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なぜ設計書の量が読めないのか、規模あたりで3.8倍ひらく
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 基本設計は10.62ページ:1KSLOCあたりの中央値です*2。
- P25とP75で3.79倍:5.05から19.14までひらきます*2。
- 改良開発は平均が使えない:中央値の23.7倍になります*2。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
担当者が抜けたあと、引き取る人が読む設計書はどれくらいの量になるでしょうか。
手がかりは、規模あたりのページ数という形で公開された分布です。
IPAの資料では、新規開発の基本設計書が1KSLOCあたり10.62ページと示されています*1*2。
ただし幅が広いです*2。P25が5.05、P75が19.14で、その差は3.79倍あります*2。
つまりコードの規模が分かっても、渡す資料の量は事前に読めません*2。
目次
渡す量は規模あたりで測れる
引き取りの重さを見積るには、渡す資料の量を数字で置く必要があります。何ページあるのかが分からないと、何日かかるのかも決まりません。
その量を業界の分布として測れる資料があります*1。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」で、公開は2022年9月26日、最終更新は2025年8月28日と記されています*1。
規模も示されています*1。これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析したと書かれています*1。
性質を先に書きます*1。この資料には「事業終了に伴い今後の発行予定はございません」と明記されています*1。最新の調査ではありません*1。
構成も確かめられます*4。本編のほかに業種編3編、サマリー版、マンガ解説版、グラフデータが公開されています*4。
沿革も書かれています*4。IPAは2005年からエンタプライズ分野の開発データを収集し、2020年に書籍版の名称を変えて現在の形になったとされています*4。
業種編の対象も示されています*1。プロジェクト数の多い金融・保険業、情報通信業、製造業の3業種について、本編と同一の分析を行ったとされています*1。
指標の名前も資料にあります*2。SLOC規模あたりの設計書ページ数を、設計文書化密度として分析したと書かれています*2。
単位はページ/KSLOCです*2。1,000行あたり何ページの設計書があるかという形です*2。
対象の条件も添えられています*2。開発5工程のフェーズがすべてそろい、主たる開発言語が明確で、実効SLOCの実績値が0より大きい案件です*2。
もう1つ条件があります*2。基本設計書と詳細設計書の文書量が、どちらも0より大きいことが求められています*2。
数値の扱いを書きます*2*3。四分位は本編の表に示された値をそのまま引き、倍率は表の値から筆者が算出しました*2*3。
グラフデータの著作権はIPAが保有しています*3。使用条件に従い、著作権表示としてCopyright 2022 IPAを記します*3。
まず新規開発の値を見ます*2。
新規開発の基本設計は10.62ページ
本編の表A1-3-1は、新規開発のSLOC規模あたりの設計書ページ数を示しています*2。Nは112です*2。
基本設計の中央値は10.62ページ/KSLOCでした*2。1,000行あたり10ページ強という水準です*2。
本編もそう記しています*2。基本設計書のページ数の中央値は10ページ/KSLOC強であるとされています*2。
四分位も示されています*2。P25が5.05、P75が19.14です*2。
両端も出ています*2。下端が0.57、上端が119.75でした*2。
平均と標準偏差もあります*2。平均は15.74、標準偏差は18.73です*2。
平均が中央値より高い形です*2。10.62に対して15.74なので、上側に引っ張られた分布だと分かります*2。
実務では中央値を使います*2。上端が119.75まで伸びているため、平均は当たりの値として置きにくくなります*2。
10KSLOCの規模なら約106ページです*2。中央値10.62に10を掛けた値です*2。
図表の形も添えられています*2。この表には箱ひげ図が併載され、過去のデータ白書2018の図表に対応すると注記されています*2。
ただしこれは当たりの値にすぎません*2。次に幅を見ます*2。
設計の工程そのものを外に任せる進め方は別に整理されています。基本設計・詳細設計の外注が参考になります。
まず詳細設計の側も押さえます*2。
