種別の理由は構造的な項目ですが、活動方法の割合などは現在と差がある可能性を踏まえて使ってください。
出典
- *1 参考:厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」2 転職者の採用状況(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-r02-1-02.pdf)。転職者の採用に当たり重視した事項の産業別・事業所規模別の割合、職種別・事業所規模別の転職者を採用した理由、および割合の分母に関する注記の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:厚生労働省「令和2年「転職者実態調査」の結果」(報道発表用資料)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-r02-houdou.pdf)。調査の対象と抽出規模、調査時点、有効回答率、満足度D.I.の一次情報として(2026年8月確認)
- *3 参考:厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」3 転職について(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-r02-2-03.pdf)。転職活動の方法別の転職者割合(年齢階級別を含む)、転職準備活動の内容、転職活動を始めてから離職するまでの期間の一次情報として(2026年8月確認)
- *4 参考:厚生労働省「雇用の構造に関する実態調査(転職者実態調査)」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/6-18.html)。調査の目的・沿革・不定期調査であること(令和2年調査が最新結果)および各年の結果の入手先として(2026年8月確認)