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ユースエール認定の12基準が示す定着の条件
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 基準は数字で決まっている:離職率20%以下、所定外労働の月平均20時間以下など、5項目が数値で示されています*1。
- 対象は常時雇用300人以下:若者雇用促進法に基づき、中小企業を対象とした厚生労働大臣の認定です*1。
- 取得後も毎年の報告がある:毎事業年度終了後1か月以内に、基準への適合状況を記載した書類を提出します*1。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
「若手が採れない、入っても続かない」という相談の場で、話が抽象論に流れがちなのは、判断の基準がないからです。何がどこまでなら「定着している会社」なのか。この線を、国が数字で引いている制度があります。
ユースエール認定制度です。厚生労働省の資料は若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業(常時雇用する労働者が300人以下の事業主)を、若者雇用促進法に基づき厚生労働大臣が「ユースエール認定企業」として認定していますと説明しています*1。
本記事の狙いは、認定を勧めることではありません。認定基準そのものが、若手の定着を測る物差しとして使えるという点にあります。離職率20%以下、月平均所定外労働20時間以下。この数字に自社を当てると、いま何が足りないのかが具体的になります。
以下では12ある認定基準の中身と、取得したときに何が変わるのか、そして取得後に続く義務までを整理します。申請の可否や書類の扱いは、都道府県労働局および社会保険労務士等に確認したうえで進めてください。
目次
数字で決まっている基準は5つ
12ある基準のうち、数値で線が引かれているものから見ていきます。ここが自社の現状と直接比べられる部分です。
資料が挙げている数値要件は次のとおりです*1。
- 直近3事業年度の新卒者などの正社員として就職した人の離職率が20%以下
- 前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下、かつ月平均の法定時間外労働60時間以上の正社員が1人もいないこと
- 前事業年度の正社員の有給休暇の年間付与日数に対する取得率が平均70%以上又は年間取得日数が平均10日以上
- 直近3事業年度で男性労働者の育児休業等取得者が1人以上又は女性労働者の育児休業等取得率が75%以上
細かい但し書きも付いています。離職率については直近3事業年度の採用者数が3人または4人の場合は、離職者数が1人以下であれば、可とします*1。採用人数が少ない会社では、1人辞めただけで率が跳ね上がるため、実数で見る扱いが用意されているということです。
有給休暇の要件にも加算の余地があります。有給休暇に準ずる休暇として、企業の就業規則等に規定する、有給である、毎年全員に付与する、という3つの条件を満たす休暇について、労働者1人あたり5日を上限として加算することができます*1。独自の特別休暇を制度化している会社は、この加算が使えます。
育児休業についても例外があります。男女ともに育児休業などの取得対象者がいない場合は、育休制度が定められていれば可としますとされ、くるみん認定を取得している企業については認定を受けた年度を含む3年度間はこの要件を不問とします*1。
集計にあたって先に確認しておく必要があるのが、誰を数えるのかという点です。資料は正社員の定義をこう置いています。正社員とは、直接雇用であり、期間の定めがなく、社内の他の雇用形態の労働者(役員を除く)に比べて高い責任を負いながら業務に従事する労働者をいい、派遣契約で業務に従事する者は除きます*1。
この定義が分母を決めます。契約社員や派遣で受け入れている人は除く。役員も比較の対象から外す。自社の名簿をこの線で切り直さないと、離職率も所定外労働時間も別の数字になります。時短の枠で無期雇用している人の扱いなど、判断が必要な区分があれば窓口で確認しておく価値があるでしょう。時短の枠そのものの設計は時短勤務での採用、フルタイム前提との違いで扱いました。
数字を並べてみると、この制度が測っているものが見えてきます。入った人が3年で辞めていないか、残業が慢性化していないか、休みが取れているか。若手の定着を左右する要素として、実務の感覚と大きくずれていません。
残りの基準は「公表」と「過去の実績」
数値以外の基準は、大きく2つに分かれます。整えるものと、過去に問題がないことの確認です。
整えるものとして挙げられているのは、まず「人材育成方針」と「教育訓練計画」を策定していることです*1。加えて学卒求人など、若者対象の正社員の求人申込みまたは募集を行っていることが前提となり、この学卒求人については少なくとも卒業後3年以内の既卒者が応募可であることが必要ですと注記されています*1。