詳細設計は13.21ページで基本設計より多い
同じ表には詳細設計の値も並んでいます*2。Nは基本設計と同じ112です*2。
中央値は13.21ページ/KSLOCでした*2。基本設計の10.62より多い値です*2。
四分位も広くなります*2。P25が6.34、P75が24.47です*2。
両端はさらに離れます*2。下端が0.17、上端が378.26でした*2。
平均は21.99、標準偏差は42.05です*2。基本設計の18.73より大きいばらつきです*2。
2つを足すと目安が出ます*2。中央値どうしを足すと1KSLOCあたり23.83ページになります*2。
ただし足し算には注意が要ります*2。中央値はそれぞれ別の案件で実現した値なので、同じ案件の合計ではありません*2。
読み方を限定します*2。基本設計と詳細設計のどちらが多いかという順序は言えますが、合計の水準は断定できません*2。
順序自体は他の種別でも同じです*2。改良開発も再開発も、詳細設計のほうが基本設計より中央値が高くなります*2。
資料は理由を説明していません*2。なぜ詳細設計のほうが多いのかは書かれていません*2。
P25の並びだけは種別で違います*2。詳細設計のP25は新規開発が6.34、改良開発が8.47、再開発が9.95で、再開発がいちばん高い値です*2。
文書を書く人手そのものを外から補う話は別に整理されています。テクニカルライター不足を外注・委託で補う進め方をご覧ください。
次に、幅の大きさを見ます*2。
P25とP75で3.79倍ひらく
幅を倍率にすると、この指標の性質が見えます*2。
基本設計はP75をP25で割ると3.79倍です*2。19.14を5.05で割った値です*2。
詳細設計は3.86倍でした*2。24.47を6.34で割った値です*2。
改良開発の基本設計も同じ水準です*2。23.22を6.02で割ると3.86倍になります*2。
再開発ではさらに広がります*2。20.95を4.21で割ると4.98倍です*2。
つまり真ん中の半分の案件だけでも4倍前後ひらきます*2。上下の四分の一を含めればさらに広い範囲です*2。
ここが実務での結論につながります。コードの規模が分かっても、設計書の量は4倍の幅の中のどこかにしかなりません。
関連する指標も同じ資料にあります*2。設計書のページ数あたりのレビュー工数は、基本設計で中央値0.335人時/ページと示された表があります*2。
10KSLOCの案件で計算すると幅が見えます*2。基本設計はP25で約50ページ、P75で約191ページです*2。
同じ規模でも140ページ以上の差になります*2。引き取りの計画をページ数で置くなら、この幅を前提にする必要があります*2。
資料は幅の理由を説明していません*2。設計の方針や言語の違いによるものかは書かれていません*2。
層別定義に言語の条件はあります*2。主たる開発言語が明確なものという指定が入っています*2。
要員が足りない状態で刷新に踏み込んだ場合の集計は別にあります。レガシー刷新を止めるのは理解不足ではなく要員の不足で扱っています。
次に、開発の種別ごとの違いを見ます*2。
改良開発では平均が使えない
本編の表A1-3-2は改良開発を示しています*2。Nは232で、3つの種別の中で最も多い件数です*2。
中央値は基本設計が11.72、詳細設計が16.41でした*2。新規開発より高い値です*2。
本編もそう記しています*2。改良開発は新規開発よりも設計書のページ数は多いとされています*2。
ところが平均が異常な値になります*2。基本設計の平均は277.87で、中央値11.72の23.7倍です*2。
詳細設計はさらに離れます*2。平均が1969.16で、中央値16.41の120.0倍になります*2。
標準偏差も大きいです*2。基本設計が2839.53、詳細設計が27603.71です*2。
原因は上端の値です*2。基本設計の上端が38461.54、詳細設計の上端が419538.46と示されています*2。
1件でも極端な値があると平均は動きます*2。中央値と平均が2桁違う指標では、平均を根拠にすると判断を誤ります*2。
この記事で平均を使わない理由がここです*2。改良開発では中央値と四分位だけを見ます*2。
資料は外れ値の扱いを説明していません*2。なぜこれほど大きい値が入っているのかは書かれていません*2。
四分位で見れば新規開発と近い形です*2。P25が6.02、P75が23.22で、倍率も3.86倍です*2。
下端も押さえます*2。改良開発は基本設計が0.06、詳細設計が0.05で、新規開発の0.57と0.17よりさらに低い値です*2。
次に、再開発と対象の条件を押さえます*2。
再開発はほぼ同じ/設計書がある案件だけの分布
本編の表A1-3-3は再開発を示しています*2。Nは30です*2。
