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2026.09.19 採用支援コラム

SESで進めるレガシーシステム移行の課題|移行計画の出し方

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

ふたを開けたハードディスクを斜め上から写した写真。円盤とアームだけが写っており、人や読み取れる製品名は入っていない

この記事の結論

  • IPAの2024年度の調査では、回答した384社のうち171社、44.5%が委託先に原因のある移行の課題を挙げました。
  • 課題の中で最も多いのは「計画が提案されない」の24.7%で、「対応要員がいない」の16.4%が続きます。
  • SESで技術者に加わってもらう前に、計画を書く人と情報を出す人を決め、その技術を扱える人がいるかを確かめます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

SESで技術者に加わってもらったのに、移行の計画がなかなか出てこない。古いシステムについて説明したつもりなのに、話がかみ合わない——。レガシーシステムの移行を社外の技術者と進める現場では、こうした食い違いが起こりがちです。レガシーシステムとは、老朽化・陳腐化、複雑化・肥大化、ブラックボックス化のいずれかに当てはまるシステムを指します。*1

移行が進まない理由を委託先の側から考えるときの手がかりになるのが、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「2024年度ソフトウェア動向調査」です。発注した企業に、委託先に起因する課題を尋ねた設問があります。ただし、この設問で分かることには限りがあります。SESに限らず、開発や運用を請け負う事業者全般について聞いたものです。本記事では、SESでレガシーシステムの移行を進めたい発注側の担当者に向けて、調査で挙がった課題、回答した企業の内訳、委託する前に決めておきたい点、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

レガシーシステムとSESとは

レガシーシステムの3つの条件のうち、分かりにくいのはブラックボックス化です。IPAは、ドキュメントなどの資料が整っておらず、特定の担当者だけで運用・保守が行われ、不具合がどこで起きたかやシステムの仕様が分からない状態だと説明しています。*1 システムについての知識が、その担当者の頭の中にしかない状態です。移行するには、いまのシステムが何をしているかを調べ直すところから始めることになります。

SES(システムエンジニアリングサービス)は、期間を決めて技術者に開発や運用の作業へ入ってもらう契約の形です。これに対して請負は、成果物の完成まで任せる契約です。SESで技術者に加わってもらう場合、移行の計画づくりを誰の仕事にするかを決めないまま作業が始まることがあります。これを決めずに始めると、後で計画が出てこない原因になります。

委託先の側に挙がる課題

IPAの調査には、レガシーシステムの移行がうまく進まない原因として、ベンダー側に起因すると考えられる課題を、当てはまるものすべて選ぶ設問があります。*1 ベンダーは開発や運用を請け負う事業者全般を指し、SESの会社も含まれますが、契約の形は分けて聞いていません。回答対象は384社です。公開されている回答データから数えると、結果は次の表のとおりです。

レガシーシステム移行に関するベンダー起因の課題(複数回答、回答対象384社。合計は100%を超える)。IPA「2024年度ソフトウェア動向調査(企業向け)」の公開回答データから集計(確認日2026年9月19日)
選択肢 社数 割合
特になし 110 28.6%
計画が提案されない 95 24.7%
わからない 66 17.2%
対応要員がいない 63 16.4%
必要な情報が共有されない 48 12.5%
放置した場合のリスクが共有されない 41 10.7%
ベンダーへの委託は行っていない 39 10.2%
その他 14 3.6%

何らかの課題を挙げたのは171社、44.5%です。そのうち157社は、表の「特になし」「わからない」「委託は行っていない」「その他」を除いた4つの課題のどれかを選び、残る14社は「その他」だけを選びました。4つの中では「計画が提案されない」が95社、24.7%で最も多く、選択肢の文には、移行・最新化に向けた具体的なロードマップ(工程表)や技術提案がない、と書かれています。*1 次いで「対応要員がいない」が63社、16.4%でした。

「必要な情報が共有されない」は48社、12.5%、「放置した場合のリスクが共有されない」は41社、10.7%です。課題を複数選んだ企業も少なくありません。4つのうち1つだけを選んだのが95社、2つが40社、3つが16社、4つすべてが6社でした。「計画が提案されない」を選んだ95社のうち51社は、ほかの課題もあわせて挙げています。

一方で、回答全体でいちばん多いのは「特になし」の110社、28.6%でした。*1 「わからない」も66社あります。課題を挙げた171社は、「特になし」と「わからない」を合わせた176社とほぼ同じ数です。

回答した384社とは

答えたのは、システムを発注して使う側のユーザー企業373社と、ユーザー系情報システム子会社11社です。*1 ユーザー系情報システム子会社は、親会社の情報システムを担当する子会社のことです。開発を請け負う側の事業者は入っていないので、表の数字は発注した側から見た課題です。委託先に計画を書ける人がいなかったのか、発注した側が提案を求めていなかったのかは、この設問からは区別できません。

384社がどう選ばれたかも見ておきます。この設問に答えるのは、前の設問でレガシーシステムを保有していると答えた322社と、過去に保有していたが今は保有していないと答えた62社だけです。*1

分母にも注意が要ります。384社には「ベンダーへの委託は行っていない」と答えた39社も入っているので、44.5%は委託している企業だけの割合ではありません。

委託する前に決めておく3つ

調査はSESと請負を分けていませんが、挙がった課題をSESで技術者に加わってもらう場面に当てはめると、契約の前に決めておきたい点が3つあります。並べた順番は優先度ではありません。

人を入れる前に決める3つを箱で示した図。1つ目は移行計画を誰が書くか、2つ目は既存システムの情報を誰が出すか、3つ目はその技術を扱える人がいるかの確認。社数は公開回答データから計算した値。

