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エンジニア中途採用の助成金|中途採用拡大コースの対象要件と賃金
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 雇い入れ日の前日から1年以内に、派遣や業務委託で自社の事業所で働いていた人は、正社員で迎えても支給対象者になりません。
- 賃金の5%以上の上昇は、固定残業代や通勤手当を除いた毎月決まって支払われる賃金で、入社後6か月の支払日ごとに比べます。
- 中途採用率は期間の定めのない雇い入れだけで数え、計画期間を後から延ばしたり縮めたりすることはできません。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
エンジニアの中途採用に中途採用拡大コースを使えないかと調べてみたら、支給対象者の条件や中途採用率の計算が細かく、自社の採用が当てはまるのか判断がつかない。前職より高い給与を提示したつもりでも、何と何を比べるのかが分からない——。エンジニア中途採用で助成金を検討する現場では、こうした迷いが起こりがちです。早期再就職支援等助成金の中途採用拡大コースとは、中途採用者の雇用管理制度を整えたうえで中途採用を増やし、雇い入れた人の賃金を雇い入れ前より上げた事業主に、国が支給する助成金です。
支給額は支給対象者1人につき20万円で、1年度1事業所あたり20人分が上限です。一定の成長性が認められる事業所には、1人につき10万円が加算されます。*1 ただし万能ではなく、雇った人、中途採用の割合、賃金、事業主のそれぞれに対象要件があり、どれか1つでも欠ければ受給できません。本記事では、エンジニアの中途採用を進める人事・開発部門の担当者に向けて、支給対象になる労働者、中途採用率の数え方、賃金の比べ方、事業主の要件、そしてつまずきやすい点を整理します。
中途採用拡大コースとは
早期再就職支援等助成金は4つのコースに分かれており、そのうち中途採用拡大コースは、賃金の上昇を伴う中途採用の拡大に取り組む事業主を支えることを目的にしています。ハローワークなどの紹介を経た採用に限らず、自社の採用ページやスカウトで採った人も対象になりえます。対象要件は、誰を雇ったか(支給対象者)、何をしたか(支給対象措置)、どんな事業主か(支給対象事業主)の3つに分けて定められています。
| 区分 | 主な中身 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 支給対象者 | 中途採用で、期間の定めのない雇用保険の被保険者として雇い入れた人 | 直前の1年に自社の事業所で働いていないこと、関連の深い会社から移った人でないこと |
| 支給対象措置 | 中途採用計画の届出、中途採用率の拡大、賃金の上昇 | 雇い入れから6か月以内に辞めた人の割合 |
| 支給対象事業主 | 雇用保険の適用事業所で、書類を整えて審査に協力すること | 計画を出す前から申請までの間に、事業主の都合で解雇していないこと |
エンジニア中途採用に関係する助成金の全体像と計画届の期限は、「エンジニア中途採用の助成金、採用の前に確かめる4つのこと」で扱っています。ここからは中途採用拡大コースに絞り、対象要件を1つずつ見ていきます。このコースは2026年4月8日にも支給要領と支給額が見直されています。*4 申請する時点の支給要領とガイドブックで、内容が変わっていないかを確かめてください。
支給対象になる労働者
支給対象者は、中途採用計画の期間中に雇い入れた人のうち、5つの要件をすべて満たす人です。1つ目は、中途採用で雇い入れたこと。2つ目は、雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れたこと。3つ目は、期間の定めのない労働者として雇い入れたことで、パートタイム(1週間の所定労働時間が通常の労働者より短い人)は除きます。
4つ目は、雇い入れ日の前日から1年の間に、雇用関係、出向、派遣、請負、委任のいずれの形でも、自社の事業所で働いたことがないことです。5つ目は、同じ1年の間に、親会社と子会社の関係にある会社や、代表取締役が同じ会社など、自社から独立しているとは認められない会社に雇われていなかったことです。*1
エンジニア中途採用で気をつけたいのは4つ目です。派遣や業務委託で開発に加わっていたエンジニアを、仕事ぶりを見たうえで正社員として迎えるという採り方もあります。その場合、雇い入れ日の前日から1年以内に自社の事業所で働いていれば、支給対象者になりません。支給要領は、有期契約から期間の定めのない契約に切り換えた人と、紹介予定派遣(派遣の後に直接雇うことを前提にした派遣)を経て雇い入れた人も、3つ目の要件に当たらないとしています。*2 グループの開発子会社から移ってもらう場合も、5つ目の要件に当たらないかを確かめます。
1つ目の「中途採用」も、言葉の印象より狭い意味で使われています。新規学卒者と、新規学卒者と同じ採用や研修・処遇の枠組みで採った人は、中途採用者に含まれません。*2 卒業して間もない若手エンジニアを新卒と同じ選考と研修の枠で採った場合は、中途採用として数えられるかを先に確かめておきます。
中途採用率の数え方
中途採用率は、一定の期間に雇い入れた人のうち、中途採用者が占める割合です。分母と分子のどちらも、雇用保険の一般被保険者か高年齢被保険者で、期間の定めのない労働者(パートタイムを除く)として雇い入れた人に限って数えます。*2 有期契約で雇った人やパートタイムの人は、中途採用であっても数に入りません。
