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2026.09.29 採用支援コラム

リモート採用の社内合意、経営層に説明する順番と試行の決め方




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • リモート採用は、会社全体のテレワーク導入の話ではなく、採用が進まないポジションについての提案として経営層に出します。
  • 経営層がまず気にするのは社内のコミュニケーションなので、この懸念への答えを最も詳しく用意します。
  • 試行の期間・見る項目・報告の日を先に決め、その結果で続けるかどうかを経営層に判断してもらいます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

リモートで働けるなら応募したいという候補者はいるのに、経営会議で「顔が見えないと管理できない」と言われて話が止まる。出社している社員から不満が出ないかと聞かれても、答える材料がない——。フルリモートのエンジニアを採用したい開発部門では、こうした食い違いが起こりがちです。東京都の2025年の調査でも、テレワークを導入している都内企業の62.1%が、導入後の課題として「社内コミュニケーションの減少」を挙げています。*1 経営層とのリモート採用の社内合意とは、リモートで働くエンジニアを採用する方針について、採用の目的、対象にするポジション、試してみる条件と判断の基準を、経営層に決めてもらうことです。

反対の理由に一つずつ答えるだけでは、経営層の合意を得られないことがあります。懸念への答えと一緒に、何を試し、何を見て決めるかを示すと、経営層も判断しやすくなります。ただし、この進め方も万能ではなく、試した結果、リモート採用を見送ることもあります。本記事では、開発チームを率いるマネージャーに向けて、経営層が気にする点、懸念への答え方、試行の組み立て方、決める順番、そして外部に委託するときに確認したい点を整理します。

澄んだ浅い池の中に、平たい踏み石が向こう岸へ順に並んでいる写真

経営層との社内合意とは

厚生労働省のテレワーク総合ポータルサイトは、テレワークの導入目的を「トップ自らが従業員に明確にし、理解させることが望まれます」としています。*2 あわせて、導入を進めるプロジェクトチームには、経営企画部門、総務・人事部門、情報システム部門、テレワークを導入する対象の部門が加わる形を示しています。リモート採用でも、人事や情報システム部門と細かい決まりを詰める前に、経営層に何を決めてもらうのかをはっきりさせておきます。

経営会議で決めてもらうのは、採用の目的、対象のポジション、試行の条件と判断の基準の3点にとどめます。勤怠の記録の仕方や端末の設定は、人事や情報システム部門と詰める事柄なので、経営会議にすべてを持ち込む必要はありません。

1人の採用でも、経営層は働き方全体の見直しと受け取ることがあります。提案は、採用が進んでいない1つのポジションの話として出します。

経営層が気にする点

東京都の「多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)」は、2025年10月31日時点で、従業員30人以上の都内企業にテレワークの状況を尋ねています(回答2,093社)。テレワークを導入している企業は64.0%で、情報通信業に限ると94.5%でした。導入している1,339社に導入後の課題を尋ねたところ、最も多いのは「社内コミュニケーションの減少」の62.1%です。「利用できる従業員と利用できない従業員との間に不公平感が生じる」55.1%、「従業員の勤務状況の把握」50.2%、「セキュリティの確保」30.8%、「従業員の勤務評価・人事評価に課題を感じる」23.2%が続きます(複数回答)。情報通信業の257社に限ると、社内コミュニケーションの減少を挙げた割合は77.4%で、全体の62.1%を15.3ポイント上回っています。*1

テレワークを導入している従業員30人以上の都内企業が挙げた導入後の課題の上位5項目を、全体(1,339社)と情報通信業(257社)で比べた横棒グラフ。社内コミュニケーションの減少は全体62.1%・情報通信業77.4%、利用できる従業員とできない従業員との不公平感は55.1%・51.4%、従業員の勤務状況の把握は50.2%・54.5%、セキュリティの確保は30.8%・34.2%、勤務評価・人事評価は23.2%・25.3%。出典は東京都「多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)報告書」(令和7年度)。

