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部門間連携の立て直し方|誰が決めるか分からず開発が止まるとき
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 部門間連携を立て直すときは、誰がどこで決めるかを先に定めると、確認の行き来を減らしやすくなります。
- IPAの調査では、経営者・IT部門・業務部門の協調ができていると答えた企業は48.9%でした。
- DXの成果が出ている企業では協調ができている割合が72.9%、成果が出ていない企業では37.1%でした。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
仕様を1つ決めるだけなのに、業務部門と情報システム部門のあいだで何度も確認が行き来する。担当者には作業の余裕があるのに、誰が決めるのかが分からず、開発が止まっている——。社内システムの開発では、こうした停滞が起こりがちです。IPA(情報処理推進機構)の調査でも、経営者・IT部門・業務部門の協調が「できている」と答えた企業は48.9%と、半分に届いていません。*2 部門間連携とは、業務部門、IT部門、経営者がそれぞれ持っている情報を持ち寄り、1つの結論を出すことを指します。
部門間連携を立て直すとき、まず手をつけやすいのは、誰がどこで決めるのかを定めることです。決める人と決める場が1つになれば、確認の行き来は減らせます。ただし万能ではなく、決める人と場を定めても、業務の手順そのものの組み替えには時間がかかります。本記事では、社内システムの開発を進める実務担当者に向けて、部門間連携が止まる背景、成果が出ている企業との違い、進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
部門間連携が止まるのはどこか
開発の現場で部門間連携が問われるのは、何かを決めないと先に進めない場面です。業務部門は、現場でどんな作業をしていて、どこで困っているかを知っています。情報システム部門は、いまのシステムで何を変えられて、何を変えるのに手間がかかるかを知っています。画面の入力項目ひとつをとっても、仕様はこの2つを突き合わせないと決まりません。
決めごとの答えが返ってこないあいだ、開発は止まります。開発が遅れる理由としては人手の不足が挙がりがちですが、判断を待っている時間も、作業が止まっている時間であることに変わりはありません。担当者を増やしても、誰が決めるのかが定まっていなければ、判断を待つ時間はそのまま残ります。
止まりやすいのは、両方の部門にまたがる決めごとです。業務部門は「システムの制約はIT部門が判断するもの」と考え、IT部門は「業務のやり方は業務部門が決めるもの」と考えます。どちらも間違ってはいませんが、その結果として、どちらも決めないまま確認だけが行き来します。
協調できている企業の割合
IPAが2026年7月30日に公開した「DX動向2026」は、この協調を企業に尋ねています。*1 調査は2026年4月17日から6月12日にかけて日本の企業を対象に行われ、有効回答数は1,799でした。*3
経営者・IT部門・業務部門の協調について、「十分にできている」と「まあまあできている」を合わせた割合は、2025年度で48.9%でした。*2 協調ができていると答えた企業は、半分に届いていません。裏を返せば、決めごとが部門のあいだを行き来している現場のほうが多いということです。
とはいえ、放っておいてよいわけではありません。確認が1回往復するたびに、画面の改修やテストの着手がそのぶん後ろにずれていきます。まずは自社のどの決めごとで往復が起きているかを知ることが、部門間連携を立て直す出発点になります。
成果が出ている企業との違い
同じ協調の設問を、DX(デジタル技術による業務の変革)の成果が出ているかどうかで分けた集計もあります。こちらは、全社的に、または一部の部門や部署ごとにDXに取り組んでいると答えた企業に絞った集計です。協調ができている割合は、成果が出ている企業で72.9%、成果が出ていない企業で37.1%でした。*2 掲載値から計算すると、差は35.8ポイント、倍率は約1.96倍です。
業務プロセスの全社最適化、つまり部門ごとの手順を会社全体で見直す取り組みについても、同じ分け方の集計があります。「完了している」と「取組んでいる」を合わせた割合は、成果が出ている企業で53.8%と過半数を超え、成果が出ていない企業では29.5%でした。*2 差は計算すると24.3ポイント、倍率は約1.82倍です。
| 項目 | 回答率 |
|---|---|
