LASSIC Media らしくメディア

2026.09.04 採用支援コラム

垂直統合と水平分業の違い|開発をどこまで自社で抱えるかの決め方

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

モニターが並ぶ開発チームの執務室

この記事の結論

  • 垂直統合は機能を自社やグループの中で抱える形、水平分業は機能ごとに外部の企業と分け合う形で、違いは取引の相手を固定するかどうかにあります。
  • IPAの調査では、組込み/IoT分野の企業の46.9%が現在は垂直統合寄りで、5年後の回答では「ほぼ半々」が25.8%で首位でした。
  • IT開発では、他社に替えられない作業は社内や決まった委託先に残し、手順の決まった作業だけを案件ごとの依頼に回すと分けやすくなります。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

垂直統合とは、開発から製造・販売までの機能を自社やグループの中で抱える形です。水平分業とは、機能ごとに外部の企業と分け合い、取引の相手を固定しない形を指します。2023年版ものづくり白書の概要は、製造業は従来、設計・開発・製造・販売等の機能を「自社で垂直統合的に確保」してきたと書き、標準化とデジタル化によって水平分業が進んでいると説明しています。*5

本記事では、この2つの言葉の定義と違いを公的な資料で確かめたうえで、IPA(情報処理推進機構)が企業に取引形態を尋ねた調査の結果を読みます。そのうえで、IT開発を社内と外部のどちらでどう受け持つかを決めるときに、2つの考え方をどう使えばよいかを整理します。

垂直統合と水平分業とは

経済産業省・厚生労働省・文部科学省がまとめた2023年版ものづくり白書の概要は、製造業のビジネス環境の変化として「デジタル化・標準化による水平分業の進展」を挙げています。*5 従来は設計から販売までの機能を自社で垂直統合的に確保し、日本は「すり合わせ」に強みがあったとしたうえで、製品設計だけでなく生産ライン設計や現場のオペレーションも形式知化され、生産機能を外部に提供するビジネスも現れたと述べています。

ここから読み取れる垂直統合は、製品を世に出すまでの機能を一つの会社やグループの内側にまとめておく形です。水平分業は、その機能を工程や役割ごとに切り分け、それぞれを得意とする別の企業に任せる形です。白書の概要は、水平分業が進むと参入障壁が下がり、新規参入が加速するとも書いています。

IPAの「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」は、調査票で2つの言葉に短い注記を付けています。垂直統合型は「企業系列等の特定の企業との取引」、水平分業型は「不特定多数の企業との取引」です。*4 垂直統合には、自社の中だけで作る場合に加えて、系列の会社など決まった相手と組む場合も含まれる、ということになります。

2つの違いを表で比べる

2つの資料の記述を並べると、違いは次の表のようにまとまります。表の中身は資料に書かれていることだけで、どちらが優れているかを比べたものではありません。

垂直統合と水平分業の違い(2023年版ものづくり白書の概要とIPA調査票の注記をもとに作成)
観点 垂直統合 水平分業
機能の持ち方 設計・開発・製造・販売等を自社で確保 機能ごとに切り分け、外部に提供する企業も現れる
取引の相手 企業系列等の特定の企業 不特定多数の企業
資料が挙げる点 日本は「すり合わせ」に強み 参入障壁が下がり、新規参入が加速

一言でいえば、違いは取引の相手を固定するかどうかにあります。垂直統合では、仕事を受け持つのは自社か、決まった相手です。水平分業では、仕事ごとに相手を選びます。白書の概要は、既存の取引関係について「既存の企業間で固定的」で平時には高い生産性を発揮するとしつつ、顧客の求めに素早く応えたり、災害などの際に調達先を動的に変えたりするには、個社やグループを超えたデータ共有が要ると書いています。*5