中央値は基本設計が10.01、詳細設計が14.03でした*2。
本編もそう記しています*2。再開発は新規開発とほぼ同じのページ数であるとされています*2。
ただしNが小さいです*2。30件なので、幅を持たせて読む必要があります*2。
3つの種別を並べると中央値は近い範囲に入ります*2。基本設計が10.01から11.72、詳細設計が13.21から16.41です*2。
ここで対象の条件に戻ります*2。層別定義には、基本設計書と詳細設計書の文書量がどちらも0より大きいという指定があります*2。
つまり設計書が残っていない案件は、この分布に入っていません*2。
これは引き取りの話にとって重要な限界です*2。設計書が無い案件がどれくらいあるのかは、この表からは読めません*2。
読めるのは、設計書がある案件でどれくらいの量になるかという分布だけです*2。自社に設計書がある場合の目安として使います*2。
ページの中身も分かりません*2。更新されているか、実装と合っているかは集計に含まれていません*2。
3つの表はいずれも箱ひげ図が併載されています*2。分布の形を目で確かめる用途にはそちらが向きます*2。
読んで理解する工数も含まれません*2。資料が示すのはページ数だけです*2。
体制の相場そのものは別の指標で測れます。外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場で同じ資料の別の指標を扱っています。
引き取る量を見積る順番
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*2。
| 種別と工程 | P25 | 中央 | P75 | N |
|---|---|---|---|---|
| 新規開発・基本設計 | 5.05 | 10.62 | 19.14 | 112 |
| 新規開発・詳細設計 | 6.34 | 13.21 | 24.47 | 112 |
| 改良開発・基本設計 | 6.02 | 11.72 | 23.22 | 232 |
| 改良開発・詳細設計 | 8.47 | 16.41 | 33.03 | 232 |
| 再開発・基本設計 | 4.21 | 10.01 | 20.95 | 30 |
| 再開発・詳細設計 | 9.95 | 14.03 | 23.78 | 30 |
1段目は規模を出すことです。引き取る対象のコード量をKSLOCの単位で押さえます。
2段目は当たりのページ数を置くことです。種別に合う行の中央値を掛けます。
3段目は幅を持たせることです。P25とP75を掛けて、下と上の見込みを2つ作ります。
10KSLOCの新規開発なら、基本設計は約50ページから約191ページの幅になります*2。中央値だけで置くと約106ページです*2。
4段目は実物を数えることです。幅の中のどこにいるかは、実際のファイルを数えないと決まりません。
順番を逆にすると進みません。実物を数える前に人数と日数を決めると、4倍の幅のどこに当たるかで計画が崩れます。
改良開発の案件では平均を使わないようにします*2。中央値と四分位だけを見る形にします*2。
設計書が無い案件では、この手順そのものが使えません*2。分布が設計書のある案件だけを対象にしているためです*2。
その場合は書き出しから始める作業になります。引き取りの前に、現状を残す工程が入ります。
読む工数の当たりも同じ資料から置けます*2。ページあたりのレビュー工数が基本設計で0.335人時なら、106ページで約36人時という順序になります*2。ただしレビューと読み込みは別の作業なので、目安の域を出ません*2。
実務では、読み込みと書き足しを同時に進めることになります。社員を判断に寄せ、読み込みと整理を外部の要員に任せる形が取れます。
期間を区切って入れるなら、フリーランスを含む業務委託の使い方が合います。引き取りが終わるまでの数か月だけ人を足し、落ち着いたら戻す形にします。
この集計から読めないことも押さえます*2。設計書が無い案件の割合、ページの中身や更新状況、読んで理解する工数、ページ数と引き取りやすさの関係は含まれていません*2。
時点の限界もあります*1。この資料は2022年の公開で、事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されているため、それより後の傾向は読めません*1。
まとめ:幅を前提に置く
