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エンジニア中途採用の助成金、採用の前に確かめる4つのこと
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- エンジニア中途採用の助成金は、採用の人数を増やす、紹介を経て雇う、入社後に育てるの3つの場面で制度が分かれます。
- 中途採用拡大コースも人材開発支援助成金も、採用や訓練より先に計画を労働局へ届け出る必要があります。
- 労働保険料の未納や、1年以内に労働関係法令の違反で送検(検察への送致)された事実があると、雇用関係の助成金は受けられません。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
エンジニアの中途採用に助成金が使えると聞いた。けれど厚生労働省のページを開くと制度名がいくつも並び、自社に関係するものがどれか分からない——。エンジニア中途採用を進める開発部門では、こうした戸惑いが起こりがちです。雇用関係の助成金とは、事業主が負担する雇用保険料を財源に、雇用の安定や従業員の能力開発に取り組む事業主へ国が支給するお金です。*1
中途採用に関係する助成金は、採用の人数を増やすとき、紹介を経て雇い入れるとき、入社後に育てるときの3つの場面に分けると整理しやすくなります。ただし助成金は万能ではなく、多くの制度は採用や訓練を始める前に計画を届け出ていなければ対象になりません。本記事では、エンジニアを中途採用する開発部門の責任者に向けて、場面ごとの制度、どの制度にも共通する要件、そして申請の前に済ませておきたい段取りを整理します。
目次
エンジニア中途採用に関係する助成金とは
厚生労働省の「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」(令和8年4月8日時点)は、助成の対象になる取り組みごとに制度を並べています。エンジニアの中途採用に近いのは「中途採用する」「新たに労働者を雇い入れる」「労働者の職業能力の向上を図る」の3項目で、それぞれに次の制度が載っています。制度の多くは職種を限っていないため、エンジニアの採用にも当てはめて考えられます。
| 場面 | 制度の例 | 何に対して支給されるか |
|---|---|---|
| 採用の人数を増やす | 早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース) | 中途採用を増やし、雇い入れた人の賃金を雇い入れ前より5%以上上げること |
| 紹介を経て雇い入れる | トライアル雇用助成金、特定求職者雇用開発助成金 | ハローワークや民間の職業紹介事業者などの紹介で、対象になる求職者を雇い入れること |
| 入社後に育てる | 人材開発支援助成金(人への投資促進コースなど) | 計画に沿って行う訓練の経費と、訓練中の賃金 |
同じ1人の採用でも、どの場面に当たるかで検討する制度が変わります。たとえば、自社の採用ページから直接応募してきたエンジニアを雇う場合、紹介を条件にしている制度は使えません。一方で中途採用拡大コースは、ハローワークの紹介を経ない雇い入れも対象にしています。まず自社の採用がどの場面に当たるかを確かめると、調べる制度を絞り込めます。
採用を増やすときの中途採用拡大コース
早期再就職支援等助成金の中途採用拡大コースは、中途採用者の雇用管理制度を整えたうえで中途採用を増やし、雇い入れた人の賃金を雇い入れ前より5%以上上げた事業主に支給されます。雇用管理制度とは、労働時間や休日、評価・処遇、福利厚生などを定めた規則や規定のことです。支給額は1人20万円で、1年度1事業所あたり20人までです。生産指標などで一定の成長性が認められる事業所には、1人10万円が加算されます。*2
手続きは、採用より先に計画を出すところから始まります。採用予定の職種と人数、6か月または1年の計画期間を書いた中途採用計画を、計画の開始日の前日までの6か月の間に、管轄の労働局へ届け出ます。計画期間中は、中途採用率(期間中に雇い入れた人に占める中途採用者の割合)を前年同期より5ポイント以上(たとえば20%から25%へ)上げることが求められます。計画期間が1年なら、期間中の中途採用率が50%以上であれば、5ポイントの上昇がなくても条件を満たします。*2
賃金の5%以上の上昇は、雇い入れ前の事業所で支払われていた賃金と、雇い入れ後6か月間の各支払日の賃金を比べて判定されます。内定を出す段階で、提示する給与が前職の給与を5%以上上回っているかを確かめておくと、あとから条件に届いていなかったと分かることを防げます。前職の賃金は給与明細や雇用保険の離職票などで確かめるため、本人の同意を得て書類を出してもらいます。
紹介を経て雇い入れるときの制度
トライアル雇用助成金と特定求職者雇用開発助成金は、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介で雇い入れることが条件です。トライアル雇用助成金の一般トライアルコースは、職業経験や技能の不足などで安定した就職が難しい求職者を一定期間試しに雇う事業主に、1人あたり月4万円を上限に、最長3か月支給します。対象になるのは、2年以内に2回以上離職や転職をしている人、離職期間が1年を超えている人などです。*1
特定求職者雇用開発助成金には、就職が特に難しい人を雇い入れる事業主に向けた複数のコースがあります。そのうち中高年層安定雇用支援コースは、35歳以上60歳未満で正規雇用の経験が短い人などを正規雇用労働者として雇い入れた場合に、1人60万円(中小企業以外は50万円)を支給します。*1 対象になる人の条件はコースごとに細かく決まっており、「トライアル雇用で見落としやすい3つの前提」と「中高年層安定雇用支援コースとは」で扱っています。
