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2026.09.02 採用支援コラム

民間給与実態統計調査の平均給与|情報通信業の値の選び方

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

机の上に給与の統計資料と棒グラフ、電卓が並び、手がペンで数値を確かめている

この記事の結論

  • 平均給与は、全業種で478万円、情報通信業で659万5千円、情報通信業の勤続1〜4年で548万3千円と、見る表によって大きく違います。
  • 平均給与478万円は、平均給料・手当403万円と平均賞与75万円を合わせた額です。
  • 業種は14分類までで職種の区分がないため、エンジニアだけの平均給与はこの調査からは出せません。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

中途採用の年収をいくらで示すか、公的な統計で目安を確かめたい。ところが同じ調査を見ているはずなのに、人によって挙げる平均給与の数字が違う——。エンジニアの採用を担当する現場では、こうした食い違いが起こりがちです。民間給与実態統計調査とは、国税庁が民間の事業所で働く人の1年間の給与を調べる統計で、平均給与の数字としてよく引かれます。

業種別、年齢別、勤続年数別の値まで公表されており、年収の目安を決めるときに参照しやすい統計です。ただし万能ではなく、職種別の値は載っていません。本記事では、エンジニアを採用する実務担当者に向けて、調査の仕組み、平均給与の内訳、情報通信業の値と内訳、そして年収の目安に使う値の選び方を整理します。

民間給与実態統計調査とは

国税庁の民間給与実態統計調査は、統計法に基づく基幹統計(国の特に重要な統計)です。昭和24年分から続いており、令和6年分が第76回にあたります。*1 民間の事業所で働く人の1年間の給与を、給与の額や事業所・企業の規模ごとに明らかにすることを目的としています。

国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査について採用の観点で整理した図。統計法に基づく基幹統計で昭和24年分から始まり今回が第76回であること、標本事業所から得た値に抽出率等の逆数を乗じて全体を推計するサンプル調査であること、数えるのは民間の事業所の給与所得者で求人数でも企業数でもないこと、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給料・手当403万円と平均賞与75万円の合計が平均給与478万円になること、正社員545万円と正社員以外206万円および男587万円と女333万円の内訳があること、業種別では電気・ガス・熱供給・水道業832.4万円と金融業保険業702.3万円に次いで情報通信業が659.5万円で全業種の合計が477.5万円であること、情報通信業には通信業と放送業と情報サービス業とインターネット附随サービス業と映像等制作業が含まれること、情報通信業の年齢階層別平均給与が20〜24歳374.7万円から55〜59歳882.3万円まで開き60〜64歳は639.1万円に下がること、勤続年数別では1〜4年548.3万円から30〜34年905.5万円まで開き35年以上は768.2万円に下がること、勤続1〜4年が65万7409人で全体の32.3パーセントを占めること、令和元年分に復元方法を変更し令和4年分に労働力調査をベンチマークとした処理を廃止したため年次比較に注記があること、職種別の内訳はなく業種は14分類までであることをまとめた図

全員を調べる調査ではありません。一部の事業所を標本として選び、その回答から全体の給与額を推計するサンプル調査です。対象は民間の事業所で給与を受け取る人(給与所得者)です。求人の数や企業の数を数える調査ではないため、求人の動きを見たいときは別の統計を使います。

平均給与は、1年を通じて勤務した給与所得者について公表されています。令和6年分の結果は令和7年9月に公表されました。「令和6年分」は2024年の1年間の給与を指し、公表はその翌年になります。

平均給与478万円の内訳

令和6年分の平均給与は478万円で、平均給料・手当の403万円と平均賞与の75万円を合わせた額です。前年と比べると、平均給料・手当は3.8%、平均賞与は4.5%増えました。平均給与の伸びは3.9%で、平成3年分の5.0%以来の大きさとされ、4年続けての増加です。*1

年収を賞与込みで示すなら478万円、月々の給与を中心に考えるなら賞与を含まない403万円のほうを見ます。賞与は年によって上下する部分で、令和6年分の75万円は2年ぶりの増加でした。正社員(正職員)の平均は545万円、正社員(正職員)以外は206万円です。男性2925万人の平均は587万円、女性2212万人の平均は333万円でした。

