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2026.08.27 採用支援コラム

副業・兼業の受け入れ|本業との労働時間の通算の考え方

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

共有スペースで複数の人がノートパソコンに向かっている様子

この記事の結論

  • 副業人材を雇用で受け入れると、他社での労働時間も自社の労働時間と通算されます。
  • 受け入れる前に、他社で決まっている勤務時間と残業の見込みを、届出で確認しておきます。
  • 管理モデルという方法では、後から雇う会社が、自社で働いた時間すべてに割増賃金を支払います。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

他社に本業を持つエンジニアに、週2日だけ雇用で加わってもらいたい。けれど、本業の会社での勤務時間まで自社で把握する必要があるのか、はっきりしない——。副業・兼業の人材の受け入れを考え始めた会社では、こうした迷いが起こりがちです。副業人材の受け入れとは、他社に本業のある人と自社が労働契約を結び、本業とは別の時間に自社で働いてもらうことを指します。

副業人材の受け入れは候補者を広げる現実的な方法ですが、万能ではなく、雇用で受け入れると他社で働いた時間も自社の計算に入ります。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が、労働時間は事業主をまたいで通算されるとしているためです。本記事では、副業人材を受け入れる会社の採用担当者に向けて、通算される時間とされない時間、受け入れ前に確認すること、割増賃金の負担の決まり方、そして手続きの負担を減らす管理モデルを整理します。

労働時間の通算とは

労働基準法(以下、労基法)第38条第1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています。ガイドラインは、この「事業場を異にする場合」には事業主を異にする場合も含むとしています。*1 本業の会社で働いた時間と、自社で働いた時間は、合計して扱うということです。

受け入れる会社にとって大事なのは、どちらが先に労働契約を結んだかです。ガイドラインは、時間的に先に労働契約を結んでいた使用者を「使用者A」、後から労働契約を結んだ使用者を「使用者B」と呼んでいます。 本業を持つ人を後から雇う会社は、たいてい使用者Bになります。以下も、この使用者Bの立場から見ていきます。候補者を広げるやり方の全体は「エンジニア採用の母集団形成、先に決める9つのこと」で扱っています。

通算される時間・されない時間

労働基準法第38条第1項により労働時間は事業場を異にする場合においても通算され、事業場を異にする場合には事業主を異にする場合も含むこと、通算するものが法定労働時間と時間外・休日労働の合計で単月100時間未満・複数月平均80時間以内であり、通算しないものが36協定の限度時間・特別条項の1年の上限・休憩・休日・年次有給休暇であること、労基法が適用されない場合や労働時間規制が適用されない場合はそもそも通算されないこと、および管理モデルでは使用者Aが法定外労働時間について、使用者Bが自らの労働時間全体について36協定の範囲内とし割増賃金を支払うことを整理した図

通算されるのは、まず法定労働時間(労基法が定める労働時間の上限)です。ガイドラインは、労基法第32条の法定労働時間について、自らの事業場と他の使用者の事業場の労働時間を通算するとしています。時間外労働と休日労働の合計についての「単月100時間未満、複数月平均80時間以内」の要件も、通算して判断します。*1

一方で、通算されないものもあります。36協定(時間外労働を認める労使協定)で延長できる時間の限度時間と、特別条項(臨時に上限を超えて延長するための条項)を設ける場合の1年についての延長時間の上限は、それぞれの事業場の36協定の内容を規制するもので、事業場ごとに延長時間を定めます。休憩・休日・年次有給休暇は、労働時間に関する規定ではないため通算されません。*1

そもそも通算の対象にならない場合もあります。ガイドラインは、労基法が適用されない場合として「フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事等」を、労基法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合として、管理監督者や高度プロフェッショナル制度などを挙げています。*1 本業が会社員で労働時間規制の対象なら通算が必要になり、本業が個人事業や役員なら通算の対象外です。

ただし、対象外なら何もしなくてよいわけではありません。ガイドラインは、こうした場合でも、過労で業務に支障が出ないよう、本人からの申告などで就業時間を把握し、長時間にならないよう配慮することが望ましいとしています。

受け入れ前に確認すること

副業・兼業の有無と内容は、本人からの申告などで確認します。ガイドラインは、その方法として就業規則や労働契約に届出制を定めることを挙げ、その中に「新たに労働者を雇い入れる際の労働者からの副業・兼業についての届出」も含めています。*1 受け入れる会社は、入社の手続きのときに確認することになります。確認する事項も、ガイドラインに並んでいます。

受け入れ時に確認する事項(ガイドラインの列挙)
段階 確認する内容
まず確認する 他の使用者の事業場の事業内容
まず確認する 他の使用者の事業場で労働者が従事する業務内容
まず確認する 労働時間通算の対象となるか否か
通算の対象なら加えて 他の使用者との労働契約の締結日、期間
通算の対象なら加えて 他の使用者の事業場での所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻
通算の対象なら加えて 他の使用者の事業場での所定外労働の有無、見込み時間数、最も多い場合の時間数
通算の対象なら加えて 他の使用者の事業場における実労働時間等の報告の手続
通算の対象なら加えて これらの事項について確認を行う頻度

