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納期通りは89.3%|遅れた120件の53.3%は30日以上
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 納期通りは89.3%:1,311件のうち1,171件です*2。
- 遅延は120件で9.2%:10社に1社弱の水準です*2。
- 遅延の53.3%が30日以上:起きると大きくなります*2。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
遅れているとき、その遅れが異常なのか、よくあることなのかを言えるでしょうか。
判断には分布が要ります。どれくらいの割合が納期を守り、遅れる場合は何日ずれるのかという形の数字です。
IPAが公開している開発プロジェクトの実績データでは、納期通りが1,311件のうち1,171件で89.3%でした*1*2。
遅延したのは120件、9.2%です*2。つまり遅れそのものは多数派ではありません*2。
ただし遅延した120件のうち64件は30日以上で、53.3%を占めます*2。起きたときの幅が大きくなります*2。
目次
遅れの基準は分布で持てる
遅れの報告に対して最初に必要なのは、比べる先です。自社の何日という数字だけでは、判断がつきません。
比べる先になる資料があります*1。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」で、公開は2022年9月26日、最終更新は2025年8月28日と記されています*1。
規模も示されています*1。これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析したと書かれています*1。
先に性質を書きます*1。この資料には「事業終了に伴い今後の発行予定はございません」と明記されています*1。最新の調査ではありません*1。
沿革も書かれています*1。2005年から収集を続け、2020年に書籍版の名称を変更して現在の形になったとされています*4。
構成も確かめられます*4。本編のほかに業種編3編、サマリー版、マンガ解説版、グラフデータが公開されています*4。
業種編の対象も書かれています*1。プロジェクト数の多い金融・保険業、情報通信業、製造業の3業種について、本編と同一の分析を行ったとされています*1。
数値の扱いを書きます*2*3。件数は本編の表に示された値をそのまま引き、合計と割合はその件数から筆者が算出しました*2*3。
グラフデータの著作権はIPAが保有しています*3。使用条件に従い、著作権表示としてCopyright 2022 IPAを記します*3。
照合もしました*2*3。グラフデータには同じ設問の値が1行1プロジェクトの形で入っており、数えた件数が本編の表と一致することを確認しています*2*3。
母数も押さえます*2。今回使う設問群のNは1,292から1,311で、Nと未回答を足すといずれも1,479になります*2。
単位を確認します*2。数えているのはプロジェクトの件数で、企業数でも人数でもありません*2。
サマリー版の性質も書かれています*1。本編のサマリーを編集可能な形式でまとめ、社内での啓蒙や教育に使えるようにしたとされています*1。
まず工期の実績から見ます*2。
納期通りは1,171件で89.3%
本編の表1-3-7.2は、プロジェクト実績に対する自己評価を5段階で示しています*2。
工期の選択肢は5つです*2。納期より前倒し、納期通り、納期を10日未満遅延、納期を30日未満遅延、納期を30日以上遅延です*2。
区分の基準は日数です*2。遅延の程度を10日と30日という境目で区切る形になっており、率ではなく実日数で聞いています*2。
いちばん多いのは納期通りでした*2。1,171件で、N1,311に対して89.3%です*2。
前倒しは少数です*2。「納期より前倒し」は20件、1.5%にとどまります*2。
この2つを合わせると1,191件になります*2。計画以内は90.8%です*2。
本編もそう記しています*2。工期はほぼ計画以内が約90%だと書かれています*2。
未回答も表にあります*2。工期の未回答は168件で、Nの1,311と足すと1,479になります*2。
ここから読めるのは水準です*2。9割のプロジェクトは納期通りに終わっているという分布です*2。
つまり遅れは例外の側に入ります*2。自社が遅れているなら、業界の多数派からは外れた状態です*2。
ただし、この表は自己評価です*2。誰がどの基準で判断したかは示されていないため、厳密な実測とは違います*2。
資料は遅延の原因も聞いていません*2。なぜ遅れたのかは、この表からは読めません*2。
