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エンジニア人材紹介からダイレクトリクルーティングへ乗り換える手順
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- エンジニア人材紹介から乗り換えると、紹介会社が担っていた情報の解釈と、求職者が聞きにくい情報の伝達が自社に戻ります。
- 厚生労働省の委託事業のヒアリングでは、紹介会社を主に使いながらスカウトを足す企業が多く、求人ごとに切り替えを決めた例もありました。
- スカウトの文面には声をかけた理由と配属先の業務やリモートワークの実際を書き、承諾後の面談に出る現場の人を先に決めておきます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
エンジニア人材紹介に頼んでいるのに、紹介がなかなか来ない。自分たちで候補者に声をかけるダイレクトリクルーティングに乗り換えたいが、何を準備すればよいのか分からない——。エンジニアの採用を任された担当者からは、こうした声が聞かれます。エンジニア人材紹介からダイレクトリクルーティングへの乗り換えとは、候補者を探して引き合わせてもらう形から、自社がサービスの登録者を探して直接声をかける形に、採用の経路を移すことを指します。
乗り換えで変わるのは、候補者を探す作業だけではありません。紹介会社が受け持っていた情報のやり取りも、自社に戻ってきます。本記事では、厚生労働省の委託事業の報告書をもとに、紹介会社が担っていた役割、企業の経路の内訳、併用の決め方、段階ごとに出す情報、スカウトの文面、カジュアル面談の負担を整理します。
目次
乗り換えで変わること
ダイレクトリクルーティングは、企業が自分から候補者を探して声をかける採用の方法です。ここで取り上げる報告書は、その代表であるスカウトのサービスを、プラットフォームに登録した求職者に対し、求人企業側から連絡し、応募を推奨するサービスと説明しています。*1 エンジニア人材紹介では、紹介会社が求人に合いそうな人を探して引き合わせますが、ダイレクトリクルーティングでは、誰に声をかけるかを自社が決めます。
報告書は、厚生労働省の令和5年度の委託事業として三菱総合研究所がまとめたもので、2024年3月付です。中途採用を一定数行っている企業15社、民間人材サービス事業者10社、おおむね1年以内に転職した10名へのヒアリングをもとに、採用の場面で職場の情報がどうやり取りされているかを整理しています。*1 統計ではなく担当者が話した内容の記録なので、後で出てくる経路の比率も、各社がヒアリングの時点で述べた数字です。
報告書からは、紹介会社が企業の情報を求職者に伝える役目も負っていることが分かります。乗り換えの準備は、その役目を自社の誰がどの場面で引き取るかを決めるところから始まります。経路そのものの位置づけはダイレクトリクルーティングの役割で扱っているので、本記事では乗り換えの手順に絞ります。
紹介会社が担っていた2つの役割
報告書は、職業紹介事業者、つまり紹介会社が職場の情報を伝えるうえで担っている役割を2つ挙げています。第1は、企業が示している情報を、求職者に分かりやすい形で解釈して伝える役割です。同業の会社と比べてどうかも含めて情報を整理し、時間の限られた求職者に向けて縮めて届けることを、非常に重要な役割としています。第2は、年収や残業時間のように求職者が直接は聞きづらい情報について、企業と求職者のあいだに立って確かめる役割です。*1
ヒアリング結果のまとめにも、同じ様子が書かれています。求職者が企業へ直接質問して選考で不利にならないよう、手取り賃金や残業時間などはエージェント経由で確かめる事項があるとされ、多くの求職者がエージェントを複数使い、自分の経験やスキルから見た処遇の相場や選択肢の助言を受けた場合に高く評価していたといいます。*1
エンジニア人材紹介からダイレクトリクルーティングに乗り換えると、この2つは自社が引き取ることになります。第1の解釈の役割は、スカウトの文面と求人票で、自社の情報を相手に合わせて伝えることで受け持ちます。第2の聞きにくい情報は、聞かれるのを待たずに自社から出します。ほかの会社と比べた相場の助言は採用する側には代われないので、比べるための材料を自社の側でそろえておきます。
ヒアリング企業の経路の内訳
報告書の各社の記録から、ダイレクトリクルーティングやスカウトの扱いに触れた企業を、報告書の業種の分類とともに表にまとめました。
| 業種(報告書の分類) | 経路の内訳 | ダイレクトリクルーティング・スカウトの扱い |
|---|---|---|
| 情報通信業 | エージェント経由以外は、自社サイト経由の直接採用、スカウト型、リファラル採用の3つ | 3つの比率は4:2:4程度で、スカウトが若干少ない |
| 空調・冷凍機事業、化学事業等 | エージェントが採用数の6~7割、リファラルが全体で1割程度 | 近年強化しており、全社で2割程度まで増やしてきている |
