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2026.10.31 採用支援コラム

取適法とフリーランス法の違い|業務委託でかかる法律の見分け方

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

法務の担当者と発注担当が並んで座り2束の条文の印刷物を見比べる

この記事の結論

  • フリーランス法は相手に従業員がいるかで、取適法は自社と相手の資本金か従業員数の差で対象が決まります。
  • 従業員のいない個人に規模の大きい会社がプログラムの作成を頼むと、両方の法律がかかることがあります。
  • 両方かかるときは、発注書を1通にまとめて両方の記載事項を入れ、手形を使わず60日以内に支払います。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

業務委託でエンジニアに開発を頼むとき、相手が個人か会社か、自社の資本金や従業員数がどれくらいかで、かかる法律が変わります。2026年1月に下請法から名前を変えた取適法と、2024年11月に施行されたフリーランス法は、どちらも発注側に支払期日や取引条件の明示を求めますが、対象になる相手の決め方が違います。

本記事は、業務委託のエンジニア(個人・法人)に発注する企業の実務者に向けて、2つの法律の違いを、発注側の規模と相手の形で分けた比較表と、どちらがかかるかを決める4つの問いで示します。両方がかかるときに発注側が守ることも並べます。条文と適用の基準は、e-Gov法令検索と公正取引委員会・中小企業庁の公表資料で確かめた範囲で書いています。

取適法とフリーランス法の違いとは

2つの法律は、どちらも立場の弱くなりやすい受注側を守るためのものです。違いは、守る相手の決め方にあります。取適法は発注側と相手の資本金か従業員数の差で、フリーランス法は相手が従業員を使わない個人か、代表者1人だけの法人かで対象を決めます。*1*3

取適法とフリーランス法の違い(出典:取適法、フリーランス法の条文をもとに作成。2026年10月28日確認)
項目 取適法 フリーランス法
守られる相手 発注側より規模の小さい個人・法人(中小受託事業者) 従業員を使用しない個人と、代表者1人だけで従業員を使用しない法人(特定受託事業者)
発注側の条件 資本金か常時使用する従業員の数が基準を超える法人 業務委託をする事業者すべて。支払期日や禁止行為などは、従業員を使用するか役員が2人以上の発注側に限る
対象の取引 製造・修理・情報成果物作成・役務提供・特定運送の委託 物品の製造、情報成果物の作成、役務の提供の委託
就業環境のルール なし 募集情報の表示、育児介護への配慮、ハラスメント対策、解除の予告

開発の外注では、同じプログラムの作成でも結論が分かれる場面があります。取適法では、自社が「業として」提供・作成するものかが問われます。公正取引委員会のQ&Aは、社内で使うソフトウェアのうち、自社では作れない特殊な部分の外注は情報成果物作成委託に当たらないとしています。*5 一方、フリーランス法は事業のための委託であれば対象で、社内で使う役務の委託も含むと示されています。*6

取適法の改正点は「下請法改正(取適法)2026|IT委託の発注実務」、フリーランス法の義務の全体は「フリーランス新法とは|開発委託の発注者対応」で扱っています。本記事は、2つの法律のどちらがかかるかの見分け方に絞ります。

発注側の規模と相手で見る適用の比較

取適法の対象は、発注側と相手の資本金の組み合わせで決まり、資本金で当たらないときに従業員数で判断します。*8 プログラムの作成と、運送・倉庫での保管・情報処理の役務は高い区分、それ以外の作成物と役務は低い区分です。*2

夕方の自席で発注担当が電話で相手の従業員の有無を聞き取り用紙に書く

取適法の対象になる発注側と相手の組み合わせ(出典:取適法第2条第8項・第9項、同項第1号の政令をもとに作成。2026年10月28日確認)
頼む仕事 発注側 相手
プログラムの作成、情報処理など 資本金3億円超 資本金3億円以下の法人か個人
資本金1千万円超3億円以下 資本金1千万円以下の法人か個人
常時使用する従業員300人超 従業員300人以下の法人か個人
それ以外の作成物・役務 資本金5千万円超 資本金5千万円以下の法人か個人
資本金1千万円超5千万円以下 資本金1千万円以下の法人か個人
常時使用する従業員100人超 従業員100人以下の法人か個人

これに相手の形を重ねると、次のように分かれます。

相手の形ごとの適用の見方(出典:取適法第2条、フリーランス法第2条をもとに作成。2026年10月28日確認)
相手の形 取適法 フリーランス法
従業員を使用しない個人 発注側が上の表の基準を超えればかかる かかる
代表者1人だけで従業員を使用しない法人 資本金か従業員数の組み合わせで判断 かかる
従業員を使用する個人 発注側が上の表の基準を超えればかかる かからない
役員が2人以上か、従業員を使用する法人 資本金か従業員数の組み合わせで判断 かからない