そして4つめの基準が、青少年雇用情報の公表です。資料は公表すべき内容として直近3事業年度の新卒者などの採用者数・離職者数、男女別採用者数、平均継続勤務年数、研修内容、メンター制度の有無、自己啓発支援・キャリアコンサルティング制度・社内検定等の制度の有無とその内容、前事業年度の月平均の所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得対象者数・取得者数(男女別)、役員・管理職の女性割合を挙げています*1。
ここは若者雇用促進法の情報提供義務と同じ項目です。新卒者等を条件に募集する会社は、求めがあれば3類型それぞれ1つ以上の提供が義務になっており、この認定では全項目の公表が要件になります。義務の側の整理は新卒採用はなぜ求人票だけでは足りないのかで扱いました。義務への対応を先に済ませておくと、認定基準の4つめは自動的に埋まります。
過去の実績に関する基準も具体的です。資料は過去3年間に新規学卒者の採用内定取消しを行っていないこと、過去1年間に事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと、重大な労働関係等法令違反を行っていないことを挙げています*1。
離職理由の扱いには注意書きが付いています。離職理由に虚偽があることが判明した場合(実際は事業主都合であるにもかかわらず自己都合であるなど)は取り消します*1。手続き上の書き方をそろえておく必要がある部分です。
残る基準は欠格事由にあたるものです。資料は暴力団関係事業主でないこと、風俗営業等関係事業主でないこと、各種助成金の不支給措置を受けていないことを挙げています*1。通常の事業を営んでいれば意識する場面は少ない項目ですが、助成金の不支給措置は該当し得るため、過去の受給状況は確認しておく価値があります。
認定の履歴についても要件があります。過去3年間に認定企業の取消を受けていないこと、過去3年間に認定基準を満たさなくなったことによって認定を辞退していないこと*1。ただし後者には緩和があり、数値基準や公表の基準を満たさずに辞退した場合は再度基準を満たせば辞退の日から3年以内であっても再申請が可能ですとされています*1。
取得すると変わること
認定を受けた場合に受けられる支援は6つ挙げられています*1。
| 支援 | 内容 |
|---|---|
| ハローワーク等での重点的PR | 「わかものハローワーク」や「新卒応援ハローワーク」などの支援拠点でのPR、「若者雇用促進総合サイト」への企業情報の掲載 |
| 認定企業限定の就職面接会 | 各都道府県労働局・ハローワークが開催する就職面接会などの案内 |
| 認定マークの使用 | 商品や広告などにユースエール認定マークを付けることができる |
| 日本政策金融公庫の融資制度 | 「働き方改革推進支援資金」の利用時に、基準利率から-0.65%での融資を受けることができる |
| 公共調達における加点評価 | 価格以外の要素を評価する調達(総合評価落札方式・企画競争方式)で加点評価するよう、国の取組指針に示されている |
| 一部地方公共団体の優遇措置 | 補助金、奨励金、融資制度等において優遇措置が設けられている場合がある |
このうち採用に直接つながるのは上の2つでしょう。「若者雇用促進総合サイト」に認定企業として情報が載り、限定の面接会に案内されるという形です*1。知名度で母集団を集めにくい会社にとっては、接点の追加として意味があります。
公共調達の加点は、事業の内容によって価値が大きく変わります。加点評価の詳細は、公共調達を行う行政機関によって定められていますとされており*1、一律の点数ではありません。厚生労働省の別の資料には内閣府が示している参考配点例があり、評価項目が総配点に占める割合が12%の場合、ユースエールは9点という例が挙げられています*2。
同じ表には他の認定も並んでいます。プラチナえるぼしが12点、くるみん(令和7年4月からの基準)が9点という具合です*2。複数の認定に該当する場合は、最も配点が高いもので加点が行われますとされています*2。官公庁向けの案件を扱う会社は、どの認定を優先するかを配点から逆算できます。
融資については、資料は基準利率は、貸付期間、担保の有無などに応じて異なりますと注記しています*1。別の資料では働き方改革推進支援資金の枠組みとして直接貸付:7億2,000万円の融資限度額、設備資金20年以内・運転資金10年以内の返済期間が示されています*2。
3つの認定制度の位置づけ
ユースエールは単独の制度ではありません。厚生労働省は雇用管理の改善に取り組む事業主向けに3つの認定制度を並べて案内しています*2。
