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垂直統合と水平分業、取引先の広げ方を決める手順
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 現在の首位は24.6%:どちらかというと垂直統合型が多い、でした*1。
- 5年後の首位は25.8%:垂直統合型と水平分業型ほぼ半々、です*1。
- 垂直統合寄りは18.0ポイント差:46.9%から28.9%へ低い側に出ています*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
要員が足りないとき、まず声をかけるのは決まった委託先です。
ところがその先も埋まっていて、次の当てがない。付き合いのない相手に頼むのは手間がかかる。そこで止まります。
手がかりは、取引の形を企業に聞いた調査です。
IPAの調査では、現在の首位が「どちらかというと垂直統合型の事業が多い」で24.6%でした*1。5年後についての回答では「垂直統合型と水平分業型ほぼ半々」が25.8%で首位に変わります*1。
この調査では、垂直統合型は企業系列等の特定の企業との取引、水平分業型は不特定多数の企業との取引と注記されています*1。
目次
決まった委託先の先がない
外に出す先は、たいてい決まっています。過去に頼んだことがあり、話が早いからです。
その形は、相手が空いている限りうまく回ります。埋まった瞬間に、次の当てがないことに気づきます。
取引の形を集計した調査があります*1。IPAの「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」で、2023年6月12日に発行されました*1。
改版も記録されています*1。2023年7月25日に一部の設問の記載が改められています*1。
調査の時期も示されています*1。2022年11月から12月にかけて実施されたものです*1。
規模も書かれています*1。調査票の配布は7,864件で、回答は1,214件でした*1。
回答者の立場も示されています*1。企業の経営層や事業部門の責任者を対象としたとされています*1。
配布先も書かれています*1。組込みやIoTに関する協会や団体に加盟している企業などに配られたとされています*1。
調査項目の狙いも示されています*1。企業活動の状況のほか、組込みやIoTの産業の動向を把握するためのものとされています*1。
今回見るのはQ7です*1。取引形態について、現在と5年後の2つに分けて聞いています*1。
集計対象も設問ごとに書かれています*1。Q7はユーザー企業、メーカー企業、サブシステム提供企業、サービス提供企業、その他の5区分が対象です*1。
区分の中身も資料に定義があります*1。組込みやIoTの製品を利用して調達する側、製品を開発して提供する側、部品やサブシステムを提供する側、受託開発や教育研修や運用などのサービスを提供する側です*1。
数値の出所も断っておきます*1。比率はPowerPoint版の資料に収録されたグラフのデータ値で、図中の表示は整数に丸められています*1。この記事では小数点以下1桁に丸めたため、合計が100.1や99.9になる行があります*1。
出典はIPA「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」です*1。示された値を用いて図と表を作成する編集と加工を筆者が行いました*1。
利用の条件も資料に書かれています*1。政府標準利用規約に準拠する形で、出典の記載と、編集や加工を行った場合はその旨の記載が求められています*1。
垂直統合型と水平分業型の定義
まず言葉の中身を確かめます*1。この設問には調査票に注記があります*1。
垂直統合型は、企業系列等の特定の企業との取引とされています*1。水平分業型は、不特定多数の企業との取引です*1。
つまり相手の数と固定の度合いを聞いた設問です*1。作るものを社内でどこまで持つか、という内製と外注の別を聞いたものではありません*1。
ここを取り違えると読み方が変わります*1。垂直統合型が多いという回答は、外に出していないという意味ではありません*1。決まった相手に出している、という意味です*1。
選択肢は6つです*1。垂直統合型の事業が中心、どちらかというと垂直統合型の事業が多い、垂直統合型と水平分業型ほぼ半々、どちらかというと水平分業型の事業が多い、水平分業型の事業が中心、わからないです*1。
1つを選ぶ形です*1。複数回答ではないため、6つを足すと全体になります*1。
