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エンジニア中途採用の入社後、育成の4つとも新卒より低い
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 育成を行う割合の差は0.6ポイント:新規学卒73.2%、中途72.6%です。*1
- 仕事を離れての教育訓練は9.7ポイント差:OFF-JT(業務の外で行う教育訓練)が新規学卒37.5%、中途27.8%です。*1
- エンジニアを取り出した数字ではない:16の産業の事業所をまとめた割合です。なぜ差が出るのかも資料には書かれていません。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
エンジニア中途採用で人に入ってもらったあと、何を用意するかを、新卒のときと同じ形で考えていないでしょうか。
手がかりになる資料があります。厚生労働省の「令和5年若年者雇用実態調査」です。*1 この調査は、若年正社員(満15歳から34歳までの正社員)をどう育てているかを事業所に聞いており、新規学卒で採用された者と中途で採用された者を分けて集計しています。*1 2つを並べると、入社後にやっていることの違いが割合で見えます。
本記事は、開発の現場を回しているマネージャに向けたものです。なお、この調査はエンジニアに限ったものではありません。対象は満15歳から34歳までの若年労働者で、16の産業にまたがります。*2
目次
調査は事業所に聞いた結果で、2つの列は分母が別
対象は、5人以上の常用労働者(臨時や日雇いでない働き方の人)を雇う事業所と、そこで働く満15歳から34歳の労働者です。*2 この記事で使うのは事業所に聞いたほうの結果で、調査対象は17,355事業所、有効回答は7,867事業所、有効回答率は45.3%。*2 結果は厚生労働省のページで公開されています。*3
この記事の割合は、どれも事業所の数を数えた割合で、人数の割合ではありません。事業所とは、工場や支店のように場所ごとに区切った単位で、1社が複数持つこともあります。割合の分母は、その区分の若年正社員がいる事業所です。新規学卒で採用された若年正社員がいる事業所は全事業所の52.8%、中途で採用された若年正社員がいる事業所は58.9%でした。*1 つまり2つの列は、それぞれ別の分母の上に立っています。足しても何かの割合にはならないので、足し算はできません。同じ形で作られた割合どうしなので、差を出して比べることはできます。ただし両方の若年正社員がいる事業所は両方の列に数えられているので、この差は「同じ会社が新卒と中途にどれだけ違うことをしたか」ではありません。
育成方法は複数回答で、当てはまるものをいくつでも選べます。*1 足すと100%を超えます。割合どうしの差はポイントという単位で書きます。なお資料は、育成方法の列について分母を書き分けていません。この記事では、同じ「その区分の若年正社員がいる事業所」を分母にしていると読みました。ただし、37.5%と27.8%という印字された割合の差が9.7ポイントである点は、この読み方が変わっても動きません。変わるのは、その割合が何に占める割合かという意味のほうです。
育成を行う割合の差は0.6ポイント、OFF-JTは9.7ポイント
まず、育成をやっているかどうかから見ます。
| 項目 | 新規学卒 | 中途 | 差 |
|---|---|---|---|
| 育成を行っている | 73.2% | 72.6% | 0.6ポイント低い |
| OJT(仕事をしながらの教育訓練) | 65.9% | 63.5% | 2.4ポイント低い |
| OFF-JT(仕事を離れての教育訓練) | 37.5% | 27.8% | 9.7ポイント低い |
| 自己啓発への支援 | 33.2% | 29.7% | 3.5ポイント低い |
| ジョブローテーション | 23.8% | 19.2% | 4.6ポイント低い |
| 育成を行っていない | 6.1% | 9.7% | 3.6ポイント高い |
| 不明 | 20.7% | 17.6% | 3.1ポイント低い |
育成を行っている事業所の割合は、新規学卒が73.2%、中途が72.6%で、差は0.6ポイントです。*1 中途だから育てていない、という形にはなっていません。
ところが方法の欄に移ると、4つとも中途のほうが低くなります。OJTが65.9%に対して63.5%、OFF-JTが37.5%に対して27.8%、自己啓発への支援(本人が自分で学ぶことへの手助け)が33.2%に対して29.7%、ジョブローテーションが23.8%に対して19.2%です。*1 ここで言うOJTは仕事をしながらの教育訓練、OFF-JTは仕事を離れての教育訓練を指します。*1