表の「通算の対象なら加えて」の5項目は、それぞれの使用者と本人とのあいだで合意しておくことが望ましいとされています。一度聞いて終わりにせず、報告の手続きと頻度まで決めておく形です。募集要項に「副業可」と書く前に、この一覧をそのまま欄にした届出の用紙を用意しておくと進めやすくなります。募集要項に書く項目は「エンジニア求人票の書き方と必須14項目」で扱っています。

他社での実際の労働時間は、毎日報告してもらう必要はありません。ガイドラインは、必ずしも日々把握する必要はなく、労基法を守るために必要な頻度で把握すれば足りるとしています。例として、一週間分を週末にまとめて申告してもらうやり方や、所定労働時間どおりに働いた場合は申告を求めず、そうでなかった場合だけ申告してもらうやり方が挙がっています。*1 毎日の報告を前提に仕組みを作ると、現場が続けられません。

また、副業・兼業についての相談や自己申告をしたことを理由に、不利益な取扱いをすることはできません。 申告を求める以上、この点も社内の担当者と共有しておきます。

割増賃金はどちらが負担するのか

ガイドラインは、副業・兼業を始める前に、自らの事業場の所定労働時間(会社が決めた勤務時間)と、他の使用者の事業場の所定労働時間を通算するとしています。通算して法定労働時間を超える部分がある場合は、時間的に後から労働契約を結んだ使用者の側で、その超える部分が時間外労働になります。*1

本業の会社ですでにフルタイムに近い所定労働時間がある人を後から雇うと、自社で働く時間の多くが、通算すると時間外労働になります。その結果、自社で割増賃金の対象になる時間が増えます。週2日の勤務だから費用の負担が軽いとは限りません。賃金の水準を決める段階で、割増分を見込んでおく必要があります。水準の決め方は「エンジニアの年収レンジと公的統計の使い方」で扱っています。

計算の細部は、自社の労働時間制度によって変わります。変形労働時間制(期間内で労働時間を調整する制度)やフレックスタイム制(始業・終業を本人が決める制度)を採っている会社では計算が複雑になるため、具体的な計算は社会保険労務士などに確認しておきます。

管理モデルとは

副業・兼業の日数が多い場合や、両方の事業場で所定外労働(決めた勤務時間を超える労働)がある場合は、労働時間の申告と通算の管理に、会社と本人の双方で手間がかかります。ガイドラインは、この手間を軽くし、労基法に定める最低労働条件を守りやすくする簡便な方法として「管理モデル」を示しています。

管理モデルでは、副業・兼業を始める前に、使用者Aの事業場での法定外労働時間と、使用者Bの事業場での労働時間(所定労働時間と所定外労働時間)の合計が単月100時間未満、複数月平均80時間以内になるように、それぞれの使用者が自社での労働時間の上限を決めます。そのうえで、使用者Aは自らの事業場での法定外労働時間について、使用者Bは自らの事業場での労働時間について、それぞれ36協定の延長時間を超えないようにし、割増賃金を支払います。*1

受け入れる会社にとっての要点は、使用者Bの割増賃金が自社での労働時間全体にかかることです。その代わり、あらかじめ決めた上限の中で働いてもらう限り、他の使用者の事業場での実際の労働時間を把握しなくても労基法を守れるとされています。他社の実績を毎月確認しなくてよい点が、この方法の利点です。

副業を禁止・制限できる場合

同じガイドラインは、自社の社員が副業を始める場合の考え方も整理しています。受け入れる会社も、自社の社員の副業を就業規則でどう扱うかを決めておく必要があります。ガイドラインによれば、裁判例では、労働時間以外の時間をどう使うかは基本的に労働者の自由であり、会社が制限できるのは次のような場合と解されています。*1

  • 労務提供上の支障がある場合(本来の仕事に支障が出る場合)
  • 業務上の秘密が漏洩する場合
  • 競業により自社の利益が害される場合
  • 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

そのうえでガイドラインは、原則として副業・兼業を認める方向とすることが適当であるとし、禁止や一律許可制にしている企業には、自社の業務に支障が出るかどうかを改めて精査し、支障がなければ原則認める方向で検討するよう求めています。本業の会社が副業を一律に許可制にしていても、候補者からこの考え方をもとに本業の会社へ相談してもらえます。厚生労働省が平成30年1月に改定したモデル就業規則にも「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」とあります。*1

あわせて、労働契約法第5条が定める配慮の義務にも注意が要ります。同条は、労働者が生命や身体を守りながら働けるよう、使用者が必要な配慮をするものとしています。ガイドラインは、副業・兼業をする労働者を使用するすべての使用者がこの義務を負うとし、問題になり得る場合として、労働者の全体としての業務量や労働時間が過重だと知りながら何も配慮せず、健康に支障が生じた場合などを挙げています。*1