この記事では、上の2つを足した値を「垂直統合寄り」、下の2つを足した値を「水平分業寄り」と呼びます*1。どちらも筆者が足した呼び方で、調査の区分名ではありません*1。
区分名そのものは資料の選択肢名をそのまま使いました*1。言い換えていません*1。
現在は垂直統合寄りが46.9%
現在の分布から見ます*1。N=1,166でした*1。
首位はどちらかというと垂直統合型の事業が多い、で24.6%です*1。次が垂直統合型の事業が中心で22.3%でした*1。
この2つを足すと46.9%になります*1。半数に近い企業が、特定の相手との取引が多い側に立っている形です*1。
反対側も見ておきます*1。水平分業型の事業が中心が21.4%、どちらかというと水平分業型の事業が多いが12.3%で、合わせて33.7%でした*1。
真ん中は薄い形です*1。垂直統合型と水平分業型ほぼ半々は12.8%にとどまります*1。
6つを並べ直すと、上から24.6%、22.3%、21.4%、12.8%、12.3%、6.7%になります*1。上位3つが2割前後で並ぶ形です*1。
「わからない」も低い水準です*1。6.7%にとどまり、現在の形については答えを保留した企業が1割に届きません*1。
つまり現在については、多くの企業が自社の形を答えられています*1。そのうえで、特定の相手との取引が多い側に寄っている分布です*1。
この形は、要員の当てが決まった相手の空き具合に左右される、という状態と対応します。相手が埋まれば、そこで止まります。
委託先そのものの選び方は、開発パートナーの選び方で扱っています。
5年後の回答では「ほぼ半々」が首位
次に5年後についての回答です*1。N=1,122でした*1。
首位は垂直統合型と水平分業型ほぼ半々で25.8%です*1。現在の12.8%から13.0ポイント高い側に出ています*1。
2番目は水平分業型の事業が中心で22.3%でした*1。3番目がどちらかというと垂直統合型の事業が多いで17.3%です*1。
残りも並べます*1。どちらかというと水平分業型の事業が多いが12.9%、垂直統合型の事業が中心が11.6%、わからないが10.1%でした*1。
現在との違いは並びにも出ます*1。現在は上位3つが2割前後で拮抗していましたが、5年後の回答では首位の25.8%だけが抜けた形です*1。
2区分を足した値も出しておきます*1。垂直統合寄りが28.9%、水平分業寄りが35.2%でした*1。
現在との差はここに出ます*1。垂直統合寄りは46.9%から28.9%で18.0ポイント低い側、水平分業寄りは33.7%から35.2%で1.5ポイント高い側です*1。
つまり動いているのは主に垂直統合寄りと「ほぼ半々」で、水平分業寄りはほとんど変わっていません*1。
「わからない」も上がっています*1。6.7%から10.1%です*1。
ここで注意が要ります*1。これは同じ企業を追いかけた集計ではありません*1。現在と5年後は別々の設問で、Nも1,166と1,122で違います*1。
ですから「特定の相手から離れていく」とは書けません*1。読めるのは、5年後についての回答の分布が現在の分布と違う形になっている、というところまでです*1。
理由も聞かれていません*1。なぜその区分を選んだのかを尋ねた設問ではないため、因果については書けません*1。
従業員数で分けると形が変わる
この設問には従業員数別の集計も載っています*1。20人以下、21人から100人、101人以上の3つの層です*1。
現在の垂直統合寄りから見ます*1。20人以下が46.5%、21人から100人が43.9%、101人以上が51.2%でした*1。
上端は101人以上です*1。3つの層の中で、特定の相手との取引が多い側の割合がいちばん高く出ています*1。
現在の水平分業寄りも見ておきます*1。20人以下が31.1%、21人から100人が39.1%、101人以上が30.0%です*1。
ここは21人から100人が上端でした*1。中間の層で、不特定多数との取引が多い側の割合が高く出ています*1。
5年後についての回答も並べます*1。垂直統合寄りは28.7%、25.6%、33.1%でした*1。
順序は現在と同じ形です*1。101人以上が上端、21人から100人が下端という並びが保たれています*1。
「ほぼ半々」も見ておきます*1。5年後の回答では20人以下が25.7%、21人から100人が28.6%、101人以上が22.6%でした*1。
回答数も添えておきます*1。現在が424、412、330で、5年後が401、398、323です*1。
この3つの層も別々の企業の集まりです*1。規模が変わった企業を追いかけた集計ではありません*1。
「わからない」の幅も出しておきます*1。現在は4.4%から8.7%、5年後の回答では7.5%から13.2%でした*1。5年後のほうが高くなっています*1。