同じ「従業員」でも、数え方が違う点に注意します。

  • フリーランス法:週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上続けて雇う見込みの労働者を雇っていれば「従業員を使用」に当たる*6
  • 取適法:正社員・契約社員に加え、パートタイマーやアルバイトも含め、賃金台帳の対象となる労働者の数で数える*5

どちらがかかるかを決める4つの問い

発注の前に、次の4つの問いを順に確かめます。問1でフリーランス法を、問2から問4で取適法を判断し、最後に2つの結果を合わせます。

業務委託のエンジニアに発注するとき、取適法とフリーランス法のどちらがかかるかを決める4つの問いの図。問1は相手が従業員のいない個人か、代表者1人だけで従業員のいない法人かで、はいならフリーランス法がかかり、いいえならかからない。どちらの場合も問2へ進む。問2は頼む仕事が取適法の取引に当たるかで、当たらなければ取適法はかからない。問3は自社と相手の資本金が基準の組み合わせに当たるかで、当たれば取適法がかかる。問4は資本金で当たらないときに従業員数が基準の組み合わせに当たるかで、当たれば取適法がかかり、当たらなければかからない。問1の結果と取適法の結果を合わせ、行き先は両方かかる、フリーランス法だけ、取適法だけ、どちらもかからないの4つになる。出典は取適法第2条、フリーランス法第2条、公正取引委員会の公表資料。

  • 問1 相手は従業員を使用しない個人か、代表者1人だけの法人か:はいならフリーランス法がかかる。いいえならかからない。どちらも問2へ
  • 問2 頼む仕事は取適法の取引に当たるか:販売や受託のためのプログラムの作成、自社で日頃作っている部分の外注などが当たる。当たらなければ取適法はかからない
  • 問3 自社と相手の資本金が、比較表の組み合わせに当たるか:当たれば取適法がかかる
  • 問4 資本金で当たらないとき、従業員数が組み合わせに当たるか:当たれば取適法がかかる。当たらなければかからない

行き先は「両方かかる」「フリーランス法だけ」「取適法だけ」「どちらもかからない」の4つです。どちらもかからない場合でも、作業の範囲と支払期日は契約書で決めておきます。

判断する時点にも注意します。取適法の従業員数は委託をした時点の数で決まり、後で増減しても適用は変わらないとされています。*5 フリーランス法も、委託をする時点で相手の従業員の有無を確かめると示されています。*6

両方かかるときに発注側が守ること

従業員を使わない個人のエンジニアに、基準を超える規模の会社がプログラムの作成を頼むと、両方の法律がかかることがあります。そのときは、両方の義務を満たす形で発注します。

窓際のカウンターで経理の担当者と発注担当が発注書の項目にチェックを入れる

両方の法律がかかるときの扱い(出典:取適法、フリーランス法と同法施行令、公正取引委員会「フリーランス法Q&A」をもとに作成。2026年10月28日確認)
項目 取適法 フリーランス法 両方かかるとき
取引条件の明示 給付の内容・代金の額・支払期日・支払方法など(第4条) 給付の内容・報酬の額・支払期日など(第3条) 1つの書面やメールにまとめてよい。片方だけの記載事項も入れる
支払期日 受領から60日以内で、できる限り短く(第3条) 同じく60日以内(第4条) 60日以内のできる限り早い日に定める
手形での支払 支払遅延に含まれ、禁止(第5条) 直ちに違反ではないが、手形以外が望ましい 手形を使わない
減額・買いたたきなど 委託の期間を問わず禁止(第5条) 1か月以上の委託で禁止(第5条) 期間に関係なく守る
書類の作成・保存 給付や支払の記録を作成し保存(第7条) 同じ定めなし 取適法に沿って保存する
就業環境 定めなし 募集情報(第12条)、ハラスメント対策(第14条)、6か月以上なら育児介護への配慮と解除の30日前予告(第13条・第16条) フリーランス法に沿って整える

表のうち1か月と6か月の期間は、フリーランス法の施行令で定められています。*4 明示を1通にまとめてよいことは、公正取引委員会のQ&Aに示されています。*6

両方に違反する行為には、原則としてフリーランス法を優先して適用し、同じ行為に重ねて取適法の勧告はしないとされています。ただし、取適法だけに違反する行為もあれば、全体に取適法を適用することがあるとも書かれています。*7 どちらが適用されるかにかかわらず、守る中身は上の表のとおり両方です。

発注前の確認と外部に相談できる範囲

どちらの法律がかかるかは、相手の形と、自社と相手の規模が分からないと決められません。相手の従業員の有無は、メールなど記録が残る方法で確かめておくと、後で見返せます。発注の前に、次の点をそろえておきます。

