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2026.08.27 採用支援コラム

中途採用比率はなぜ半数しか公表されないのか




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 301人以上には公表義務がある:各事業年度に1度、正規雇用労働者の採用者数に占める中途採用者数の割合を公表します*1。
  • 義務があっても公表率は48.0%:301人以上の企業の公表率は48.0%で、規模が小さいほど低くなります*2。
  • 数え方に細かい線引きがある:再雇用や転籍は含めず、非正規からの転換や試用期間中の者は含めます*1。

※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。

自社の中途採用比率を答えられるでしょうか。常時雇用する労働者が301人以上の企業には、この数値を公表する義務があります。制度が始まったのは2021年4月で、すでに数年が経っています。

それでも定着したとは言いがたい状況です。厚生労働省の委託調査によれば、法定の義務がある301人以上の企業の公表率は48.0%にとどまります*2。義務の対象でありながら、半数以上が公表していないという結果です。

本記事では、この制度の中身を実務の目線で整理します。何が「中途採用」に当たるのか、誰を分母にするのか、どう公表すればよいのか。あわせて、300人以下の会社にとっての使い道も扱います。募集要項の書き方はエンジニア求人票の書き方と必須14項目、出したあとの管理は求人情報の的確な表示、企業に課される義務で扱っています。なお個別の該当性の判断は解釈を伴うため、社内の運用に落とす段階では社会保険労務士等への確認を経てください。

開いたノートに万年筆と眼鏡が置かれている様子

義務の中身は3つの要素でできている

まず制度の骨格です。対象・内容・方法の3つに分かれます。

労働施策総合推進法に基づく中途採用比率の公表義務について、対象が常時雇用する労働者301人以上の企業、内容が正規雇用労働者の採用者数に占める中途採用者数の割合、方法がおおむね1年に1回以上・直近3事業年度・公表日も明らかにすることであること、公表率が全回答企業32.2%・301人以上48.0%・301〜500人37.4%・501〜999人44.1%・1,000人以上58.6%であること、および中途採用に入るもの(新規学卒等採用者以外・非正規からの転換・試用期間中・退職済み)と入らないもの(継続雇用の再雇用・転籍出向・内定者)を整理した図

厚生労働省の解釈事項によれば、常時雇用する労働者が301人以上の企業においては、各事業年度に1度「正規雇用労働者の採用者数に占める正規雇用労働者の中途採用者数の割合」を公表することが義務付けられるとされています*1。

制度の目的も示されています。労働者の主体的なキャリア形成による職業生活のさらなる充実や再チャレンジが可能となるよう、中途採用に関する環境整備を推進することを目的としているとのことです*1。応募者の側から見れば、中途で入った人がどれだけいる会社かを事前に知る手がかりになります。

公表の方法については、おおむね1年に1回以上、公表した日を明らかにして、直近の3事業年度について、インターネットの利用その他の方法により、求職者が容易に閲覧できるように行わなければならないと示されています*1。

この一文には要件が4つ入っています。頻度(おおむね1年に1回以上)、公表日の明示、対象期間(直近3事業年度)、閲覧のしやすさです。数値だけを1行載せて終わりという形では、公表日と対象年度が読み取れません。

なお罰則については、中途採用比率公表の義務違反に対する罰則規定は設けられていないとされています*1。ただし公表しない状態は、求職者から見れば情報が無いという事実として残ります。

公表率48.0%が意味すること

実態を見ます。厚生労働省の委託による調査研究の報告書(2025年3月)に、公表状況の集計があります。

それによれば、中途採用比率を公表している企業の割合は全回答者では32.2%です*2。そして法定の義務がある常時雇用する労働者301人以上の企業の公表率をみると全体では48.0%であり、従業員規模が大きくなるほど公表率は高まるとされています*2。

表1:規模別の公表率(301人以上)
規模 公表している 回答数
301人以上 全体 48.0% 1,349
301〜500人 37.4% 417
501〜999人 44.1% 376
1,000人以上 58.6% 556

読み取れることが2つあります。第一に、義務の境界に近い301〜500人の層で公表率が最も低いという点です*2。人事の体制が薄い規模ほど、対応が後回しになっている構図と読めます。

第二に、1,000人以上でも58.6%という点です*2。体制が整っているはずの規模でも4割は公表していません。制度の認知そのものが十分に行き渡っていない可能性があります。

もうひとつ付け加えると、この48.0%は「情報を公開している」という自己申告の回答です*2。公表しているという回答の中に、要件を満たしていない形が含まれている可能性は残ります。要件を満たした公表に絞れば、割合はさらに下がると考えるほうが自然でしょう。