経営層の考えは、テレワークを続けるかどうかの判断にも表れます。導入企業のうち、縮小またはやめる方向と答えた125社に理由を尋ねると、「コミュニケーションに不安があるため」が58.4%で最も多く、「連帯感、一体感が損なわれるため」と「経営者の意向」がともに46.4%でした(複数回答)。*1 一度テレワークを始めた会社でも、経営者の判断で見直されることがあります。社内合意は、入社した後もリモートで働き続けられることまで含めて得ておきます。

懸念への答え方

懸念への答えは、「問題ありません」と言い切るより、何を決めておくかと、試しながら何で確かめるかを組にして示すほうが伝わります。次の表は、調査で挙がった課題ごとに、答えとして用意する材料と、試行で見る項目を並べたものです。見る項目は、テレワーク総合ポータルサイトが試行導入の評価項目として挙げているものから選びました。*2

経営層の懸念と、答えの材料・試行で見る項目(懸念は東京都の調査の選択肢、材料と項目の組み合わせはこの記事の整理)
経営層の懸念 答えとして用意する材料 試行で見る項目
社内のコミュニケーションが減る 連絡に使う手段、連絡がつく時間帯、定例の打ち合わせの曜日 コミュニケーションの頻度・質
出社する社員との間に不公平感が生じる リモートの対象を作業で決めた理由、出社している社員が引き受ける作業 従業員満足度
勤務状況が分からない 始業・終業の連絡の仕方、作業の進み具合の報告の仕方 残業時間(対象者とそれ以外の社員を比べる)
情報が漏れる 会社が貸し出すパソコンか私物か、社内システムへの接続の方法、扱う情報の種類 情報セキュリティ意識の徹底度(決まりどおりのパソコンと接続の方法で作業できているか)
評価ができない 成果物と期限で評価する項目 業務の自律性(指示を待たずに進められたか)
採用につながるのか分からない 採用が進んでいないポジションと、いまの応募の状況 入社応募者の数や質、離職者数

表の「答えとして用意する材料」は、提案の前に人事や情報システム部門と一緒に作っておきます。「これから決めます」と答える項目が少ないほど、経営層も判断しやすくなります。

勤務状況の把握については、ポータルサイトが参考になります。ポータルサイトは試行を「トライアル」と呼び、試行の時点では労務管理制度を特に変えていない企業がほとんどだとしたうえで、「始業・終業のルールはトライアル時にも必要です」と書いています。*2 始業と終業をチャットで上司に伝える、という決まりを1つ置くだけでも、「働いているかどうか分からない」という心配に具体的に答えられます。

採用の目的をどう示すか

採用の目的は、テレワークの効果の一般論ではなく、採用が進まない理由から説明します。東京都の調査で、テレワークを導入した目的に「人材の確保」を挙げた企業は20.8%でした。上位は「非常時(猛暑、自然災害、感染症等)の事業継続対策」の72.1%や「柔軟な働き方への対応」の67.7%で、テレワークを採用のための仕組みとして位置づけている企業は多くありません。*1

導入の効果やメリットとして「人材の確保」を挙げた企業も22.5%で、情報通信業では29.2%でした(複数回答)。*1 経営層に採用の効果を約束するのではなく、どのポジションの採用がいつから進んでいないのか、勤務地の条件を外すと応募がどう変わると見込むのかを具体的に示します。

そのうえで、採用への効果は試行の結果とあわせて判断してもらう形にしておきます。ポータルサイトは試行導入の評価項目の一つに「人材確保:入社応募者の数や質、離職者数」を挙げています。*2 試行の前の応募の数を記録しておけば、リモートの条件で求人を出した後と比べられます。

試行をどう組み立てるか

試行とは、本格的に始める前に、対象と期間を決めて試しに運用してみることです。ポータルサイトは導入の手順の最後に試行導入を置き、残業時間や「入社応募者の数や質、離職者数」のような数で測る項目と、コミュニケーションの頻度・質や業務の自律性のような数で測りにくい項目を挙げています。そのうえで、これらをまとめて評価し、本格的に始める対象を決めることが大切だとしています。*2