| 協調ができている(2025年度・全体) | 48.9% |
| 協調ができている(成果が出ている企業) | 72.9% |
| 協調ができている(成果が出ていない企業) | 37.1% |
| 同(差/倍率) | 35.8ポイント/約1.96倍 |
| 全社最適化に着手(成果が出ている企業) | 53.8% |
| 全社最適化に着手(成果が出ていない企業) | 29.5% |
| 同(差/倍率) | 24.3ポイント/約1.82倍 |
| 経営者のデジタル見識(2025年度/2024年度) | 49.9%/40.2% |
資料は、部門間の協調とDXの成果創出が「強く関係している」、業務プロセスの全社最適化への取り組みが成果創出と「強く関連している」と述べています。*2 ただし、示されているのは関連までで、協調を整えたから成果が出たのか、成果が出た企業が協調も整えたのかは示されていません。
2つの項目を並べると、差でも倍率でも、開きが大きいのは協調のほうです。一方、成果が出ていない企業での水準は、協調が37.1%、全社最適化が29.5%で、低いのは全社最適化のほうです。
実務では、この2つは中身の違う作業です。協調は、決める人と決める場を1つにまとめることで進められます。全社最適化は、部門ごとに違う業務の手順そのものを組み替える作業です。決める人と場は今週からでも決められますが、手順の組み替えには期間が必要です。
経営者の見識の変化
決める側の状況も集計されています。経営者のデジタル分野についての見識について、「十分に持っている」と「まあまあ持っている」を合わせた割合は、2025年度で49.9%、2024年度で40.2%でした。*2 掲載値から計算すると、2024年度から9.7ポイント上がっています。成果が出ている企業のほうが、見識を持っていると答えた割合が高いとも書かれています。*2
経営者の見識が上がっているなら、決める場に経営者が加わる意味も大きくなります。決める場には、業務部門の要望だけでなく、情報システム部門が把握しているシステムの制約や、実現する方法の候補もそろえて持ち込むとよいでしょう。材料がそろっていれば、その場で決めきれる決めごとが増え、持ち帰っての確認を減らせます。
どう進めるのか
部門間連携を立て直す進め方は、4つの手順に分けると整理しやすくなります。
- 手順1:いま止まっている決めごとを1つ選ぶ
- 手順2:決める人と決める場を1つにまとめる
- 手順3:決める作業と作る作業を分ける
- 手順4:作る作業を、期間を決めて外部に委託する
手順1では、決まっていないことを全部洗い出す前に、いま開発が止まっている1件に絞ります。たとえば、受注データの入力画面に項目を1つ追加するかどうかが、業務部門と情報システム部門のあいだで止まっているなら、その1件を選びます。手順2では、その決めごとを誰が、どの会議で決めるのかを定めます。
手順3では、仕様を決める人と、決まった仕様をもとに作る人を分けます。決める作業は社内の人が担い、作る作業は作業名と期間で書き出します。手順4では、「入力画面の改修とテストを6週間」のように書き出せた作業から、外部に委託するかどうかを検討します。作業量の見通しが立つ部分から任せると、委託する側も受ける側も進み具合を確かめやすくなります。
決める人と場を先に定めるのは、すぐに手をつけられるからです。一方、業務の手順の組み替えに取りかかっている企業は、成果が出ていない企業では3割に届いていません。組み替えには期間がかかるので、決める人と場を先に定め、組み替えに取り組む人は別に確保します。
データを扱う部門の体制は「データ利活用の体制の違い」で、DXの成果の測り方は「DXの成果指標の設定状況」で扱っています。全社で進めるか一部の部門で進めるかは「DXの全社展開と一部での実施の違い」、決める人を1人置く体制は「AI導入の体制」で整理しています。
つまずきやすい点
一つ目は、決める場に決める権限を持つ人がいないことです。会議に出ている担当者が「持ち帰って確認します」と言うたびに、確認の往復がまた1回増えます。決める場を設けるときは、その決めごとについて最終的に判断できる人が出席するかを先に確かめます。
二つ目は、止まっている決めごとを最初から全部洗い出そうとすることです。洗い出しに時間がかかり、そのあいだも開発は止まったままです。1件を決めきってから、同じやり方を次の1件に広げるほうが、このやり方が社内に定着しやすくなります。
三つ目は、決める作業まで社外に委ねてしまうことです。手順1と手順2を外部に任せると、社内で決められなくなります。委託先は仕様の案を出すことはできても、業務のやり方を最終的に決めることはできません。決める作業は社内に残し、委託するのは作る作業にとどめます。