したがって自社が301人以上なら、まず確認すべきは「公表しているか」ではなく「公表しているつもりの内容が要件を満たしているか」になります。公表日が書かれていない、直近3事業年度ではなく単年だけになっている、更新が数年前で止まっている。この3つは実際に起こりやすい形です。採用ページの片隅に数値だけを置いた状態は、要件のうち公表日の明示と対象期間を落としています。

「中途採用」に入るもの、入らないもの

次が実務の本題です。数え方を間違えると、公表した数値そのものが誤りになります。

定義から確認します。「中途採用」とは、「新規学卒等採用者以外」の雇入れを指すとされています*1。そして「新規学卒等採用者」とは、新たに学校・専修学校を卒業した者、職業能力開発促進施設や職業能力開発総合大学校の行う職業訓練を修了した者又はこれに準ずる者であることを条件とした求人により雇い入れられた者を指します*1。

ここで注意が要るのが「これに準ずる者」です。解釈事項では、既卒者であって、新規学卒者と同じ採用枠で採用した者等、新規学卒者と同等の処遇を行う者を指すとされています*1。既卒だから中途採用、とは限りません。採用枠と処遇で判断されます。

表2:判断に迷う場面の扱い
場面 扱い
継続雇用制度における「再雇用」 労働者の募集に対する採用とは異なる性質のものとして、中途採用として取り扱わない
非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換 転換した事業年度における中途採用として取り扱う
グループ会社等からの転籍・出向 転籍先・出向先の事業主における中途採用として取り扱わない
年度末時点の内定者 雇用が開始されていた者のみを計算に含め、内定者は含めない
年度末時点で試用期間中の者 正規雇用労働者として雇用が開始されていれば計算に含める
公表時点ですでに退職している者 年度内に採用し勤務を開始していれば計算に含める
副業・兼業をしている者 それぞれの事業主で正規雇用労働者として中途採用されていれば、各事業主の計算に含める

実務で最も影響が大きいのは2行目でしょう。契約社員から正社員に転換した人は、転換した年度の中途採用として数えます*1。有期から無期への転換を継続的に行っている会社では、この扱いを知らないと数値が実態より小さく出ます。

4行目と5行目の対比も押さえておきたいところです。内定だけでは数えず、雇用が始まっていれば試用期間中でも数える。基準は雇用開始の有無であって、本採用かどうかではありません。

分母は「正規雇用労働者」で、定義がある

比率である以上、分母の定義も決まっています。ここも自己流で判断すると数値が動きます。

解釈事項によれば、「正規雇用労働者の中途採用比率」とは、各事業年度に雇い入れた正規雇用労働者数に占める中途採用された正規雇用労働者数の割合を指します*1。そして「正規雇用労働者」とは、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第2条における「通常の労働者」を指すとされています*1。

「通常の労働者」の判断基準も示されています。基本的には「いわゆる正規型の労働者」を指し、社会通念に従い、当該労働者の雇用形態、賃金体系等(例えば、労働契約の期間の定めがなく、長期雇用を前提とした待遇を受けるものであるか、賃金の主たる部分の支給形態、賞与、退職金、定期的な昇給又は昇格の有無)を総合的に勘案して判断するとされています*1。

この基準は、いわゆる限定正社員や短時間正社員の扱いを考えるときに効きます。期間の定めがなく、賞与や昇給の扱いが通常の社員と同等なら、勤務時間が短くても正規雇用労働者に当たる可能性があります。短時間正社員の定義そのものは時短勤務での採用、フルタイム前提との違いで扱いました。判断に迷う雇用形態があるなら、社会保険労務士等に確認してください。

計算の単位についても指定があります。直近3事業年度を一括して計算するのではなく、事業年度毎に計算するとされています*1。3年分をまとめて1つの比率にする形は要件を満たしません。

端数の処理も決まっています。小数点以下第1位を四捨五入した整数値での公表とするが、事業主の判断で小数点以下の値まで公表することは差し支えないとのことです*1。解釈事項には、正規雇用労働者の新規採用者が46人でそのうち中途採用者が16名の場合、16÷46=34.782…%となり約35%を公表値とする、という例が示されています*1。

公表の方法と、やり直しが必要になる場面

数値が出たら公表です。方法にも指定があります。

「インターネットの利用その他の方法」の中身については、「その他の方法」は事業所への掲示や書類の備え付け等による方法「インターネット」は原則として自社のホームページの利用等を指し、厚生労働省がインターネット上に開設する「職場情報総合サイト『しょくばらぼ』」の利用も含まれるとされています*1。