リモート採用の試行は、採用する人が入る予定のチームで、いまいる社員が先にリモートで働いてみる形にすると組み立てやすくなります。採用する人が入社する前に、連絡の決まりや作業の分け方で困る点を社内で確かめられるためです。試行の前に決めておくのは、次の5つです。

  • 対象:どのチームの誰が、どの作業をリモートで行うか
  • 期間:いつからいつまで試し、結果を経営層に報告するのは何日か
  • 連絡の決まり:始業・終業の伝え方と、連絡がつく時間帯
  • 見る項目:前の表の「試行で見る項目」から、経営層の懸念に対応する3つ前後
  • 判断の基準:どんな結果なら続けるか、やめるか、条件を変えるか

見る項目は多くしすぎないようにします。ポータルサイトの評価項目は数で測るものと測りにくいものを合わせて15個ありますが、リモート採用を判断するためなら、経営層が気にしている懸念に対応するものだけで十分です。

判断の基準は、試行を始める前に経営層と決めておきます。結果を見てから基準を決めると、都合のよい解釈をしたように受け取られるためです。「残業時間が対象者とそれ以外の社員で大きく変わらず、打ち合わせの回数が試行前と同じ程度なら続ける」のように、数で書ける項目は数で書いておきます。

決める順番

経営層に何をどの順番で決めてもらうかも、提案の前に並べておきます。この記事では、次の順番を勧めます。

  1. 採用の目的(どのポジションの採用が、いつから進んでいないか)
  2. 対象のポジションと、そのポジションが担う作業の分け方
  3. 試行の条件(対象・期間・連絡の決まり・見る項目・判断の基準)
  4. 試行の結果を見た判断(続ける・やめる・条件を変える)
  5. 求人に載せる働き方の条件と、社内の規程

2つ目の作業の分け方には、ポータルサイトの分類が使えます。業務を「現状でテレワーク可能な業務」「対策実施によりテレワーク可能となる業務」「実施困難な業務」の3つに分ける考え方です。*2 たとえば、設計書の作成は1つ目に、社内のサーバーにしかない資料を使う作業は接続の方法を決めれば2つ目に、社内にしかない機器を使う検証は3つ目に入ります。3つ目の作業が多いポジションは、リモート採用の対象から外すか、出社する日を設ける前提で考えます。

求人の条件を最後に置くのは、試行の結果で条件が変わることがあるためです。先に求人を出してしまうと、試行で課題が見つかっても条件を変えにくくなります。出社する頻度の決め方と求人への書き方は「リモート採用の勤務条件で出社頻度を決める手順と書き方」で、人事や情報システム部門など部署ごとに確かめる相手は「リモート採用の社内合意が進まない理由と、反対への答え方」で扱っています。

つまずきやすい点

一つ目は、不公平感への答えを用意しないまま提案することです。東京都の調査では、テレワークの導入にあたり行政に求める支援策として、「テレワークができる職種とできない(難しい)職種との社内における不公平感解消に資する施策」を挙げた企業が49.0%で、最も多くなっています。*1 採用する人だけがリモートで働く形になるなら、出社している社員が代わりに引き受ける作業と、その作業をどう評価するかを先に決めておきます。

二つ目は、報告の日と判断の基準を決めずに試行を始めることです。期限がないと、試行のつもりで始めたリモート勤務がそのまま続き、経営層が続けるかどうかを判断する機会がなくなります。報告の日は経営会議の開催日に合わせて決めておくと、判断してもらう場を確保しやすくなります。

三つ目は、テレワークを導入していない会社の理由を、そのまま経営層の反対の理由と見なすことです。同じ調査で、導入していない754社が挙げた理由は「現場での作業が必要な業務のため」が77.5%で最も多く、「経営層・管理職の理解が得られないため」は8.0%でした(複数回答)。*1 経営層の反対も、考え方そのものより、仕事の中身への心配から出ていることがあります。その場合は、作業の分け方を示すことが答えになります。