なお、似た言葉に「垂直分業」や「水平統合」もありますが、本記事で扱うのは、ものづくり白書とIPAの調査が使っている垂直統合と水平分業の2つです。

IT開発に置き換えると

2つの考え方をIT開発に当てはめると、垂直統合寄りの体制は、要件定義から設計、実装、テスト、運用までを社内の開発部門か、長く付き合っている決まった委託先で受け持つ形になります。水平分業寄りの体制は、工程や作業ごとに、その分野を得意とする会社や個人を選んで加わってもらう形です。

ここで取り違えやすいのは、垂直統合を「内製」、水平分業を「外注」と読み替えてしまうことです。IPAの注記にある通り、垂直統合型には系列の会社など特定の企業との取引が含まれます。*4 決まった委託先にまとめて頼んでいる会社は、社外に頼んでいても垂直統合寄りです。見るべきなのは、社内で作っている割合よりも、仕事ごとに相手を選べる状態かどうかです。

IPAの調査は、回答した企業を立場で分けています。このうち「サービス提供企業」は、受託開発、人材派遣、教育研修、コンサルティング、クラウドサービス、システム管理・運用などのサービスを提供する企業と定義されています。*3 開発を請け負う側も、取引形態の設問に答えているということです。

デジタル産業の中で自社がどの役割を担うのかという企業の型の話は「デジタル産業の企業類型」で扱っています。本記事は、その手前にある、取引の相手を固定するかどうかに絞って話を進めます。

企業はどちらに寄っているのか

IPAの調査は2022年11月から12月に、組込みやIoTの分野の企業を対象に調査票を7,864件配り、1,214件の回答を得たものです。*1 取引形態の設問は、「垂直統合型の事業が中心」から「水平分業型の事業が中心」までの5段階と「わからない」の6つから1つを選ぶ形でした。

現在についての回答(1,166件)では、首位が「どちらかというと垂直統合型の事業が多い」の24.6%、次が「垂直統合型の事業が中心」の22.3%でした。*2 本記事ではこの2つを足した値を「垂直統合寄り」と呼び、46.9%になります。反対側の「水平分業型の事業が中心」21.4%と「どちらかというと水平分業型の事業が多い」12.3%を足した「水平分業寄り」は33.7%、「ほぼ半々」は12.8%、「わからない」は6.7%です。

IPA「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」のQ7から作成した図。取引形態の全体は、現在(回答1,166件)と5年後(1,122件)の順に、垂直統合型の事業が中心22.3%と11.6%、どちらかというと垂直統合型の事業が多い24.6%と17.3%、垂直統合型と水平分業型ほぼ半々12.8%と25.8%、どちらかというと水平分業型の事業が多い12.3%と12.9%、水平分業型の事業が中心21.4%と22.3%、わからない6.7%と10.1%。上下2区分を足して計算すると、垂直統合寄りは46.9%から28.9%、水平分業寄りは33.7%から35.2%。従業員数別の垂直統合寄り・ほぼ半々・水平分業寄りは、20人以下が現在46.5・13.7・31.1、5年後28.7・25.7・32.4、21から100人が現在43.9・12.6・39.1、5年後25.6・28.6・38.2、101人以上が現在51.2・11.8・30.0、5年後33.1・22.6・34.9。あわせて、いまの受け持ちを書き出す、替えのきかない作業に印をつける、印のない作業を案件ごとの依頼へ移す、その上限を人数と期間で決める、という開発の分け方の4段を示す。

立場別の集計も見ておきます。他社の製品やサービスを利用・調達する「ユーザー企業」(311件)では垂直統合寄りが48.0%、水平分業寄りが31.9%でした。*2 受託開発などを担う「サービス提供企業」(372件)でも、垂直統合寄りが47.4%、水平分業寄りが34.4%で、発注する側と請け負う側のどちらでも、決まった相手との取引が多い側が半数近くを占めています。寄りの値はいずれも、各区分を小数点以下1桁に丸めた値を足して計算しています。