グループ企業の扱いも示されています。グループ企業であっても、各社個別に募集採用を行っている場合においては、中途採用比率についても個社において公表するのが原則で、グループ全体で一括して採用を実施しており各社ごとの計算が困難である場合に限り、グループ全体の比率で代替して差し支えないとされています*1。

期間の考え方にも注意が要ります。「直近の3事業年度」とは、公表時点において、事業年度における正規雇用労働者の採用活動が終了し、正規雇用による中途採用者の状況を「見える化」することができる状態となった最新の事業年度を含めた3事業年度を指します*1。進行中の年度は含めません。

採用がなかった年の扱いも決まっています。採用自体を行っていない年については、その旨を記載することとされています*1。空欄にするのではなく、行っていないと書きます。

誤りが見つかった場合は、修正した日及び修正した旨を明らかにして、修正した中途採用比率を速やかに公表するとされています*1。差し替えて終わりではなく、修正したことを残す形です。この点は、求人情報を正確・最新に保つ措置の考え方とも共通します。

300人以下の会社にとっての使い道

ここまでは義務の話でした。対象外の会社にとっても、この制度には使い道があります。

公表された数値は、誰でも見られる情報だという点です。採用したい人材が過去に在籍していた会社、あるいは競合として同じ層を狙っている会社が301人以上なら、その会社の中途採用比率を自社サイトや「しょくばらぼ」で確認できます*1。

読み取れることは限られますが、無意味ではありません。

  • 比率が高い会社は、中途で入った人が多い環境である可能性がある。候補者が「中途は馴染めるか」を気にしている場面で、比較の材料になります
  • 3事業年度分が並ぶため、増減の方向が見える。単年の数値より、動きのほうが情報量があります
  • 公表していない会社も分かる。義務の対象規模なのに情報が無いという事実自体が、ひとつの読み方になります

注意も置きます。比率が高いことが良い、低いことが悪いという指標ではありません。新卒採用を主軸に据えている会社は当然に低くなります。制度の目的は中途採用に関する環境整備の推進であって*1、企業の優劣を示すものではありません。

自社が301人未満でも、任意で公表することは妨げられません。中途採用を強化したい局面では、実績を数値で示す材料になります。求人票に書ける材料が増えるという意味で、採用広報の一部として検討する価値があるでしょう。

着手の順序——集計は3年分をまとめて作る

対象企業が最初にやることを並べます。作業自体は重くありません。

  • ① 自社が対象かを確認する。常時雇用する労働者が301人以上か。在籍出向者の扱いなど、判断に迷う場合は解釈事項を確認します
  • ② 対象年度を決める。採用活動が終了し状況を見える化できる最新の年度を含む3事業年度を選びます
  • ③ 年度ごとに分子と分母を数える。表2の線引きに沿って、転換・試用期間中・退職済みの扱いを確認しながら集計します
  • ④ 四捨五入して整数にする。小数点以下まで出す場合はその旨がわかる形にします
  • ⑤ 公表日とあわせて掲載する。自社サイトの採用ページか、しょくばらぼを使います
  • ⑥ 次回の公表時期を決めておく。前回の公表からおおむね1年以内に、速やかに公表を行うこととされています*1

③が最も時間を使います。採用管理の記録に「新卒枠か中途枠か」の欄が無い会社では、1件ずつ確認する作業になります。次年度以降の負担を減らすなら、この機会に記録の様式へ欄を足しておくのが実際的でしょう。記録の設計は採用KPIに置く5つの指標と分母の決め方で扱いました。

⑥を決めておかないと、翌年に忘れます。義務は毎年続くため、年次の作業として担当と時期を固定しておくほうが確実です。1人で採用を回している体制での作業の抱え方は採用担当が1人の会社は、何から捨てるかで整理しました。

なお、集計や掲載の作業に手が回らない局面では外部の力を借りる選択もあります。ただし何を中途採用として数えるかの判断は、自社の雇用形態の実態に照らして決めることになります。順序としては①〜③の線引きを自社で確認してから進めるのが無理のない形です。