資料は3つをこう整理しています。えるぼし認定制度は「女性活躍推進法」に基づく認定制度で、一般事業主行動計画の策定・届出を行った事業主のうち女性の活躍促進のための取組の実施状況が優良な企業を認定するものです*2。くるみん認定制度は「次世代育成支援対策推進法」に基づく認定制度で、行動計画に定めた目標を達成するなどの一定の基準を満たした企業を認定します*2。そしてユースエール認定制度が「若者雇用促進法」に基づく認定制度です*2。
制度は動いています。えるぼしについては令和8年4月1日から、女性の健康支援に関する基準を追加した新しい認定制度(「えるぼしプラス」「プラチナえるぼしプラス」)が創設されました*2。くるみんも令和7年4月1日から、くるみん認定、プラチナくるみん認定基準等が改正され、マークも新しくなっています*2。
3つのうちユースエールだけが「300人以下」という規模の条件を持ちます。裏を返せば、大企業と同じ枠で競わなくてよい制度だということです。中小企業にとっての位置づけは、ここにあります。
くるみんとの関係には具体的な接点もあります。前述のとおり、くるみん認定を取得している企業はユースエールの育児休業の要件を3年度間不問とされます*1。順番を考えるなら、くるみんを先に取ると後が楽になる場面があるということです。
なお資料は認定取得の意義について、認定取得は、働きやすい職場環境の整備につながり、企業の魅力向上や人材確保・定着などに役立ちますと述べています*2。因果の向きに注意が必要でしょう。認定を取れば人が集まるのではなく、基準を満たす状態を作った結果として認定が付いてくる、という順序です。
取得後に続く義務
認定は一度取れば終わりではありません。ここを見落とすと、あとで負担が読めなくなります。
資料は注記でこう述べています。認定を受けた事業主は、毎事業年度終了後、1か月以内に認定基準への適合状況を記載した書類を提出する必要があります*1。毎年、数値を出し直すということです。
提出する内容は認定基準への適合状況ですから、離職率、月平均所定外労働時間、有給休暇の取得率、育児休業の取得状況を毎年集計する運用が前提になります。この集計は、青少年雇用情報の公表項目とほぼ重なります。年に一度の作業として1本にまとめておくのが現実的でしょう。
指標の集計そのものを社内の分析に使う考え方は、採用の指標設計と同じです。分母の置き方を含めた整理は採用KPIに置く5つの指標と分母の決め方で扱いました。
基準を満たせなくなった場合の扱いも、あらかじめ知っておく価値があります。前述のとおり、認定を辞退した履歴は原則として3年間の申請制限につながりますが、数値基準や公表の基準を満たさずに辞退した場合は再度基準を満たせば3年以内でも再申請できるとされています*1。数字が一時的に崩れることは想定されている、という設計です。
申請の手続きについても補足があります。認定企業となるためには、各都道府県労働局へ申請が必要ですとされ、申請書などの提出は、ハローワークを経由して行うことができる場合があります*1。あわせてe-Govポータルサイトから、電子申請の利用が可能ですとも案内されています*1。
着手の順序——申請の前に数字を出す
順序を置きます。申請書から取りかかる話ではありません。
- ① 5つの数値を出す。離職率、月平均所定外労働時間、60時間以上の該当者数、有給取得率、育休取得状況
- ② 満たしていない項目を特定する。多くは所定外労働時間か有給取得率で止まります
- ③ 人材育成方針と教育訓練計画を文書にする。ここは実態があれば書き起こせます
- ④ 青少年雇用情報を公表する。募集をしているなら義務の側から先に整えます
- ⑤ 求人の応募条件を確認する。卒業後3年以内の既卒者が応募可になっているかを見ます
- ⑥ 都道府県労働局に相談する。書類の範囲と手続きは窓口で確認します
①で止まる会社が多いはずです。離職率を直近3事業年度・新卒等の正社員に限って出せる会社は、それほど多くありません。逆に言えば、この集計ができた時点で自社の定着状況が初めて見えます。
②で足りない項目が分かったら、認定を目標に置くかどうかはそこで決められます。所定外労働が月平均30時間なら、認定は当面の目標にならない。それでも、20時間という線が示されていること自体が改善の目安になります。
③は書類を作る作業ですが、中身のない文書を作る意味はありません。研修の実態、メンターの有無、資格取得の支援。すでにやっていることを書き起こす形が自然です。入社後の立ち上がりの設計はなぜ中途エンジニアは早期に離職するのかで扱いました。
なお、所定外労働時間を下げる話は、要員が足りているかどうかの話に行き着きます。人が足りないまま残業を減らす指示だけを出すと、数字が動かないか、記録だけが動きます。常時必要な職責かどうかがまだ定まらない範囲については、期間を区切って外部の力を借りて負荷を下げる進め方もあります。
まとめ:ユースエール認定で押さえる3つの視点
