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リリース前の確認事項|直前の作業漏れを防ぐチェックリスト
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- リリース前の確認事項は、移行計画やリハーサル、残課題の一覧、元に戻す手順などが、本番の前にそろっているかを確かめる項目です。
- IPAの調査データを集計すると、リリース時の6つの確認項目を1つも挙げなかった企業が49.9%、すべて挙げた企業が22.4%でした。
- 残っている作業を一覧にし、社内で担当する作業と委託する作業を分けてから、期限を決めて依頼します。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
リリース日が近づいてから、まだ終わっていない作業が次々に見つかる。人を増やそうにも、何を任せればよいのかが決まらない——。システムのリリース前には、こうした混乱が起こりがちです。リリース前の確認事項とは、新しいシステムや改修したシステムを本番で使い始める前に、移行の段取りや不具合が起きたときの戻し方、残っている課題などがそろっているかを確かめる項目のことです。
確認事項を決めておくと、残っている作業が早めに見え、誰に何を任せるかも決めやすくなります。ただし万能ではなく、項目を並べただけでは作業そのものは進みません。本記事では、システムのリリースを控えた開発の担当者やマネージャーに向けて、確認事項の中身、企業がどこまで実施しているか、確認の進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
リリース前の確認事項とは
確認事項の中身は、会社やシステムによって違います。ここでは、IPA(情報処理推進機構)の「2024年度ソフトウェア動向調査」が、システムリリース時に実施している事項として企業に尋ねた次の6つの項目を手がかりにします。*3
- ユーザー教育やリハーサルを実施している
- 移行計画を整備している
- リカバリープランを準備している
- 残課題の一覧があるか確認している
- 仕様管理が収束しているか確認している
- 品質管理報告が整理されているか確認している
前の3つは、本番に向けた準備です。ユーザー教育とリハーサルは、新しいシステムを使う社員に操作を教えたり、本番と同じ手順を前もって一度通したりすることを指します。移行計画は、古いシステムのデータや業務を、いつ、どの順番で新しいシステムに移すかを決めた段取りです。リカバリープランは、リリースの後に大きな不具合が見つかったとき、元のシステムに戻す手順と、戻すかどうかを決める基準をまとめたものです。
残りの3つは、作業が終わっているかを確かめる項目です。残課題の一覧は、まだ直していない不具合や、後回しにした作業を書き出したものです。仕様管理の確認では、仕様の変更が止まり、作るものが固まっているかを確かめます。品質管理報告は、テストの結果や見つかった不具合の数などをまとめた報告書で、リリースしてよいかを判断する材料になります。
項目ごとの実施状況
IPAの調査は、2024年12月17日から2025年2月14日にかけて行われ、2025年4月7日時点で企業799件の回答がありました。*1 回答は匿名化されたうえでオープンデータとして公開されており、ここで示す件数と比率は、その調査結果のCSVから集計した値です。*2 この設問に答えたのは、ユーザー企業(自社で使うシステムを持つ企業)662件と、ユーザー系情報システム子会社(親会社のシステムを担う子会社)20件を合わせた682件です。他社向けにシステムを作ったり売ったりするベンダー系の117件は、回答の対象に入っていません。*3
6つの項目でいちばん多かったのは「ユーザー教育やリハーサルを実施している」で、270件、39.6%でした。以下、移行計画が37.7%、残課題の一覧が36.2%、仕様管理が34.3%、リカバリープランが33.0%と続き、いちばん少ない品質管理報告は31.7%です。*2 当てはまるものをすべて選ぶ形式なので、比率を足すと100%を超えます。
いちばん多い項目と少ない項目の差は7.9ポイントで、6つはどれも3割台に収まっています。どれか1つだけが極端に少ないわけではありません。一方で、どの項目も、実施していると答えた企業は半分に届いていません。
いくつの項目を実施しているのか
項目ごとの比率だけでは、1社がいくつの項目を実施しているのかが見えません。そこで、6つのうち何個を選んだかで682件を分けると、最も多かったのは6つのどれも選ばなかった企業で、340件、49.9%でした。次に多いのが6つすべてを選んだ企業で、153件、22.4%です。1個から5個までの途中の段階は、合わせても189件、27.7%にとどまります。*2
選んだ個数の平均は2.12個ですが、中央値(並べたときの真ん中の値)は1個です。平均の2.12個は、すべてそろえる企業にも、どれも挙げない企業にも当てはまりません。
何も選ばなかった340件の内訳は、「特になし、開発を実施していない」が220件、「わからない」が112件、「その他」だけを選んだ企業が8件です。*2 開発をしていない企業には、そもそもリリースがありません。残る「わからない」は112件、16.4%でした。
途中の段階の中身も見ておきます。1個だけ選んだ48件で最も多い項目は「ユーザー教育やリハーサルを実施している」の18件でした。5個を選んだ39件で欠けていた項目は「品質管理報告が整理されているか確認している」が12件で最も多く、仕様管理とリカバリープランが10件ずつで続きます。*2 1つだけ実施するならリハーサルが選ばれ、ほぼそろえている企業では品質管理報告が欠けやすい、という並びです。なお、この設問からは、実施しなかった理由や、リリースが遅れたかどうかは読み取れません。
確認事項をどう進めるのか
確認事項は、次の4つの順に進めると整理しやすくなります。
- リリース日から逆算して、残っている作業を一覧にする
- 担当する人が増えれば早く終わる作業と、承認や回答を待つ作業を分ける
- 社内で担当する作業と、外部に委託する作業を分ける
- 委託する作業は、終わる期限を決めて依頼する
一覧を最初に作るのは、残っている作業が見えないと、人を増やすかどうかも決められないためです。調査でも、残課題の一覧を確認している企業は247件、36.2%と、3社に1社ほどでした。*2 一覧は「テスト」「移行」のような項目名ではなく、「受注データの移行リハーサルを1回行う」のように、誰かが担当できる作業の単位で書きます。作業の単位で書けていれば、残りの量が見え、人を増やすべきかどうかも判断しやすくなります。
次に、作業を2種類に分けます。テストの実施やデータの移行リハーサルのように、担当する人が増えれば早く終わる作業もあれば、利用部門の承認や取引先からの回答を待つ作業もあります。後者は、人を増やしても待つ時間が縮みません。人を増やす判断は、前者の作業の量をもとに行います。