| 製造業(精密機器) | エージェント経由が全体の8割 | ダイレクトリクルーティングまたはスカウトと、リファラルが、それぞれ1割ずつ程度 |
| 製造業 | スカウト型が4割程度、紹介会社経由が3割程度、そのほかの経路をあわせて3割程度 | 数年前までは紹介会社経由が6割程度を占めた時期もあったが、方針を変えて比率を増やした |
| 建設業 | 人材紹介事業者からの紹介が最も多い | 試行的に実施。潜在層まで母集団が広がる一方で、非常に工数がかかり非効率とも感じている |
| 化学製品製造業 | 人材紹介事業者経由が約8割 | スカウトツール又は求人サイトからの採用が約1割 |
紹介会社を主な経路にしたまま、ダイレクトリクルーティングを足している企業が多くを占めます。スカウト型を最も大きな経路にした製造業の企業は、転職潜在層の優秀な人に自分たちから近づきたいこと、候補者と直接やり取りして会社をよく知ってもらいたいことを理由に挙げています。*1
反対に、建設業の企業は、紹介会社を通じて採用できるのであれば、引き続き紹介会社経由の採用を中心にしたいと話しています。乗り換えといっても、全部を移すか、一部の求人だけを移すかは企業によって分かれるということです。
全部切り替えるか、併用にするか
併用を選んだ企業の中には、切り替える条件を求人ごとに決めている例があります。化学製品製造業の企業は、3、4か月など長期間求人を掲載しても紹介に至らない場合にスカウトを使うと話しています。精密機器の企業も、人材の要件が難しく、紹介までに時間がかかっているのが実情だとしています。*1
こうした例にならうと、乗り換えは求人ごとに決めるほうが進めやすくなります。求める経験がはっきりしていて当てはまる人が少ない求人や、紹介が一定の期間止まっている求人から移し、期間の目安は自社の採用の予定から決めます。経験の幅を広く取れる求人は紹介会社に残しておけば、採用が止まりにくくなります。
併用するときも、やめるときも、紹介会社との契約は先に読み直します。同じ候補者が紹介とスカウトの両方から来たときや、紹介を受けたことのある人に後から自社で声をかけたときの扱い、契約を終えるときの申し出の期限や支払った費用の扱いは、契約ごとに違います。それぞれの契約書で確かめ、分からない点は紹介会社にメールなどで確かめ、判断に迷う点は専門家に相談してください。
段階ごとに出す情報を決める
報告書は、求職活動を応募段階、選考段階、内定〜入社段階に分け、求職者がそれぞれの段階で企業などから得る情報を整理しています。段階が進むにつれて、誰でも見られる一般公開情報から、選考に進んだ人に合わせて示す限定公開情報へと移っていきます。応募によって求職者と求人が特定されるので、より具体的な情報を出せるようになるためだと説明されています。*1
図のうち、「エージェントと面談」は2か所に入っています。応募段階で企業のWebサイトや口コミサイトと並ぶ入手方法と、選考段階で面接や社員との面談と並ぶ入手方法です。エンジニア人材紹介では紹介会社の担当者がここで企業の情報を補っていましたが、ダイレクトリクルーティングに乗り換えると自社が受け持ちます。
報告書は、近年はスカウト型やリファラル型で企業から求職者へ直接くわしい情報を出す場合も多いと注記し、限定公開情報が以前より早い段階で出され始めているという指摘も紹介しています。*1 ダイレクトリクルーティングでは、最初のメッセージの時点から配属予定の部署の情報を出す前提で準備します。全社の平均だけでは、転職を決めていない相手には材料が足りません。
スカウトの文面に書くこと
求人の中身は、経路によって変えないという企業が複数あります。精密機器の企業は、Webサイトで公開している求人情報と同じ情報を、各エージェントにもダイレクトリクルーティングにも使っています。空調・冷凍機などの企業も、エージェントとダイレクトリクルーティングで出す情報は基本的に同じだとしたうえで、ダイレクトリクルーティングでは、宛先の人のキャリアとどこが合うのかなどをより具体的に書く工夫をしていると話しています。*1
ヒアリング結果のまとめによると、法令上の開示項目ではないものの、中途採用で問い合わせが多い情報としてリモートワークに関する情報が多く挙がり、エンジニアは特にリモートワークができるかどうかが応募するかどうかを大きく分けるという意見が多く聞かれました。入社後に食い違いを生みやすい情報としては業務内容が挙げられ、特に実際の作業の範囲や仕事の進め方はうまく伝えるのが難しいとされています。*1
ここから、スカウトの文面には3つを書いておくと相手が判断しやすくなります。経歴のどこが求人と合うのか、配属予定のチームで受け持つ作業の範囲と進め方、リモートワークの実際の運用です。紹介会社を通じて確かめられていた年収や残業時間は、求人票に書ける範囲で書き、面談では自社から話題にします。
残業時間が長いなど、志望を下げかねない情報について、報告書は、多くの企業が入社までに伝える努力をしていて、早い段階で出す場合は改善への取り組みや今後の見通しもあわせて示す工夫をしていたとしています。*1
カジュアル面談と現場の負担