ただし、差の大きさは4つで揃っていません。OFF-JTが9.7ポイントで、残りの3つはジョブローテーション4.6ポイント、自己啓発への支援3.5ポイント、OJT2.4ポイントです。この引き算はこの記事で行ったもので、資料は差を出していません。
どこからを大きい差と見るかの線は、資料にも、この記事にもありません。4つとも中途のほうが低かったこと、そのなかでOFF-JTがいちばん開いていたこと。この記事が言えるのはここまでです。
「育成を行っていない」の欄は、新規学卒が6.1%、中途が9.7%です。*1 そして「不明」が新規学卒20.7%、中途17.6%と、どちらも2割前後あります。*1 この「不明」が何を表すのかを資料は書いていません。不明の割合自体も2つの列で3.1ポイント違うので、「行っている」の0.6ポイントと「行っていない」の3.6ポイントは、不明をどちらに寄せて考えるかで見え方が変わります。
入社後に用意するものを決める3つの見方
ここからは、入社後に用意するものを決めるときの使い方を3つ挙げます。この3つは資料が示したものではなく、表の並びからこの記事で組み立てたものです。
1つめは、仕事を離れての教育訓練を用意するかどうかを決めることです。4つのうち、中途と新規学卒の差がいちばん大きいのがこの欄でした。資料が言うOFF-JTは業務の外で行う教育訓練全般で、何をやっているかまでは書かれていません。*1 だからこそ、何を業務の外に置くのかは自分で書き出すことになります。半日の座学でも、読んでもらう文書1本でも、業務の外に置けばここに入ります。
2つめは、ジョブローテーション(いくつかの部署や職務を順に経験してもらう進め方)を使うかどうかを決めることです。中途19.2%、新規学卒23.8%と、4つでいちばん低い欄でした。*1 即戦力として入ってもらうなら置かない判断もあります。決めておきたいのは、置かないと決めたのかどうかです。決めていないまま置いていない状態だと、あとで配置を動かすときに前例がありません。
3つめは、4つのうち自社がやっているものを書き出すことです。中途について育成を行っていないと答えた事業所は9.7%ありました。*1 資料はこの4つのほかに「その他」も聞いているので、4つが空でも育成なしと決まるわけではありません。*1 それでも4つとも空なら、入社後に渡すものをこれから作る段階です。この読み方は資料が述べていることではありません。
つまずきやすい難所
一つめのつまずきは、2つの列を足し算することです。新規学卒と中途は別々の母数の上に立つ割合なので、足しても意味のある数にはなりません。両方の若年正社員がいる事業所は、どちらの列にも数えられています。
二つめは、方法の差をそのまま「中途は育てられていない」と読むことです。育成を行っている割合は73.2%と72.6%で、差は0.6ポイントでした。*1 違うのは、どの方法を選んでいる事業所がどれだけあるかのほうです。中途には即戦力として入ってもらう前提があるのかもしれませんが、理由を資料は書いていません。
三つめは、「不明」の欄を見ないことです。新規学卒20.7%、中途17.6%と、どちらも2割前後あります。*1 2割の事業所について育成の有無が分からない状態なので、数ポイントの差を細かく読み取る使い方はできません。なお有効回答率(依頼した数のうち、集計に使える回答が返ってきた割合)も45.3%です。*2
外注時に確認しておきたい点
外部の要員(自社の社員ではなく、作業を委託して働いてもらう人。個人のフリーランスのほか、開発を請け負う会社に所属している人も含みます)に頼む場合、この4つの方法はそのままは当てはまりません。調査が聞いているのは、事業所が雇っている若年正社員への育成だからです。*1
ただし、業務の外で何かを渡すという形は、雇っている人にも外部の要員にも同じように取れます。発注する側が、自社の開発の決まりごと、使っている道具、問い合わせ先を入ってもらう前に文書で渡しておく、という進め方です。これで立ち上がりが早くなるかどうかは、この調査からは分かりません。
正社員として採るほうを選んだときは、表の4つのうち自社が用意できるものを書き出してみてください。書き出した数だけ、渡すものが決まっていることになります。これもこの記事での見方で、資料が示した手順ではありません。
同じ調査の別の表で、定着のための対策を見た記事はエンジニア中途採用の早期離職、事業所の定着の対策は12項目にあります。