判定のしかたは2つあります。1つは、計画期間の中途採用率から、計画開始日の前日から過去1年間(計画期間が6か月なら6か月間)の中途採用率を引いた値を5ポイント以上にすることです。もう1つは、計画期間中の中途採用率を50%以上にすることで、こちらは計画期間が1年の場合だけ選べます。*1
図は計算の例です。前の1年に8人を雇い、そのうち中途採用が2人なら、中途採用率は25%です。計画期間の1年に10人を雇い、中途採用が3人なら30%になり、差は5ポイントで条件に届きます。同じ10人のうち中途採用が5人なら50%になり、もう1つの判定でも条件を満たします。新卒の採用人数が増えると、中途採用の人数が変わらなくても割合は下がるため、新卒採用の予定も合わせて見積もります。
数え方には細かな決まりもあります。転勤などで計画の対象の事業所に移ってきた人や、そこから移っていった人は、分母にも分子にも入れません。一方で、計画期間中に採用し、その後に辞めた人は、採用した人数に含めます。また、目標に届きそうにないからといって計画期間を延ばすことも、早く届きそうだからといって縮めることもできません。*3
賃金の上昇の比べ方
賃金の要件は、支給対象者ごとに、直前に勤めていた事業所で支払われた賃金と、雇い入れ後6か月間の賃金支払日ごとの賃金を比べて、いずれも5%以上上がっていることです。*1 6か月のうち1回でも届かない月があれば、その人は要件を満たしません。判定は1人ずつ行うため、前職の賃金が高い一部の人が届かなくても、ほかの人が要件を満たしていれば支給される可能性があります。*3
比べるのは、年収や月給の総額ではなく「毎月決まって支払われる賃金」です。基本給と、役職手当や資格手当のように労働と直接結びついた手当は含めます。時間外手当(固定残業代を含む)、休日手当、報奨金のように月ごとに支払いが変わりうる手当と、家族手当、通勤手当、住宅手当のように個人の事情で支払われる手当は含めません。*2 ただし、全員に一律の定額で支払う家族手当や通勤手当は含めます。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 含める | 基本給、役職手当、資格手当、一定の能力に対して支払う手当 |
| 含めない(月ごとに変わりうる) | 時間外手当(固定残業代を含む)、休日手当、夜勤手当、出張手当、精皆勤手当、報奨金 |
| 含めない(個人の事情による) | 家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当 |
| 例外として含める | 全員に一律の定額で支払う家族手当・通勤手当、住宅の形態ごとに一律の定額で支払う住宅手当 |
エンジニアの募集では、月給に固定残業代を含めて提示することもあります。その場合、提示額の合計が前職より上がっていても、固定残業代を除いた部分で比べると届かないことがあります。内定の条件を決めるときは、基本給と対象になる手当だけで前職と比べておくと、入社後に要件に届いていなかったと分かる事態を避けられます。試用期間中の賃金を低く決めている場合は、試用期間が終わった後の条件による賃金で比べることもできます。
前職の賃金は、本人の同意を得たうえで書類で確かめます。給与明細なら離職前6か月のうち連続する2か月の両方に載っている額、雇用保険被保険者離職票―2なら離職日の直近の完全月の額、雇用保険受給資格者証なら離職時賃金日額に30を掛けた額を使います。*1 同意が得られず、どの書類でも確かめられない場合は、職種ごとの一般的な賃金の統計をもとにした計算式で出した額を、前職の賃金として扱います。
事業主の側の要件
事業主には、雇用保険の適用事業所であること、審査に必要な書類を整えて保管し、労働局の求めや実地調査に応じること、申請期間内に申請すること、支給対象者の賃金を期日までに支払っていることなどが求められます。保管する書類は、日ごとの出勤状況が分かる出勤簿やタイムカード、基本給と手当を分けて記載した賃金台帳、辞めた人の離職年月日や理由が分かる労働者名簿などです。
計画の段階では、中途採用者に適用する雇用管理制度(労働時間・休日、評価・処遇などを定め、従業員全体に周知した規則や規定)を整えます。求められるのは、募集・採用を除いた雇用管理制度が新規学卒者等と同じであることです。就業規則や賃金規程で新卒と中途を分けていない会社でも、計画を出せます。これまで非正規の労働者しか雇ってこなかった事業所も対象になります。
解雇と離職にも要件があります。中途採用計画を出す日の前日から6か月前の日から、支給申請書を出す日までの基準期間に、雇用保険の被保険者を事業主の都合で解雇(退職勧奨を含む)していないこと。同じ期間に、事業主都合の解雇や退職勧奨などで離職して特定受給資格者の手続きをとられた人が、計画を出した日の被保険者数の6%を超えていないこと(3人以下なら、この要件は適用しません)。そして、支給対象者のうち雇い入れ日から6か月以内に辞めた人の割合が20%未満であることです。*1
常時雇用する労働者が300人を超える事業主は、これらに加えて、正規雇用労働者の中途採用比率を計画の提出時点で公表していることが要件になります。公表の義務そのものは「中途採用比率はなぜ半数しか公表されないのか」で扱っています。
つまずきやすい点