この調査は組込みやIoTの分野に限ったもので、ほかの分野の企業の値をそのまま示すものではありません。また、どちらの形がうまくいくかを評価した調査でもありません。自社の取引の偏りを、ほかの企業と比べて眺めるための材料として使うのが適しています。

5年後の回答はどう違うのか

5年後についての回答(1,122件)では、「垂直統合型と水平分業型ほぼ半々」が25.8%で首位になりました。*2 2番目は「水平分業型の事業が中心」の22.3%、3番目は「どちらかというと垂直統合型の事業が多い」の17.3%です。残りは「どちらかというと水平分業型の事業が多い」が12.9%、「垂直統合型の事業が中心」が11.6%、「わからない」が10.1%でした。

2つずつ足して現在と比べると、垂直統合寄りは46.9%から28.9%へ18.0ポイント低く、「ほぼ半々」は12.8%から25.8%へ13.0ポイント高くなっています。一方、水平分業寄りは33.7%から35.2%で、差は1.5ポイントです。5年後の回答では、垂直統合から水平分業へ振り切る形よりも、両方を組み合わせる形を選んだ企業のほうが多かったということです。

ただし、現在と5年後は別々の設問で、回答数も違います。同じ企業の変化を追った集計ではないため、「企業が決まった相手から離れていく」とまでは言えません。なぜその区分を選んだのかも、調査からは分かりません。

従業員数による違い

従業員数別の集計もあります。20人以下、21人から100人、101人以上の3つの層で、現在の垂直統合寄りは46.5%、43.9%、51.2%、水平分業寄りは31.1%、39.1%、30.0%でした。*2 101人以上は特定の相手との取引が多い側が半数を超え、21人から100人の層は水平分業寄りがいちばん高くなっています。

5年後の回答では、垂直統合寄りが28.7%、25.6%、33.1%、「ほぼ半々」が25.7%、28.6%、22.6%でした。*2 回答数は現在が424件、412件、330件、5年後が401件、398件、323件です。3つの層は別々の企業の集まりなので、会社が大きくなると取引の形が変わるという経過を示すものではありません。自社に近い規模の層の値を、見直しの目安にするとよいでしょう。

開発の分け方を決める手順

垂直統合と水平分業は、どちらか一方を選ぶものというより、作業ごとに使い分けるものです。調査でも5年後は「ほぼ半々」が首位でした。IT開発の受け持ちを社内と外部でどう分けるかは、次の4つの手順で決めると整理しやすくなります。考え方の中心は、社内や決まった委託先に頼む作業と、案件のたびに相手を選んで頼む作業を分けることにあります。本記事では後者を「案件ごとの依頼」と呼びます。

  1. いまの受け持ちを書き出す(社内で担っている作業と、直近1年でどの委託先に何を頼んだかを並べる)
  2. 替えのきかない作業に印をつける(業務知識や過去の経緯が要り、その担い手でなければ進まない作業だけに付ける)
  3. 印のない作業を案件ごとの依頼へ移す(手順が決まっていて、人数を増やせばこなせる作業から移す)
  4. 案件ごとの依頼の上限を人数と期間で決めておく(何人まで、何か月までと先に書く)

印をつけた作業は、社内や決まった委託先にそのまま任せます。ものづくり白書の概要が「すり合わせ」を日本の強みとして挙げているように、決まった相手と積み上げてきた調整の力は、他社に替えにくいものです。 こうした作業まで移すと、かえって作業が止まります。

案件ごとの依頼では、フリーランスを含む業務委託で、作業ごとに外部の人材に加わってもらいます。決まった委託先に空きがないときでも、作業ごとに人を探せるのが利点です。案件が終われば契約を終える形にしておくと、4つ目の手順で決めた上限も守りやすくなります。