情報通信業の平均給与

業種は、国の産業の分け方である日本標準産業分類に基づく14の業種に分けられています。情報通信業には、通信業、放送業、情報サービス業、インターネット附随サービス業、映像・音声・文字情報制作業の5つが含まれます。*2 情報サービス業だけでなく、通信業や放送業も同じ区分で集計されています。

業種別の平均給与は第8表に載っています。情報通信業は659万5千円で、電気・ガス・熱供給・水道業の832万4千円、金融業,保険業の702万3千円に次いで、14業種の中で3番目に高い値です。全業種の平均(第8表の合計欄)は477万5千円で、報道資料の478万円はこれを万円の単位に丸めた値です。低い側では宿泊業,飲食サービス業が279万3千円、サービス業が389万1千円でした。男女別では、情報通信業の男性が728万7千円、女性が500万3千円です。*4 差を計算すると、情報通信業は全業種の平均より182万円高くなります。ただし、この値は若い人も長く勤めている人も合わせた全体の平均です。

自社の事業によっては、別の業種の値のほうが近いこともあります。情報通信機械器具製造業や電子部品・デバイス・電子回路製造業は製造業に入ります。学術・開発研究機関、専門サービス業、広告業、技術サービス業は、学校教育などと一緒に「学術研究,専門・技術サービス業,教育,学習支援業」という1つの区分にまとめられています。

同じ「情報通信業」という名前でも、統計によって含む業種が違います。総務省の情報通信業基本調査は対象の業種の取り方が別で、この点は「情報通信業基本調査の対象は4業種、情報サービス業は入らない」で扱っています。2つの調査の数字を、同じ業種の値として比べないようにします。

年齢と勤続年数による違い

情報通信業の中でも、年齢によって平均給与は大きく変わります。20〜24歳は374万7千円、25〜29歳は489万8千円、30〜34歳は552万9千円、40〜44歳は709万円です。55〜59歳の882万3千円が最も高く、60〜64歳では639万1千円に下がります。*5

表1:情報通信業の勤続年数別の給与所得者数と平均給与(2024年分)
勤続年数 給与所得者数 平均給与
1〜4年 65万7,409人 548万3千円
5〜9年 44万8,434人 580万7千円
10〜14年 24万4,051人 661万7千円
15〜19年 22万1,291人 738万2千円
20〜24年 15万4,084人 849万5千円
25〜29年 11万3,642人 888万3千円
30〜34年 10万1,784人 905万5千円
35年以上 9万2,866人 768万2千円
合計 203万3,561人 659万5千円

表1のとおり、勤続1〜4年の平均給与は、業種全体の659万5千円より111万2千円低くなります。*6この層は65万7409人で、人数から計算すると情報通信業全体の32.3%、およそ3人に1人にあたります。長く勤めている側では30〜34年の905万5千円が最も高く、35年以上は768万2千円です。

中途採用で入社する人は、入社してしばらくは勤続年数の短い層に数えられます。業種全体の平均だけを年収の目安にすると、この層の平均より100万円以上高い値を見ていることになります。

年をまたいで比べるときの注意

この調査は、推計の方法が何度か変わっています。令和元年分には、回答する事業所の負担を軽くするために抽出率を変え、それに合わせて全体を推計する方法も変えました。同じ年は、緊急事態宣言の発令を受けて事業所への回答内容の問い合わせや回答の催促を取りやめたため、調査票の回収率が例年より下がっています。

令和4年分には、税務データを使って欠けている値を補う方法を取り入れ、総務省の労働力調査を基準(ベンチマーク)とした処理をやめました。業種の区分も、平成19年分に10分類から14分類へ細かくなり、翌年にも組み替えがありました。情報通信業という区分ができたのは平成19年分からです。*2 報道資料も、平成25年分以前は推計の方法が違うことに留意するよう書いています。*1

年収の目安に使うなら、年ごとの推移を追うより、直近の年分の値を使うほうが確実です。過去の年と比べる必要があるときは、報告書にある変更点の一覧で、その年に方法の変更がなかったかを確かめておきます。

年収の目安にどの値を選ぶか

ここまでの値を、年収の目安を決める手順にまとめると4つになります。1つ目は、募集する人がどの層に近いかを先に決めることです。入社して数年の人と同じ水準に置くなら勤続1〜4年の548万3千円、10年目前後の人と並べるなら10〜14年の661万7千円が近い値です。年齢で考えたいときは、第12表の年齢別の値を使います。