次に、遅延した側の内訳を見ます*2。
遅延した120件の内訳
遅延の選択肢は3段階に分かれています*2。10日未満、30日未満、30日以上です*2。
10日未満の遅延は23件、1.8%でした*2。
30日未満の遅延は33件、2.5%です*2。
30日以上の遅延がいちばん多くなります*2。64件で、4.9%でした*2。
3つを合わせると120件です*2。N1,311に対して9.2%になります*2。
この9.2%は件数から算出しています*2。1.8%と2.5%と4.9%という丸めた割合を足したものではありません*2。
ここに順序の逆転があります*2。遅延の程度が大きいほど件数が多く、30日以上が最も多い区分です*2。
遅延の中での割合を出すと形が見えます*2。120件のうち64件が30日以上で、53.3%です*2。
つまり遅れた場合の半分以上は、1か月を超える遅れになります*2。10日未満で収まるのは120件のうち23件、19.2%にとどまります*2。
実務上の意味はここです。遅れが見えた時点で、10日未満で戻る前提を置くのは分布に合いません。
ただし資料は遅延の期間の内訳を、これ以上細かくは示していません*2。30日以上が何日なのかは読めません*2。
要員が足りない状態で刷新に踏み込んだ場合の集計は別にあります。レガシー刷新を止めるのは理解不足ではなく要員の不足で扱っています。
コストと品質の実績も並べる
同じ表にはコストと品質の実績も載っています*2。
コストの選択肢は超過の幅で分かれます*2。計画より10%以上少ないコストで達成、計画通り、30%以内の超過、50%以内の超過、50%を超える超過です*2。
計画通りが998件で76.3%でした*2。10%以上少ないコストで達成が126件9.6%です*2。
2つを合わせると1,124件になります*2。N1,308に対して85.9%です*2。
超過の側は184件でした*2。14.1%で、内訳は30%以内が125件、50%以内が24件、50%超が35件です*2。
品質は稼動後不具合数で測られています*2。計画値以下が952件73.7%、20%以上少ないが123件9.5%です*2。
2つを合わせると1,075件です*2。N1,292に対して83.2%になります*2。
超過は217件16.8%でした*2。50%以内が158件、100%以内が27件、100%超が32件です*2。
本編はこの3つをまとめて記しています*2。コストはほぼ計画以内が約86%、品質は約83%、工期は約90%と書かれています*2。
図表には対応関係も添えられています*2。この表と図は過去のデータ白書2018の図表に対応すると注記されており、同じ形の集計が続いていることが分かります*2。
並べるときの注意もあります*2。3つはNが1,292から1,311まで違うため、割合の差を細かく論じることはしません*2。
言えるのは順序だけです*2。計画以内の割合は工期が上端、コストが中間、品質が下端という並びになっています*2。
次に、計画の側を見ます*2。
計画の段階では94.5%が根拠明確
本編の表1-3-7.1は、プロジェクト計画に対する自己評価を3段階で示しています*2。
工期の選択肢は3つです*2。工期計画の根拠が明確で実行可能性を検討済み、根拠が不明確または実行可能性を未検討、計画なしです*2。
根拠が明確とされたのは1,228件でした*2。N1,300に対して94.5%です*2。
根拠が不明確または未検討は54件4.2%、計画なしは18件1.4%です*2。
コストと品質も同じ水準でした*2。コストは1,211件92.9%、品質は1,209件92.8%で、どちらもN1,303です*2。
未回答も同じ数でした*2。計画の評価3項目の未回答はいずれも176件で、コストと品質のNと足すと1,479になります*2。
本編の記述もあります*2。コスト、工期、品質の計画については9割弱から9割強のプロジェクトが実行可能性を検討済みとしていると書かれています*2。
時系列にも触れています*2。これは2014年度から2019年度と比較してあまり差はないとされています*2。
ここが読みどころです*2。計画の根拠が明確とされた割合は94.5%で、遅延の9.2%より大きく離れています*2。
ただし因果は書けません*2。資料は計画の評価と実績の評価を突き合わせた集計を示していないため、根拠の明確さと遅延の関係は読めません*2。
言えるのは、計画が明確だという自己評価が多数派だという事実です*2。それでも遅れる案件が9.2%あります*2。
工期そのものの水準は別に整理しました。外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場で同じ資料の工期を扱っています。
次に、自己評価の全体を見ます*2。
QCD全て成功は71.3%