つまずきやすいのは、印をつけずに委託先をまとめて増やしてしまうことと、上限を決めずに始めることです。先に印をつけ、移すのは手順が決まっている作業に限ります。いまの委託の中身を洗い直す進め方は「保守費用を削減する外注見直しの進め方」で、社内の開発体制に外部の人材がどのくらい加わっているのかは「外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場」で扱っています。委託先そのものの選び方は「開発パートナーの選び方」が参考になります。

まとめ:垂直統合と水平分業で押さえたい3つの点

垂直統合と水平分業について押さえておきたい点は3つです。第一に、垂直統合は機能を自社やグループの中で抱える形、水平分業は機能ごとに外部の企業と分け合う形で、違いは取引の相手を固定するかどうかにあり、内製と外注の別とは一致しないこと。第二に、IPAの調査では組込み/IoT分野の企業の46.9%が現在は垂直統合寄りで、5年後の回答では「ほぼ半々」が25.8%で首位になっていること。第三に、IT開発では替えのきかない作業に印をつけ、手順の決まった作業だけを案件ごとの依頼に回し、人数と期間の上限を決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「決まった委託先に空きがなく、次に声をかける先がない」という事態を避けやすくなります。開発の分け方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

開発の分け方を決めたあとは、案件ごとに加わってもらう人をどこで探すかが次の問題になります。決まった委託先に空きがないときでも、作業ごとに加わってもらえる人がいれば、工程を止めずに進めやすくなります。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

垂直統合と水平分業の違いを一言でいうと何ですか

取引の相手を固定するかどうかです。IPAの調査票は、垂直統合型を「企業系列等の特定の企業との取引」、水平分業型を「不特定多数の企業との取引」と注記しています。*4 自社の中で機能を抱える形は垂直統合の側に入ります。

垂直統合と水平分業は、どちらがよいのですか

資料はどちらがよいかを決めていません。ものづくり白書の概要は、従来の形について日本は「すり合わせ」に強みがあったとし、水平分業の進展については参入障壁が下がると書いています。*5 作業ごとに向き不向きを見て組み合わせるのが現実的です。

IPAの調査から、取引先の数や取引額は分かりますか

分かりません。取引形態の設問は6つの区分から1つを選ぶ形で、何社と取引しているかも、どの相手にいくら委託しているかも尋ねていません。*4 自社の状況は、発注の記録から数えるのが確実です。

調査の図表を社内資料に使うときに、気をつけることはありますか

IPAの資料は、政府標準利用規約という共通の利用ルールに沿って公開されています。出典の記載と、編集や加工をした場合はその旨の記載が求められています。調査結果の資料の冒頭に、利用ルールが載っています。

開発体制を相談したいとき

社内や決まった委託先に任せる作業と、案件ごとに人を探す作業の分け方からご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

無料相談はこちら

出典

  1. *1 参考:IPA「2022年度組込み/IoT産業の動向把握等に関する調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/kumikomi-iot2022.html)。出典:IPA公開ページ。調査期間・配布数7,864件・回答数1,214件を参照(2026年10月確認)
  2. *2 参考:IPA「組込み/IoTに関する動向調査」調査結果(PowerPoint)(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022.pptx)。出典:Q7の比率・回答数(グラフのデータ値。本記事では小数点以下1桁に丸めた)。収録された値を用いて図を作成する編集・加工を筆者が行った(2026年10月確認)
  3. *3 参考:IPA「組込み/IoTに関する動向調査」調査結果(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022.pdf)。出典:業態の定義(サービス提供企業など)、Q7の立場別・従業員数別の集計、利用ルールを参照(2026年10月確認)
  4. *4 参考:IPA「アンケート調査票」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022-chousahyou.xlsx)。出典:垂直統合型と水平分業型の注記、6つの選択肢を参照(2026年10月確認)
  5. *5 参考:経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2023年版ものづくり白書 概要」(https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2023/pdf/gaiyo.pdf)。出典:「製造業のビジネス環境の変化」のページ(デジタル化・標準化による水平分業の進展、サプライチェーンの見える化・ダイナミック化)を参照(2026年10月確認)




View