2つ目は、賞与を含めるかどうかを決め、平均給与と平均給料・手当のどちらを使うかを選ぶことです。3つ目は、情報通信業の区分が自社の事業に合っているかを確かめることです。機器の開発に近いなら製造業、技術サービスに近いなら学術研究,専門・技術サービス業,教育,学習支援業の値も見ておきます。

4つ目は、どの表の値かを書き留めることです。業種別は第8表、業種別・年齢階層別は第12表、業種別・勤続年数別は第15表と、表ごとに値が違います。社内で共有するときは、表の番号と何年分の値かまで添えておくと、数字の食い違いを防げます。

この調査に載っていないこと

民間給与実態統計調査には、職種別の内訳がありません。業種は14分類までで職種の区分は設けられていないため、エンジニアだけの平均給与はこの調査からは出せません。*2 勤続年数も在籍している長さを表すだけで、技能の水準を表すものではありません。求める技能は、自社で採用要件として書き出す必要があります。

職種ごとの水準を見たいときは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査のように、職種の区分を持つ統計を使います。*3 統計ごとの使い分けは「エンジニアの年収レンジと公的統計の使い方」で、初任給の公的な数字が複数ある理由は「初任給の公的な数字は2つある、定義の違い」で扱っています。

地域の区分も国税局別までで、都道府県別の平均給与は公表されていません。採用する地域を検討するときは、「就業構造基本調査とは、採用地域を決める前に見る職業別データ」で扱っている統計のほうが向いています。

まとめ:平均給与で確かめておきたい3つの点

民間給与実態統計調査の平均給与を年収の目安に使ううえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、賞与を含めるかどうかを決めて、平均給与と平均給料・手当のどちらを見るかを選ぶこと。第二に、情報通信業の区分が自社の事業に合っているかを確かめ、募集する人に近い層を年齢別や勤続年数別の値から選ぶこと。第三に、社内で共有するときは、どの表の値か、何年分の値かまで書き添えることです。この3点を踏まえておけば、「同じ調査を見たはずなのに、人によって挙げる数字が違う」という事態を避けやすくなります。年収の目安の決め方や、社員と業務委託のどちらで人を探すかに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

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よくある質問

年の途中で入社した人は、平均給与に含まれますか

含まれません。平均給与は、1年を通じて勤務した給与所得者5137万人についての値です。年の途中で入社や退職があった人も含めた民間の給与所得者は6077万人で、前年より9万人増えています。*1

賃金構造基本統計調査の値と組み合わせて使えますか

2つの値を足したり平均したりはできません。民間給与実態統計調査は給与を支払う会社(源泉徴収義務者)を通じて集めた1年間の給与、賃金構造基本統計調査は事業所への調査による月額と年間の賞与で、集計の仕方が違います。*3 同じ業種名や職種名でも、別々の数字として並べて見ます。

民間の事業所が支払った給与の総額はどのくらいですか

令和6年分は241兆4388億円で、前年より8兆5316億円増えました。源泉徴収された所得税額は11兆1834億円で、前年より8227億円減っています。*1

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出典

  1. *1 参考:国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査結果について」(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/minkan_2025/pdf/01.pdf)。調査の概要と平均給与・給与総額・納税者割合の一次情報として(2026年9月確認)
  2. *2 参考:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査 -調査結果報告-」(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2024/pdf/R06_001.pdf)。業種の分類と近年における主な変更点等の一次情報として(2026年9月確認)
  3. *3 参考:国税庁「標本調査結果(令和6年分 民間給与実態統計調査)」(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2024/minkan.htm)。統計表の構成と地域区分の所在として(2026年9月確認)
  4. *4 参考:国税庁「第8表 業種別及び給与階級別の総括表」(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2024/excel/R06_08.xlsx)。業種別の平均給与の一次情報として(2026年9月確認)
  5. *5 参考:国税庁「第12表 業種別及び年齢階層別の給与所得者数・給与額」(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2024/excel/R06_12.xlsx)。情報通信業の年齢階層別の値と給与総額として(2026年9月確認)
  6. *6 参考:国税庁「第15表 業種別及び勤続年数別の給与所得者数・給与額」(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2024/excel/R06_15.xlsx)。情報通信業の勤続年数別の値として(2026年9月確認)




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