外部に委託するときに確認しておきたい点

社内合意と試行の結果を待つあいだも、開発の作業は止められないことがあります。その場合は、試行の対象にしない作業を業務委託で外部の専門人材に任せる方法もあります。委託先の人もリモートで作業するなら、試行で決めた連絡の時間帯や端末と接続の方法を委託先にも示しておくと、社内と社外で連絡の取り方がそろいます。

委託するときは、任せる作業を作業名と期限で書いておきます。「受注データを取り込む機能の設計書を来月末まで」「既存の画面の改修を2か月」——このくらいまで書けていれば、委託先も必要な経験を判断できます。あわせて、成果物を何で受け取るか(設計書・プログラム・テストの記録など)も、契約の前に確かめておきます。

まとめ:リモート採用で確かめておきたい3つの点

リモート採用の社内合意を経営層から得るうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、テレワークの導入ではなく人を採るための提案として、対象のポジションと採用の目的を示すこと。第二に、コミュニケーションや不公平感などの懸念ごとに、答えの材料と試行で見る項目を組にしておくこと。第三に、試行の期間と報告の日、続けるかどうかの基準を、試行を始める前に経営層と決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「試してはみたものの、いつ何で決めるのかが分からないまま話が立ち消えになった」という事態を避けやすくなります。試行のあいだの開発の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

止められない開発の作業は、業務委託の専門人材に任せることもできます。任せる作業の名前と期限を決めておけば、条件に合う候補者を探しやすくなります。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

経営層への説明資料には、何をまとめればよいですか

採用の目的、対象のポジションと作業の分け方、試行の条件、報告の日の4点を1枚にまとめるのがおすすめです。懸念への答えは、懸念・材料・見る項目を並べた表にして別に添えると、会議での質問に答えやすくなります。

試行の期間はどのくらいにすればよいですか

期間に決まりはなく、見る項目を比べられる長さで決めます。月ごとの残業時間を対象者とそれ以外の社員で比べるなら、少なくとも2〜3か月分の記録があると比べやすくなります。

経営層が試行そのものに反対するときは、どうすればよいですか

対象の作業と人数を減らし、期間を短くして提案し直す方法があります。ポータルサイトも、すべてがそろってからでないと導入できないわけではないとし、「まずはやってみることが望まれます」としています。*2

試行の結果が思わしくなかったら、リモート採用は見送るべきですか

結果の中身によって決めます。コミュニケーションの課題だけなら、出社する日を設けるなど条件を変えて続けることもできます。見送る場合も、どの項目で何が起きたかを記録しておくと、次に提案するときの材料になります。

経営層への提案の前に相談したいとき

対象にするポジションの整理や、試行のあいだの開発の進め方からご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:東京都「多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)報告書」(令和7年度)(https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/hatarakikata/telework/%E5%A4%9A%E6%A7%98%E3%81%AA%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%AE%9F%E6%85%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8_R7%E5%B9%B4%E5%BA%A6.pdf)。出典:東京都産業労働局「多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)報告書」(令和7年度)。企業アンケート(常用雇用者規模30人以上、都内企業10,000社を無作為抽出、基準日2025年10月31日、回答2,093社・回収率20.9%)の問1 導入状況、問3 導入目的、問4 導入の効果やメリット、問5 導入後の課題、問8 縮小・中止したい理由、問12 導入しない理由、問22 行政に求める支援策と、第6章集計表の主要事業内容別(情報通信業)を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト「テレワークの導入方法」(https://telework.mhlw.go.jp/telework/prs/)。出典:厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト「テレワークの導入方法」。(1)テレワークの導入目的、(2)テレワーク導入プロセスと推進体制、(3)業務分析、(6)労務管理制度の見直し、(12)試行導入を参照(2026年9月確認)




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