一つ目は、計画を出す前から採用が決まっていた人の扱いです。計画期間中に実際に雇い入れていれば支給対象になりますが、支給要件確認書に書く「採用時の評価方法」に基づかない内定は除かれます。選考を急いで先に内定を出す場合も、計画に書く評価の方法と食い違わないようにしておきます。
二つ目は、入社した後に雇用の形を変えることです。期間の定めのない労働者として雇い入れても、雇い入れ日から6か月が経つ前に有期契約へ変えると、支給対象になりません。*3 支給決定日までに、事業主の都合で解雇したり退職を勧めたりすることも認められていません。
三つ目は、計画の立て方です。同じ事業所から期間が重なる複数の中途採用計画は出せず、一度出した計画の期間を変えることもできません。採用の予定が6か月と1年のどちらに収まるかを先に見積もり、どちらの判定で中途採用率の条件を満たすかを決めてから届け出ます。
対象要件を満たすかどうかを最終的に判断するのは管轄の労働局で、本記事の内容は受給を約束するものではありません。支給対象者や賃金の数え方に迷う点があれば、計画を出す前に労働局かハローワークへ相談しておくと進めやすくなります。
まとめ:対象要件で確かめる3つの点
中途採用拡大コースを検討するうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、採用するエンジニアが、直前の1年に派遣や業務委託で自社の事業所で働いていないかなど、支給対象者の5つの要件を満たしているかを確かめること。第二に、新卒を含めた採用の予定から中途採用率を見積もり、5ポイントの上昇と50%以上のどちらで条件を満たすかを決めること。第三に、固定残業代や通勤手当を除いた賃金で、前職より5%以上高い条件を示すことです。この3点を踏まえておけば、「入社してもらった後で、助成金の対象外だったと分かった」という事態を避けやすくなります。採用の計画づくりに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
契約の更新を見込んだ有期契約で雇った人は、支給対象になりますか
支給対象になりません。このコースは、新規学卒者等と同じ雇用管理制度が適用される中途採用者を増やすことを主な目的にしているため、期間の定めのない雇い入れに限っています。更新が見込まれる有期契約でも、対象からは外れます。
以前に中途採用拡大コースを受給した会社でも、もう一度申請できますか
申請できます。2026年4月8日以降に新たに中途採用計画を出す場合は、過去に受給した事業主も対象になります。*3 同じ事業所で期間の重なる計画は出せないため、前の計画の期間と重ならないように組みます。
設立して1年ほどの会社でも、成長要件加算を申請できますか
原則として申請できません。成長要件加算の要件を確かめる期間のすべてにわたって雇用保険の適用事業所がないと、加算に当たるかを判断できないためです。事業承継や合併で新しく適用事業所になった場合は、承継先の既存の事業所で確かめられることがあるため、労働局に相談します。
時給や日給で雇う場合、賃金はどう比べますか
原則として、実際に支払われた賃金で比べます。入社して最初の賃金支払日の労働日数が著しく少ないなど、そのまま比べるのが適切でない場合は、労働日に通常支払われる賃金の額に所定労働日数を掛けた額で比べます。
エンジニアの中途採用を相談したいとき
採用の計画づくりから、候補者探しまでご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:厚生労働省「早期再就職支援等助成金ガイドブック-中途採用拡大コース-」(令和8年4月8日版)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001472339.pdf)。出典:第Ⅱ部 2(支給対象となる労働者)、3(支給対象となる措置・賃金の確認方法)、4(支給対象となる事業主)、5(支給額)、6(受給手続き)、8(よくあるご質問)を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:厚生労働省「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)支給要領(令和8年4月8日改正後)」(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001688411.pdf)。出典:0202 中途採用者、0203 中途採用率、0204 雇用管理制度、0206 毎月決まって支払われる賃金を参照(2026年9月確認)
- *3 参考:厚生労働省「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)FAQ(令和8年4月8日)」(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001688413.pdf)。出典:01-01、01-03、02-02〜02-05、02-07、02-08、03-02〜03-06を参照(2026年9月確認)
- *4 参考:厚生労働省「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160737_00001.html)。出典:おしらせ(令和8年4月8日からの支給要領や支給額の見直し)と助成内容の概要を参照(2026年9月確認)