本編の図1-3-7.3は、プロジェクト成否の自己評価を示しています*2。
選択肢は4つです*2。QCD全て成功、QCDのうち2つは成功、1つだけ成功、成功が0です*2。
QCD全て成功が671件でした*2。N941に対して71.3%です*2。
2つは成功が175件18.6%、1つだけ成功が68件7.2%、成功が0が27件2.9%です*2。
本編の記述もあります*2。QCDがすべて成功とするプロジェクトが7割強、2つは成功が約2割とされています*2。
ここで数字の関係を確かめます*2。工期だけを見た計画以内は90.8%でしたが、QCD全て成功は71.3%です*2。
ただしNが違います*2。前者は1,311件、後者は941件が母数なので、同じプロジェクトの集合ではありません*2。
資料は基準も示していません*2。何をもって成功とするかは回答したプロジェクト側の判断に委ねられています*2。
顧客満足度についての主観評価も同じ図表群にあります*2。十分に満足しているが245件32.0%、概ね満足しているが454件59.3%で、N765です*2。
やや不満な点があるは56件7.3%、不満足であるは10件1.3%でした*2。資料では受注した側の主観評価として示されています*2。
この評価も自己申告です*2。そのため満足の割合から品質の水準を論じることはしません*2。
2つの図の母数も違います*2。成否の自己評価はN941、顧客満足度の主観評価はN765で、同じプロジェクトの集合ではありません*2。
PMの体制を外から補う場合の考え方は別に整理されています。ITプロジェクトマネージャー(PM)不足を外部委託で補うが参考になります。
立て直しの順番
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*2。
| 指標 | 計画以内の計 | 超過の計 | N |
|---|---|---|---|
| 工期(納期に対する遅延) | 1,191件 90.8% | 120件 9.2% | 1,311 |
| コスト | 1,124件 85.9% | 184件 14.1% | 1,308 |
| 品質(稼動後不具合数) | 1,075件 83.2% | 217件 16.8% | 1,292 |
1段目は言い切ることです。今の遅れが何日なのかを、10日未満か30日未満か30日以上かで1つに決めます。
この区分は資料の選択肢に合わせています*2。分布と比べられる形にしておくと、社内での説明が短くなります*2。
2段目は境目で扱いを分けることです。10日未満と30日以上では、打てる手が変わります。
分布もその形です*2。遅延した120件のうち53.3%が30日以上で、10日未満は19.2%にとどまります*2。
3段目は計画の根拠を見ることです。当初の工期の根拠が資料として残っているかを確かめます。
残っていれば、増えた分と当初分を分けて数えられます。残っていない場合は、まず現状を書き出す作業が先に来ます。
4段目は人を当てることです。分けて数えた結果、増えた分が特定できた範囲にだけ人を置きます。
順番を逆にすると進みません。日数を言い切る前に人数を決めると、何人でどこまで戻すのかが決まりません。
テストの山を外に出す場合の体制の作り方は別に整理されています。ソフトウェアテスト外注で体制構築する進め方と実践ポイントをご覧ください。
実務では、30日以上の遅れが見えている工程を切り出す形になります。社員を計画の作り直しに寄せ、切り出した範囲を外部の要員に任せる形が取れます。
期間を区切って入れるなら、フリーランスを含む業務委託の使い方が合います。戻すまでの数か月だけ人を足し、追いついたら戻す形にします。
この集計から読めないことも押さえます*2。遅延の原因や内訳、要員を追加したかどうか、遅延と要員数の関係は含まれていません*2。
時点の限界もあります*1。この資料は2022年の公開で、事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されているため、それより後の傾向は読めません*1。
それでも使い道はあります*2。遅れの水準を1,311件の分布という形で社内に示し、10日か30日かで扱いを分ける根拠にできます*2。
まとめ:日数で言い切る