社内と委託先で作業を分けるときは、判断が必要な作業を社内に残します。何をリリースの条件にするか、どの残課題を後回しにするかは、システムを使う側の会社が決めることです。委託するのは、手順が決まっていて、担当者が変わっても同じ結果になる作業から選びます。
最後に、委託する作業には終わる期限を決めます。一度にすべての項目をそろえようとせず、リリースまでの期間で終わる作業から一つずつ依頼していくと、確認事項をまだ何も実施していない状態からでも進められます。
つまずきやすい点
一つ目は、残っている作業の一覧づくりまで外部に委託してしまうことです。一覧には、何をリリースの条件にし、何を後回しにするかという判断が含まれます。一覧に載せる作業と、その優先順位は、社内で決めておきます。
二つ目は、品質管理報告のような書類の確認が後回しになることです。5個を選んだ企業でも、欠けていた項目は品質管理報告が最も多くなっていました。テストの結果を報告書にまとめる作業はテストが終わった後になるので、日程が詰まると後回しにされやすい作業です。報告書の書式と、まとめる担当者は、テストを始める前に決めておきます。
三つ目は、自社で何を確認しているのかを把握していないことです。リリース前に何を実施しているかという問いに、「わからない」と答えた企業もありました。確認事項を決める前に、前回のリリースで実際に何を確かめたかを当時の担当者に聞いて書き出しておくと、決める材料になります。
外部に委託するときに確認しておきたい点
委託すると決めた作業は、フリーランスを含む業務委託の専門人材に任せられます。作業の中身と期限を決めて依頼し、リリースが終われば契約を終えられるためです。依頼するときは、作業名、終わる期限、終わったと判断する条件の3つを文書にしておくと、受ける側も必要な時間を見積もりやすくなります。
一方で、残課題の一覧と優先順位は社内で管理したまま、委託先に共有します。委託先が作業を進めるなかで見つけた課題も、同じ一覧に書き足してもらいます。一覧を社内と委託先で別々に持つと、どちらが新しいのかが分からなくなるためです。
人を増やすか、今いる人で運用を続けるかという方針は「IT人材を増やすか維持するかの方針」で、人材が足りないときの対応は「IT人材不足への対応」で、同じ調査の別の設問から扱っています。社員と委託先の稼働や契約期間の管理は「人的リソースの管理」で、古いシステムの仕様書の引き継ぎは「レガシーの仕様書を引き継ぐ手順」でまとめています。
まとめ:リリース前に確かめておきたい3つの点
リリース前の確認事項を決めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、移行計画やリカバリープラン、残課題の一覧など、何を確認するかを項目として決めておくこと。第二に、残っている作業を作業の単位で一覧にし、人を増やせば早く終わる作業と待つ作業を分けること。第三に、委託する作業は期限と終わったと判断する条件を決めて依頼し、一覧と優先順位は社内で管理することです。この3点を踏まえておけば、「リリースの前日になって、誰も手をつけていない作業が見つかった」という事態を避けやすくなります。リリース前の作業の切り分けに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
確認事項は、いつまでに決めておけばよいですか
テストを始める前に決めておくのがおすすめです。品質管理報告の書式やリカバリープランの手順は、テストの結果を受けて書き足していくものなので、項目が先に決まっていれば、テストと並行して準備を進められます。
リカバリープランには、何を書いておけばよいですか
元のシステムに戻すかどうかを決める条件、戻す手順、戻すと決める人の3つを書いておくと使いやすくなります。戻すかどうかをリリース当日に話し合って決めようとすると判断が遅れるので、条件は前もって文書にしておきます。
この調査には、個人の回答も含まれていますか
調査全体では、企業799件のほかに個人74件の回答があり、合わせて873件でした。*1 本記事の件数と比率は、企業向けの回答のうち、この設問に答えた682件から集計しています。
「その他」を選んだ企業は、どんな確認をしていますか
「その他」は11件、1.6%で、そのうち3件は6つの項目のいずれかも選んでいました。*2 自由記述の中身は公開データに含まれておらず、具体的な確認の内容は公表されていません。
リリース前の人員のご相談を
残っている作業の切り出しから、委託する作業の中身と期間の決め方まで、担当者が一緒に検討します。
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出典
- *1 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査」調査結果データの公開と分析レポートの募集(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/result-software2024.html)。調査期間(2024年12月17日から2025年2月14日)、2025年4月7日時点の回答件数(企業799件・個人74件の計873件)、回答を匿名化してオープンデータとして公開していることを参照(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 企業向け 調査結果(選択肢項目文字列)」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/h5f8pg00000028n8-att/software2024-c-result-data-str.csv)。Q3-20の回答の元データ。本記事の件数・比率、選んだ個数ごとの分布、平均と中央値は、このCSVから集計・計算した値(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 企業向け 設問一覧」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/h5f8pg00000028n8-att/software2024-c-questions.xlsx)。Q3-20の設問文と選択肢、複数選択の形式、回答対象がユーザー企業とユーザー系情報システム子会社の2種別であることを参照(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ソフトウェア開発関連調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/index.html)。この調査が置かれている調査群の構成を参照(2026年9月確認)