層ごとの値も書いておきます*1。現在は20人以下が8.7%、21人から100人が4.4%、101人以上が7.0%でした*1。
5年後の回答では13.2%、7.5%、9.3%です*1。どの層でも5年後のほうが高い値になっています*1。
体制の中の外部の比率そのものは、外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場で分布を出しています。
この集計から読めないこと
使う前に、限界を並べておきます*1。
第一に、同じ企業の移動ではありません*1。現在と5年後は別の設問で、Nも1,166と1,122で違います*1。
第二に、取引先の数がわかりません*1。何社と取引しているかを聞いた設問ではないため、件数は読めません*1。
第三に、取引額の内訳も含まれません*1。どの相手にいくら出しているかは示されていません*1。
第四に、理由がありません*1。その区分を選んだ背景を尋ねた設問ではないため、因果については書いていません*1。
第五に、結果も含まれません*1。どちらの形がうまくいったかを評価した集計ではありません*1。
第六に、内製と外注の別ではありません*1。垂直統合型と水平分業型はどちらも社外との取引の形を指します*1。
第七に、3つの層は別々の企業です*1。規模が変わった経過ではないため、大きくなると形が変わる、とは書けません*1。
第八に、範囲があります*1。この調査は組込みやIoTの分野が対象で、2022年11月から12月に実施されたものです*1。ほかの分野や、それより後の傾向は読めません*1。
なお、この設問には位置づけ別と地域別の集計も載っています*1。この記事では扱いませんでした*1。
取引先の広げ方を決める4段
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*1。
| 区分 | 現在 | 5年後 |
|---|---|---|
| 垂直統合型の事業が中心 | 22.3% | 11.6% |
| どちらかというと垂直統合型の事業が多い | 24.6% | 17.3% |
| 垂直統合型と水平分業型ほぼ半々 | 12.8% | 25.8% |
| どちらかというと水平分業型の事業が多い | 12.3% | 12.9% |
| 水平分業型の事業が中心 | 21.4% | 22.3% |
| わからない | 6.7% | 10.1% |
1段目は、いまの発注先を数えることです。社名を並べ、直近1年でどこにいくら出したかを書き出します。
2段目は、代替できない相手を印で分けることです。その会社でなければ回らない理由がある先だけに印をつけます。
3段目は、代替できる作業を都度組む枠へ移すことです。手順が決まっていて量で吸収できる作業から動かします。
4段目は、枠の上限を人数と期間で決めておくことです。何人まで、何か月までと先に書きます。
この順番にする理由は、固定の先を減らすこと自体が目的ではないからです。印をつけた相手はそのまま残します。
分布とも整合します*1。5年後の回答で首位に来たのは「ほぼ半々」で25.8%でした*1。どちらか一方に寄せる形は、5年後の側では上位に来ていません*1。
実務では、都度組む枠に入るのが外部要員です。案件ごとに人を足し、終わったら戻す形にします。
フリーランスを含む業務委託は、この枠と相性があります。決まった委託先が埋まっているときでも、作業単位で人を当てられるためです。
逆に、印をつけた相手に出している作業をここへ移すと、回らなくなります。代替できないと判断した理由が残っているからです。
枠を作る前に、いまの外注の中身を洗い直す進め方は保守費用を削減する外注見直しの進め方で扱っています。
個人と直接契約する場合の受け入れ側の手順は、副業人材の受け入れ、後から契約する側の違いで整理しています。
最後に範囲を添えておきます*1。この調査は組込みやIoTの分野が対象で、2022年11月から12月に実施されたものです*1。ほかの分野やそれより後の傾向は読めません*1。
まとめ:固定の先と、都度組む枠を分ける