外部に委託するときに確認しておきたい点
作る作業を外部に委託するときは、まず委託する作業を作業名と期間で書けているかを確かめます。「入力画面の改修」だけでなく、「入力画面の項目追加とテストを6週間で」のように書けていれば、委託先は必要な人数と経験を見積もれます。フリーランスを含む業務委託は、作業と期間を決めて頼み、終われば契約を終えられるため、手順4に向いたやり方です。
次に、委託先から仕様について質問が来たとき、社内の誰が答えるのかを決めておきます。手順2で定めた決める人が答えるのか、その人から任された担当者が答えるのかをはっきりさせておかないと、委託先とのあいだでも確認の往復が起きます。あわせて、委託が終わったあとに、作ったものの説明や設計の記録を誰が受け取るのかも決めておくと、社内の人が引き継いで保守しやすくなります。
まとめ:部門間連携で確かめておきたい3つの点
部門間連携を立て直すうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、いま止まっている決めごとを1つ選び、誰がどの場で決めるのかを定めること。第二に、決める作業と作る作業を分け、決める作業は社内に残すこと。第三に、作る作業を作業名と期間で書き出し、委託先からの質問に社内の誰が答えるかを決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「人を増やしたのに、仕様が決まらず開発が進まない」という事態を避けやすくなります。作る作業を担う人の確保に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
決める場には、誰が出席すればよいですか
その決めごとについて最終的に判断できる人に加え、業務部門で現場の作業を知っている担当者と、情報システム部門でシステムの制約を知っている担当者がそろうのが目安です。判断できる人が出席できないときは、その場で決めてよい内容をあらかじめ任せておくと、持ち帰りを減らせます。
協調ができている企業は増えていますか
IPAの「DX動向2026」は、経営者・IT部門・業務部門の協調ができている企業について、ゆるやかに増加傾向にあると述べています。*2 2025年度の値は48.9%でした。*2
調査の対象はどのように選ばれていますか
データ集によると、企業データベースから、業種や従業員規模ごとに抽出する数を決めたうえで、ランダムに選んでいます。調査対象数は10,000で、調査項目は60問、そのうち7問が回答者の属性を尋ねる設問です。*3
委託する作業は、どのくらいの期間で区切ればよいですか
決まった長さはありません。作業量の見通しが立ち、終わったかどうかを社内で確かめられる単位で区切るのが目安です。画面の改修とテストのように、作業名と期間を1行で書ける単位にしておくと、委託先とも進み具合を共有しやすくなります。
部門間連携と開発体制のご相談を
決める人と場を定めたあと、作る作業をどこまで委託するか。作業の書き出し方からご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:IPA「DX動向2026」広がるAI導入、DXは変われるか(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2026.html)。出典:IPA「DX動向2026」の公開ページ。公開日(2026年7月30日)を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「DX動向2026」(本文)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/rcu1hd0000017uk8-att/dx-trend-2026.pdf)。出典:同本文の図表2-10・2-11・2-12・2-8・2-9についての記述を参照。図表2-11・2-12はDXに取り組んでいると回答した企業が集計対象。回答率は上側2区分(協調・見識)または「完了している」「取組んでいる」(全社最適化)の合計(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「DX動向2026」(データ集)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/rcu1hd0000017uk8-att/dx-trend-data-collection-2026.pdf)。出典:同データ集(2026年7月30日第1版)。調査対象・調査期間・調査項目数・調査対象数・有効回答数・抽出方法を参照(2026年9月確認)