入社後に何を新しく覚えてもらうかの決め方はエンジニア中途採用の育成とは|IPAの新技術の定義で扱っています。あちらはIPAの資料で、この記事とは別の調査です。
研修ありと求人票に書ける水準は研修ありと書けるのは、どの水準からかにまとめました。
中途で採る理由のほうは中途採用の理由で整理しています。
まとめ:はっきり差が出たのは仕事を離れての教育訓練だけ
読み取れることは3つです。第一に、若年正社員の育成を行っている事業所の割合は新規学卒73.2%、中途72.6%で、差は0.6ポイントでした。*1 第二に、方法の欄では4つとも中途が低く、いちばん差が大きいOFF-JTは37.5%と27.8%で9.7ポイント違います。*1 第三に、残る3つの差は2.4から4.6ポイントでした。*1 どこからを大きい差と見るかの線は資料にありません。なぜ差が出るのかも資料は書いていません。この調査はエンジニアを取り出したものでもありません。*2 使えるのは、事業所が何を用意しているかという4つの欄の並びまでです。
よくある質問
中途で採用した人の育成は新卒より少ないのですか
育成を行っている事業所の割合は新規学卒73.2%、中途72.6%でほぼ同じです。*1 ただし方法の欄では4つとも中途が低く、OFF-JTは37.5%と27.8%で9.7ポイント違います。*1 確認日は2026年9月19日です。
OJTとOFF-JTは何が違うのですか
資料はOJTを業務遂行の過程内において行う教育訓練、OFF-JTを業務遂行の過程外において行う教育訓練としています。*1 仕事をしながら教えるのがOJT、仕事を離れて教えるのがOFF-JTです。確認日は2026年9月19日です。
この調査はエンジニアを対象にしたものですか
違います。16の産業に属する事業所と、そこで働く満15歳から34歳までの労働者が対象です。*2 エンジニアだけを取り出した数字ではありません。確認日は2026年9月19日です。
新規学卒と中途の列は足して100%になりますか
なりません。2つは別々の母数の上に立つ割合です。*1 新規学卒で採用された若年正社員がいる事業所は全事業所の52.8%、中途は58.9%で、両方いる事業所は両方に数えられます。*1 確認日は2026年9月19日です。
どの育成方法をやれば人が定着しますか
今回参照した資料に記載はありません。資料に載っているのは、どの方法を実施している事業所がどのくらいあるかという割合までです。確認日は2026年9月19日です。
入社後に渡すものが決まったら相談
自社の決まりごとや道具の説明をどこまで用意できるかが見えていれば、そのままご相談いただけます。まだ決めきれていない段階でも承ります。
Remoguとリラシクなら、正社員として採る候補者も、作業と期間を決めて入ってもらう外部の要員も、条件を決めたうえでお探しいただけます。
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出典
- *1 参考:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」若年労働者の育成状況(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/4-21c-jyakunenkoyou-r05_03.pdf)。出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」。表5(雇用形態、採用区分、若年労働者の育成方法別事業所割合)と、OJT・OFF-JT・ジョブローテーションの定義の一次情報として。この記事は資料に示された数値をもとに表と図を作成した。資料の図表そのものは写していない(2026年9月確認)
- *2 参考:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」調査の概要(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/4-21c-jyakunenkoyou-r05_gaiyou.pdf)。調査の範囲及び対象、調査対象数17,355事業所・有効回答数7,867事業所・有効回答率45.3%、16大産業の確認として(2026年9月確認)
- *3 参考:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/4-21c-jyakunenkoyou-r05.html)。調査結果の公表ページの確認として(2026年9月確認)