第一に、資料です。IPAの「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」は2023年6月12日に発行され、2023年7月25日に一部が改版されています。調査期間は2022年11月から12月で、調査票の配布は7,864件、回答は1,214件でした。回答者は企業の経営層や事業部門の責任者です。第二に、言葉の定義です。調査票の注記では、垂直統合型が企業系列等の特定の企業との取引、水平分業型が不特定多数の企業との取引とされています。内製と外注の別を聞いた設問ではありません。第三に、設問の形です。Q7は6つの区分から1つを選ぶ形で、現在と5年後に分かれています。集計対象はユーザー企業、メーカー企業、サブシステム提供企業、サービス提供企業、その他の5区分でした。第四に、数値の扱いです。比率はPowerPoint版の資料に収録されたグラフのデータ値で、図中の表示は整数に丸められています。この記事では小数点以下1桁に丸めたため、合計が100.1や99.9になる行があります。2区分を足した値は筆者が算出しました。第五に、現在の分布です。N=1,166で、首位はどちらかというと垂直統合型の事業が多いで24.6%、次が垂直統合型の事業が中心で22.3%でした。2つを足すと46.9%です。第六に、5年後についての回答です。N=1,122で、首位は垂直統合型と水平分業型ほぼ半々の25.8%でした。垂直統合寄りは28.9%、水平分業寄りは35.2%です。第七に、差です。垂直統合寄りは18.0ポイント低い側、ほぼ半々は13.0ポイント高い側、水平分業寄りは1.5ポイントでした。第八に、従業員数別です。現在の垂直統合寄りは101人以上が51.2%で上端、21人から100人が43.9%で下端でした。第九に、限界です。現在と5年後は別の設問なので同じ企業の移動ではなく、取引先の数も取引額の内訳も理由も結果も含まれていません。
よくある質問
垂直統合型と水平分業型はどう違いますか。
IPAの2022年度組込み/IoTに関する動向調査の調査票では、垂直統合型は企業系列等の特定の企業との取引、水平分業型は不特定多数の企業との取引と注記されています。内製と外注の別ではなく、取引の相手が固定されているかどうかを聞いた区分です(確認日2026年9月4日)。
いまはどちらが多いのですか。
Q7の現在についての回答では、どちらかというと垂直統合型の事業が多いが24.6%で首位、垂直統合型の事業が中心が22.3%でした。2つを足すと46.9%です。水平分業型の側は合わせて33.7%、ほぼ半々は12.8%でした。Nは1,166です。
5年後についての回答はどうなっていますか。
首位は垂直統合型と水平分業型ほぼ半々で25.8%でした。垂直統合寄りは28.9%、水平分業寄りは35.2%です。ただし現在と5年後は別々の設問で、同じ企業を追った集計ではありません。移っていくと読めるものではない点に注意が要ります。
従業員数で違いはありますか。
現在の垂直統合寄りは20人以下が46.5%、21人から100人が43.9%、101人以上が51.2%でした。5年後についての回答では28.7%、25.6%、33.1%です。どちらでも101人以上が上端という並びでした。3つの層は別々の企業の集まりです。
この調査から取引先の数はわかりますか。
わかりません。Q7は6つの区分から1つを選ぶ形で、何社と取引しているかも、どの相手にいくら出しているかも聞かれていません。区分を選んだ理由やその結果も含まれていないため、因果も読み取れない内容です。
出典
- *1 参考:IPA「2022年度組込み/IoT産業の動向把握等に関する調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/kumikomi-iot2022.html)。発行日・改版日・調査期間・配布数7,864件・回答数1,214件の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「組込み/IoTに関する動向調査」調査結果(PowerPoint)(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022.pptx)。Q7の比率・回答数のデータ値の一次情報として。収録された値を用いた図表の作成という編集・加工を筆者が実施(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「組込み/IoTに関する動向調査」調査結果(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022.pdf)。Q7の設問文・集計対象の区分・N・従業員数別の3層の定義・利用ルールの一次情報として(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「アンケート調査票」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022-chousahyou.xlsx)。垂直統合型と水平分業型の注記、および6つの選択肢の並びの一次情報として(2026年9月確認)