報告書は、面接の前後に社員と話す場、いわゆるカジュアル面談を設ける企業が多く見られたとし、その背景にスカウト型の採用が活発になったことがあると指摘しています。スカウトを求職者が了承した場合に、サービスによっては面談の実施を企業側に課しているからです。化学・素材の製造業の企業も、使っているスカウトサービスでは承諾されたら面談を行う契約にしているので、工数を考えるとスカウトを乱発できないと話しています。*1
報告書は、面接の前に行うカジュアル面談は事実上面接を1回行うのに等しく、応募の確度が高くない人が相手だと企業にとって大きなコストになることがあるとしています。一方で転職経験者からは、入社後に誰と働くのかを知るうえで現場の社員との面談が役に立ったという意見が多く聞かれました。*1
乗り換える前に、使うサービスの契約で承諾のあとに面談が要るかを確かめます。そのうえで面談に出る現場のエンジニアやマネージャーを決め、週に何件受けられるかから送るスカウトの数を決めます。数から先に決めると、面談が開発の仕事を圧迫しかねません。カジュアル面談で伝える内容と義務の関係は、カジュアル面談と面接の違いで扱っています。
つまずきやすい点
1つ目は、紹介会社が伝えていた情報を、乗り換えたあと誰も出していないことです。年収の幅や残業の実際は、紹介会社の担当者が聞かれて答えていたことがあります。紹介会社からよく聞かれていた質問を書き出し、求人票とスカウトの文面で答えておきます。
2つ目は、面談に出る人を決めないままスカウトを送り始めることです。日程が組めなければ相手の関心が冷めるので、面談の担当と、承諾から日程を返すまでの目安を先に決めます。
3つ目は、紹介会社との契約を読まずに依頼を止めることです。止める時期の決まりや紹介を受けた人の扱いは契約ごとに違うので、日程は契約を確かめてから組みます。求人媒体に乗り換える場合の契約の見方はエンジニア人材紹介と求人媒体の違いで取り上げています。
まとめ:乗り換えで決めておきたい3つのこと
エンジニア人材紹介からダイレクトリクルーティングへ乗り換えるうえで、決めておきたいことは3つです。第一に、紹介会社が担っていた情報の解釈と聞きにくい情報の伝達を、自社の誰がどの場面で引き取るか。第二に、全部を切り替えるか一部の求人から移すか、紹介会社との契約をどう扱うか。第三に、スカウトの文面の内容と、承諾のあとの面談に出る現場の人です。この3点を決めておけば、「乗り換えたのに、紹介会社が答えていた質問に誰も答えられず、候補者の関心が離れた」という事態を避けやすくなります。採用が決まるまでの開発体制に不安があれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
ダイレクトリクルーティングを始めたら、紹介会社との契約はすぐにやめたほうがよいですか
決まった答えはありません。厚生労働省の委託事業のヒアリングでは、紹介会社を主な経路にしたままスカウトを足している企業が多くありました。やめるかどうかは求人ごとの採用の状況から決め、やめる場合の申し出の期限や費用の扱いは、それぞれの契約書で確かめてください。
スカウトの文面は、人事と現場のどちらが書くとよいですか
分担して書く形が考えられます。報告書は、社内で誰が開示する情報を選び、どう開示するのかについて、担当部署が異なるといった体制の課題にも触れています。*1 作業の範囲や技術の中身は現場のエンジニアが書き、条件や制度は人事が書くというように、受け持ちを先に決めておくと文面がまとまりやすくなります。
知名度の低い会社でも、ダイレクトリクルーティングに乗り換えられますか
乗り換えられますが、最初に出す情報が大事になります。報告書は、中小企業は求職者への認知度が高くない場合が多く、大企業以上に情報を発信しなければ応募にすら至らないとしています。Webサイトを作るのが難しい場合は、SNSなどのプラットフォームを使って少しでも情報を出すことが対応の一つとして挙げられています。*1 スカウトの文面で、相手が会社を調べる手がかりを示しておきます。
採用の経路を見直すときに相談
エンジニアの採用を紹介会社だけに頼らない形に変えたいとき、採用が決まるまでの開発体制とあわせてご相談いただけます。どの求人から移すか決めきれていない段階でも構いません。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:厚生労働省「職場情報の開示を通じた労働市場の見える化に関する調査研究事業報告書(令和5年度厚生労働省委託事業)」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001244081.pdf)。出典:株式会社三菱総合研究所 人材・キャリア事業本部(2024年3月)。4.2.1(調査対象者と調査の方法)、4.3(企業ヒアリングの各社記録)、4.5.2(職場情報の開示・発信内容及び方法)と注27、5.1.2(求職活動の流れと各段階での情報収集)と図表5-2・注30、5.2.5(カジュアル面談)と注34、5.3.2(実績が低調な情報の開示)、4.5.3、5.4.1、5.4.2を参照。表と図は報告書の記載をもとに筆者が作成した(2026年10月確認)