第一に、資料の性質です。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」は公開が2022年9月26日、最終更新が2025年8月28日となっており、これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析されています。事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されているため、最新の調査ではありません。四分位は本編の表に示された値で、倍率は表の値から筆者が算出しました。グラフデータの著作権はIPAが保有しており、著作権表示としてCopyright 2022 IPAを記します。第二に、指標です。SLOC規模あたりの設計書ページ数で、単位はページ/KSLOC、資料は設計文書化密度と呼んでいます。第三に、新規開発の値です。基本設計の中央値は10.62、P25が5.05、P75が19.14でNは112でした。詳細設計は中央値13.21、P25が6.34、P75が24.47です。本編も基本設計書の中央値は10ページ/KSLOC強と記しています。第四に、幅です。P75をP25で割ると基本設計が3.79倍、詳細設計が3.86倍、改良開発の基本設計が3.86倍、再開発の基本設計が4.98倍になります。10KSLOCの新規開発なら基本設計は約50ページから約191ページの幅で、中央値だけで置くと約106ページです。第五に、改良開発です。中央値は基本設計11.72、詳細設計16.41で新規開発より高く、本編も設計書のページ数は多いと記しています。ただし平均は基本設計277.87、詳細設計1969.16で、中央値の23.7倍と120.0倍になります。上端が38461.54と419538.46であるためで、平均を根拠にすると判断を誤ります。第六に、再開発です。中央値は基本設計10.01、詳細設計14.03でNは30です。本編は新規開発とほぼ同じのページ数と記しています。第七に、限界です。層別定義に設計書の文書量が0より大きいという条件があるため、設計書が残っていない案件はこの分布に入っていません。ページの中身や更新状況、読んで理解する工数、2022年より後の傾向も今回の内容には含まれていません。
よくある質問
設計書は規模あたり何ページくらいありますか。
IPAのソフトウェア開発分析データ集2022の表A1-3-1では、新規開発の基本設計書の中央値が10.62ページ/KSLOC、詳細設計書が13.21ページ/KSLOCでした。Nはどちらも112です。本編も基本設計書の中央値は10ページ/KSLOC強と記しています(確認日2026年9月4日)。
規模が分かればページ数は予測できますか。
幅が広いため予測はできません。基本設計はP25が5.05、P75が19.14で3.79倍ひらきます。詳細設計は3.86倍、再開発の基本設計は4.98倍です。10KSLOCの新規開発なら基本設計は約50ページから約191ページの幅になります。
開発の種別で違いはありますか。
中央値は近い範囲に収まります。基本設計は新規開発10.62、改良開発11.72、再開発10.01で、詳細設計は13.21、16.41、14.03です。本編は改良開発が新規開発よりページ数が多く、再開発は新規開発とほぼ同じと記しています。Nは112件、232件、30件です。
平均は使えますか。
改良開発では使えません。基本設計の平均は277.87で中央値11.72の23.7倍、詳細設計の平均は1969.16で中央値16.41の120.0倍です。上端が38461.54と419538.46であるためで、中央値と平均が2桁違う指標では平均を根拠にすると判断を誤ります。
設計書が無い案件のことは分かりますか。
分かりません。層別定義に基本設計書と詳細設計書の文書量がどちらも0より大きいという条件があるため、設計書が残っていない案件はこの分布に入っていません。読めるのは設計書がある案件でどれくらいの量になるかという分布だけです。
出典
- *1 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。公開日・最終更新日・5,546プロジェクト・事業終了に伴う発行予定なしの記述の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。表A1-3-1から表A1-3-3の四分位・平均・標準偏差・N・層別定義・設計文書化密度の説明として(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022グラフデータ」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000103288.zip)。同じ表の値の確認として。著作権はIPAが保有(Copyright 2022 IPA)(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/index.html)。業種編3編・サマリー版・グラフデータという構成の記述として(2026年9月確認)