  • 相手:個人か法人か、従業員を使用しているか、法人なら役員は何人か
  • 規模:自社と相手の資本金と、常時使用する従業員の数(委託の時点)
  • 仕事:プログラムの作成か、それ以外の作成物や作業か
  • 期間:1か月以上か、6か月以上続く見込みか
  • 書面:両方の記載事項をまとめた発注書のひな形があるか

条文の当てはめは取引の中身で変わるため、個別の判断は弁護士などの専門家に確認してください。人を確保する側の準備としては、外部人材の紹介先に次のような相談ができます。

  • 候補者が個人と法人のどちらの形で参加するかを、選ぶ段階で確かめる
  • 期間と作業の範囲を先に決め、その条件に合う業務委託の人材を探す
  • 長く続く仕事なら、リモートで働く社員の採用と比べて検討する

まとめ:取適法とフリーランス法の違いと見分け方

取適法とフリーランス法の違いは、守る相手の決め方にあります。第一に、フリーランス法は相手が従業員を使わない個人か代表者1人だけの法人かで、取適法は自社と相手の資本金か従業員数の組み合わせで対象を決めます。第二に、相手の形、頼む仕事、資本金、従業員数の4つの問いで、両方・片方・どちらもかからないのどれかを見分けます。第三に、両方かかるときは発注書を1通にまとめ、手形を使わず60日以内に支払い、就業環境の義務も整えます。

LASSICに相談するメリット

業務委託で人を探す段階から、相手が個人か法人かを確かめておくと、かかる法律と発注書の形を早く決められます。任せたい作業の範囲と期間を書き出していただければ、条件に合う外部人材の相談につなげられます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

一人社長の会社に頼むときはどちらの法律がかかりますか

代表者1人のほかに役員がなく、従業員を使用しない法人は、フリーランス法の特定受託事業者に当たります。 取適法は自社と相手の資本金か従業員数の組み合わせで判断するため、条件しだいで両方がかかります。

両方の法律に違反した場合はどちらが適用されますか

公正取引委員会の考え方では、原則としてフリーランス法を優先して適用します。ただし、取適法だけに違反する行為もある場合は、全体に取適法を適用することがあるとされています。*7

発注書は法律ごとに分けて作る必要がありますか

分けなくてもかまいません。両方がかかる発注では、1つの書面や電子メールで両法の記載事項をまとめて示せます。どちらか一方だけで求められる事項も、漏らさずに書きます。

条件に合う業務委託の人材を探す

任せたい作業の範囲と期間が分かっていれば、そのままご相談いただけます。個人と法人のどちらに頼むか検討している段階でも構いません。

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出典

  1. *1 参考:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和31年法律第120号)第2条〜第5条・第7条(https://laws.e-gov.go.jp/law/331AC0000000120)。出典:e-Gov法令検索(法令API)。定義、支払期日、明示、遵守事項、書類の作成及び保存を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
  2. *2 参考:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第二条第八項第一号の情報成果物及び役務を定める政令(https://laws.e-gov.go.jp/law/413CO0000000005)。出典:e-Gov法令検索(法令API)。プログラム、運送・倉庫保管・情報処理を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
  3. *3 参考:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)第2条〜第5条・第12条〜第16条(https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025)。出典:e-Gov法令検索(法令API)。定義、明示、支払期日、遵守事項、就業環境の規定を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
  4. *4 参考:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(https://laws.e-gov.go.jp/law/506CO0000000200)。出典:e-Gov法令検索(法令API)。第5条の期間(1か月)、第13条の期間(6か月)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
  5. *5 参考:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(https://www.jftc.go.jp/toriteki/toriteki_qa.html)。出典:公正取引委員会。常時使用する従業員の範囲と判断の時点、社内で使うソフトウェアの外注(Q8・Q10・Q28)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
  6. *6 参考:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」(https://www.jftc.go.jp/fllaw_limited/fllaw_qa.html)。出典:公正取引委員会。従業員を使用の意味、確認の時点と方法、自ら用いる役務、手形、両法の明示(Q3・Q7・Q26・Q32・Q33)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
  7. *7 参考:公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び取適法との適用関係等の考え方」(PDF)(https://www.jftc.go.jp/file/fl_jftcguidelines.pdf)。出典:公正取引委員会(令和6年5月31日、令和8年1月1日改正)。本法と取適法との関係を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
  8. *8 参考:公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト」(令和7年11月)(PDF)(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/download/toriteki_text_r7.pdf)。出典:中小企業庁掲載。委託事業者と中小受託事業者の区分、従業員基準の位置づけ(2頁)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)




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