どちらの制度も、求人をハローワークや職業紹介事業者に出し、紹介を受けた人を雇い入れる順番が前提です。自社の採用ページやスカウトだけで採用を進めている場合は、紹介を受ける経路をあらかじめ用意しておく必要があります。
入社後の育成に使う人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、雇用する労働者に職務に関連した専門的な知識や技能を身に付けさせる訓練を計画に沿って行った場合に、訓練経費や訓練中の賃金の一部を助成する制度です。中途採用したエンジニアの入社後の研修に関係が深いのは、人への投資促進コースです。このコースは、令和4年度から8年度(2026年度)までに限って設けられています。
人への投資促進コースのうち高度デジタル人材訓練は、ITSS(ITスキル標準)やDSS-P(DX推進スキル標準)のレベル3・4に当たる訓練などが対象です。経費の助成率は中小企業75%・大企業60%、賃金の助成は1人1時間あたり中小企業1,000円・大企業500円です。*4 IT分野が未経験の人を採用して育てる場合には、社外の講座と職場での実習を組み合わせ、厚生労働大臣の認定を受けて行う訓練(情報技術分野認定実習併用職業訓練)も用意されています。
どのメニューでも、訓練開始日の6か月前から1か月前までに職業訓練実施計画届を労働局かハローワークへ出し、支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内に行います。*4 入社直後の研修に使うなら、研修の開始日から逆算して1か月以上前に計画を出す必要があります。採用と育成を並べて比べる考え方は「DX人材は採用か育成か、助成金を含めて比較する」で扱っています。
どの制度にも共通する要件
雇用関係の助成金には、厚生労働省が定めた、すべての制度に共通する支給のルール(共通要領)があります。支給の対象は、支給申請日と支給決定日の時点で雇用保険の被保険者がいる事業所の事業主です。審査に必要な書類を整えて保管し、労働局の求めに応じた書類の提出や実地調査に協力することも求められます。各制度の要件を満たしていても、共通の要件を欠けば受給できません。
共通要領は、支給しない場合も定めています。たとえば、申請する年度の前々年度以前の労働保険料を納めていない事業主(申請日の翌日から2か月以内に納めれば、この扱いにはなりません)、申請日の前日から1年前の日までの間に労働関係法令の違反で送検された事業主、不正受給による不支給措置を受けている事業主です。*3 不正受給では、不支給決定日などから5年を経過するまで、すべての雇用関係助成金を受けられません。*1
助成額や助成率が中小企業かどうかで変わる制度も多くあります。中小企業に当たるかは、資本金の額か常時雇用する労働者の数で判定し、どの業種の基準を使うかは主たる事業で決まります。情報サービス業はサービス業に区分され、資本金5,000万円以下または常時雇用する労働者100人以下なら中小企業です。また、同じ取り組みや同じ経費・賃金について、2つ以上の助成金を同時に受けることはできません。*3
申請の前の段取り
中途採用拡大コースと人材開発支援助成金について、計画の届出から支給申請までの期間を並べると、下の図のようになります。どちらも、開始日より前に届出の期限が来ます。人材開発支援助成金は、開始日の1か月前で届出が締め切られる点に注意が要ります。
ここまでの内容を、申請の前に確かめることとして4つにまとめると、下の表のようになります。採用の予定が固まる前に一度目を通しておくと、届出の期限を見落とさずに済みます。
| 確かめること | 内容 | 確かめる資料・窓口 |
|---|---|---|
| 1. 計画届の期限 | 中途採用拡大コースは計画開始日の前日までの6か月間、人材開発支援助成金は訓練開始日の6か月前から1か月前まで | 各制度のガイドブックとパンフレット |
| 2. 求人の出し方 | 紹介を条件とする制度を使うなら、ハローワークや職業紹介事業者に求人を出しておく | ハローワーク |
| 3. 自社の区分と納付の状況 | 中小企業に当たるか、労働保険料の未納がないか | 共通要領 |
| 4. 申請の方法と書類 | 電子申請にはGビズIDが要る。提出した書類は支給決定日の翌日から5年間保存する | 雇用関係助成金ポータル、共通要領 |
電子申請は雇用関係助成金ポータルから行い、GビズID(行政の電子申請で使う法人向けのアカウント)を取得しておく必要があります。*5 賃金台帳や雇用契約書など、要件を確かめるための書類も求められます。採用の時点から、誰がどこに書類を保管するかを決めておくと、申請の直前に書類を探し回らずに済みます。
そのうえで、要件に当たるかどうかを判断するのは管轄の労働局です。計画を出す前に労働局かハローワークへ相談し、自社の採用予定が対象になりうるかを確かめておくと進めやすくなります。
つまずきやすい点
一つ目は、採用が決まってから助成金を調べ始めることです。中途採用拡大コースも人材開発支援助成金も、計画を先に届け出る仕組みなので、内定を出した後では届出の期限に間に合わないことがあります。採用計画を立てる段階で、使う可能性のある制度の期限を並べておきます。
二つ目は、前の年度の情報をそのまま使うことです。たとえば特定求職者雇用開発助成金の成長分野等人材確保・育成コースは、情報処理・通信技術者の業務に就く人の雇い入れなどに他のコースより高い額を支給していましたが、令和7年度限りで廃止されました。*6 支給額や要件も年度の途中で改正されることがあるため、申請する時点の支給要領とパンフレットで確かめます。