第一に、基準が数字で決まっているという点です。厚生労働省の資料は、直近3事業年度の新卒者などの正社員として就職した人の離職率が20%以下、前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下かつ月平均の法定時間外労働60時間以上の正社員が1人もいないこと、前事業年度の正社員の有給休暇の取得率が平均70%以上又は年間取得日数が平均10日以上、直近3事業年度で男性労働者の育児休業等取得者が1人以上又は女性労働者の取得率が75%以上を挙げています。採用者数が3人または4人の場合は離職者数が1人以下であれば可とする但し書きもあります。第二に、対象が常時雇用する労働者300人以下の事業主だという点です。若者雇用促進法に基づく厚生労働大臣の認定で、えるぼし・くるみんと並ぶ3つの認定制度のうち、規模の条件を持つのはユースエールだけです。くるみん認定を取得している企業は育児休業の要件を認定年度を含む3年度間不問とされるため、順番の設計にも意味があります。第三に、取得後も毎年の報告が続くという点です。認定を受けた事業主は毎事業年度終了後1か月以内に、認定基準への適合状況を記載した書類を提出する必要があります。この集計は青少年雇用情報の公表項目とほぼ重なるため、年に一度の作業として1本にまとめるのが現実的です。まず5つの数値を出すところから始めてください。
よくある質問
ユースエール認定は何人までの会社が対象ですか。
常時雇用する労働者が300人以下の事業主が対象です。厚生労働省の資料は、若者の採用・育成に積極的で若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業を、若者雇用促進法に基づき厚生労働大臣がユースエール認定企業として認定していると説明しています。えるぼし認定制度、くるみん認定制度と並ぶ3つの認定制度のうち、規模の条件を持つのはユースエールだけです。
採用人数が少ないと離職率の基準を満たせませんか。
但し書きが用意されています。基準は直近3事業年度の新卒者などの正社員として就職した人の離職率が20%以下ですが、直近3事業年度の採用者数が3人または4人の場合は、離職者数が1人以下であれば可とされています。採用人数が少ない会社で1人の離職が率に大きく影響する事情を踏まえた扱いです。
育児休業の取得者がいない場合はどうなりますか。
男女ともに育児休業などの取得対象者がいない場合は、育休制度が定められていれば可とされています。またくるみん認定(プラチナくるみん、トライくるみん、プラスを含む)を取得している企業については、認定を受けた年度を含む3年度間はこの要件を不問とされています。制度の整備状況と、対象者の有無の両面で判断される形です。
認定を取ると毎年何かする必要がありますか。
あります。認定を受けた事業主は、毎事業年度終了後1か月以内に、認定基準への適合状況を記載した書類を提出する必要があるとされています。提出内容が認定基準への適合状況であるため、離職率、月平均所定外労働時間、有給休暇の取得率、育児休業の取得状況を毎年集計する運用が前提になります。青少年雇用情報の公表項目と重なるので、1本の作業にまとめるのが現実的です。
公共調達の加点はどれくらいですか。
一律ではありません。資料は、加点評価の詳細は公共調達を行う行政機関によって定められているとしています。内閣府が示している参考配点例では、評価項目が総配点に占める割合が12%の場合にユースエールは9点、プラチナえるぼしは12点という例が挙げられています。複数の認定に該当する場合は、最も配点が高いもので加点が行われるとされています。
出典
- *1 参考:厚生労働省「ご存じですか?「ユースエール認定制度」」(事業主向けリーフレット・令和8年4月)(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001579372.pdf)。制度の対象、12の認定基準とその数値要件・但し書き、認定企業が受けられる6つの支援、認定後の毎事業年度の書類提出、申請窓口と電子申請の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:厚生労働省「企業の人材確保・定着に役立つ3つの認定制度のご案内(えるぼし・くるみん・ユースエール)」(事業主向け)(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001467571.pdf)。3つの認定制度の根拠法と位置づけ、令和7年4月・令和8年4月の基準改正、公共調達の参考配点例、働き方改革推進支援資金の融資限度額と返済期間の一次情報として(2026年8月確認)
- *3 参考:厚生労働省「ユースエール認定制度」(制度のページ)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000100266.html)。認定申請の様式・添付書類、地方公共団体の優遇措置一覧、電子申請の案内などの入手先として(2026年8月確認)