どう進めるのか

制度全体を整えてから募集する必要はありません。次の順で進めると、少ない作業で受け入れの準備ができます。

  • 届出の書式を1枚作る。前の表の項目をそのまま欄にし、入社時に記入してもらう
  • 本業が雇用か、労働時間規制の対象かを確かめ、通算の対象かどうかを判定する
  • 通算の対象なら、毎月実績を確認するか、管理モデルで上限を先に決めるかを選ぶ
  • 賃金の水準に割増分を見込む。週の勤務日数が少なくても負担が軽いとは限らない
  • 自社の就業規則の禁止・制限の規定が、4つの場合に沿っているかを確かめる
  • 労働時間制度への当てはめと就業規則の文面を、社会保険労務士などに見てもらってから運用を始める

最初の書式づくりがいちばん効果があります。書式がないと、確認する項目が担当者ごとに変わります。特に所定外労働の見込み時間数と、最も多い場合の時間数は、口頭で聞くとあいまいなまま済まされやすい項目です。通算の対象かどうかを早めに判定するのは、その結果で後の作業量が大きく変わるからです。対象外なら管理モデルの検討や割増分の見込みは要りませんが、就業時間の把握と配慮は残ります。

週の勤務日数が少ない人には、社内の情報が届きにくくなります。文書で引き継ぐやり方や、出てもらう会議の絞り方は、時短勤務の採用と考え方が共通します。「時短勤務での採用、フルタイム前提との違い」もあわせて参考になります。

まとめ:副業人材の受け入れで確かめる3つの点

副業人材を雇用で受け入れるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、本業が労働時間規制の対象かどうかを確かめ、対象なら他社での労働時間も通算して扱うこと。第二に、他社での所定労働日・所定労働時間・所定外労働の見込みなどを入社時の届出で確認し、報告の手続きと頻度まで合意しておくこと。第三に、後から契約する使用者Bとして、自社で割増賃金の対象になる時間が増えることを賃金の水準に見込み、必要なら管理モデルを使うことです。この3点を踏まえておけば、「週2日だけのつもりが、思ったより割増賃金がかかった」という事態を避けやすくなります。副業人材の受け入れ方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

株式会社LASSICは、リモートワークを前提としたIT人材のサービスを運営しています。本業を持つ人をどんな形で迎えるかが社内で決まっていない段階でも、任せたい仕事と必要な勤務日数の整理からご相談いただけます。労働時間制度への当てはめは社会保険労務士などの専門家が扱う領域ですが、どんな条件ならどんな人材が見つかりやすいかをお伝えし、条件を決める材料にしていただけます。勤務地を問わず、全国の実務経験者から探せます。

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よくある質問

本業の会社で管理職をしている人を受け入れる場合も、労働時間を通算しますか

本業で労基法上の管理監督者に当たる人なら、本業側の時間は通算されません。ガイドラインは、管理監督者を労働時間規制が適用されない場合の一つに挙げています。*1 本業の会社で管理監督者として扱われているかどうかは、届出の「労働時間通算の対象となるか否か」の欄で確認します。通算しない場合でも、就業時間を把握して長時間にならないよう配慮することが望ましいとされています。

入社した後に、本業の会社での勤務時間が変わったらどうしますか

受け入れの時点で、変わったときの報告の手続きと、確認する頻度を決めておきます。ガイドラインは、実労働時間等の報告の手続と確認を行う頻度も、使用者と本人とのあいだで合意しておくことが望ましい事項に挙げています。*1 届出の書式に、変更があったときの届け出の欄を設けておくと運用しやすくなります。

本業の会社が副業を一律許可制にしている候補者は、採用できますか

許可が得られるかどうかは本業の会社が判断するので、まず候補者に本業の会社へ相談してもらいます。ガイドラインは、禁止や一律許可制にしている企業に、自社の業務に支障が出るかを精査し、支障がなければ原則認める方向で検討するよう求めています。*1 相談の結果を待ってから、届出の確認と労働時間の上限の設定に進みます。

任せたい仕事と勤務日数からご相談ください

どの仕事を、週に何日くらい任せるのか。条件が決まっていない段階から、担当が一緒に検討します。

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出典

  1. *1 参考:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定/令和2年9月改定/令和4年7月改定)(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000962665.pdf)。労働基準法第38条第1項による労働時間の通算と「事業場を異にする場合」の解釈、通算される規定と通算されない規定、通算の対象外となる場合、副業・兼業の確認方法と確認する事項、所定労働時間の通算と時間外労働となる部分、管理モデルの枠組み、制限が許される4つの場合、労働契約法第5条の配慮義務、不利益な取扱いの禁止を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説」(2025年3月)(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000996750.pdf)。ガイドラインの内容を図解した解説資料(2026年9月確認)
  3. *3 参考:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン Q&A」(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000964082.pdf)。実務上の疑問に対する厚生労働省の考え方の確認先(2026年9月確認)




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