三つ目は、申請を外部の業者に任せきりにすることです。従業員や社会保険労務士が不正な行為をした場合も、事業主の不正受給に当たります。*1 同省の委託事業者を名乗り、受給額の無料査定などを勧める書面が送られている件について、厚生労働省はこの勧誘に関与していないとして注意を呼びかけています。 頼む場合も、申請の中身は自社で確かめます。
まとめ:助成金の申請で確かめておきたい3つの点
エンジニア中途採用で助成金を検討するうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、自社の採用が、採用の人数を増やす、紹介を経て雇い入れる、入社後に育てる、のどの場面に当たるかを決めること。第二に、計画届の期限を採用や研修の日程から逆算し、先に労働局へ届け出ること。第三に、労働保険料の納付や書類の保管といった共通の要件を、申請の前に整えておくことです。この3点を踏まえておけば、「内定を出した後で調べたら、計画の届出が間に合わなかった」という事態を避けやすくなります。採用の計画づくりに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
業務委託で開発に加わるエンジニアも、助成金の対象になりますか
中途採用拡大コースの支給対象者は、雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として、期間の定めのない労働者として雇い入れた人です。業務委託契約で開発に加わる人は雇い入れた人に当たらないため、この条件を満たしません。
設立して間もない会社でも、中途採用拡大コースを使えますか
中途採用計画を出すには、計画期間の初日の前日から起算して1年前の日に雇用保険の適用事業所であり、その日に被保険者がいる必要があります。*2 設立からの期間が短い場合は、まずこの日付を確かめます。
従業員が300人を超える会社には、追加の手続きがありますか
中途採用拡大コースでは、常時雇用する労働者が300人を超える事業主は、中途採用計画を届け出るときに、中途採用の割合を公表する義務を果たしていることが分かる書類(自社ホームページの写しなど)を付けます。*2
社会保険労務士に申請を頼むとき、会社側で準備することはありますか
電子申請を代理人に頼む場合も、事業主がGビズIDを取得しておく必要があります。提出した書類は事業主が保存しておく義務を負うため、社会保険労務士から写しを受け取っておきます。
エンジニアの中途採用を相談したいとき
採用の計画づくりから、候補者探しまでご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
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出典
- *1 参考:厚生労働省「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」(令和8年4月8日版)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000758206.pdf)。出典:受給対象となる事業主・不支給要件(P.1〜2)、「雇用関係助成金」検索表(P.3〜6)、雇用関係助成金の概要(トライアル雇用助成金・特定求職者雇用開発助成金)を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:厚生労働省「早期再就職支援等助成金ガイドブック-中途採用拡大コース-」(令和8年4月8日版)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001472339.pdf)。出典:第Ⅱ部 1〜6(支給対象となる労働者・措置・支給額・受給手続き)と8(よくあるご質問)を参照(2026年9月確認)
- *3 参考:厚生労働省「雇用関係助成金 共通要領」(令和8年4月8日現在)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001688318.pdf)。出典:0202 中小企業事業主、0205 不正受給、0301 支給対象事業主等、0302 不支給要件、0304 併給調整、0404 申請書類等の保存を参照(2026年9月確認)
- *4 参考:厚生労働省「人材開発支援助成金 人への投資促進コースのご案内(詳細版)」(令和8年8月3日版)(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731974.pdf)。出典:表紙(令和4〜8年度に限った助成であること)、人材開発支援助成金とは、助成率・助成額、助成金支給の流れを参照(2026年9月確認)
- *5 参考:厚生労働省「雇用関係助成金の電子申請」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00060.html)。出典:助成金ポータルによる電子申請とGビズIDの取得を参照(2026年9月確認)
- *6 参考:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_seichou_00008.html)。出典:重要なお知らせ(令和7年度限りで廃止)と助成内容の概要を参照(2026年9月確認)
- *7 参考:厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html)。出典:助成金に関する勧誘への注意喚起を参照(2026年9月確認)