第一に、資料の性質です。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」は公開が2022年9月26日、最終更新が2025年8月28日となっており、これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析されています。事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されているため、最新の調査ではありません。件数は本編の表に示された値で、合計と割合はその件数から筆者が算出しました。グラフデータの著作権はIPAが保有しており、著作権表示としてCopyright 2022 IPAを記します。第二に、工期の実績です。納期通りが1,171件89.3%、納期より前倒しが20件1.5%で、合わせて1,191件90.8%が計画以内でした。Nは1,311で、未回答168件を足すと1,479になります。第三に、遅延の内訳です。10日未満が23件1.8%、30日未満が33件2.5%、30日以上が64件4.9%で、合わせて120件9.2%です。遅延した120件のうち30日以上は53.3%、10日未満は19.2%でした。第四に、コストと品質です。計画以内はコストが1,124件85.9%でN1,308、品質が1,075件83.2%でN1,292です。本編はコストが約86%、品質が約83%、工期が約90%と記しています。Nが違うため差は細かく論じません。第五に、計画の側です。工期計画の根拠が明確で実行可能性を検討済みは1,228件94.5%でN1,300、コストは92.9%、品質は92.8%でどちらもN1,303でした。本編は2014年度から2019年度と比較してあまり差はないと記しています。第六に、自己評価です。QCD全て成功は671件71.3%でN941、2つは成功が175件18.6%です。基準は示されていないため、この割合から質は論じられません。第七に、限界です。遅延の原因や内訳、要員を追加したかどうか、遅延と要員数の関係、2022年より後の傾向は今回の集計に含まれていません。
よくある質問
納期通りに終わるプロジェクトはどれくらいありますか。
IPAのソフトウェア開発分析データ集2022の本編の表1-3-7.2では、実績の評価で「納期通り」が1,171件、N1,311に対して89.3%でした。「納期より前倒し」の20件1.5%を加えると1,191件90.8%が計画以内です。本編も工期はほぼ計画以内が約90%と記しています(確認日2026年9月3日)。
遅延した場合、どれくらい遅れていますか。
遅延は3段階で示されています。10日未満が23件1.8%、30日未満が33件2.5%、30日以上が64件4.9%で、合わせて120件9.2%です。遅延した120件のうち30日以上が53.3%を占め、10日未満で収まるのは19.2%にとどまります。
コストや品質と比べて工期は守られていますか。
計画以内の割合は工期が1,191件90.8%、コストが1,124件85.9%、品質が1,075件83.2%という並びです。ただしNがそれぞれ1,311件、1,308件、1,292件と違うため、差を細かく論じることはできません。本編はコストが約86%、品質が約83%、工期が約90%と記しています。
計画の段階での自己評価はどうなっていますか。
表1-3-7.1では、工期計画の根拠が明確で実行可能性を検討済みが1,228件、N1,300に対して94.5%でした。コストは92.9%、品質は92.8%です。本編は2014年度から2019年度と比較してあまり差はないと記しています。ただし計画の評価と実績の評価を突き合わせた集計は示されていません。
この数字は今も使えますか。
時点に注意が必要です。この資料は2022年9月26日公開、最終更新2025年8月28日となっており、事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されています。そのため2022年より後の傾向は読めません。分かるのは、収集された5,546プロジェクトの範囲での分布です。
出典
- *1 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。公開日・最終更新日・5,546プロジェクト・事業終了に伴う発行予定なしの記述の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。表1-3-7.1・表1-3-7.2・図1-3-7.3の件数と選択肢の定義、および本編の記述として(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022グラフデータ」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000103288.zip)。行単位の値の確認として。著作権はIPAが保有(Copyright 2022 IPA)(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/index.html)。2005年からの沿革と業種編3編・サマリー版・グラフデータという構成の記述として(2026年9月確認)