1つめは、移行計画を誰が書くかです。4つの課題で最も多かった「計画が提案されない」の95社に当たります。計画を自社で書くのか、提案まで含めて頼むのかを先に分けておくと、委託先に求める経験もはっきりします。

2つめは、既存システムの情報を誰が出すかです。「必要な情報が共有されない」を挙げたのは48社で、選択肢の文には、システム構成や保守期限、既存の課題に関する情報が共有されていない、と書かれています。*1 情報が出てこないのは、自社に資料が残っていないためということもあります。構成・保守期限・既存の課題を、自社で先に書き出しておきます。

3つめは、そのシステムの技術を扱える人が委託先にいるかを、契約の前に確かめることです。「対応要員がいない」は63社が挙げていました。対象のシステムで使われているプログラミング言語やデータベースの名前を挙げて、経験のある人がいまいるかを尋ねます。いるという答えだけでなく、その人が同じ技術で何を担当したかまで聞いておくと、判断しやすくなります。

つまずきやすい点

一つ目は、調査の数字をそのままSESの評価として受け取ることです。この設問が聞いているのはベンダー全般に対する見方で、SESで加わってもらった技術者の話か、請負で任せた会社の話かは分かれていません。*1 答えたのも発注した側だけなので、委託先と話すときに相手を責める材料にはなりません。

二つ目は、計画さえ出てくれば移行が動き出すと考えることです。前に見たとおり、計画を課題に挙げた95社のうち半数を超える51社は、ほかの課題もあわせて挙げていました。前の節の3つは、まとめて確かめておくほうが確実です。

三つ目は、自社の側の事情を見落とすことです。移行が止まる理由は委託先だけにあるわけではありません。自社の要員が足りないために刷新が止まる場合は「レガシー刷新を止めるのは理解不足ではなく要員の不足」で、移行の段階ごとの止まり方は「レガシー移行が進まない理由」で扱っています。

外部に委託するときに確認しておきたい点

調査が聞いていないことは、自社で確かめることになります。まず、計画が出てこない理由を委託先に直接聞くことです。委託先に聞くと、資料が渡っていない、判断する人が決まっていないといった、自社側の事情が出てくることもあります。

次に、委託先から扱える人がいないと断られたときの対応を、先に決めておくことです。調査は、対応要員がいないと答えた企業がその後どうしたかを聞いていません。社内で担当するのか、別の委託先を探すのか、移行を先送りするのか。どれにするかを、契約の前に社内で話し合っておきます。

最後に、やり取りの経緯を記録に残すことです。誰が何を依頼し、何が返ってきたかを残しておけば、移行が止まったときに原因を見直せます。

まとめ:SESでの移行で確かめておきたい3つの点

SESでレガシーシステムの移行を進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、移行計画を自社で書くのか、提案まで含めて委託先に頼むのかを分けておくこと。第二に、システム構成や保守期限、既存の課題といった情報を、誰が出すかを決めておくこと。第三に、対象のシステムの言語やデータベースを扱える人が委託先にいるかを、契約の前に確かめることです。この3点を踏まえておけば、「技術者に入ってもらったのに、移行の計画が出てこない」という事態を避けやすくなります。委託先の選び方や頼み方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

移行の計画を誰が書くかが先に決まっていると、要員の相談は具体的になります。計画づくりから頼むのか、決まった作業に入ってもらうのかで、必要な経験も期間も変わるからです。迷う段階でも、弊社の担当が一緒に整理します。

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よくある質問

もっと新しい年度の調査はありますか

2025年度の調査は公開されていますが、委託先に起因する課題を尋ねた設問はありません。レガシーシステムの設問は、2024年度の29問から2025年度は3問に減っています。*2 この設問が聞かれたのは、いまのところ2024年度が直近です。

「わからない」や「委託は行っていない」は、課題が無いという意味ですか

いいえ。課題が無いという回答は「特になし」の110社で、「わからない」66社と「ベンダーへの委託は行っていない」39社は別の答えです。*1 課題が無いと答えた企業の割合を見るときは、「特になし」だけを数えます。

この記事の社数は、自分で確かめられますか

確かめられます。IPAは調査結果の回答データを公開しており、表の社数と割合はそのデータを数え直した値です。*1 同じデータを使えば、誰でも同じ集計ができます。

移行の進め方から相談したいときは

計画づくりから頼むのか、作業に入ってもらうのかが決まっていない段階でもご相談いただけます。

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出典

  1. *1 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査(企業向け)」調査結果の公開データと設問一覧(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/result-software2024.html)。出典:独立行政法人情報処理推進機構「2024年度ソフトウェア動向調査(企業向け)」。設問一覧のQ5-22「移行に関するベンダー起因の課題」の設問文と8つの選択肢、Q5-2「レガシーシステムの有無」の設問文とレガシーシステムの考え方(老朽化・陳腐化、複雑化・肥大化、ブラックボックス化)およびそれがQ5-22の回答条件であること、この2問の回答対象がユーザー企業とユーザー系情報システム子会社であることを参照。表の社数と割合、企業種別の内訳、384社の内訳、複数選択の分布は、同ページで公開されている調査結果(選択肢項目文字列)のCSVから集計した値(2026年9月確認)
  2. *2 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査」調査結果の公開ページと設問一覧(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/software2025.html)。2025年度の設問一覧にレガシーシステムの設問が3問(有無・影響・刷新の課題)しかなく、ベンダー起因の課題を尋ねた設問が無いことの確認として。2024年度のレガシーシステムの設問が29問であることは2024年度の設問一覧による(2026年9月確認)




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