まとめ:中途採用比率の公表で押さえる3つの視点

第一に、義務の中身は対象・内容・方法の3つでできているという点です。常時雇用する労働者が301人以上の企業は、各事業年度に1度、正規雇用労働者の採用者数に占める正規雇用労働者の中途採用者数の割合を公表することが義務付けられています。方法については、おおむね1年に1回以上、公表した日を明らかにして、直近の3事業年度について、インターネットの利用その他の方法により、求職者が容易に閲覧できるように行わなければならないとされています。罰則規定は設けられていませんが、公表していない状態は求職者から見れば情報が無いという事実として残ります。第二に、義務があっても公表率は48.0%にとどまるという点です。厚生労働省の委託調査(2025年3月)では、全回答企業の公表率が32.2%、301人以上では48.0%で、301〜500人37.4%、501〜999人44.1%、1,000人以上58.6%と、規模が小さいほど低くなっています。第三に、数え方に細かい線引きがあるという点です。中途採用とは新規学卒等採用者以外の雇入れを指し、既卒者でも新規学卒者と同じ採用枠で同等の処遇を行う者は新卒側に入ります。継続雇用制度の再雇用や、グループ会社等からの転籍・出向は含めません。一方で非正規から正規雇用労働者への転換は転換した年度の中途採用として数え、年度末時点で試用期間中の者や公表時点で退職済みの者も含めます。分母の正規雇用労働者はパートタイム・有期雇用労働法第2条の通常の労働者を指し、計算は事業年度毎に行い、小数点以下第1位を四捨五入します。自社が対象かの確認から始め、記録の様式に新卒枠か中途枠かの欄を足しておいてください。

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よくある質問

自社は何人から公表義務の対象になりますか。

常時雇用する労働者が301人以上の企業が対象です。各事業年度に1度、正規雇用労働者の採用者数に占める正規雇用労働者の中途採用者数の割合を公表することが義務付けられています。在籍出向者をどちらの労働者として数えるかなど、判断に迷う場面については厚生労働省が解釈事項を公開しています。自社の雇用形態に照らした個別の判断は、社会保険労務士等に確認してください。

契約社員から正社員に転換した人は、中途採用に数えますか。

数えます。厚生労働省の解釈事項では、契約社員として契約後に正規雇用労働者に転換した場合などは、正規雇用労働者に転換した事業年度における中途採用として取り扱うとされています。一方で、高年齢者雇用安定法上の継続雇用制度におけるいわゆる「再雇用」は、労働者の募集に対する採用とは異なる性質のものとして中途採用には含めません。グループ会社等からの転籍や出向も、転籍先・出向先の中途採用としては取り扱いません。

年度末の時点で試用期間中の人はどう扱いますか。

正規雇用労働者として雇用が開始されていれば、試用期間中の者も計算に含めます。判断の基準は雇用が始まっているかどうかで、本採用かどうかではありません。同じ理由で、内定は出ているが年度末時点で雇用が開始されていない者は含めません。逆に、年度内に採用して勤務を開始していれば、公表時点ですでに退職していても計算に含めます。

公表はどこに載せればよいですか。

原則として自社のホームページの利用等が想定されており、厚生労働省が開設する職場情報総合サイト「しょくばらぼ」の利用も含まれます。インターネット以外では、事業所への掲示や書類の備え付け等による方法も認められています。いずれの場合も、おおむね1年に1回以上、公表した日を明らかにして、直近の3事業年度について、求職者が容易に閲覧できるように行う必要があります。

公表しなかった場合、罰則はありますか。

中途採用比率公表の義務違反に対する罰則規定は設けられていません。ただし、法定の義務がある301人以上の企業の公表率は48.0%という調査結果があり、規模が小さいほど低くなっています。罰則の有無とは別に、公表されている情報は求職者が見る材料になります。義務の対象規模でありながら情報が無いという状態自体が、応募を検討する側にとってはひとつの読み方になります。

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出典

  1. *1 参考:厚生労働省「中途採用比率の公表における解釈事項等について」(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000737271.pdf)。制度の趣旨・目的、対象企業(常時雇用する労働者301人以上)と義務の内容、「中途採用」および「正規雇用労働者」の定義、再雇用・転換・転籍出向・内定者・試用期間中・退職済み・副業兼業の取扱い、公表の方法と頻度、直近3事業年度の考え方、端数処理、採用がない年の記載、誤りの訂正、罰則規定の有無の一次情報として(2026年8月確認)
  2. *2 参考:厚生労働省「中途採用・経験者採用者が活躍する企業における情報公表その他取組に関する調査研究 結果報告書」(2025年3月)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001489721.pdf)。中途採用比率の公表率(全回答企業32.2%、常時雇用する労働者301人以上48.0%、301〜500人37.4%、501〜999人44.1%、1,000人以上58.6%)の一次情報として(2026年8月確認)
  3. *3 参考:厚生労働省「正規雇用労働者の中途採用比率の公表」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/tp120903-1_00001.html)。制度の概要と関連資料の所在の確認として(2026年8月確認)




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